「ウチのはさぁ……」
という毎年恒例(?)になった九鬼勝己場長による泣き≠ゥらスタートしたビッグレッドファーム真歌の取材。話を聞いていくうちに「牡、牝ともに筆頭格がいます!」と元気を取り戻してくれた。
今年は馴致の開始時期を7月に早め、8月には坂路を上るという超先駆けスタイル。
「そのぶん、運動量が豊富になり、身が締まるのが早かった」と手応えを掴んでいる様子。その反面、牝馬は成長に合わせて少しゆっくり調整しているようだ。
話は戻り、その筆頭格。
「何もしなくても走る」と自信の牡馬はレオンドーロ23 (父ゴールドシップ)だ。
「歩きからして良い。背中の良さが別格で、素質馬の乗り心地。この馬でクラシックを目指したいですね」と絶賛。
そして牝馬は、アイオープナー23(父ゴールドシップ)がイチ押し。「前向きでピリッとした気性、バネがあり、蹴り込みの強いトモは走るゴールドシップ牝馬の典型です。当然クラシック候補です」
この2頭の共通点は母父スクリーンヒーローということ。ゴールドシップ×スクリーンヒーローのニックス誕生か!?
堅実に走ると評価されたのが、ハイタップ23(牡・父ダノンバラード)。
今年のダノンバラード産駒は今までと傾向が違うようだ。「これまでと違って大型馬が多いですね。重厚感があり、パワータイプでダート適性のある馬が見受けられます」
セレクトセール当歳セッションにおいて1億1550万円で落札された高額馬ベルヴォーグ23(牡・父シルバーステート)も抑えておきたい1頭。
「グイグイという手応えで坂路を上っていくスピード優位の快速馬。燃えやすい気性なので、早めの始動を考えています」と、開幕ダッシュに向けて準備が進んでいる。
ビッグレッドファーム泊津も、乗り出しは昨年よりも早く進めてこられたという。
「まだどの方針が良いのか模索中ではありますが、今年はびっしり調教できて、坂路2本をベースに負荷をかけることができました」と話すのは出口宰史場長。どの馬もレベルが高いという泊津の育成馬の中から、クラシック候補として名前が挙がったのはゴールドシップ産駒の2頭。
アメリオラシオン23 (牡)は、「父譲りの持続力のある脚が長所。終いまでスピードが衰えることなく坂路を駆け上がっていますよ」と、まさにテン良し中良し終い良し≠ネ様子。
もう1頭は、ディスポーザブルプレジャー23(牡)。「乗り込みを重ねるごとに動きが上向いてきた1頭で、追い切りの動きも上々。昨年末から動きが良くなってキレが出てきました。良い成長曲線を描けていると感じます」
ここまでクラシック候補≠ニして推奨された馬はすべてゴールドシップ産駒。今年はビッグレッドゴルシ豊作年≠ネのかもしれない。
父の初年度産駒代表として、公開調教に臨んだペルソナリテ23(牡・父ベンバトル)は早期デビュー組。
「骨太で筋力があり、馬格がしっかりしていて12月から時計を出していました。トップスピードに乗るまでの加速力は世代上位クラスですね。スピードにパワーも兼ね備えており、新馬向きと言えるでしょう。GW明けには移動予定です」競馬界に父の名を知らしめるトップバッターになる存在になるかもしれない。
牝馬からは、同じくベンバトル産駒のフォクシーレディ23が切り込み隊長になってくれそうだ。
「すでにトップクラスの時計を叩き出していますし、仕上がりに苦労しなさそうなので夏デビューを目指しています。ベンバトル産駒の特徴で良いところは、気性が落ち着いていて手がかからないところですね」気性が穏やかなベンバトル産駒が、どのようなレースを見せてくれるのか楽しみだ。
今年より牡馬は榎並健史調教主任、牝馬は金子仁調教主任という調教主任2名体制になったビッグレッドファーム明和。
「主任が2人になっただけでやることはあまり変わっていませんよ」と笑って話す榎並調教主任だが、牡馬、牝馬だけに集中できるのは大きな改革といえる。
早速、榎並調教主任に推し馬を尋ねると、最初にヴァニティールールズ23(牡・父ダノンバラード)と、名前が挙がった。
「今年のダノンバラード産駒は全体的に質が良く、馬格があるのもそうですが、体のバランスが良い馬が多いです」クラシックを意識したい1頭だという。
続いては「これは走ります」と自信満々に話すのが、Power of The Moon23 (牡・父Palace Pier)。
「間違いなくトップクラスの動き。まだ体を持て余し気味ですがそれでも動けているので、さらなる成長を期待しています」(榎並調教主任)
牝馬について金子調教主任に話を聞くと、公開調教で4F51秒6という猛烈時計を叩き出し、見学者を唸らせたルシェルドール23(牝・父ベンバトル)が期待の1頭だという。
「公開調教では動きすぎましたね(笑)。姉以上のスピードを持ち、普段はおっとりしているのに坂路へ行ったら別馬で、抑えるのに苦労します」3連勝で京王杯2歳Sをレコード勝ちした姉以上の逸材かもしれない。
最後に、地方馬のツウローゼズ23(牡・父ダノンバラード)の名前も覚えておきたい。
「調教の動きは世代上位クラスで、ダート馬らしい硬さもない。早めのデビューから秋には中央へチャレンジしたいですね」(榎並調教主任)
過去にはコスモバルクが外厩から、トラストが地方所属のまま札幌2歳Sを勝ち、ナイママも中央に移籍後クラシックに駒を進めた実績がある。注目したい1頭だ。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2025-2026(双葉社)の一部を掲載しています。