ノーザンファーム早来
日下和博統括主任インタビュー

「一つ一つの精度を上げて一番良い時期を見極めたい」

牝馬の調教主任として23年顕彰馬に選ばれたアーモンドアイをはじめ、これまで数多くの名牝を輩出してきた日下和博氏。
今年は組織改革が行われ、「統括主任」として、牝馬だけでなくノーザンファーム早来すべての馬を見ることになった。これまで以上に日下の助言≠ノ我々は頼らないといけない!

今までは牡馬、牝馬の調教主任がそれぞれ分かれていて管理されていましたが、今年から4人の調教主任が牡馬牝馬の厩舎を複数担当しています。その統括を日下さんがしているということですよね。

日下統括主任

統括って言葉にまだしっくりきていないんですけどね(笑)。林調教主任、横手調教主任の2人とは、入社以来ずっと一緒にやってきているので、大きく変わったことはありません。今年から、牝馬厩舎も複数の調教主任が管理するという取り組みを始めましたが、これに関しても良いことだと思います。今までは私の意見が間違っていたら、早来の牝馬はすべて転んでしまう。4人の意見があれば、全部が転ぶことはありませんからね。

リスクヘッジにつながっているというわけですね。

日下統括主任

うまくいった方法を、毎年繰り返せば良いと思われるかもしれませんが、進歩がないとすぐに成績は下がっていきます。
ノーザンファームだけではなく、他の牧場でも育成場の整備が進んでいます。関西には、チャンピオンヒルズができ、昨年も社台ファームが三重県に鈴鹿トレーニングセンターを開業しました。やらなくてはいけないことがたくさんあります。

そうした中で、日下統括主任が重きを置いている部分はどこですか。

日下統括主任

各厩舎、各グループの精度を上げることです。レース数は同じなので、食うか食われるかの戦いをしているという意識は誰もが持っていると思いますが、さらにひとつひとつのクオリティを上げていきたいです。

ノーザンファームだけでも早期デビューしたい馬は各厩舎に何頭もいて、早めのレースでぶつかってしまいますよね。

日下統括主任

そうですね。現3歳世代に関しては、入厩時期を早くし過ぎたことで、思ったより成績が上がりませんでした。そのため、今年は各馬にとって一番良い時期を見極めて送り出すことを意識しています。

早期デビューというコメントがあると、つい我々やPOGファンは喜んでしまいますからね。現3歳(牝馬)世代は反省点が多いとも話されていましたが、4歳世代ではチェルヴィニアがGI2勝。JRA賞最優秀3歳牝馬に輝きました。

日下統括主任

ありがとうございます。ただ、以前から話しているように、一番獲りたいのは阪神JF、桜花賞ですから、そこは悔いが残ります。ここまで走るなら4冠が欲しかったですね。

デビュー前から日下主任はチェルヴィニアをかなり推されていましたが、桜花賞(13着)の結果だと、オークスは少し難しいかなと見ていました。

日下統括主任

桜花賞は山根厩舎長と一緒に見ていたのですが、オークスはかなり厳しいと覚悟していました。アドマイヤミヤビも現役時代、桜花賞で12着に敗れて、オークスで巻き返しましたが、それでも3着まででしたから。ノーザンファーム天栄や、厩舎サイドの工夫が大きかったのだと思います。

そしてレガレイラは有馬記念を勝利しました。

日下統括主任

あれは戸崎騎手が上手に乗ってくれましたね。負けても上がり最速≠ニか書かれるけど、もう、そんなの欲しくありません(笑)。戸崎騎手が空いていたのは、この馬が持つ運の良さだったのでしょう。

それでは今年の2歳馬についてお聞きしたいと思います。まずは牝馬からお願いします。

日下統括主任

期待しているのが、エピファネイア産駒のシンハライト23グルヴェイグ23リスグラシュー23、それとキズナ産駒のノームコア23ですね。どのお母さんも日下厩舎や日下グループにいた馬で縁もあるので、走ってほしいと思っています。

ものすごいネームバリューですよね。

日下統括主任

それ以外にも、エピファネイア産駒のアドマイヤミヤビ23ラヴズオンリーミー23。キタサンブラック産駒のチェリーコレクト23シャトーブランシュ23あたりも走らせないといけないですね。
レガレイラの半妹であるロカ23(父インディチャンプ)、ドウデュースの半妹のダストアンドダイヤモンズ23(父シルバーステート)もいます。どの馬が走ってもおかしくありません。

続いて牡馬についても教えてください。

日下統括主任

牡馬に関しても相当いいと思います。木村厩舎ならリリーノーブル23(父キズナ)、ボインビューティー23(父コントレイル)。
伊藤厩舎だとアドマイヤシーマ23(父リオンディーズ)、イルーシヴハピネス23(父スワーヴリチャード)、それとファディラー23(父キタサンブラック)は走ってくれないと……。

厩舎長たちも期待していました。

日下統括主任

加我厩舎はシーヴ23(父コントレイル)で結果を出したいですね。パリスビキニ23(父クリソベリル)も動きが良く、走ってくれそうです。
野崎厩舎は、ウィクトーリア23(父サートゥルナーリア)に期待しています。移動が早い組は当然として、秋デビュー組も良い動きをしている馬が多い印象です。

本当にどこから大物が誕生してもおかしくありませんね。

日下統括主任

桑田厩舎のサラキア23(父エピファネイア)、石井厩舎のマラコスタムブラダ23(父キズナ)は大きいところを狙える逸材だと思っています。
小笠原厩舎ではピノ23(父キタサンブラック)。クラシックを意識したくなる好馬体の持ち主ですね。あとはマーブルケーキ23(父モーリス)にも期待しています。白毛馬の大物になってほしいです。