社台スタリオンステーション
徳武英介場長インタビュー

レイデオロ産駒は完成した姿が今から楽しみ

ディープインパクト、キングカメハメハ、ハーツクライ・・・。競馬の歴史に名を残した日本を代表する大種牡馬がこの世を去り、POG界は群雄割拠の戦国時代を迎えている。

これからは、個の強さ≠ェ重視され、どの産駒からでも活躍馬が出てくる可能性が非常に高く、より戦略的に馬を見ていかなければならない。

そこで、世界に通用する馬づくりを目標に、種牡馬事業全般を行っている「社台スタリオンステーション」(以下社台SS)の徳武英介場長に、新種牡馬から2世代目、3世代目を送り出す期待のスタリオンについて、話を伺った。

社台SSの世界に通用する馬づくり≠ニいう理念通りに、イクイノックスがドバイシーマクラシックを圧勝し、世界に強さを見せつけました。

徳武場長

持ったままコースレコードでしたからね。これなら、世界中の2400mでいけちゃうのでは・・・≠ニ欲が出てしまうほどの強さでしたね。

イクイノックスはキタサンブラックの初年度産駒。徳武さんは、当初からキタサンブラックの種牡馬としての活躍を信じて疑わなかったそうですね。

徳武場長

そうなんです、キタサンブラック推し≠フ一人でした。というのも、身体的な特徴が馬格こそ違いますが、サンデーサイレンスに一番似ていたんです。並外れた身体能力や体幹の強さ、道悪でもまったくブレずに走る能力などは、持って生まれたものですね。サンデーサイレンス系の主流になると思っています。

イクイノックスのように、産駒は距離、コースなど対応力が高いように思われます。

徳武場長

スピードがある長距離ランナーのようですよね。マラソン選手が100mを速く走れちゃうような。それと厳しいレースをしても、メンタル的にダメージを負わないんです。これもサンデーの特徴を持っていると言えますね。

今後はキタサンブラックの時代になるかもしれませんね。

徳武場長

ただ、他にもいい種牡馬はたくさんいますからね。3冠馬コントレイルの産駒も早ければ2025年にデビューします。キタサンブラックとコントレイルの仔たちが、ガチンコ勝負する日も訪れるでしょうね。

キタサンブラックと同年に種牡馬デビューを果たしたドレフォンも、いきなり皐月賞馬・ジオグリフを輩出しました。

徳武場長

ドレフォンは、まるで標本みたいに、変なところがまったくない馬体なんです。血統的にいろいろな馬と合わせやすいんですが、基本的にはスピードを生かすべきなんでしょう。ジオグリフが走ったために、可能性が広がりすぎた印象ですね。それくらい、能力が高くて欲が出てしまいましたね。

2年目となるサトノダイヤモンド、サトノクラウンの飛躍も期待されています

徳武場長

サトノダイヤモンドは、3000mで一番強かったように、産駒も忙しい競馬には向いていないのかもしれませんね。これからスタミナ重視のレースで台頭してくると思いますよ。
一方のサトノクラウンは、ヨーロッパ血統ながら皐月賞で1番人気に支持されるなど、早い時期から活躍していました。適性の幅も広く、気が付けば種牡馬としての獲得賞金額の上位にいるタイプかもしれませんね。

それでは新種牡馬についてお聞きしたいと思います。レイデオロが注目ですね。

徳武場長

デビュー前に走るか走らないかの一番の決め手は、見た目になると思います。レイデオロはシンボリクリスエスの肌に父親がキングカメハメハという血統背景からも、ムキムキで2歳から走りそうな馬が出てくると思われていた。それが、しなやかで軽い造りの仔が多く出た印象です。

その要因はどこにあるのでしょうか。

徳武場長

レイデオロの曽祖母がウインドインハーヘア。この馬も、小柄な牝馬だったので、レイデオロ産駒は、このウインドインハーヘアの特徴がよく出ているのでしょう。スピードも十分兼ね備えていますが、2000m以上の距離で、他馬との差が現れそうですね。
そうした点からも2歳戦からバリバリ走るというよりは、ダービーから3歳秋、さらに古馬になってから、大きいタイトルを獲るというイメージです。完成した姿を見るのが、今から楽しみですね。

そのライバルとして、スワーヴリチャードが挙げられます。

徳武場長

これまでで一番、ハーツクライ寄りかなと思っています。調教を進めるにつれ、産駒の評価が、ものすごく高くなっているんです。そのおかげか、一気に忙しくなりましたよ(笑)。
スワーヴ産駒の最大の特徴として挙げられるのが、体型が崩れないところ。生まれてから、そのままずっと、いい形で成長してくれるんです。

そして未知の可能性を秘めているのが、ブリックスアンドモルタルです。

徳武場長

現役時の連戦連勝した姿は、サンデーサイレンスを彷彿とさせますね。現役時代は、並んだら絶対に勝つケンカ走法≠ナしたが、その闘争心とバネが産駒にも受け継がれています。とはいえ、うるさい≠ニいうよりは、動きが速すぎる≠ニいう印象です。ゲートを出て、そのままちぎる競馬をしてくれそうですね。

どの新種牡馬にも注目ですね。最後に、忘れちゃダメだよという種牡馬がいたら教えてください。

徳武場長

まずはキズナですね。ディープやハーツなどトップスタリオンがいなくなり、どの馬を付けるか迷った世代でもあるんです。その分、新種牡馬にも交配されていますが、特にキズナは最強世代≠ニも言われるほどそろっている。母の質が良くなって、さらなる超大物が誕生するか注目ですね。

確かにキズナ産駒に評判馬がそろっていますね。

徳武場長

それともう1頭、忘れてはいけないのがニューイヤーズデイ。これが突き抜ける可能性も十分ありますよ。この馬自身、ブリーダーズカップ・ジュヴェナイルを勝ち、種牡馬としても幻のケンタッキーダービー馬・マキシマムセキュリティ(19年のケンタッキーダービーで1着入線も進路妨害で17着に降着)を輩出しています。世界的に見てもトップレベルの馬。POGで勝つためにも、この2頭を軽視してはいけませんよ。

POGに関してもありがとうございます。