ノーザンファーム空港
川崎洋史場長インタビュー

レイデオロ産駒は走ってくれると思います

2022年はジオグリフで皐月賞。そしてドウデュースで日本ダービーを制し、牡馬クラシックの中心にいたノーザンファーム空港。現3歳世代も、リバティアイランドという牝馬の大将格を輩出するなど、勢いはとどまるどころか、さらに増すばかりだ。

今年も昨年に続き、川崎洋史場長に期待の2歳馬について語っていただいた。

今年もよろしくお願いします。ん、それは・・・!?

川崎場長

昨年、取り上げた馬をまとめてきました。

わざわざありがとうございます! 挙げていただいた12頭のうち、9頭が勝ち上がっていますね。

川崎場長

でも勝つだけじゃダメなんでしょ? 2つ勝ってくれた馬があまりいなかったのは残念ですね。

リバティアイランドがいるじゃないですか。まずは良かったところから、話を進めていきましょう。

川崎場長

いい時期でデビューもできましたし、順調にレースに向かうことができましたからね。2戦目は負けたけど、内容は良かったですから、ガッカリすることは全然なかったです。このまま順調にクラシックを走ってもらいたいなと思っています。

前号を読み返すと、リバティアイランドは6月デビューが目標と書いてありますね。

川崎場長

計画通りにいくことが、良い成績を収める第一条件ですからね。それが難しくて簡単にはいかないということなのですが・・・。

その他に名前を出していただいた、ナヴォーナやミッキーキャンバスも、現時点では1勝馬とはいえ、ともに年明けのデビュー戦では強い勝ちっぷりを見せてくれました。

川崎場長

夏から行ける馬はどんどん行くし、早めに勝ったほうが有利にクラシックを進めますが、成長に合わせることも大事ですからね。ただ、去年は(2歳の)1〜3月までの間、少し調教を控えた印象があって、それがオープンまで進む牡馬の数が少なかった理由の一つなのかと。その点、今年は適応できた馬が多く、成果が馬体にも現れていますよ。

では、今年の2歳世代に関しては「自信あり!」ということですね。

川崎場長

順調な世代ですよ。でも、あまり自信ありげに書かないでください。本を読み返して、こんなこと言っていたんだ・・・≠ニ反省してしまうので(笑)。

それだけ大きなプレッシャーの中で戦っているということですよね。このインタビューがさらなる重圧を与えてしまっていたら、申し訳ありません。

川崎場長

区切りをつけて振り返る意味で、マスコミの存在は大きいですし、僕は必要だと思いますよ。競馬の産業の構図を考えると、マスコミの役割はかなり大きいですから。
最近、ノーザンファームでも若い厩舎長が増えてきて、取材を受けることで注目されるという責任感も出るだろうし、やりがいも感じるのではないでしょうか。

そう言っていただけて、ありがたいです。今日も、取材中にクラブの会員さんが来られていました。

川崎場長

こうした取材と違って、会員さんは当然、出資している馬への気持ちが強いので、1頭の馬にフォーカスして徹底して聞いてこられますよね。「どのレースでデビューするか」というより、性格や仕草とかについての質問が多いかもしれません。人に伝えることで、気がつくこともあるので、会員さんや馬主さんとのコミュニケーションも大事にしています。

それでは2歳馬について話を進めていきたいのですが、新種牡馬では、どの馬に注目していますか。

川崎場長

ノーザンファーム空港では、しっかり走ってほしいという期待を込めて、レイデオロの名前を挙げたいですね。もちろん最初から期待値が高く、いい馬に付けているので走ってきてくれると思います。

産駒の特徴はどんな感じでしょうか。

川崎場長

レイデオロとは違って、脚がスラッとした馬が多いですね。馬体を見ると、中距離以上に適性がありそうですね。

レイデオロは、母ラドラーダの2番仔でダービーを勝利。毎年POGでは、ラドラーダの仔が人気になる時代が続いています。

川崎場長

気持ちが繊細なところがあるので、うまくかみ合えば活躍する傾向にありますね。イヤリング時代からいい成長をしている馬が多いし、その部分は、レイデオロの仔にも受け継がれていますよ。
個体としていいのは、ラルケット21 (牡)とリンフォルツァンド21(牡)ですね。いい意味で軽さがあるからスピードがある。早い時期から行ける馬もいますが、早熟タイプに分類される馬はいないと思います。

ブリックスアンドモルタル産駒で期待している馬はいますか。

川崎場長

当然、いいものを持ってますが、繊細な面があるので、成長を見ながらと思っています。その中でもレッドラヴィータ21(牡)は早くから動けているので期待しています。
あと、そこまで距離は持たないと思いますが、ニューイヤーズデイ産駒は、クセがなく調教しやすい馬が多いんです。きっと活躍してくると思います。

ここからは王道種牡馬について教えてください、まずはリバティアイランドを輩出したドゥラメンテ産駒はいかがでしょうか。

川崎場長

牡馬なら、フォースタークルック21アエロリット21。前者は状態がすごくいいので、4月には移動できます。後者は、まだ幼さを残していますが、そのぶん、奥行きを感じさせますね。

お母さんは現役時代も快速馬として人気がありましたし、初仔でも楽しみですね。続いて、モーリス産駒について教えてください。

川崎場長

今年、全体でも最初に名前を出したかったのがモシーン21 (牡)。とにかく順調で6月を狙っています。あとラクアミ21(牝)も好馬体で、活躍できると思っています。

モーリス産駒の走る馬というのは、立ち写真でもわかりやすいのでしょうか。

川崎場長

そうですね。やっぱり筋肉量が多く見栄えのする馬のほうが、結果がついてきますね。胸周りがしっかりしていて、トップラインを含めて筋肉量があるのが理想。そこが走る馬を見極めるポイントでしょうか。

昨年のエリザベス女王杯を勝った、ジェラルディーナの全妹がいますね。

川崎場長

ジェンティルドンナ21ですね。これも先々かなり良くなってくると思いますよ。待って良くなる血統ですが、現時点では、兄姉と比較しても、一番いいのでは、という感触があります。ジェンティルドンナの仔はファンの方もご存知のように、筋肉がバーンと出ない華奢な馬が多かったんです。

そのあたりを、モーリスの筋肉量の多さで補えたという感じでしょうか。

川崎場長

そうですね。お姉ちゃんは古馬にかけてしっかりしたけど、本馬はもう少し早く成長していきそうです。デビューは秋になると思いますが、期待値は高いですよ。

ロードカナロア産駒はいかがでしょうか。

川崎場長

やはり今年もヤンキーローズ21 (牡)でしょう。先ほどお話ししたように、お姉ちゃんは優等生だったのですが、本馬は少し幼さが残っているイメージ。そのぶん、ポテンシャルはこっちのほうが高いかも、と思わせてくれています。お父さんが違うので、リバティアイランドのように6月デビューとはいかないけど、秋の早い時期には使えると思います。

続いてエピファネイア産駒ですが、今年も良さそうな馬が多いですね。

川崎場長

牝馬にいい馬が多いのですが、その中でもトップクラスの1頭と言えるのが、サンブルエミューズ21 (牝)ですね。育成するD-3厩舎は、ノーザンファーム空港の中で勝ち上がり率リーディング首位です。

厩舎長の林さんは、控えめなタイプの方ですよね。

川崎場長

それが彼の良さ(笑)。この馬は、仔馬のときから完成度が高く、誰が見てもいい馬だと感じますよ。
他に牝馬だと、ブルークランズ21リビアーモ21ラシンティランテ21。牡馬だとアウェイク21がオススメですね。

ハーツクライ産駒の
爆発も十分ある!

その他の産駒だと、どの順番でいきましょうか。

川崎場長

注目はラストクロップになるハーツクライじゃないでしょうか。

昨年は、ディープインパクト産駒のラストクロップから、新馬戦を勝ち、きさらぎ賞2着に好走したオープンファイアが出ましたね。

川崎場長

POG的に、種牡馬は年齢を重ねると評価は下がると思うのですが、いい種牡馬というのは最後の年でもしっかり走る仔を出してきますよ。扱っている側からすると、お父さんが高齢だからと意識することはありません。どうしても、キタサンブラックやキズナなど新勢力に目が行きがちですが、ここで「ハーツクライ産駒の爆発」というドラマがあると思っています。

昨年も、ルーラーシップ産駒が巻き返して話題になりました。

川崎場長

そうなんです。一度下がったかなと思っても、いい種牡馬はしっかり巻き返してくる。
ハーツクライ産駒のオススメはトータルヒート21(牡)、ラヴズオンリーミー21(牡)、アルアリングスター21 (牝)の3頭。名前が挙がったルーラーシップ産駒だと、コルコバード21(牡)、スピードリッパー21(牡)ですね。

あと、名前を書いといたほうがいいという馬がいれば、教えてください。

川崎場長

初年度産駒がゆっくりめだったので、評価はされにくいと思うのですが、サトノダイヤモンド産駒には注目していてほしいです。完成するのが遅めなので目立たないのですが、現3歳世代も年が明けてからエンジンがかかってきましたし、まだまだ大物を輩出する気配はしています。

今回の世代の注目馬はどれでしょうか。

川崎場長

キューティゴールド21 (牡)が筆頭ですね。半姉には、秋華賞、ジャパンカップを勝ったショウナンパンドラがいます。その他には、レディイヴァンカ21(牡)、ペルヴィアンリリー21(牝)も良いです。

サトノダイヤモンドも巻き返してきそうですね。

川崎場長

それと、キズナ産駒からティファニーズオナー21(牡)。血統的にもいいですし、スピードもあります。2歳戦から勝負になる手応えを感じていますので、暮れの大一番に出てきてほしいタイプですね。
最後に、No Nay Never産駒を2頭紹介させてください。Elysea's World21(牡)とCan't Buy Me Love21 (牝)。この血統はヨーロッパでの評価が高いですし、2歳戦から動く馬が多い。POG的にも、楽しみが大きいと思います。

今年もありがとうございました!