ノーザンファーム空港
川崎洋史場長インタビュー

「勝てるではなく勝たせないといけない」

前年に名前を挙げた2歳馬(現3歳馬)の成績を、インタビューの前に毎年調べて来られる川崎場長。その結果については本文の中で確認していただくとして、今年もノーザンファーム空港牧場には、日本の競馬を支えるスターホース候補生たちが続々とスタンバイしている。
来年も笑顔でインタビューを受けていただけるよう、場長期待の2歳馬たちについて語ってもらった。

今年もよろしくお願いいたします。

川崎場長

昨年、私の推奨馬が全然走れていないですね。昨年の記事を確認しながら、自分でもビックリしてしまいました。

39頭の名前を出していただいて、現時点(取材時)での勝ち上がりが18頭と、約半数という結果でしたね。

川崎場長

それだとダメですよね。全部勝たせなければいけない馬たちなのに、この成績では反省しかないです。毎年確認していますが、ここまでは……。

インタビュー早々、我々が責めているみたいで申し訳ないのですが、場長なりの反省点はありますか。

川崎場長

一昨年に比べると少し出だしが悪く、勝ち上がりが遅れたなというのはあります。そうなると、当然のように2勝目が遠くなり……。ダーリングハーストやブレットパスなど、まだまだ伸びしろがある馬も多いので、これからの活躍に期待したいです。

先ほど2勝目という言葉が出ましたが、昨年最初に名前を挙げていただいたのがプロメサアルムンド(アーモンドアイ23)でした。デビュー戦のインパクトが大きかっただけに、骨折は残念でしたね。

川崎場長

本当に悔しいです! クラシックに乗せないといけない馬でしたから。そうした歯車がかみ合わない1年だったかもしれません。

ただ空港牧場としては、朝日杯FSを1着、3着、ホープフルSも2着に入りました。

川崎場長

もう少し勝ちたいなという気持ちはありますが、ホープフルS2着のフォルテアンジェロも良い競馬をしてくれました。クラシック戦線で楽しめる馬たちが出たのは良かったです。

場長の推奨馬の中からは、ショウナンガルフが札幌2歳S、ゾロアストロがきさらぎ賞を勝利しました。

川崎場長

それでも牧場として重賞を8頭勝っているのに、私は2頭しか取り上げていませんからね。カヴァレリッツォやアドマイヤクワッズ、タイセイボーグを挙げないと。皆さんにツッコまれても仕方ないですね。

あとPOGとは直接の関係はありませんが、昨年はダブルハートボンドの活躍が印象的でしたね。

川崎場長

ノーザンファームはダートや短距離が苦手というイメージがあったと思うのですが、我々も苦手を克服したい≠ニいう意識を強く持つことによって、結果が出始めてきたのだと思います。

良い意味でノーザンファームっぽくない軌跡を辿っている馬という印象です。

川崎場長

3歳の8月デビューですからね。当時は(シルクの)会員さんから「記念デビューか!?」という声もあがったほどでした(笑)。会員さんにとっては、もっと早期にデビューしてほしかったでしょうから、ヤキモキするお気持ちは分かります。

それがトントン拍子で翌年にはGIホースですからね。

川崎場長

分からないですよね。この馬から「諦めてはいけない」ということを学びました。今までの自分たちの考え方だったら、競走馬としてデビューするのが難しいと思われる馬でも、やれることをしっかり積み上げていくことが大事だと改めて感じました。

それほどダブルハートボンドは難しい馬だったのでしょうか。

川崎場長

体質が弱くて、なかなか強い追い切りができませんでした。ダート仕様で育てようと思ってハードワークを課したことは一度もありません。それが今ではダートのトップホースになり、条件的に不安だったフェブラリーSでも3着でしたからね。これからが楽しみですし、個人的にも大好きな馬です。

それでは今年の2歳馬についてお話を聞かせてください。

川崎場長

今の3歳世代を踏まえてマイナーチェンジもしっかり進められましたし、そういう意味では楽しみな世代だと思っています。順調な馬も多いです。昨年うまく機能できなかった部分を改善しつつ、空港牧場では現4歳世代の牡馬が過去イチで良かったので、その良いイメージを持ちながら進化させていければと考えています。

それでは具体的な馬の名前を聞いていこうと思います。

川崎場長

「勝てる馬」ではなく、「勝たせないといけない馬」という強い気持ちを持って、お話したいと思います(笑)。

まずは、新種牡馬となるエフフォーリア産駒の評価からお願いします。

川崎場長

空港牧場だけで11頭います。エフフォーリア自身が空港出身ということもあって、牧場全体で応援したい種牡馬ではありますね。

全体的な評価はいかがですか。

川崎場長

そろって高いですね。エフフォーリアの父であるエピファネイア産駒は気性面で難しさを見せる馬が多いのですが、エフフォーリアの仔はそういうところがあまり出ない印象です。メンタルの安定感はあると思いますよ。

馬体のタイプはエピファネイアと違いますか。

川崎場長

違うと思います。エピファネイア産駒は筋肉量が多いのですが、エフフォーリア産駒は脚先の軽さがあってフレームのバランスがいい馬が多い印象です。その中で期待が大きいのはアースライズ24(牡)。調教を強めてもヘコたれず、余裕がありますね。冬の間も代謝が良くて、馬体もしっかり成長しています。あとは競馬に行った時に、ギアがもう一段上がれば良いかなと思います。

B―6厩舎ですね。

川崎場長

お父さんを育てた高見厩舎長のところから、走るエフフォーリア産駒が出てくれるでしょう。牝馬だとエピセアローム24が良いですね。

半姉のスターアニスは、昨年阪神JFを勝利していますね。

川崎場長

6月デビューのお姉さんほど早くはなさそうですが、フレームはきれいですし、距離は持ちそうです。

サリオス産駒はいかがでしょうか。

川崎場長

サリオスならシーリア24(牝)。現在450kgくらいで、良い成長をしています。スピードもありそうですし、適性はマイルの印象です。

続いてエピファネイア産駒はいかがでしょうか。

川崎場長

エピファネイア産駒もそろっていますよ。まずは牡馬のフローレスマジック24。秋の東京デビュー目標で、比較的ゆっくりかもしれません。

それでも最初に名前が出るということは、高い素質を評価されているということでしょうか。

川崎場長

能力は間違いないですね。焦らないで良いタイプだと思います。

ダブルハートボンドの例もありますし、ゆっくりでも大物は出ますからね。

川崎場長

もちろん、あそこまでゆっくりではないと思います(笑)。フレームもしっかりしているし、脚元も問題なく成長しています。それほど良い馬だけに、我々人間が焦らない≠ニいうことを自らに言い聞かせている状態です。すでに入厩できる状態ではありますが、無理して早く使う必要がないと思っています。

先々、大きいところを確実に狙うためにも、焦らないことが大事なわけですね。

川崎場長

エピファネイア産駒らしく気持ちが入りやすいところはありますが、困るレベルではありません。

フローレスマジックもPOGで大注目の馬だったので、大物誕生を待っているファンも多いと思います。

川崎場長

4番仔ですが、エピファネイア産駒は初めてなので、楽しみですね。次はグローバルビューティ24(牡)です。この馬もフレームがしっかりしていて520kgくらいあります。結果が出ている血統ですし、距離も持ちそうなので楽しみです。

牝馬はいかがですか。

川崎場長

早い時期から動けそうなのはモアナアネラ24。3月に移動して、阪神かあるいは北海道デビューになると思います。

続いてサートゥルナーリア産駒についてはいかがですか。

川崎場長

今年も良い馬が多いのですが、一番に挙げるとしたらヤンキーローズ24(牡)。本当に良い馬です。半姉のコニーアイランドも動きが良かったのですが、それ以上にこの馬のほうが体の使い方が上手な印象です。兄姉と比べて最初は少し頼りなかったのですが、グングンと良くなってきました。相当良い馬だと思います。

サートゥルナーリア産駒全体の評価も上がってきましたよね。

川崎場長

初年度産駒を見て、調教の仕方や気をつけるポイントが見えてきたのだと思います。あとデビューはゆっくりになりそうですがコーステッド24(牝)ですね。

姉のボンドガールも空港出身ですね。馬主も同じ藤田晋オーナーです。

川崎場長

この馬は年内にデビューして勝てれば、そこからでも十分にクラシックに間に合うと思っているので、焦らず丁寧に作っていきたいですね。素質は素晴らしいです。

続いてキズナ産駒についてお聞かせいただけますか。

川崎場長

個人的にはリリーズキャンドル24(牡)ですね。まだ少し体の幼さはありますが、現時点での動きは十分です。早い時期の移動を目指して東京デビューも視野に入れています。

絶対に走らせたいアエロリット24

牝馬ではいかがでしょうか。

川崎場長

絶対走らせたい馬≠ニしてアエロリット24です。これまでのきょうだいを思ったように活躍させることができずに悔しい思いをしているので、この馬で結果を出したいという気持ちは強いです。

続いて、2世代目になるコントレイル産駒たちも気になります。

川崎場長

牡馬ならダストアンドダイヤモンズ24。兄のドウデュースと比べられるのは、さすがにかわいそうだと思いますが、動きはかなり良いと思います。焦らず進めたいタイプでデビューは秋かなと考えています。もう1頭はシャンパンルーム24(牝)。動きが良くて、早めにデビューさせたいですね。4月にも入厩させたいと考えています。

紙幅も限られてきましたので、ここからはその他の注目産駒をご紹介いただけますか。

川崎場長

キタサンブラック産駒はコンヴィクションII24(牡)。冬の間も代謝が良くて体質の良さが目立っていました。普段はリラックスしている馬ですが、レースでスイッチが入れば面白いと思います。牝馬ではクールサンバ24。夏にデビューできると思います。お母さんはスーパーホース(仏1000ギニー勝利)なので期待しています。

まだまだオススメ馬はいますか。

川崎場長

ドレフォン産駒のタッチングスピーチ24(牡)。芝向きの走りをしていて、早い時期から行けると思いますよ。モーリス産駒ならパンデリング24(牡)。昨年も空港で一番勝ち星が多かった種牡馬はモーリスですからね。北海道デビューもありそうですね。次はロードカナロア産駒のバラーディスト24(牝)

カヴァレリッツォの半妹ですね。

川崎場長

現時点での完成度は妹のほうが上です。445kgでスピードがありますね。あとFlightline産駒の2頭。セルフレスリー24(牡)タングリトナ24(牡)。どちらも脚先が軽くて、芝で大きいところに行っても不思議ない動きをしています。ノーザンファーム全体で3頭ですが、どの馬もデキは良いですよ。

最後は駆け足になってしまいましたが、たくさん挙げていただきありがとうございます。

川崎場長

結果が悪いと、来年のインタビューがなくなりそうですからね。

そんなことはありません(笑)。今年もありがとうございました。