昨年の取材馬から2頭の重賞ウィナーを送り出し、クラシック戦線に名乗りを上げたビッグレッドグループ。
6月の東京デビューから4戦目で勝ち上がり、弥生賞ディープインパクト記念を制したコスモキュランダ、クローバー賞を勝ったコスモディナーを育成したのは、真歌トレーニングパークだ。
九鬼勝己場長は、「去年あんなにゴールドシップ産駒を推したのに、アルアイン産駒で重賞を勝ってしまいました・・・。種馬で寄せたらダメですよね」と反省の弁を述べつつ、「でも、今年の2歳はダノンバラード産駒に良い繁殖が集まった年で、動きの良い馬を選ぶとみんなダノンバラードになってしまうんですよ」と笑顔を見せた。
そんな中で、一番手に名前が挙がったのは、スクリーンヒーロー産駒のリープフラウミルヒ22 (牡)だ。福島牝馬S2着の母の初仔となる。「母は期待通り頑張ってくれた馬で、この仔も馴致明けから好印象。バネのある大きなフットワークは弓のようにしなやかで、芯もしっかりしてますね」
真歌育成のスクリーンヒーロー産駒は、小倉2歳Sを制したマイネルグリッドをはじめ、オープン馬のマイネルウィルトス、マイネルジェロディ、デビューから3連勝したコスモフリーゲンなど出世する傾向にあり、この馬も流れに乗ってほしいところだ。
総じて動きがいいダノンバラード産駒の中でも一番期待しているというのがヘリンヌリング22(牡)だ。「キレのあるスピード感溢れる走り、背中が良く、気性はカッとなりやすいのが父の産駒の特徴。この馬も父の長所を全て持っている感じで、走りに迫力がありますね。単走にすると古馬のような安定感で走って来ますし、気性だけ注意すれば良いところまで行けると期待しています」
そして当然、外せないのがコスモキュランダの半弟になるサザンスピード22(牡、父ダノンバラード)。「同時期の兄よりはまだ動けていないけど、バランスの取れた馬体で勝負根性はあります。まだまだ気性が幼いですが、それでも早めに行きますよ」と兄の蹄績を追いかける形になりそうだ。
一方、ビッグレッドファーム泊津では、「今年は牡、牝それぞれ筆頭格がいます」と胸を張る出口宰史場長。
牡馬の筆頭は、マーマレードガール22 (牡、父ダノンバラード)だ。「早い時期からスタッフからの評価が高かった馬で、動かしてからも先着を続け、最初の評価通り順調そのもの。心身ともに完成度が高く、欠点が見当たりませんね」
牝系は日本で枝葉を広げ活躍馬多数のバッフドオレンジ系。良血開花に期待したい。
牝馬は期待の新種牡馬ウインブライト産駒のコスモコルデス22(牝)。「騎乗初期段階から坂路を軽々と駆け上がり、潜在能力の高さはかなりありますね。跨ると気合いが乗る気性は競馬向きで、早めにデビューさせたいと思っています」と仕上がりの早さも誇っている。
出口場長の推し馬は、ゲッカコウ22(牝、父スクリーンヒーロー)だという。活躍した母の仔だけに思いは強い。「前進気勢があり、牝馬らしからぬ豪快なフットワークで持続力のある脚を持っていますね。母は繁殖としても優秀なので、期待しています」
昨年の推奨馬ラストクリスマスが7月の福島1200mで新馬勝ち。今年の推奨馬たちも暑い夏を盛り上げてくれそうだ。
遡ること2月14日、ウインブライト初年度産駒の公開調教がビッグレッドファーム明和の坂路で行われ、明和の育成馬も2頭参加した。
その中で、菊花賞に出走した古馬相手に、一番時計を記録したのはホクトグレイン22(牡、父ウインブライト)だった。
榎並健史調教主任は、「とにかくタフで、公開調教に向けかなりハードなメニューを課したんですが全然疲れた様子もなくずっとトップクラスの動きを維持しています。パワーもあるので芝、ダートどちらでも走れそうですが、まずは早期の芝から試してみたいですね」と、しっかり結果を出してくれた育成馬に期待を寄せた。
そしてもう1頭、公開調教でお披露目されたマイスウィートベイビー22(牡)に関しては「正直こっちの方がスピードがあってビュッと行くと思ったんですけどね。小柄ですが攻めてもへこたれない体力がありますし、夏の新潟を目標に調教進度を上げています」
そして、明和の育成馬として宣言通り東京開幕週でデビューし、京王杯2歳Sを勝利、続く阪神JFでも3着とクラシックの王道を突き進むコラソンビートの半弟ルシェルドール22(牡、父ミッキーアイル)も外せない1頭。「まだ緩さがあって、同時期の姉と比べたら完成度は違いますが、徐々に馬体に力が付いて、バネの利いたスピード感のある走りができるようになって来ました。背中も良いし、素質は高いと感じますよ。姉のように6月とまでは行かなくても、夏競馬ではデビューさせたいですね」
最後に、榎並主任の推し馬を尋ねると「現状の動きというより、将来的に化けるかな」とマイネノンノ22 (牡、父ダノンバラード)を推奨。「乗り難しくて捉えどころのない馬ではありますが、母の産駒は小柄でピッチ走法の馬が多かったのに対し、この馬は今までとちょっと違い、大きなフットワークで良いところまでいけそうな予感がします」
デビューはゆっくりめの予定だが、ビッグレッドにおける"ゆっくり"とは8月のこと。成長した姿を夏競馬で見られるのを楽しみにしたい。
今年の明和の育成馬は総じて出来が良いそうで「泊津ができて今まで80頭いた管理馬が60頭に減ったことで1頭1頭に時間がかけられるようになりました。1頭に対する運動量も増えましたし、これは大きな変化だと思います」
馬に合わせた調教進度で完璧に仕上げられたビッグレッドグループの育成馬たち。今年も2歳戦からクラシックまで、ターフを席巻していきそうだ。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2024-2025(双葉社)の一部を掲載しています。