本誌初登場となる追分ファーム・リリバレーの藤田洋一調教マネージャー。ノーザンファーム空港の調教主任としてスターホースを何頭も誕生させた後、こちらにやって来たのが5年前。
「追分ファームの今、そして未来」について、このタイミングしかないということで、藤田マネージャーにインタビューを敢行。今年の注目馬についても最後に教えてもらったので、ぜひ読み進めてほしい。
毎年、4人の厩舎によるリレーインタビューをしているのですが、今年はついに藤田調教マネージャーに登場していただきます。
4人には、「POG本に載ると走らないから、気をつけて話すように」と言ってあるんです(笑)。
いやいや、そんなこと言わないでください(笑)。やはり注目される牧場ですから、大きく取り上げないわけにはいかないんです。
たとえばセリフォスにしても、現時点でGT1勝。もっと勝っていないとおかしい馬ですから。
そう言われると何も返せないですが・・・(笑)。
そうなんです。ノーザンにいた頃から思っていたんですよね。良い馬の名前を出しても、載っていない馬の方が走りますから。POG本って1年後に読み返すためにある本ですよね(笑)。
しかし、藤田さんが追分ファームに来られてからは、POG期間中に活躍する馬が増えてきている印象です。
ノーザンファームや社台ファームには頭数では勝てませんが、繁殖の質や種馬を見ると、もともと一流なんですよ。ここに来て繁殖→イヤリング→育成がようやくつながってきました。
ここに来た当初は、難しい馬も多かったのですが、徐々に解消されているし、右肩上がりに良くなってきたと感じています。
5年が経過し、手応えを感じるまで、大変な時期もあったと思います。
個人的な目標ですが、「10年でダービーを獲る!」と思っていたので、ここまでは想定していたより時間が少し掛かったというのが正直な感想です。基礎的な部分では、施設も人も違うので、どうしてもスムーズに進まない面はありましたね。目標は同じでも、アプローチの仕方は違って当然なので、どんどんやりやすくなってきたと思っています。
4人の厩舎長と話すと、それぞれ個性が違うなという印象があります。藤田さんに「気をつけろ」と念を押されながらも、厩舎長からしっかりとお話していただけています。
厩舎の数が少ないこともあって、同じ母系の馬をドラフト(自厩舎で担当する馬を選ぶ)で指名する傾向が強いんですよね。比較ができるから話しやすいんだと思います。ただ気持ちはわかるんだけど、まったく違うタイプを育てるのも厩舎長の仕事として面白いところでもあるので、そうした"遊び"が生まれてくると、もう一段階、成績もアップするような気がしています。
それでは、2歳世代について聞いていきたいのですが、総評としては手応えいかがですか。
去年と比べると、牝馬が良いですね。牡馬が悪いというわけではなく、牝馬の方が伸びしろの大きさを感じさせます。牝馬に関しては、桜花賞に出さないといけませんね。それは毎年の目標です。
では、その期待の牝馬から具体的な注目馬を藤田さんからいただきたいです。
パララサルー22 (父モーリス)ですね。今の仕上がり具合からすると、厩舎長から一番には名前が出てこないとは思いますが、伸びしろ含め、クラシックに一番近いかなと感じているのがこの馬ですね。
続けて、牡馬の注目馬も1頭を教えてください。
オリヒメ22 (父オルフェーヴル)が良いと思います。最初はどうなるかなと思っていましたが、動きが変わってきました。
オルフェーヴルは、藤田さんがノーザン時代に管理していた馬ですよね。
オルフェーヴルの仔は芝でもダートでも走りますからね。そういう馬はファンも多いし、見ていて面白いですよね。人も馬も困らせるタイプが好きなので(笑)。
急にマイル路線に行って結果を残したり、初ダートでGT連対したりするガイアフォースも、追分ファームらしい馬だなと思って見ていました。
もちろん狙って作ろうと思っていないんだけど、やっぱり好きなタイプですね。先ほど挙げたオリヒメ22は、規格外な走りをする可能性を秘めていると思います。
あと、うちだけではないと思いますが、ナダル産駒はかなり走ってくると思っていますよ。去年のスワーヴリチャード産駒も、15-15をやるとガラッと変わった。似ていると思います。
今後の追分ファームの躍進が楽しみです。
ここからギアを上げていかないと、と思っています。一昨年、セリフォスやイルーシヴパンサーが出て、年間70勝した時に、「これを継続しなきゃダメだな」と思っていたのに下降してしまった。生き物相手だから絶対はないけど、原因をスタッフが団結して考えていかないと、先がなくなってしまうので、一つ一つ乗り越えていかなければと考えています。来年は厩舎も増える予定なので、楽しみは大きいです。
また、来年以降も出てください! ありがとうございました。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2024-2025(双葉社)の一部を掲載しています。