本誌恒例となった、追分ファーム・リリーバレーの厩舎長によるリレーインタビュー。
2022年はセリフォスでマイルCSを制覇。今年に入り、京都金杯をイルーシヴパンサーが勝利するなど、上昇気流に乗っているイメージは今なお続いている。
POG的に無視できない存在となった追分ファーム・リリーバレー。果たして今年は、どんな馬が飛び出すのだろうか。
今年は、牡馬の厩舎からお聞きします。まずはT-4厩舎の平沼敏幸厩舎長です。
最初はシャパリュ (父スワーヴリチャード、母ボンバルリーナ)。乗り味がいいですし、スピードもあるタイプだと思います。厩舎全体の中でも仕上がりが早いグループにいますよ。
毎年、平沼厩舎長は新種牡馬シリーズとして、1頭教えていただいています。
去年は何でしたっけ?
昨年は、「(昨年新種牡馬の)サトノクラウン産駒がいるけど、山本昌さんのほうに出したから・・・」という理由で教えてくれなかったんですよ(笑)。
ちゃんと勝ちましたよ。このシリーズはずっと勝っているでしょ?
はい。うちでは取り上げられていませんけどね(笑)。一昨年のヒロシクン(父ドレフォン)も勝ち上がりました。
今年は、このシャパリュがいいと思いますよ。うちの厩舎にスワーヴリチャードの仔が2頭入っているんですが、どちらもいいです。スワーヴ産駒は、けっこう走ってくると思っていますよ。
ちなみに、そのもう1頭も教えていただけませんか。
全部の本に同じ名前が載っていても面白くないじゃないですか? この2頭はどちらもいい馬です。
カルマンフィルター(母カルマート)ですよね。
・・・。その他に、ディープインアスク21(父ロードカナロア)も、スピード能力は高いものを持っています。カナロアの仔はムキムキになりがちですが、現状450キロ弱ほどと、重たくないのはいいこと。全兄のファンタジスト(小倉2歳S&京王杯2歳S勝利)も早い時期から活躍しているので、2歳重賞も狙えると思います。
どちらかというと距離は短めですか。
マイルは持ってくれると思います。4月の移動を予定していますよ。
それでは、続いての馬を教えてください。
ヴェルヴ (父ドゥラメンテ、母ヨナグッチ)もいいですよ。5月と遅生まれですが、そのわりに進みも早いですし、動きもいいです。
あまり強気なことを言わない平沼さんにしては、自信がありそうですね(笑)。
この血統の牡馬は、4世代僕がやったんですが、みんなスピードが少し足りなかったんです。だけど今年はその部分が補えてると思いますよ。
「ヨナグッチ産駒からついに大物が!」と書いても大丈夫ですか。
大丈夫です。お母さんがアメリカのGIで3着しているように、もともと期待されていた血統なんです。
今年は一層、期待が高まりますね。
入場時は、現3歳世代のほうがレベルが高いかなと思ったのですが、調教を重ねていくと、2歳世代も一気に良くなりました。今年はみんなコンディションがいいですよ。
ありがとうございました。
続いてT-3厩舎の吾田翼厩舎長です。
今回、厩舎長となり初めて取材を受けます。私なりの視点で皆さまに情報をお伝えできればと思います。
ではさっそく注目馬をお願いします。
メリオーレム(父シュヴァルグラン、母メリオーラ)は順調に進んでいます。パワータイプの馬体をしているのですが、乗ったら気性が前向きなこともあってスピードタイプに感じます。
シュヴァルグラン産駒ということでイメージがつかみにくい部分があります。
どちらかというとシュヴァルグランよりは、お母さんが強く出ている気がします。姉2頭も短距離で結果を残しているし、本馬も距離はマイルくらいかなと感じています。
半姉のメリトクラシー、メリオルヴィータと2世代続けて、早くから勝ち星を挙げました。
今年も仕上がりが早いですね。上は牝馬でしたけど、牡馬でもこの血統を走らせたいですね。
次はどの馬を教えていただけるでしょうか。
クセノポン (父ハーツクライ、母アレイヴィングビューティ)もメリオーレム同様に、一番進んでいる組の1頭です。普段乗っているライダーに聞くと、走りが柔らかいとのこと。水準以上のスピードを持ってはいるのですが、抜群にキレるかと言われたら、そういうタイプではないと思います。最初は芝路線でしょうが、最終的にはダートでもいいかなと思っています。ダート替わりで化けるハーツクライ産駒も目立つので、そのイメージはありますね。
そういう意味では、現状のセールスポイントはスタミナ面でしょうか。
そうですね。持続力のある脚というのが正しいのかもしれません。ハーツクライ産駒なので、本当に変わってくるのはこれからだと思います。
今後の成長でさらに良くなりそうですね。2歳世代に関しての手応えはいかがでしょうか。
3歳世代も3月の時点では、みんな順調だったのですが、そこからなかなか噛み合わなかったですね。調教マネージャーの藤田さんからも、1〜3月が大事と言われているので、ここで崩れないように頑張るだけです。
他に厩舎期待の馬がいれば教えてください。
ウールデュボヌール (父キタサンブラック、母サンクボヌール)は、乗っていて良さを感じる1頭です。むしろ、乗りやすいからこそ、馬が楽をして走っている部分もあるので、今は人間がしっかり乗ることを心がけています。これはクラシックに乗ってほしい馬。須貝先生なので、北海道デビューになるかもしれませんが、いずれにせよ使い出しは早いですよ。
ありがとうございました。
続いて牝馬の厩舎に移ります。まずはT-2厩舎から、明石圭介厩舎長お願いします。
カントゥータ(父リアルスティール、母レディシャツィ)は、ここまで頓挫なく、順調に来ていますね。1月生まれで成長が早いということもあり、完成度が周りの馬とは違って見えます。スピードは水準以上ありますし、とにかく適応能力が高いので、トレセンに行っても大丈夫でしょうし、競馬場に行っても高いパフォーマンスを見せてくれると期待しています。
2歳戦から期待ですね。
しっかり体を使って走れているので、活躍してくれると思います。
現3歳世代も早期から勝ち上がった馬が数多くいましたね。
数字も上がっていますし、調教師の先生からのお話でも、以前とは変わってきたと感じることが多いので、このまま上を目指していきたいと思います。
2歳世代は、厩舎全体で見るといかがでしょうか。
特別やることが変わったわけではないのですが、全体的にレベルアップしているイメージです。底上げはできたと感じています。
粒ぞろいなんですね。
その中で、エグザルテーション (父ハービンジャー、母ヴィクトリーマーチ)は全体的に平均点が高いタイプです。後肢の使い方が良くなれば、さらに走りが良くなるとは思いますが、現状でも満足した動きを見せています。
上も走る血統ですよね。
2世代上のビーオンザマーチ(現3勝クラス)は、うちの厩舎にいました。似ているところはあるのですが、お姉ちゃんのほうが馬体にボリュームありましたね。本馬は、素直な気性なので、デビューする頃には、体を使っていいスピードで走れるようになっていると思います。
その他にオススメの馬はいますか。
プルーヴンウィナー(父キズナ、母ブラインドラック)は、馬格があり、入場時は体を持て余しているかなと思ったのですが、年明けくらいから、体力が追いついてきました。一番進んでいる組の中でも上位の走りを見せていますし、存在感をしっかり示せていますね。
ありがとうございました。
最後にT-1厩舎の加地洋太厩舎長、よろしくお願いします。
まずは、クォーツァイト (父ダイワメジャー、母ハニージェイド)ですね。お母さんはオープンまでいってくれた短距離の追い込み馬でした。この仔もスピードがあればと思っていたのですが、ちゃんと受け継いでくれましたね。気の入り方がダイワメジャーっぽいのですが、しっかり我慢はできています。なんとかマイルまでは持ってほしいところですね。
スピードに期待ですね。
続いてがトラウムビルト (父ミッキーアイル、母トラウム)。上は線が細くて400キロくらいしかなかったのですが、本馬は450キロあってひと安心。操作性が高いので、芯が入ってくると楽しみです。お母さんはうちの厩舎にはいませんでしたが、スピードがあって印象に残っていますよ。
昨年は、掲載した2頭(メリオルヴィータ、ワイアウ)がともに勝ち上がりました。
予定外に、どちらもダートでしたけどね(笑)。メリオルヴィータはまず1つ勝たないと≠ニいうことで、私も夏に北海道に戻ってきた際に、ダートでも≠ニ助言したんです。ただ、まだまだ芝でも戦っていけると思いますよ。
今年も期待の馬が揃っていますね。
牧場全体で見ると、実績的にはセリフォスが抜けていますが、各厩舎からオープン馬が出てきていますし、楽しみな馬が増えてきました。ここから、クラシックで戦える馬を出していきたいですね。
その他に加地厩舎長が手応えを感じている馬はいますか。
焦らないように進めている、フローラルセント(父キズナ、母サマーローズ)は、この産駒らしく筋肉質でデキがいいですね。あと、ヴァリアービレ(父モーリス、母スペルバインド)も順調です。ただ・・・。
どうされました?
あまり大きく取り上げられるのは苦手なので、私のオススメはT-2厩舎のプルーヴンウィナーにしておいてください(笑)。この馬は本当に走ると思いますよ。
厩舎長の皆さん、ありがとうございました。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2023-2024(双葉社)の一部を掲載しています。