ビッグレッドファーム
牧場現地リポート

今年も6月から攻勢をかける!

今年は、雪害と嘆かれるほど雪の多かった北海道日高地区。そんな中でもビッグレッドファーム育成馬たちは元気いっぱい!

昨年紹介してくれた育成馬の中から、オンリーオピニオンが札幌2歳ステークス4着、デイジー賞3着と早い時期から奮闘。コムストックロードは6月デビューから2戦目で勝ち上がり、つわぶき賞を優勝。ユーバーレーベンの半弟マイネルトルファンが新馬勝ちと、期待馬が続々名乗りを上げている。
「今年は去年よりも早くトレッドミル馴致を始め、雪に悩まされたのは雪山に物見をしたり屋根から落ちてくる雪にビックリしたりする程度で、運動量も仕上がり具合も変わりません」
と胸を張るビッグレッドファーム真歌の九鬼勝己場長に今年の推し馬を尋ねた。

牡馬で一番の期待馬だというのがコスモサガルマータ (牡、父ヴィクトワールピサ、母エーソングフォー)。品があると絶賛。
「馬格はしっかり、腹はすっきり、回転が早く大きいストライドは芝向きの動きで今のところ言うことなし! 折り合いに関しても適度な気合い乗りで騎乗者の指示をしっかり聞いてくれる。個人的にはクラシック候補です」

今回のラインナップで多く紹介されている2大種牡馬が、自社スタリオン繋養のダノンバラードとゴールドシップ。特にダノンバラードは、日本に戻ってきて最初の世代なので力を入れているそうだ。その中でもマイバラード(牡、父ダノンバラード、母マイネアロマ)には期待を寄せている。
「父産駒は神経質で基本的に小ぶりな馬が多いです。時々大きい馬もいるけど、共通しているのは背中の乗り心地が良く、素軽さもあるという点。この馬のきょうだいはトラブルが多くて順調に行かなかった分、この仔はここまで順調で期待も膨らみます」

豊作のダノンバラード産駒からもう1頭、アントルメグラッセ(牝、父ダノンバラード、母マイネデセール)は半姉にリンゴアメがいる血統の期待馬。
「父の産駒らしさは出ていますね。気性が落ち着いているほうのダノンバラード産駒。リンゴアメは気性がカッとしやすいタイプだったけど、この馬は扱いやすいしスピードもあります。脚が短くて四角張った形の馬体は母が出てますね。両親の特徴を良く捉えているという感じです」

そして九鬼節のギアが一段上がり「これが牝馬クラシック候補」と紹介するのが、コスモバイオレット(牝、父デクラレーションオブウォー、母クイックモーション)。
「馬体を見るとちょっと腹が巻き上がり気味ですが、一生懸命走る馬。スピードがあって、気性だけでガーッと行くようなタイプではなく、折り合いもついて従順なんですよ」と声を弾ませた。

続いては、昨年までコスモヴューファームとして運用されていた新施設ビックレッドファーム泊津へ。出口宰史場長に話を伺った。

牡馬のクラシック候補として名前が挙がったのは、フラワーカップ2着、オークス、秋華賞に駒を進めた母の初仔となるマイネルモーント (牡、父ゴールドシップ、母ゲッカコウ)。確かにクラシックを意識させる血統だ。
「最初の頃は目立たなかった馬ですが、乗り込みを進めるにつれて頭角を現して来ましたね。軽いフットワークでスピードがあり、今では上位クラスの動きを見せています。クラシックディスタンスは適距離だと思うので、王道を進んでほしい1頭です」

牝馬の推しはこれまた芦毛のコスモアメジスト(牝、父スクリーンヒーロー、母リアンドジュエリー)で、母はミモザ賞勝ち馬。
「勾配のキツいここの坂路から父スクリーンヒーローの活躍馬が多く出ているように、この馬も体幹のしっかりしたブレない走りで登坂しています。スピード能力も世代トップクラス、他馬と併せると抜かせまいとする勝負根性も素晴らしい馬です」と話し、どうやら実戦向きのタイプのようだ。

今年も調教内容を少し変え(詳細については企業秘密とのこと)、馬に疲れを残さずここまで順調に調整を進められたというビッグレッドファーム明和の育成馬の中から、まずピックアップしなくてはならないのは、ユーバーレーベンの全弟マイネルエンペラー(牡、父ゴールドシップ、母マイネテレジア)だろう。
「同時期の姉と比べると完成度では劣りますが、背中の感触やフットワークの良さはクラシックでの活躍を期待させますね。まだ幼さが残るので4月に入ってからもっと攻め込んでみようと考えています。デビュー時期は、血統が血統だけに早めに行かなくても……と言いながら、行くんですけどね」と、笑顔を見せる榎並健史調教主任。期待値が高いだけに慎重に進めたいようだ。

そんな榎並主任から「これが好き」とラブコールを受けているのは、コスモメイゲツ (牡、父ダノンバラード、母ニシノムーンライト)。半兄に朝日杯FS5着などのニシノメイゲツがいる血統。
「まだ力が付ききっておらず、現状の動きに物足りなさを感じますが、手先の軽さやフットワークは好印象ですね。早い時期からのタイプではないけど、これからの成長でもう一回り馬体に厚みが出ればいいところまでいけそうな感触がありますよ。春に一息入れて成長を待ちたいです」

牝馬からは世代の中でも一番動けているというフェアエールング(牝、父ゴールドシップ、母マイネポリーヌ)を推奨。半姉にフラワーカップ、札幌2歳S2着のマイネグレヴィル、半兄は札幌2歳S2着、プリンシパルS3着のマイネルシュバリエと、札幌2歳Sに滅法強い血統馬だ。
「きょうだいの中でも一番いい馬で、手先の軽い、バランスの良いフットワークで余裕があります。緩さもあってまだ成長の余地を残していますし、大きなタイトルを狙っていきたいですね」。
まずはきょうだいが叶わなかった2歳重賞制覇からクラシックを目指す。

ビッグレッドファームにおける「そんなに早くない」は夏競馬を指している故、今年も6月の新馬戦から熱い夏になりそうだ。