阪神JFをアルマヴェローチェ、ホープフルSをクロワデュノールが勝利。朝日杯FSはミュージアムマイルが2着と、昨年末の2歳GI戦線で準パーフェクト≠演じたノーザンファーム空港。
今年も、川崎洋史場長に期待の2歳馬について語ってもらった。
まず、現3歳世代の振り返りから進めたいのですが、クロワデュノールという柱がいることで楽しみは大きいですね。
新馬戦を見て能力を確信しましたがそこまで行けるんだ!≠ニいう驚きも同時にありました。
素質の高さは牧場時代からも評判でしたか。
サンデーRのオススメ馬にも取り上げたくらい、個人的には高い評価をしていました。当歳の頃から筋肉のバランスや質感が良く、私のような馬体派の人間にとっては、すごく魅力的な1頭でしたね。ただお母さんが高齢で、それまでの産駒成績もそこまで目立っていなかったので、半信半疑だった人が多かったのも事実です。
その疑い≠ェ新馬戦で払拭されたわけですね。3歳世代全体に関しては、どのように受け止めていますか。
現3歳世代の牡馬は、2月終了時点で50%以上が勝ち上がっています。これは空港牧場としては今までにない高い数字です。
好調の要因はどこにあると見ていますか。
故障馬が少なく、出走率が上がったことが結果に繋がったのだと思います。去年の今時期でも順調な馬が多かったですし、攻めた調教もできていました。一方で、牝馬に関してはおよそ30%。その点は課題として受け止めています。
その差に関しては、どうお考えですか。
もちろん牝馬限定戦が数多くあるわけではないので、例年、牡馬の方が数字は高くなりやすいのですが、牡馬と牝馬の違い≠再度理解しなければいけないということを改めて感じましたね。
具体的にはどういったことでしょうか。
我々の立場で、一番に考えなくてはいけないのは調教です。牡馬にとって良い調教でも、牝馬にとっては良い調教とは言えない。その切り替えは大事でしょうね。
それでも昨年は、アルマヴェローチェが阪神JFを制覇。5番人気での勝利でしたが、1番人気に支持されたブラウンラチェットも同じA-1厩舎育成馬でした。
どの厩舎に走る馬がいるかは、もはや分からないですからね。血統はどの馬も抜群ですから、何が走ってもおかしくない。言わば宝の山なんです。その反面、調教や管理の仕方によって、結果に大きな差が生まれてしまうので、常にブラッシュアップしなくてはいけないという危機感は常に持っています。
特に今年はアーモンドアイ、グランアレグリアといった最近競馬を始めた競馬ファンも、目を輝かせるようなスターホースの名前もありますね。
最近の競馬ファンは、その馬の背景にあるストーリー含めて愛してくれますからね。お母さんの知名度がイマイチでも、世代を遡れば大半の繁殖牝馬のブラックタイプに名馬の名前を見つけることができます。先ほど名前が挙がったブラウンラチェットの半兄はフォーエバーヤングですから、血統の魅力が伝わりやすい。アルマヴェローチェにしても、すごい血が隠れていますからね。
例年、種牡馬別に話を聞くのですが、名前を先に出してしまったので、そのアーモンドアイ23(牡・父モーリス)とグランアレグリア23(牡・父エピファネイア)について教えていただけますか。
アーモンドアイ23に関しては、筋肉豊富でモーリス産駒らしい馬体をしています。ここまで言うことなしで、GW明けにも移動させて、できれば新潟で使いたいですね。年内で2勝してほしいと思っています。
デビュー戦は、半兄のアロンズロッドのそれを超える盛り上がりになるかもしれませんね。
グランアレグリア23は、お母さんも勝った舞台でもある、6月の東京デビューを目指していますが、現時点でそこを使えるかは半信半疑。ただ、強い馬が集まるレースで走らせてみたいという気持ちもあって。まだまだ隠し持った能力はありそうですよ。当然、2頭とも期待しています。
それでは順番に聞いていきたいのですが、まずは現2歳のクロワデュノールを探せ!≠ニいうことで、キタサンブラック産駒について教えてください。
うちだけではないでしょうが、今年はキタサンブラック産駒の良い馬が多いですね。イクイノックスが評判になりかけた2歳時に種付けした世代ですから。もちろん結果を出した来年以降は、さらにすごいことになりそうです。
谷間の世代≠ナあったにも関わらず、GIホースを出してくるあたりが、キタサンブラックのすごさですね。
空港牧場では、現3歳世代のキタサンブラック産駒は全8勝。勝率42%、複勝率84%、掲示板率89・5%とかなりの良績を収めてくれました。2歳馬の中で、まず期待しているのは、牝馬のフォースタークルック23。馬体重も460kgくらいあって皮膚の薄さや脚先の軽さが魅力です。筋肉の張り感も素晴らしく、幅がないということもなくきれいなシルエットをしています。牡馬なら、面白くないかもしれませんがライジングクロス23ですね。
むしろどれほどなのかと興味深いです。
正直、お兄さんと比べると少し足りないかなと思っていたのですが、ここにきての成長力には目を見張るものがあります。馬体重もイヤリングから入場して来た時は440kgだったのが、今では470kg。乗っているスタッフによると、この時期の状態はお兄さんと引けを取らないと聞いています。
続いて初年度となるコントレイル産駒について教えてください。
現場での評価も高いですし、気の悪い印象もないので期待は大きいですね。コントレイル産駒は平均して470〜500kgくらい。調教しても馬体が減りにくく、ディープインパクトにアメリカの牝系が入っていることで、一回り大きく出る印象ですね。
それでは注目馬を教えてください。
ボジティブマインド23(牡)は、現時点でも素晴らしいですね。その他の牡馬だとモアナ23、スウィートリーズン23。そして牝馬はヤンキーローズ23。この馬に関しては自信がありますね。
リバティアイランドの半妹でコントレイルの初年度産駒。注目度は抜群です。
素晴らしい素質をしています。クラブの牝馬で初の1億円の大台を付けた馬ですが、それだけの期待に応えてくれるはずです。
この馬に関しては、どうしたって期待値が高まりますよね。
兄姉を見てきましたけど、リバティアイランド1頭で終わる血統ではありません。同じ柳の下に何頭もいます。これは大丈夫!
力強い言葉ありがとうございます。それでは、空港牧場と相性が良いというエピファネイア産駒から教えてください。
現3歳も産駒別だと最も勝ち星は多く、13勝挙げました。今年はさらにラインナップが良いですよ。まず牝馬で一番好きなのはジェイウォーク23。ここまでの成長過程を考えても期待大です。2歳牝馬チャンピオンを目指してほしいですね。同じく牝馬なら、サロニカ23、スマートレイアー23。そしてフォエヴァーダーリング23も綺麗なストライドで走っています。
牡馬はグランアレグリア23以外だといかがでしょうか。
チェッキーノ23、コーステッド23が素晴らしいです。動きが目立つ2頭ですね。
ありがとうございます。続いて、エピファネイア産駒と同じくサートゥルナーリア産駒が、現在13勝を挙げていますね。
サートゥルナーリア産駒は、体に緩さがあったので、勝ち星を重ねていくのはもう少し後かなと思ったのですが、無用な心配でした。早い時期から成績もついてきたし、近いうちに超大物も出るのではないでしょうか。
それでは具体的に大物候補を教えてください。
牡馬だとオンディナドバイ23、ホロロジスト23。牝馬だとアイムユアーズ23、リカビトス23ですね。
それと、クリソベリル産駒は頭数が揃っている印象があります。
新種牡馬ですが、サイズ感があって産駒の出来が非常に良いですよ。ナダルが先に種牡馬デビューしましたが、ナダルのライバルになれる手応えを掴んでいます。牡馬はクルークハイト23、牝馬ならエスメラルディーナ23。ダートの中距離戦でナダル産駒とぶつかるのではないでしょうか。
では名前が挙がったナダル産駒についてお願いします。
牡馬ならヘアケイリー23の馬体が素晴らしい。牝馬だとスマイルシャワー23でしょうか。昨年は芝から使う馬も多かったけど、この2頭に関しては馬体からダート中距離に適性がありそうです。
続いてキズナ産駒はいかがでしょうか。
遅生まれですがミスベジル23(牡)。成長途上で、夏くらいにさらに良くなってくるとは思いますが、素晴らしい馬へと成長すると思います。セレスタ23(牝)は兄姉も活躍馬が多いのですが、能力は遜色ありません。気性面も上と比較して安定しています。
その他で注目馬を教えてください。
モーリス産駒は、お母さんに似ているブチコ23(牝)。あとはアルミレーナ23(牡)。ロードカナロア産駒だと、アルテヴェローチェの半弟となるクルミネイト23(牡)。姉と同じような良い馬体に成長しましたね。
良血馬が順調に進められているということですね。
レイデオロ産駒だとストーミーエンブレイス23(牡)、お母さんが高齢ではありますがアディクティド23(牝)。あと、個人的に高い期待を寄せているのが、オルフェーヴル産駒のシュガーショック23(牡)です。
まだまだ名前が出てきそうですね。
サトノダイヤモンドにも期待しているんですよ。その筆頭がテディーズプロミス23(牡)。遅生まれですが、ここにきて一気に成長してきました。注目のリアルスティール産駒だとミスエーニョ23(牡)も良いですね。ティールグリーン23(牡)は坂路を上がってくる動きが素晴らしく、ダートでも大きいところに行けるかもと思わせる逸材です。
近年のPOGは、ダート馬の存在も無視できませんからね。
それ以外にもルーラーシップ産駒のラトゥールレディー23(牡)も良いですし、Frankel産駒のクールサンバ23(牝)はお母さんもヨーロッパの1000ギニーを勝っているし、桜花賞に進んでほしいですね。アルアイン産駒のパッシングスルー23(牡)や、ハービンジャー産駒のミカリーニョ23(牡)、そして2年目の世代となるアドマイヤマーズ産駒だとジューヌエコール23(牝)が好馬体で目を惹きます。
ジューヌエコール23は、両親のイメージからマイルあたりがベストですか。
ベストはマイルでしょうが、融通は利くタイプだと思います。そして最後に新種牡馬ポエティックフレア産駒のインヘリットデール23(牝)。日本のスピードについていけるか未知な部分はありますが、フレームがしっかりしているので可能性は感じさせてくれます。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2025-2026(双葉社)の一部を掲載しています。