2年前から坂路の敷材やイヤリング部門と連携しての飼料の変更に、昼夜放牧とさまざまな改革を行ってきた、日高の名門・下河辺牧場。
加えて今年は坂路の出発地点を150m延長し、傾斜も加えて育成馬により強い負荷を掛けられるように改築された。現3歳世代もドルチェモアやシンリョクカを筆頭に67頭を育成。21頭で延べ27勝。デビューした57頭のうち47頭は掲示板内に好走(数字は取材時点)。
好調ぶりは馬のみならず、人材難に業界が喘ぐこの時期にもスタッフを増員したという。この2年の結果をさらに積み上げるべく育成方針もブラッシュアップ。今年も期待馬について、谷口勇介調教主任に伺った。
マウレア21 (牡、父レイデオロ)は、クラシックを賑わせた母の初年度産駒。
「育成に来た当時から良い馬でしたが、馴致から一貫して順調で年末から坂路15-15のスピード調教も順調に消化しています。体を大きく使って手先の返しも良いので跳びが美しいですね。乗り役は昨年、ドルチェモアに乗っていたんですが、この馬も引けを取らないと大絶賛。競馬向きの気の強さもあり、秋デビューから芝中距離以上の大舞台を目指したいですね」
同じく重賞戦線を賑わせた母を持つサトノフォルテ(牡、父ロードカナロア、母シュンドルボン)も、クラシックへ向けて期待が大きい。
「年明けから坂路15-15を楽々と消化できています。体を上手に使ったきれいなフォームで、坂路でもしなやかに走るので乗り味が抜群です。最近は適度に気も入ってきましたが、走法から距離はこなせるタイプなので、秋のデビューから大舞台を目指したいです」
産駒が続々とクラシック候補となっているキタサンブラック産駒のスカイハイ(牡、母タイキオードリー)の評価も高い。
「こちらも年明けから15-15を順調にやれています。重心が低く、体の伸びる雄大な走りは父を感じさせますし、前向きな気性も競馬向き。もう少し幅が出れば文句なしですね。父を手掛けた清水久詞師も1歳時からの良化を褒めて下さいました。このまま順調にクラシックを目指せれば」
牝馬では、マックスセレナーデ(父ドゥラメンテ、母シェイクズセレナーデ)の紹介に声が弾む。半兄はJDD勝ち馬ノットゥルノ。
「1月から坂路で15-15を順調に消化しています。大型馬の割に仕上がりが早く、見た目のイメージ以上に手先が軽くて坂路でも伸びやかな走りをします。ノットゥルノの下ですが、その上のハーツラプソディに似た芝向きの乗り味でマイル〜中距離が向きそうです」
ハミング(牝、父ブリックスアンドモルタル、母ブリッツフィナ―レ)は、菊花賞馬キセキの半妹。
「体全体が弾けるような凄いバネを感じさせる走りをします。春になって実が詰まり、馬体にも芯が通ってきました。兄姉とタイプが異なり、気持ちが強く前向きです」順調なら夏前に本州への移動も視野に入るというから兄より早い時期からの活躍にも期待が懸かる。
昨年以上の結果があっても少しも驚かないラインナップだ。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2023-2024(双葉社)の一部を掲載しています。