恒例となった、追分ファーム・リリーバレーの4人の厩舎長によるリレーインタビュー。今年も各厩舎のオススメ馬について、しっかりと語っていただいた。現3歳世代は、サンライズジパングがホープフルS3着、若駒S勝利で、クラシックに駒を進めている。果たして今年は、どんな馬が飛び出すのだろうか。
今年は、牝馬の厩舎からお聞きしていきます。まずはT-1厩舎の加地洋太厩舎長、よろしくお願いします。
まずは、ハイリリー22 (父モズアスコット)からお話したいと思います。
新種牡馬のモズアスコット産駒ですね。
ハイリリーの仔はずっと牡馬ばかりで、初めて牝馬が出ました。お母さんは最初のGTレーシング募集の年だったので印象深いんですよ。故障して引退したんですが、本当に良い馬だったので、いつか産駒をやりたいなと思っていました。
どういうタイプの馬ですか。
牝馬の中でも性格は大人しいですね。それと寂しがり屋な面が合って、そこがとにかくかわいいんです!
POGのインタビューでは、聞きそうで意外に聞かないコメントですよね。
それ以外、表現が見つからないくらいかわいいですよ。気性はお母さんに似て優等生で扱いやすい。操縦性も高いので、乗り手を困らせるようなことはまったくしません。お父さんが芝とダートの両方でGTを勝っている個性派なので、この馬も決めつけずにいろいろな可能性に期待していきたいと思っています。
ありがとうございます。続いてのオススメ馬を教えてください。
ベラポーサ22(父ダイワメジャー)ですね、すでに体が500キロくらいあります。顔が大きくて、ダイワメジャーの仔という感じです。
ハイリリー22とは、かなり雰囲気が違いそうですね。
こちらは、しっかりしているのでパワーを感じます。お母さんは、アメリカのセリで購入したのですが、私も一緒に行って見たという思い入れのある血統です。ペラポーサという名前も、イタリア語で"美しい姿勢"って意味があるんですが、これは私が付けさせてもらったんです。
今回、紹介していただいた2頭は、どちらも思い入れのある血統馬なんですね。
そうですね。ベラポーサはTapitの仔だったのですが、見た目がきれいでした。
ベラポーサ22に関していうと、母父Tapitなので、先々はダートというイメージでしょうか。
その可能性もありますが、最初は芝を使っていけたらと思います。
少し時間を戻して、現3歳世代のこれまでの結果について振り返っていただけますか。
思い描いていた数字よりは、勝てていないという実感はあります。昨年、追分はサンライズジパング(ホープフルS3着、若駒S1着)を筆頭に、牝馬より牡馬のほうが活躍しているんです。それと、3歳世代は全体的にダート寄りだったんです。現時点で一番勝っているモアザンワンスもダート2勝。今年こそ、クラシック路線に乗れる馬を出したいです。
全体的な評価として、今年はどうですか。
基礎体力は上がっているし、去年のこの時期よりは自信はあります。
最後に、2頭以外の注目馬を教えてください。
自然と人気になるでしょうがスパニッシュクイーン22 (父ドゥラメンテ)。晩成血統なので、ここから変わってくると思いますが、現時点でも大物感のある動きをしています。あと、まだ400キロ弱と小柄なんですが、芯が強いのでここから化けそうなパララサルー22(父モーリス)ですね。
加地厩舎長ありがとうございました。
続いてはT-2厩舎は明石圭介厩舎長です。
まず、クイーンカトリーン22(父リアルスティール)ですね。14〜15秒で坂路をやっていてそこでもいいスピード感を見せながらやれています。一時期、調教に慣れてきた部分があって、気持ちが乗り切れていなかったのですが、今では前進気勢が出て最後まで走り切ることができています。
距離含め適性はどうお考えですか。
短距離ではなく、マイルから中距離まで走れると思います。馬体重は440キロくらいなのですが、数字以上に大きく見せます。リアルスティールの仔はダートでも走っているので、どちらでも適応してくれると考えています。
続いての馬を教えてください。
シャルムダムール22 (父ルーラーシップ)ですね。体高はないけど、体幹がしっかりしているのが特徴です。安定感があって総合力の高さを感じます。調教を強くしても、気持ちだけで走っている感じではなく、人の扶助に対して走り切っている感触があるのが良いところです。
弱点を言うと、まだ子どもっぽくてスイッチのオンとオフが少しズレているので、成長して気持ちにメリハリが出てきてほしいなという段階です。
続いて挙がるのは新種牡馬産駒でしょうか。
デルニエオール22(父ナダル)は、前進気勢が旺盛で、良いスピードを見せながら調教ができています。走ることに対して真面目だなという印象がありますね。京成杯のときにノリさん(横山典弘騎手)が「一生懸命走るということは、それだけで良いこと」と話していたのですが、この馬に関しても、このまま真面目に進んでいってほしいと思います。
距離は短めが良さそうですか。
馬体を見ると短距離という感じではないですね。人がいかに抜きどころ、気持ちの面でのメリハリを教えてあげれば距離は中距離くらいまで持ってくれるはずです。
厩舎として、昨年の成績はどう受け止めていらっしゃいますか。
厩舎の3分の1くらいは早く行けたんですが、全体的に見ると、進み具合に難があったり、故障に泣かされた馬も多かったですね。
では最後に、他に注目しておいたほうが良いという馬を教えてください。
走りに集中できていて、反応良くギアが入ってくれるタイムハンドラー22(父スワーヴリチャード)は結構走ってくれるのでは、と思っています。
明石厩舎長ありがとうございました。
続いて牡馬の厩舎に移ります。T-3厩舎の吾田翼厩舎長です。昨年は就任した直後のインタビューだったため、事実上、今年が最初の世代になります。
毎日必死にやっています。改めてよろしくお願いします。
最初に挙げるのは、サーブルクーリール22 (父キタサンブラック)です。厩舎の中では、一番進んでいる組ですね。まだ幼児体型で、馬体の完成はまだ先ですが、走りは柔らかいしスピードもあります。距離はマイル以上かなと思っています。
この馬に対する期待は大きいようでですね。
キタサンブラック産駒をやりたくて、自分で(入厩馬を選ぶ)ドラフトで一番に選びました。
ゴンバデカーブースも、当時の厩舎長がドラ1で選ばれた馬だと聞いているので、POGファンからしても大きな推し材料になりますね。続いてはどの馬になりますか。
ベルプラージュ22 です(父シニスターミニスター)。半兄は(オペラプラージュ)はニューイヤーズデイ産駒で、タイプが違うということもあって、現状の進み具合はこちらの方がスムーズです。
そのオペラプラージュは、10月にデビューして新馬勝ち。それだけに楽しみですね。
そうなんですよ。シニスターミニスター産駒で最初は気性面を気にしていたのですが、意外と問題ありませんでした。同じ産駒のミックファイアがダート三冠を獲りましたから、この馬にも目指す資格はあるのかなと思っています。
昨年を振り返ると、推奨していただいたメリオーレムが2勝しました。
すみれSは惜しかったですね。できれば皐月賞に進みたかった。
まだダービーへの道は残されていますから。ただ、距離はマイルくらいと話されていたので、デビューから2000mから使われて少し驚きました(笑)。
シュヴァルグラン産駒で未知の面が多かったのですが、友道先生の見立てが正しかったですね。とにかく結果を出してくれて良かったです。
2歳世代の手応えをお聞かせください。
乗り込み量が豊富なので自信はあるのですが、どう結果につながってくるのかは、まだ分からないですね。当然、期待は大きいです。
2頭以外でオススメの馬がいれば教えてください。
早めに移動して、北海道で使いたいと須貝先生が話してくれているオリヒメ22(父オルフェーヴル)。今、一番動けている1頭です。
吾田厩舎長ありがとうございました。
今年のトリを務めるのは、T-4厩舎の平沼敏幸厩舎長です。
最初はアンチュラス22(父エピファネイア)です。ちょっと遅めに来たので、まだ基礎体力をつけている段階です。言葉では言い表しにくいんですが、地面を捉える雰囲気とか良い物を持っています。もちろん未完成なんですが、ここに名前を出せるだけの手応えはありますよ。
続いてはどの馬になりますか。
ソロダンサー22(父ルヴァンスレーヴ)です。このお父さんですからね。ダートに行って、ピャーッと勝ちます(笑)。この馬も遅く来ているので、未来を見据えたコメントしかできないです。これから調教も強くなっていくでしょうが、あまり調教しなくても走っちゃうタイプだと思います。良い馬って、調教しなくても進んでいくんです。そういう馬ですね。
聞き慣れないワードが並びましたね(笑)。3頭目の馬を教えてください。
シーティス22 (父ロードカナロア)は、刺激を与える意味もあって、一番早いグループに入れています。まだ子どもっぽい面があって、走りにムラがあるので、特訓して集中力を増すようになってくれれば、さらに良くなってくると思います。
堀厩舎に入ることが決まっていますね。
今まで、うちの厩舎から堀厩舎に入厩した馬はほとんどいないんですよ。それだけ周囲の期待も大きいですし、走ってもらいたいですね。
では最後に他の注目馬を教えてください。
早くから行けると思っているのがチェルシークロイスターズ22(父エピファネイア)。2歳戦から活躍できると思います。
厩舎長の皆さん、今年もありがとうございました!
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2024-2025(双葉社)の一部を掲載しています。