追分ファーム・リリーバレー
厩舎長リレーインタビュー

昨年はセリフォスを推奨!

恒例となった、追分ファーム・リリーバレーの4人の厩舎長によるリレーインタビュー。

毎年、調教に変化を加え一歩ずつ前進してきたが、昨年の2歳世代は、その歩幅が一気に大きくなりエポックメイキングな1年となった。

例年「エンジンのかかりが遅かった」というコメントが聞かれていたが、昨年は6月だけで新馬勝ちが4頭。そのうちの1頭セリフォスは、新潟2歳S、デイリー杯2歳Sと連勝を飾り朝日杯FSでも2着と好走。この後は、NHKマイルCへと進む予定だ。

POG的に無視できない存在へと進化を続ける追分ファーム・リリーバレー。果たして今年はどんな馬が飛び出すのだろうか。

今年も牝馬の厩舎から話を聞かせていただきます。まずはT-1厩舎の加地洋太厩舎長です。よろしくお願いいたします。注目馬を教えてください。

加地厩舎長

よろしくお願いします。最初がメリオルヴィータ (父ダイワメジャー、母メリオーラ)です。1つ上のメリトクラシー(牝)は、シルバーステート産駒の初勝利ということで注目されましたが、お姉さんは初戦から1番人気になったように、この血統は仕上がりが早いのだと思います。馬格もしっかりあり、スピードもあり、逞しさも感じますね。

昨年、追分ファームは6月に一気に攻勢をかけて次々と勝利をもぎ取った印象があります。

加地厩舎長

そうですね。早期デビューは毎年目指してはいたのですが、昨年はそれが実現できたのかなと思います。メリオルヴィータも、早期デビュー組に入っています。

T-1厩舎でも、昨年は早期デビューし、勝ち上がった馬がいました。

加地厩舎長

昨年は、1つの厩舎から強い1頭が出たというよりは、まんべんなく勝ち馬が出ました。それは牧場としても、よかったと思います。うちの厩舎からはキミワクイーンが2勝してくれて、GI(阪神JF)まで行ってくれましたからね。全体の士気が上がります。

ちなみにキミワクイーンの全妹もいますね。

加地厩舎長

ワイアウ(父ロードカナロア、母チェリーペトルズ)ですね。順調ですよ。遅生まれ(5月8日)なのですが、進み具合が遅いという印象はないですね。
お姉ちゃんより体重もあってムチムチしているんですが、スピードは互角以上です。武幸四郎先生なので、関西デビューになるのではないでしょうか。

続いてPOGファンが気になる新種牡馬の産駒について教えてください。

加地厩舎長

サトノダイヤモンド産駒のショウミーザマネー(母シーオーク)は、中距離路線に進むと思います。短くてもマイルかなと思うのですが、牝馬はマイルに対応できるスピードがあれば大丈夫ですので、馬体から出る大物感を評価してもらえれば。乗った感じの背中もいいですし、現状問題は何もないですが、成長は少しゆっくりめ。イメージに近いのは、年末までに未勝利を勝って、フラワーカップに挑戦したデインティハートのような進み具合でしょうか。

初戦は敗れたものの、デビューは9月と、そこまで遅くはありませんでしたね。

加地厩舎長

すごく将来が楽しみな馬なんですよ。そこと比較しても遜色ないので、9月の新馬戦をもし勝てれば2歳の重賞戦線にも乗ってきますし、素材はいいので、期待していてください。

昨年、2歳重賞を勝利したことで、追分ファームとしても上昇気流に乗っているのではないですか。

加地厩舎長

6月の新馬戦を勝つと重賞に進む可能性が上がりますし、それでオーナーさんやクラブの会員の方々に喜んでもらえるのはうれしい限りです。早期の勝ち上がりはより重要だなと感じています。

他に注目すべき馬がいれば教えてください。

加地厩舎長

パスカリ(父エピファネイア、母イングリッド)はイヤリングから来るのは遅かったのですが、順調に進められました。杉山調教師とは、昔一緒に働いていた仲間なので、この馬で大きいところを狙いたいです。

加地厩舎長、ありがとうございました。続いてT-2厩舎。明石圭介厩舎長よろしくお願いします。

明石厩舎長

よろしくお願いします。
まずはサザンフェアリー20(父キタサンブラック)です。厩舎では一番進んでいる組ですね。動きの鋭さ、変にテンションが上がらないところが長所だと思います。気持ちがいつも落ち着いていますね。

1つ上の半兄は、ダートに転向して成績が上がりましたが、この馬もダート向きでしょうか。

明石厩舎長

兄とは違い筋肉質というよりシュッとしたしなやかな体をしているので、芝向きですね。現状、総合力が高いので4月に移動できると思います。強いて言えば、後ろの踏み込みがもっと力強さを増せばさらに良くなると思うので、ここから短期間で変わってくれればいいですね。

続いての注目馬は、どの馬になりますか。

明石厩舎長

ジュールポレール20 (父ロードカナロア)は母の初仔。両親ともにマイルGIの勝ち馬ですから、スピードに関しては間違いないと思います。気性的に前向きさが出てきているので、短距離でバリバリ活躍してくれるのではないでしょうか。とはいっても普段は大人しいので、しっかりと気持ちのオンとオフができています。

当然、期待値は高いわけですね。

明石厩舎長

お母さん以上となるとハードルは上がりますが、それだけ思い入れの強い会員さんが多いと思うので走らせたいです。お母さんは脚元に問題があってデビューは遅かったですが、本馬は脚元に何も不安はないので、お母さん以上の活躍をしてくれても不思議はないはずです。

他にも、早期デビューが期待できる馬はいますか。

明石厩舎長

ビューティーワン(父ハーツクライ、母ディヴィナプレシオーサ)も、1番早い組にいて、早期の移動を考えてもらっています。きょうだいが大きく出ているのですが、本馬も500キロを越す立派な体をしています。しかし、重苦しさはまったくなくて、すごく動ける馬≠ネんです。

具体的には、どのような動きなのでしょうか。

明石厩舎長

坂路でハロン14をやり始めると、最後の3ハロンめで苦しいところを見せる馬が多いのですが、本馬は最初からしっかり走りきる手応えと息の入りを見せていたので、心肺能力はかなり優秀です。15や16をやっていた段階では、そこまでよさは見せていなかったんですが、時計を速くしてよさが出たタイプで。

他にもオススメの馬がいたら教えてください。

明石厩舎長

イッツオンリーユー(父ハーツクライ、母イッツオンリーアクティングダッド)も順調に乗り込んでいます。現状でも水準レベルにありますが、もっと変わってきそうです。

ありがとうござました。続いて牡馬の厩舎に移っていきましょう。まずは、T-3厩舎の河野義大厩舎長、よろしくお願いいたします。

河野厩舎長

まずはゴールディーエスポニー20(父ハーツクライ)から。イヤリングから移動してくるのは一番最後の組だったのですが、頓挫することなくトントン拍子でハロン15秒くらい出せるまで追いついてきました。まだ幼いと言えば幼いのですが、伸びしろを考えると相当頑張れているのではないでしょうか。

この時期としたら合格点ということですか。

河野厩舎長

合格点以上ですね。馬体の張りも出てきましたし、センスもかなりあります。ハーツクライ産駒は、成長のタイミングが測りにくいのですが、この馬は良い波できていますので頼もしい限りです。

移動時期はいかがですか。

河野厩舎長

ヨーイドンの馬ではないと思うので、夏あたりの移動を目途に考えています。いい馬が揃っている友道厩舎ですから、いつでも対応できる態勢を整えておきたいですね。

友道厩舎という点からも期待大ですね。続いての馬を教えてください。

河野厩舎長

ソワー20(父Curlin)は、爪の形や繋ぎの形、前肢の作りが立ち気味なので、血統の配合通りダートが向きそうですね。Curlinの仔は、日本では目立った活躍はしていませんが、言わずと知れた大種牡馬なので、期待は大きいです。お母さんの初年度産駒で、移動してきたときは430キロくらいしかなかったので心配しましたが、年明けから480キロくらいまで大きくなりました。前進気勢があってオンとオフもしっかりできているので、中距離くらいで活躍してくれると思います。

続いてはどの馬になりますか。

河野厩舎長

同じくダート血統の、ヴァゼム20 (父デクラレーションオブウォー)は、馬体も優に550キロを超えていますし、見るからにパワータイプ。でも、馬体重の割に、スッキリしたシルエットをしています。

他にオススメ馬はいますか。

河野厩舎長

走りを見ていていいなと思うのは、シゲルマティアス(父エピファネイア、母ディーチェ)。
ぜいたくな悩みなのですが、ずっといいのが気にかかっています。一回崩れることで、そこが成長の起点になるので、崩れるのであれば早いほうがいいのですが……。ずっと問題なく成長し続ける馬もいるので、変なタイミングで頓挫しなければいいなと思っています。

ありがとうございました。
そしてトリは、T-4厩舎の平沼敏幸厩舎長です。昨年、セリフォスを紹介していただきました。

平沼厩舎長

今年はウィズアミッション20 (父ドゥラメンテ)からいきましょうか。うちの厩舎では一番順調な組です。どこかが飛び抜けていいというわけではなく、全体的にポテンシャルが高い。ドゥラメンテの仔も走っていますし、期待は大きいです。

6月に競馬場で見ることができるかもしれませんね。

平沼厩舎長

順調ですからね。この馬で結果を出して勢いをつけてもらいたいです。

続いてはいかがでしょうか。

平沼厩舎長

レクレドール20 (父モーリス)は、まだ体質の弱いところがあるのですが、スピードはあるし、ペースを上げればレベルは自然に上がっていくと思っています。先日、池江先生もいらっしゃったんですが、手応えを感じてくれたと思います。距離はマイルくらいから延ばしていくことになりそうですね。

平沼厩舎長は例年、新種牡馬シリーズを出していただいています。ちなみに、昨年はドレフォン産駒のヒロシクンでした。

平沼厩舎長

そっちを挙げていたんですね。うちにいたもう1頭のドレフォン産駒は勝ち上がったのに(※取材後にヒロシクンも未勝利勝ち)。でも今年は何にしようか決めていないんですよ。サトノクラウン産駒がいるんですけど、山本昌さんのほうに出したので。同じじゃつまらないですもんね。

別に私たちは、被っても大丈夫ですけどね。気になる人はチェックしてみてください(笑)。

平沼厩舎長

他には、ウィズザドリーム(父マインドユアビスケッツ、母ドリームアドリーム)がいいと思います。ここにきて、グンと成長しました。穴っぽいところですが覚えておいてください。

厩舎長の皆さん、ありがとうございました。