今年もダーレー・キャッスルパークの育成馬は垂涎ものの世界的良血馬ぞろい。まだ雪の残る春先だというのに馬体もピカピカで何か特別な秘密が・・・?
レーシングオフィスアドミニストレーターの増田悠弥氏に尋ねると「調教の負荷を上げるタイミングを早めて、モサモサの馬は少なくなりました。基礎代謝を上げて内臓面を整え、冬毛の伸びない体づくりと、普段からの手入れをしっかり行っている成果ですかね。特に牡馬は例年より良い仕上がりになってると感じます」
見映えのする馬体の秘密はスタッフ一人一人の意識の高さにあったのだ。
そんな増田氏が、個人的にお気に入りだというのが、栗毛の馬体が眩しいセイントヘレナ21 (牡、父パイロ)だ。
「母に似た伸びのある馬体でパイロっぽくはありませんが、前進気勢が強く速い調教でもへこたれない体力がありますね。持ったまま、楽々と坂路を上がってくる姿はワクワクしますし、脚長の体型で気性も手の内に入っているので2000mもこなせそう。来年施行される3歳ダート三冠レースの初代チャンピオンを目指してほしいです」と、声を弾ませる。
半兄に京阪杯勝ち馬のライトオンキューを持つグレイトタイミング21(牡、父ロードカナロア)は、今年最初に北海道を離れる早期移動組。
「まだまだ成長の余地がありそうな脚長の馬体で、13まで進めても楽に登坂できるほど体力は十分。とても賢い馬で抑えは利きますし、加速した時の反応の良さ、俊敏さはさすがと言ったところですね。スピード能力は間違いないですが、能力だけで動けてしまう馬なので、デビュー時期のジャッジは中内田調教師にお任せしたいと思います」
英国Godolphin産のエンシェントアート21(牡、父Dubawi)は近親にディーマジェスティ、タワーオブロンドンがいる日本の芝に実績のある血統だ。
「種牡馬の良さを引き出す母だけに、見た目は小さなドバウィといった印象。成長を待っている段階で、調教進度としてはキャンターでじっくり乗り込んでいるところです。ポテンシャルは高そうで、マイル前後が主戦場になりそうですね」
牝馬からはクラシック候補のティップトップ21(牝、父エピファネイア)。半姉バースクライは新馬勝ち、紅梅ステークス2着。
「ここにきて体がボリュームアップしてきました。走る姿勢が変わったことで心身のバランスを整えるために一旦ペースを落としています。熱くなりやすい気性なのであまり火をつけすぎないように留意しながら、秋デビューからクラシックを目指したいですね」
デビューしたきょうだいすべてがJRAで勝ち上がっている堅実なファミリーだけに、夢は広がる。
「本州へ移動した後の状態など、まだわからないことも多いので調教師の方々からお話を聞かせていただいています」
と、育成する上で求められているものを常にアップデートしているという。ブラッシュアップを重ねるダーレー・キャッスルパークの育成馬たちの活躍が楽しみだ。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2023-2024(双葉社)の一部を掲載しています。