ノーザンファーム空港
窪田淳、伊藤賢調教主任インタビュー

「アベレージを高くすることが大事であり、それが私たちにとっての一番の仕事」

昨年のクラシック戦線において、牡馬三冠すべてを異なる育成馬で制するなど、圧倒的な成績を残したノーザンファーム空港牧場。
常に進化を続ける同牧場では、これまで性別ごとに担当を分けていた2人の調教主任が、牡牝混合で厩舎を分担する新体制へと移行した。
今回は、その伊藤賢・窪田淳の両主任に、新体制への手応えと今年の注目2歳馬について話を伺った。

以前は伊藤主任が牡馬、窪田主任が牝馬の厩舎をそれぞれ担当されていましたが、今はお互い牡馬・牝馬を分け隔てなく見られているそうですね。

窪田調教主任

 私は牝馬が5厩舎、牡馬は4厩舎見ています。

伊藤調教主任

私は牡馬が5厩舎、牝馬が4厩舎です。厳密にいえば、一昨年の12月からで、まるまる最初から見ているのはこの世代(現2歳世代)からになります。

これまでと進め方に変化はありますか。

窪田調教主任

 やり方自体は何も変わりません。頭数は倍くらいになりましたが、もともと多く見られるように準備は進めていたので、戸惑うこともなかったです。

毎年のように厩舎が増設されているので、自然と牧場にいる頭数も増えていることは容易に想像がつきます。

窪田調教主任

 牧場内でスタッフの行き来も頻繁にありますし、自分の担当だけという考えではなく、牧場全体を意識することが今は求められていると思います。

伊藤調教主任

会社の規模がここまで大きくなると、個人の力だけではチームとして成り立たないですからね。良い成績を求めるなら、個人的な力というよりかは、みんなで団結して、牧場としての総合力を生かすのが一番だと思います。

それでは昨年の競馬を振り返っていこうと思うのですが、現3歳世代は思ったほど勝ち切れていないと、川崎場長も挙げられていました。

伊藤調教主任

数字が物語っていますね。なかなか厳しい数字だと思っています。

窪田調教主任

 正直なところ、4歳世代が良すぎたというのもありますね。

皐月賞をミュージアムマイル、日本ダービーをクロワデュノール、菊花賞をエネルジコと、牡馬クラシックを総なめにしましたね。

伊藤調教主任

4歳世代の牡馬は大物が次々と出ましたが、アベレージを見ても、勝ち上がり率60%超と、近年にないくらい高かったんです。

窪田調教主任

 アベレージが高くなると、自然と大物の発生率が上がります。成績に関して、どちらかというと、牝馬のほうが振り幅は少なく、牡馬は年によって成績に差が出る印象です。

伊藤調教主任

3歳世代の数字がイマイチとお伝えしましたが、牝馬は例年と比べて、そこまで変わっていません。4歳世代の牡馬が良すぎたぶん、合計の勝ち鞍が減っているということですね。

牝馬のほうが育成するのは難しい印象がありますが、成績のバラつきは牡馬のほうがあるのですね。

窪田調教主任

 もちろん難しいのは牝馬ですが、牡馬のほうができる馬とできない馬の差が大きくなってしまう。だから急に大活躍する馬が出ることもあるし、逆に期待を大きく裏切ってしまうこともあるんです。

伊藤調教主任

(皐月賞と有馬記念を勝った)ミュージアムマイルにしても、当時からもちろん良かったですが、あれほど評判になるほどの目立ち方ではなかったですからね。

伊藤調教主任

エネルジコにいたっては、ここにいたときは言ってしまえば中の下≠ュらい。取材で聞かれても、良いことは言えなかったと思います。

窪田調教主任

 クラシックを勝った3頭で言えば、2歳春の時点では断トツでクロワデュノールでした。あれはスーパーホースになる雰囲気を醸しだしていましたし、それがレース結果へと結びつきましたね。

伊藤調教主任

本当に馬はわからないですね。ですので、アベレージを高くすることが大事であり、それが私たちにとっての一番の仕事かなと思います。

それでは各担当厩舎から注目馬を教えていただけますか。まずは牡馬から。伊藤主任お願いします。

伊藤調教主任

B―4厩舎からはヤンキーローズ24(父サートゥルナーリア)。イヤリングから移動してきた当初は非力な印象だったのですが、調教を重ねるごとにどんどん良くなっていきました。文句のいいようがない馬です。あとはタッチングスピーチ24(父ドレフォン)。この馬は、来た時から良かったですね。完成度が高いです。

ドレフォン産駒ですが、適性はどうでしょうか。

伊藤調教主任

芝向きの作りをしていますね。早い時期から動けると思います。次はB―5厩舎のラッキーライラック24(父エピファネイア)。馬は成長途上でこれからですが、言うまでもなく血統からの期待値は高いです。じわじわ体重も増えて、走りも良くなってきています。お母さん同様、夏競馬で使えたら良いなと考えています。B―6厩舎はエフフォーリアを出した厩舎ということもあり、アースライズ24(父エフフォーリア)。馬格があって現時点での完成度が高い1頭です。

デビューは早めになりそうですか。

伊藤調教主任

6月の東京を目指しています 。C―1厩舎のリリーズキャンドル24(父キズナ)も6月の東京を目指しています。馬体重が460kg台で、芝の中距離で切れ味を発揮しそうなタイプですね。続いてC―2厩舎だと、アンドラステ24(父コントレイル)ですね。

この馬も仕上がりは早そうですか。

伊藤調教主任

この馬に関しては、今後の成長力に期待できるタイプですね。この馬の良さは、総合力の高さ。先々に向けて、期待を持たせてくれる素質を感じます。

それでは窪田主任にも牡馬の注目馬を教えていただきましょう。

窪田調教主任

 まずB―1厩舎だったらPOG向きということを考えて、セルフレスリー24(父Flightline)です。

藤田晋オーナーの馬ですね。セレクトセールで2億900万円(税込み)という高額馬です。

窪田調教主任

 芝からでも行けそうですし、マイルから中距離まで幅広く対応してくれそうです。B―2厩舎からはチャイマックス24(父エフフォーリア)。

窪田主任からもエフフォーリア産駒の名前が挙がりましたね。

窪田調教主任

 取り上げた馬だけでなく、産駒は全体的に評判が高いですね。馬格があってしっかり攻めることができているので、完成度が高い馬が多いです。

アースライズ24のお話もありましたし、早くからの活躍に期待できそうですね。

窪田調教主任

 続いてB―3厩舎からはジュベルアリ24(父リオンディーズ)。極端に早くなることはないと思いますが、夏にはデビューできそうです。少し気難しい面はありますが、勝ち気なタイプで乗り役の評価も非常に高いですよ。B―7厩舎のラサルダン24(父キズナ)は、相当走るのでは、と期待しています。兄姉に似て気性の荒さや難しい面はありますが、自分からグイグイと動いていきます。前向きさが良い方向に働くようなイメージが湧きますね。

デビューはどれくらいになりそうですか。

窪田調教主任

 3月中の移動も視野に入っているので、6月から狙っていけると思っています 。背中も良く、マイル〜中距離がベストで、2400mまで持ちそうです。

2400mは、あくまで持つ≠ニいうイメージですか。

窪田調教主任

 現時点でベストが2400mで、ゆったりだなと思っている馬は、2歳戦では厳しい戦いになりがちですからね 。レースを使いながら自然と適性距離が延びていくタイプのほうが、活躍する可能性が高くなる印象があります。

ありがとうございます 。続いて牝馬の注目馬を教えてください。まずは伊藤主任から。

伊藤調教主任

A―2厩舎だとバラーディスト24(父ロードカナロア)。朝日杯FSを勝った半兄のカヴァレリッツォも見ていましたが、この時期の比較だと妹のほうが完成度は上だと思います。

昨年のJRA賞最優秀2歳牡馬と比較されるだけで、すごく価値がありますね。

伊藤調教主任

カヴァレリッツォは1歳から2歳にかけての冬場は、トップラインの弱さが目立っていて、決して丈夫とは言えない馬でした。それであれだけ走るのだから、血統のポテンシャルは相当高いと思います。上が走ったから注目というだけでなく、その前から厩舎内での評価が極めて高い1頭です。心肺機能も高そうですよ。

年末、阪神マイルの舞台で見ることができそうですね。当然POG人気を集めそうです。伊藤 続いてA―3厩舎はシーティス24(父キズナ)。走りが軽くてバネがあり、キレッキレのキズナ産駒といった感じです。おそらくデビューは新潟あたりになると思います。同じキズナ産駒のショウナンザナドゥとイメージが被りますね。それからA―4厩舎は……。

素質間違いなしの馬が――

何か気になる馬でも?

伊藤調教主任

本当はスイススカイダイバー24(父エピファネイア)の名前を出したいのですが、少し頓挫があったため紹介するのをためらっていました。ただ、この馬の素質は間違いないと思っています。A―4厩舎からもう1頭挙げるのであれば、ナスノシベリウス24(父キタサンブラック)は、体にボリュームがあって動きが安定していますね。

POG的にも注目される血統ですね。

伊藤調教主任

ここまで順調に進んでいますよ。A―5厩舎はアエロリット24(父キズナ)です。この馬は抜けて良いと思いますよ。何頭か牡馬でアエロリットの仔を見てきたのですが、体が小さかったり、ひ弱さがありました。しかし、この馬はイヤリングから移動してきた時からずっと順調。体質面も強いですね。

ありがとうございます。では、窪田主任、牝馬厩舎をお願いします。

窪田調教主任

 A―1厩舎はエスポワール24(父コントレイル)。上のアロヒアリイが走ったのもありますが、気性で結構走れそうな馬。早くから行けそうな1頭です。続いてD―1厩舎だと、アソルータ24(父エピファネイア)ですね。牝馬とは思えないタフさがあって、早い段階からしっかり鍛えることができました。桜花賞がすごく合いそうな気がします。6月の東京を狙っています。

今まで扱った馬で似たタイプの馬はいますか。

窪田調教主任

 血統は全く違いますが、今年のチューリップ賞を勝ったタイセイボーグのイメージに近いかもしれません。

マイルでの活躍が見られそうですね。

窪田調教主任

 D―2厩舎からはサロニカ24(父モーリス)ですね。センス、奥がありそうです。開幕からといったタイプではないですが、クラシックは目指せるのではないかなと期待しています。D―3厩舎はマース24(父サートゥルナーリア)。気性や動き、体のバランス……全てが合格点。動きも品があってきれいな走りをします。今のところ、一番期待している馬は?≠ニ聞かれたら、僕はこの馬を挙げますね。あまり大きく書かれるとプレッシャーになってしまいますが、自信はありますよ。

窪田主任がそこまで言うなら、相当な逸材でしょうね。

窪田調教主任

 最後にD―4はミスエルテ24(父シルバーステート)。阪神の開幕週を狙っています。完成度の高さが最大の魅力です。

ありがとうございます。窪田主任からの一番を聞けたので、伊藤主任からも一番馬を教えてもらえますか?

伊藤調教主任

そうですね、頓挫がなければスイススカイダイバー24の名前を迷わず口にしていたと思います。それに匹敵する馬と考えると、ヤンキーローズ24になりますね。

伊藤主任、窪田主任、ありがとうございました。