林調教主任に続いて、登場するのは横手裕二調教主任。「現3歳世代は・・・」と、少し話しにくそうにした横手主任だったが、2歳世代に関しては、自信がありそうな様子。厩舎別に期待の若駒について教えてもらった。
「昨年の話はあまり触れないで・・・」と冗談めかして仰っていましたが、現3歳世代を振り返っていただけますか。
結果はあまり良くなかったですね。もともと、全体的に小粒かなと思っていた世代でしたが、その中でも頑張ってくれそうな馬もいたわけですから。決して満足できる結果とは言えませんね。
昨年、グループの中で抜けているとして名前が挙がったのが、ホウオウプロサンゲとフェンダーでした。
どちらも1勝しましたが、そのレベルで満足する素材ではありません。もっと順調に勝ち星を重ねてほしかったというのが本音ではありますが、当然、これからの成長にも期待しています。
やっぱり、イヤリングから来た時に「これは良いな!」と感じさせてくれる馬が、1頭や2頭だけじゃなく、「これも良い、あれも良い」というようになれば、全体の質が上がり、走る馬が出て来るんだと改めて感じました。
この時期は仕上がりの早い馬に目が行きがちだけど、今の完成度が低くても、後からしっかりと底上げができると思っています。
昨年のインタビューでは、現4歳世代(当時3歳)を振り返った際に「グループとして年末まで2勝馬すら出ずに"まずいな"と思っていたところ、ドゥラエレーデやダノンタッチダウンが勝ってくれて帳尻が合った」と話されていましたね。
3歳世代に関しての現状はあまり芳しくない結果ですが、それでもどこかで成績に結びつくと思っていますよ。
インタビュー前に、牝馬であるレガレイラにホープフルSを勝たれたのは、牡馬の調教主任としては悔しい状況だと話されていましたが、詳しくお聞きしてもいいでしょうか。
ホープフルSを獲られたこと以上に、C・ルメール騎手が皐月賞でレガレイラに騎乗することが早々と決まったのが問題だと感じています。
つまりは、レガレイラ以上の牡馬がいないと騎手に言われたのと同じですからね。この現実をしっかり受け止めて、巻き返していきたいと思います。
では、2歳世代について話を進めていきたいのですが、全体的に見ていかがですか。
横手グループだけではなく、全体的に良い印象です。繁殖からイヤリングへと流れが良く、調教の進みが早かった。「去年より強めにやっています」というと、POG本の常套句のようにも聞こえますが、今年はデータ的にもしっかりと強くやっています。
厩舎取材でも、手応えがあるコメントが多く聞かれそうですね。
特に山内厩舎に関しては、良い馬が揃っているのではないでしょうか。
では、その山内厩舎から具体的に注目馬について教えていただけますか。
まずは、インクルードベティ22 (父キタサンブラック)が挙がります。素質の高さを感じる馬が誕生しました。馬っぷりが目立つわけではないのですが、相当な伸びしろを感じさせますよ。
キタサンブラックの良さが、産駒に受け継がれているのかもしれませんね。
イクイノックスも、この時期(3月)は目立つ馬ではなかったんです。乗り味と動きはみんな褒めていたけど、馬体を見ると「3歳の秋に良くなればいいね」くらいの感じでしたから。それが東スポ杯2歳Sを勝って、クラシックでも皐月賞、ダービーで2着。そこからあの大活躍ですから、キタサンブラックの成長力は凄いものがありますね。インクルードベティ22も大物感があり、楽しみな1頭ですよ。
かなりの期待馬ですね。
あとは、サロニカ22 (父エピファネイア)、ファディラー22(父ミッキーアイル)、タッチングスピーチ22(父ルーラーシップ)。早く移動できそうなのが、チェリーコレクト22(父レイデオロ)ですね。
レイデオロ産駒は、少しゆっくりめなイメージがあるので、早くから使えるのは大きなアドバンテージですね。
早く仕上がっていますし、POG向きだと思います。Euthnia22(父BluePoint)は、距離は短めになりそうですが、良さそうですよ。
山内厩舎といえば、アーモンドアイ22(父エピファネイア)に関しても聞かないわけにはいきません。
これだけの馬ですから、もっと欲が出てしまうといういうのが本音ですね。
ただ、来た時から評価は上がっていますし、良い成長曲線は描いています。当然、書いてもらって良いレベルですよ。
続いて野崎厩舎について、お願いします。
ラルケット22(父サートゥルナーリア)は、軽いというだけでなく、動きの質が良い。体つきは立派なんですが、モサモサしておらず、平均点が高い1頭です。あとは、ヤングスター22(父キズナ)にも期待しています。それと、ここに来てグンと良くなってきたのがノームコア22 (父エピファネイア)。
最初は、力もないし肉もついていないのであまり評価は高くなかったんだけど、食べたら食べただけ身になるし、動かしたら動くのでガラッと見る目が変わりました。秋にデビューできればと思っていた馬が、3月に移動の話が出るくらいの良化ぶり。伸びしろでは、一番と言ってもいいかもしれませんね。
今年もありがとうございました!
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2024-2025(双葉社)の一部を掲載しています。