恒例となった追分ファーム・リリーバレーの厩舎長によるリレーインタビュー。昨年は開場以来、最も多く重賞を勝利。今年から4→5厩舎へと数も増え、さらなる飛躍が期待される。果たして今年は、どんな馬が登場するのか。
牝馬の厩舎からお聞きしていきます。まずはT-1厩舎の加地洋太厩舎長、今年もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。昨年「かわいい」と繰り返し話したリリーフィールドが、もみじSを勝ってくれて胸を撫で下ろしました。
POGで指名するうえで「かわいい馬を選べ」がトレンドになるかもしれませんね。ではさっそく、注目の2歳馬についてお願いします。
まずレジーナドーロ23(父エピファネイア)は非常に順調ですね。レジネッタの血統は年明けの勝ち上がりが多くて、少しゆっくりめな馬が多いんです。そう考えるとこの順調さは、エピファネイアがハマっているかもしれません。
この馬の最初のミッションは、早めに勝つことですね。
そうですね。ポテンシャルは相当秘めていると思います。この血統はうるさい仔が多いのですが、そんなこともありませんし、ここにきて体幹もしっかりきました。最初は小さかった馬体も、440kgまで成長しているので、楽しみは大きいですよ。
続いての馬をお願いします。
アレイヴィングビューティ23(父コントレイル)です。まだ緩さがあるので5月くらいの移動を目指しています。背中の使い方が上手で、芝で長めの距離が合っていそうです。この血統は初めて手掛けるのですが、何とか勝たせてあげたいですね。
過去の取材で、アレイヴィングビューティ産駒は何度も名前が挙がっています。
牧場として期待の血統なんです。素材は間違いないのですが、テンションに問題があったり体が大きすぎたりと、上は少しひと癖あったようです。本馬に関しては、その点はクリアしているので、まずは1勝を目指したいですね。
コントレイルを付けているということは、牧場の中での期待値が高かったという証拠でもあるのではないでしょうか。
それは間違いないです。大きなことを言えば、クラシックに乗せたいと思っています。
ありがとうございます。話は戻りますが、リリーフィールドはこの後の活躍が楽しみですね。
活躍すれば、さらにかわいく感じるでしょうね(笑)。一方で、かわいい=苦労した≠ニも言えるんです。とにかく寂しがり屋さんで、トレセンに行ってからも寂しがって馬房で大暴れしちゃうし、りんどう賞でも発走前に除外に。本馬場入場後、みんながバラバラに散ってしまったことで、パニックになってしまったんです。今は少し大人になりましたし、短距離路線で活躍してほしいですね。
最後に2頭以外の注目馬を教えてください。
リフタスフェルト23 (父スワーヴリチャード)。これは間違いなく短距離タイプですね。スピードは相当なものを持っています。芝・ダート問わず、短いところで最初から行けたらと思っています。あと遅めになりそうなのですが、かわいいから名前を出していいですか。
ぜひ、お願いします!
デアリングバード23(父エピファネイア)です。顔はいかつくて、パッと見はかわいいタイプではないのですが、性格はオンとオフがハッキリしています。寂しがり屋で人が支えてあげないとダメなタイプ。そこがかわいいんですよね。最後にアリア23(父ナダル)。函館2歳S3着のお母さんにも思い入れがあって、活躍中のナダル産駒ということもあり期待が膨らみます。毛艶もピカピカで能力は間違いないですよ。
ありがとうございます。
続いてT-2厩舎の明石圭介厩舎長です。
まずはメリオーラ23(父ロードカナロア)です。
毎年、新馬戦でも注目を集めるお馴染みの血統ですね。
年明けからグッと良くなってきました。調教に対しても前向きですし、人の指示に鋭く反応して、毎回、一生懸命走っています。加速力やスピードの乗りも現時点でも申し分ないですよ。うちの厩舎でメリオーラの仔を扱うのは初めてですが、他の厩舎から聞いていた兄姉の特徴は、受け継いでいます。
苦労した部分はありましたか。
この馬に関してはほとんどありませんね。しいて言うなら、1歳の時期に体の使い方が硬く、スムーズに使えていなかったことくらいです。ただそれが年明けの成長で解消されました。動きがスムーズになって、スピードや加速力に繋がってきましたね。スピードタイプなので、芝のマイルあたりが一番良いかなと思っています。
続いて、次の馬をご紹介お願いします。
レッツゴードンキ23(父エピファネイア)です。年明けまでは調教に体が追いついておらず、あまりパッとしなかったのですが、今年に入ってから厩舎の中でも一、二を争うほどまでに、動きが変わってきました。前進気勢は以前からあったのですが、ここに来て心身が噛み合ってきましたね。ブレがなく、体のバランスが良くなりました。
現在、馬体重は430kgとお聞きしました。
サイズ感はあまり変わっていないのですが、体の張りが変わってきて見た目もずいぶんと良くなりました。
お母さんは桜花賞馬ですね。
2つ上のガリレオ産駒であるミスガリレオアスクを育成したのですが、乗り味の良さは似ていますね。上はゆっくり作っていったのですが、本馬はエピファネイアに代わったということもあり、自然と上よりは早く仕上がっていくと思います。移動はすぐというわけではないですが、これからさらに良い方向に変わっていきそうです。弱点はないので、全体の水準を上げていければと思っています。
厩舎全体を通して、今年の2歳馬の進捗状況は、いかがですか。
昨年は成長が早い馬、遅い馬と二極化していたのですが、今年は時間が掛からなそうな馬が多いですね。あまり大きいことを言うのは苦手なので順調≠ュらいに留めておいてください(笑)。
その他に注目馬がいたら教えてください。
ワッツダチャンセズ23(父キタサンブラック)は良いですよ。これも順調にきています。まだ成長の余地は多分に残していて、奥がありそうですね。操作性も高いですし、これから良くなっていきそうです。
明石厩舎長ありがとうございました。続いて牡馬に移ります。
T-3厩舎の吾田翼厩舎長です。よろしくお願いします。
まず紹介するのは、クライリング23(父シスキン)です。年末までは成長待ちといった感じで我慢させていたのですが、年明けからは厩舎の中でもトップグループか2番手くらいで順調に調教してきました。乗り味が良くて、誰が乗っても「動けるね」という感想が出てきます。イヤリング時代からも評価は高かった1頭ですね。
どういった路線で活躍しそうですか。
スピードがあるので芝でも戦えると思うのですが、上がダート馬だったので、そこは何とも言えないところです。ただ、そういう血統だけに、調教を進めたら硬くなっていくのかなと思っていましたが、現時点では柔らかさがあるので、芝の中距離でも走ると思います。
シスキンに代わって、どう育つか楽しみですね。
もう1頭うちにもシスキン産駒がいて、そちらも早い時期から動けているのでPOG向きかもしれませんね。
続いての注目馬をお願いします。
タイムハンドラー23(父ルヴァンスレーヴ)です。1歳の10月から坂路2本を乗っていて、うちの厩舎の中で一番動けている馬。皆さんダートでの活躍を期待していると思いますが、個人的には2歳の早い時期なら芝でもいけると感じています。純粋に芝で見てみたいという好奇心もありますが(笑)。
芝で結果が出なくても、ダートで走れるというのは、強みになりそうです。
お姉ちゃんは、スワーヴリチャード産駒ということで参考になるかは分かりませんが、芝で勝ち上がっています。この仔も面白いと思います。
距離に関してはどうなりそうですか。
あまり長くはないと思います。1400〜1600mあたりになりそうです。力強い走りが魅力ですね。なるべく早い時期に勝ち上がってほしいと思っている1頭です。
今年で厩舎長として2年目の世代になるのですが、気持ち面での変化はありますか。
いっぱいいっぱいで、余裕がないです(笑)。1年経つのが早いなというのが感想です。
最後に他に注目馬がいたら教えてください。
ともにキズナ産駒のブランネージュ23、ブラインドラック23。あと、リトルゲルダ23(父サートゥルナーリア)は走ってきそうですね。お母さんは短距離馬だけど、距離の幅は出てくるかもしれません。この3頭はもう少しじっくり成長を待ちたいと思います。
ありがとうございました。
続きましてT-4厩舎の平沼敏幸厩舎長です。
マドラスチェック23(父キタサンブラック)は良いですね。ギアチェンジが速くて反応が鋭いです。移動時期は未定ですが、いつでも送り出せる状態ではあるので、特に問題はありません。
距離適性はどうですか。
2000m以上でも走れると思っていますし、クラシックを目指さないといけないと思っています。次の馬は、カラフルデイズ23(父シスキン)です。今年は例年以上に進行が早いうちの厩舎の中ではゆっくりめですが、牧場全体で見たら決して遅くはありません。すでに馬体重が540kg。兄姉もダートで走っているので、将来的にはダートの短距離かと思いますが、現状ではまだ何とも言えません。
性格の面はいかがですか。
普段はのんびりしていますが、気合いを入れるとすごいスピードで坂路を駆け上がっているので、掴みにくいとこもありますが、そこも魅力ですね。こちらが限界を決めずに見守った方が良いタイプだと思います。
世代全体の評価はどう捉えていますか。
暖かかったのが大きいですね。雪も少なったし馬の管理がしやすかったですね。体調の変化が少なく、良い冬を過ごせました。
では最後に他に注目馬がいたら教えてください。
トラウム23(父スワーヴリチャード)は良いですよ。あと一番はヴィクトリーマーチ23(父モーリス)。ただ、T-5厩舎の馬なんですよ(笑)。
別の厩舎なんですね(笑)。それでは新設されたT-5厩舎の大井庸平厩舎長お願いします。そのヴィクトリーマーチ23について教えてください。
厩舎の中でも一番早い組でやっています。イヤリングから来たのも早かったし、順調そのものですね。前進気勢がとにかく強く、仕上がりの早さを引き出してくれています。
先ほど平沼厩舎長からも名前が挙がりました。
1歳時から見た目も良かったんです。まだキ甲も抜けきっていないですし、奥ゆきも感じるので、まだまだ伸びしろもありそうです。
移動時期などは決まっていますか。
早めに移動する予定です。個人的な希望としては、北海道で使ってほしいと思っています。
ありがとうございます。T-5厩舎は、牡牝混合とのことなので、次は牝馬のオススメをお願いします。
サイマー23 (父シルバーステート)も順調です。牝馬でも物怖じしないですし、飼い食いが落ちることもない優等生。僕は牡馬の厩舎にいたので、この血統の牡馬は全部見てきたのですが、本馬も良いところを受け継いでいますね。ただ、サンライズジパングだけは平沼さんが乗っていて、僕は乗る機会がなかったので、その背中を知っていたらもっと的確な評価ができたのですが(笑)。ただ、乗りやすく本当に良い馬です。
その他にもし期待が大きい馬がいたら教えてください。
ベルプラージュ23(牝・父ナダル)も牝馬らしくなく単純に動きが良いですね。動きからはダート馬です。あとサーティーンスクエアド23(牡・父イスラボニータ)は運動神経が良く、芝の中距離で活躍してくれると思います。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2025-2026(双葉社)の一部を掲載しています。