「入厩してすぐに強めの調教をできるように整えることはもちろん、馬自身にオンとオフの場所を教えるのも我々の仕事。そのために2歳の早い時期から、トレセンと育成調教場の出入りを経験させています」
取締役ディレクターの齋藤慎氏は、大山ヒルズの理念やノウハウを語った。
「今年は例年より1か月ほど早くスピード調教を開始して、ここ2年と比べて平均5〜6本は多く速い時計を出せています」
コントレイルを筆頭に、数多くの重賞ウィナーが出た1期生(現5歳世代)で名を轟かせたイヤリング部門・ノースヒルズ清畠との連携による効果が大きいという。
今年の2歳は若駒の大舞台へと捲土重来を期す世代、その精鋭たちを紹介しよう。
インタクト (牡、父ハーツクライ、母ロードクロサイト)は、コントレイルの半弟。
「父が替わって四肢の長い美しいシルエットの体つき。いかにも中長距離向きで馬っぷりは兄たちと比べても一番です」と始まり、「坂路では騎乗者の体感以上に速い時計が出てしまいます」とのこと。兄と同様に秋口のデビューから王道路線を目指す。
Follow a Dream20(牡、父Frankel)は、
「父の産駒らしい気の強さが良いスピードに繋がっており、欧州血統にありがちな重たさがない馬。まったく無理をせず乗り込んできた中で、坂路では持ったままでも3ハロン40秒を切る時計が出るほどです」
6月デビューの目標だという。
Blanc Bonheur20(牝、父Frankel)は短距離重賞2勝を挙げたブランボヌールの初仔。
「牝馬の中では最もスピードがあり、上質な筋肉も適度な量。滞空時間の長い伸びやかで美しいキャンターをします」
初仔から素晴らしいデキで、2番仔3番仔も楽しみが大きいと言葉は弾む。
その近親であるエメイヴェイモン(牝、父ハーツクライ、母ルシュクル)。
「この母の仔らしいシルエットですが兄姉と比べても柔らかいです。体高があって従順なので、短距離はもちろん、距離の融通もきくと思います」
お馴染みの血統では、ベルカント・イベリスら2頭の複数重賞勝ち馬を姉に持つサルヴァトーレ(牡、父キズナ、母セレブラール)
「母譲りのスピード馬で、長所が姉たちと似ています。この血統らしく夏デビューになるでしょう」
ラモラック(牡、父ラニ、母ヴァイセフラウ)の出来栄えからか齋藤氏は、「本当にラニを去勢しなくて良かったですよ」と呟いた。初年度からオープン馬を輩出し、芝でも勝ち上がったラニ産駒から、また意外性のある大物候補か。
パラシュラーマ(牡、父トランセンド、母クライミングローズ)は
「軽いキャンターで芝向きのスピードがあるので6月デビューも視野に入っています」と話す。
Amour Briller20(牝、父Dubawi)は、
「坂路で促したらどこまでも伸びていくようなタイプで止めるのに苦労するほど」
来春は再び、水色地に赤十字襷の勝負服が大舞台を賑わすことだろう。
本コンテンツは、黄色のPOG本 「POGの王道」2022-2023(双葉社)の一部を掲載しています。