昨年は皐月賞馬ソールオリエンスや、NHKマイルカップを制したシャンパンカラーを輩出した社台ファーム。3歳世代も、ジャンタルマンタルが朝日杯FSを制するなど、クラシック向けて楽しみな逸材が揃っている。今年も、東礼治郎場長に期待の2歳馬について話を聞いた。
昨年はジャンタルマンタルがJRA賞最優秀2歳牡馬を受賞しました。クラシック戦線も楽しみですね。
常に評価の高い1頭でしたね。このインタビューで名前を出せなかったのは、お父さんのパレスマレスがあまりメジャーではなかったからで・・・。走った今なら"ほら!"と言えるんですけど(笑)。
産駒における芝の初勝利がジャンタルマンタルでしたね。
先日もパーティに出席した際、「初めて持った馬なんですよ」って会員さんにお会いして、こういう人が競馬の世界を極めるんじゃないかと思いましたよ(笑)。こうした馬をサラッと持っちゃうんですから。
社台ファームは獲得賞金も年々上がっていますし、ジャンタルマンタルだけでなく、活躍馬が次々と誕生しています。
いい流れはできてきましたね。当然、2歳も走らせたいんですが、賞金は古馬のレースの方が高いのもあって、長く活躍できる馬を作りたいですね。2歳戦を焦って使うと、最初は良くてもその後につながっていかない。早く行ける馬はどんどん行けばいいのですが、"本当の目標は先なんだよ"という意識が、若いスタッフに浸透してきたと思います。みんな丁寧にやってくれていますね。
今夏には、鈴鹿トレセンも開場する予定ですね。
社台ファームとしては勝負をかけています。今のご時世、資材の確保が難しくなったりして、計画よりは少し遅れてしまったんですけど、未来を見据えた大きな変化です。北海道でも、坂路を新設してから、馬が仕上げやすくなってきているなど、歯車が噛み合い始めているので、さらに上を目指せるんじゃないでしょうか。
では、今年の2歳馬について教えていただきたいのですが、昨年のインタビューではブリックスアンドモルタル産駒の魅力について教えていただきました。
初年度でしたが、もう少し結果が出ても良かったと思っています。気が入りやすく、思った以上に性格が出るのが分かりました。それを2年目にどうするのかって考えた時に、対応できる自信はありますよ。馬の形やバランスはとにかく良いので、大きく飛躍する可能性はまだまだ秘めていると思います。
「サンデーサイレンスが日本に来た時のイメージ」と話されていたのが印象的でした。
動きが軽いし、我が強いというのはサンデーサイレンスとまったく同じ。今でも、その感覚は変わっていません。ただサンデーと違うのは、日本の競馬のレベルが上がりすぎてしまったところ(笑)。1990年代は気性が悪くても、スピードだけで引き離せたんですよね。新馬戦にしても、少頭数ばかりだったのが、今はフルゲートが当たり前でハイレベルなレースをいきなり戦わなくてはいけません。そうなると、枠や展開も重要だし、弱点が致命傷になってしまう。気持ちのコントロールが今後も鍵になっていくと思います。
では2年目の産駒の中で注目馬を教えて下さい。
今年も良いのに付けていますからね。まずワントゥワン22 (牡)。5勝しているお母さんと似ているところがあって、ガッチリしていないけど筋肉が行き届いてふっくらしています。気性が前に出過ぎないように気を付ければ、きっと活躍してくれるはず。同じく距離には限界があるでしょうが、お母さんがフィリーズレビューを勝っているソルヴェイグ22(牡)。現時点では申し分ありません。2頭とも450キロ前後と、ブリックスアンドモルタルの仔は重たくなり過ぎないのが良いところですよね。
馬体は目を引きますね。
あとは、セレクトセールで高額で落札されたブルックデイル22(牡)。乗っている人が思っている以上に時計が出ています。スピード感があって、良い馬ですね。
牝馬なら背中が柔らかいマルセリーナ22と、スタッフの評価が揃って良いスタッフ評価が高いカラライナ22
カラライナ22 。カルティカ22も、みんな「ギアの入り方が凄い!」と言ってくれています。
続いてエピファネイア産駒のお話を聞かせていただこうと思ったのですが、3歳世代ではダノンデサイルが京成杯を勝ちました。
ダノンデサイルは、牧場時代からトップクラスの馬だと思っていたから、重賞を勝ってくれて嬉しいですね。坂路でのスピードが良すぎたので、距離が持つのか不安に思っていたんですけど、それも問題ありませんでしたね。
嬉しい誤算でしたね。
メンバーも強かったですからね。京都2歳Sも負けたけど強かったですから。ああいう競馬を経験すると、先の本番に強くなりますよね。最近は負けないで連勝する馬が脚光を浴びますが、敗戦から得ることは大きいんです。もちろん、ここからは負けてほしくありませんが(笑)。
これで、京成杯は社台ファームが3連覇となりました。去年はソールオリエンスが次戦で皐月賞を制したので、期待が膨らみます。
今年のエピファネイア産駒だとカジノブギ22 (牡)。全兄のジャスティンカフェに引けを取りません。走りが安定して古馬みたいです。お兄さんは気持ちが前向きだったけど、この馬は力みがないぶん、距離を延ばしても良いんじゃないかな。イチオクノホシ22(牡)は、全姉のイフェイオンがフェアリーSを勝ちましたね。そのお姉さんより、現時点では力強い動きを見せています。
それ以外だと、スイッチのオンとオフがしっかりしているアットザシーサイド22(牡)、もう少し体は成長してほしいけど背中の柔らかさがあるサザナミ22(牝)あたりですね。
続いて、今年も頭数が揃っているイスラボニータ産駒はいかがですか。
ドーブネの下になるプレミアステップス22(牡)。重心が低く前肢の掻き込みが強くて、お兄さんに似ています。イスラボニータの良さである操縦性の高さを感じます。おそらく掴まっているだけで、スピードに乗って行ってしまいそうです。コッパ22(牡)は派手さがないけど乗りやすいタイプ。他には、走りが柔らかいサラーシス22(牡)。評価が高い1頭です。
ダノンデサイルの下はいかがですか。
トップデサイル22(牡)はお母さんとお父さんのスピードを受け継いでいますね。評価が高いですよ。この馬が活躍することで、イスラボニータの種牡馬としての価値を上げてもらいたいですね。
シャンパンカラーの下も、イスラボニータ産駒ですね。
メモリアルライフ22(牝)ですね。少しゆっくりめですが、シャンパンカラーもこの時期は名前を出すことはなかったと思います。遅咲きというわけではないですが、一変するタイミングはこれからだと思います。良い意味でお兄さんと似ているから、春を越えて評価が変わってくるのではないでしょうか。
続いて、持ち込み馬について聞かせください。
高額馬だからというわけでなく、グリーンバナナズ22(牝、父Wootton Bassett)は抜群ですね。血統も素晴らしいです。調教に進んだら、また変わるだろうなと思っていたら、本当に一気に格好良くなりました。
そしてオークス馬の仔もいますね。
ヌーヴォレコルト22(牝、父Sottsass)ですね。父が凱旋門賞勝ち、そして母の戦績を考えても、距離の心配がいらないのは心強いですよね。トモがしっかりしていて力強さを感じさせます。
続いてロードカナロア産駒についてお聞かせください。
牡馬で注目しているのがフローレスダンサー22 です。バジオウの弟ですが、単なるスピード馬というわけではなく、バランスが常に崩れないで走れています。普通の馬ならバテてしまうところを、息がすぐに入ってケロっとしているんです。あとダンサーデスティネイション22は、闘争心に長けていて、良い成長曲線を描いていますよ。
ベラジオボンドの全弟ということもあって、否が応でも期待が高まります。
牝馬だと、前向きだけど操作性が良くて、普段は手がかからないダンスファンタジア22が良いですね。
ドゥラメンテ産駒はいかがでしょうか。
今の時期のドゥラメンテ産駒は、あまり目立たないイメージですが、デルマキセキ22(牡)は目立っています。スピードがあり過ぎて、持ったままで坂路を上がってきています。どんな相手と攻め馬をしても、視線を他の馬から奪ってしまうような動きをしているんです。
マスクトディーヴァの半妹もいますね。
マスクオフ22 (牡)は、みんなにオススメされていますよ。POGで指名したほうが良いんじゃないですか(笑)。470キロくらい体があって非常に扱いやすいと評判になっている。走ってほしいですね。
あと、リトルモンスター22(牡)も、これからさらに良くなると思いますが、現時点でスピード力強さもありますよ。
続いて新種牡馬に話を移していきたいと思います。
サートゥルナーリアはノーザンファームさんの評価も高いでしょ!? うちでも期待は大きいですよ。産駒は背中が柔らかいし、乗り手に従順で扱いやすいみたいです。
その中ならゼンノロブロイ肌でも性格が良いブリッジクライム22(牡)。ヤンチャな面があるものの、抜群な動きをしているコンテッサトゥーレ22 (牡)。ワイルドウィンド22(牡)も動きが軽快だから、スピード競馬でも実力を存分に発揮してくれると思います。あとは、牝馬でも扱いやすいラビットラン22(牝)。
お母さんは芝、ダート兼用の個性派でしたね。
お母さんに似ていますよ。芝、ダート両方の女王を狙ってほしいですね。お母さんは我慢が利かないところもあったんですが、子どもには遺伝しなかったようですね。良いバネをしているし楽しみです。
最後にナダル産駒についてもお願いします。
面白い馬ばかり付けていますよ。スアデラ22(牝)は、スタッフの評判が高い1頭。あとレニーズゴットジップ22(牝)は、2月の時点でトレセンに入厩しました。それくらい仕上がりが早かったんです。6月の東京でデビューできるかもしれませんね。ナダルはアメリカで速い時計で走っているから、ダートしかダメってことにはならないと思います。
今年もたくさんの注目馬を紹介していただきありがとうございました!
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2024-2025(双葉社)の一部を掲載しています。