社台ファーム
東礼治郎場長インタビュー

今年はめちゃくちゃ走る!≠ニいう馬がたくさんいますよ

「毎年不思議と新種牡馬から走る馬が出る」

そのジンクス通りに昨年は、ロゴタイプ産駒のラブリイユアアイズが阪神JFで2着に好走。やはり社台ファームから目が離せない。

今年も東礼治郎場長に注目の2歳馬と、新種牡馬について話を伺った。

今年も東礼治郎場長にオススメの2歳馬をご紹介していただこうと思います。よろしくお願いします。

東場長

今年も去年に続いて、僕のオススメは走らないから(笑)。事前に、牧場スタッフに聞いて回りました。

お手数おかけします。

東場長

今年は、現時点でめちゃくちゃ走るって馬が、たくさんいるんですよ。僕がオススメしようとしていた馬の名前が出てこなくて、焦ってもいるけど(笑)。

取材日直近の話題ですと、サウジカップデーにて社台ファーム出身馬がステイフーリッシュをはじめ2勝。牧場のエントランスには、たくさんの御祝花が届けられていました。

東場長

強気に行ったわけじゃなかったけど、良い結果が出たのはうれしいですね。日本より勝ちやすいとか言われるけど、外国で戦うのは輸送面とか体調管理とか、人々のノウハウが重要。自分たちが育てた馬のレベルが世界に通じると分かれば、牧場も盛り上がります。
リヤドダートスプリントを勝ったダンシングプリンスの父であるパドトロワは、今年何頭付けるか、大慌てで調べましたよ(笑)。

POG本としては、芝の王道路線で活躍する馬に目がいきがちですが、これだけ種牡馬が多士済々に分かれてくると、目指す路線も広がっていきますね。

東場長

個人的には、血統で路線を決めつけないほうがいいと思っています。馬体を見て距離だの芝だのって判断するのは必要だけど、血統の文字面だけで走らないのが競馬だから。アメリカのダート馬を日本に入れてきても芝で走りますからね。
アルゼンチンの血統の母系が日本で走っているけど、アルゼンチンの馬場が日本と相互性があるか、全然分かりませんからね。それが走るわけだから血統に縛られる必要はないと思っています。

今年、種牡馬デビューするレッドファルクスは、芝ダートを問わない典型のような馬でしたね。

東場長

ダートで条件戦から上がってきたんだけど、芝を使ったらポンと勝っちゃった。どちらも適性があるというのは、父のスウェプトオーヴァーボードの特徴を受け継いだのでしょうね。レッドファルクスの仔も、筋肉量があっても硬さがない。見映えが良くてタフなんで、早い時期からデビューできる馬が多いと思います。

具体的にお名前をいただけますか。

東場長

最初にレッドファルクス産駒から名前を出すとは思わなかったな(笑)。イブニングサンダー20(牡)は、上は弱いところがあったけど、本馬はしっかり鍛えられています。420キロくらいの小柄な馬体だけど走る気は満々。イブニングサンダーはラブリーマリアの半妹だから良血ですよね。
あとウララカ20 (牡)は、仕掛けたら、フォームが一気に変わってスピードアップする。弾力性のある筋肉をしているから千葉セリでも時計が出るでしょうね。セリの最初に出そうかと考えている馬です。

千葉セリの一番手といえば、オメガパフュームが有名です。

東場長

スウェプトオーヴァーボードの孫になるわけだから、いい世代交代ですよね。これだけ動くぞ!っていうのを見せつけられる1頭だと思います。

では、このまま新種牡馬についてお話を聞きたいのですが、マインドユアビスケッツ産駒が多いですね。

東場長

(吉田照哉)代表が、競走馬時代に購入したから期待が大きいのだと思います。スピードがある種牡馬ですから、日本の馬場にも合っていると思います。

ダート1200m戦のドバイゴールデンシャヒーンを連覇しているわけですから、スピードは折り紙つきですね。

東場長

1800mでもGIを勝っているように、単純に能力が高い。それに、世界を転戦しても1回もケガをせず、引退を惜しまれたほどの馬。脚元の強さは、母系の弱点を消せると思っているので楽しみです。

産駒はいかがでしょうか。

東場長

今年は1年目ということで、成功率を上げるために、母系もダートで走る馬に付けている印象がありますね。アムールポエジー20(牡)はお母さんが関東オークスを勝っている馬。調教を見ていると、やっぱり馬体も大きいし力強さがある。デビュー時期は未定ですが、順調なのでいつでも入厩することは可能です。
あと、ゴルトキルシェ20(牝)もいいですね。もう山元トレセンに送ったんですけど、向こうでの評判がすこぶるいいです。

すでに山元トレセンに送ったということでしたら、デビューも早そうですね。

東場長

そうですね。ただ、こちらで仕上がっている順番通りに山元に持っていってるわけではないんです。山元は現役馬が多くいるので、格上と併せることで刺激を受けて、一気に変わる2歳馬がいるんですよ。特に牡馬が多いですね。人間だって、のんびりと健やかにするのが合っている人もいれば、過酷なところで素質が開花する人もいる。馬も同じことです。

それでは、エイシンフラッシュ産駒についても教えてください。

東場長

オニャンコポンの影響ですね(笑)。牧場としては、エイシンフラッシュとヴィクトワールピサの仔が勝ってくれると、うれしいものなんですよ。

今年の産駒はいかがですか。

東場長

ロイヤルネックレス20 (牡)。これも千葉セリなんだけど、去年のセレクトセールに出そうか悩んだくらい見た目がいいんです。シンボリクリスエス肌は走るので、期待しています。

クラブの高額募集馬のラクレソニエール20 (牡・父エピファネイア)はいかがですか。

東場長

ゆったり走る馬だから大物感があります。500キロ近くあってしっかり鍛えられていますよ。今年は坂路を新しくして3年目ということで、今まで以上に丁寧に、みんなが研究して細かくチェックしています。ですので、順調な馬が多いのですが、この馬はその代表ですよ。

このままエピファネイア産駒の注目馬について教えてください。

東場長

牡馬だと、マジェスティッククオリティ20は、母系が強いから現時点では安定した走りをします。力強くてパワフル。今の調教だと、余裕しゃくしゃく。これからどんどん速いところを消化して、スピードアップすれば、かなりの大物に育つはずです。
あと、プロヴィナージュ20(牡)もいいですね。母父がフレンチデピュティだから筋肉量に目がいきがちなんだけど、父親の特徴もしっかり出ている。上はお母さんの影響からパワーに比重が置かれていたけど、こっちはフットワークが軽いし、速力で押し切るタイプかな。

マキシマムドパリ20 (牡)も、注目されているのではないでしょうか。

東場長

跳びがきれいで、順調に乗られています。牧場スタッフは「まだ緩いところがあるから、牧場で乗り込みたい」って言っているのですが、緩い≠チて言葉、僕が若い頃にはなかった言葉なんですよね……。

どの牧場でも、よく出てくる表現ですよね。

東場長

緩いから伸びしろがあるわけで、この時期に固まっていたら逆に心配。POG本だとマイナスに捉える人もいるとは思うけど、緩いから将来有望≠ニ書いておいて(笑)。あとエアワンピース20(牡)もいいと思いますよ。牝馬なら、ナッシングバットドリームズ20は、体がガッチリして雄大な馬体をしています。牝馬なのに、ブレない走りは魅力的ですよ。

姉(ルージュエヴァイユ)は2連勝で、次はフローラSに向かいそうです。

東場長

祖母がデインドリームということで人気になっていたけど、初仔ということもあって仕上がりが遅くて心配していた。それだけ結果が出てくれてホッとしています。こっちは仕上がりが断然早い。

続いてハーツクライ産駒について教えてください。

東場長

自分のところでやった種牡馬なので、力が入ります。まず牡馬なら、スターシップトラッフルズ20。ゆったりしている割に背中の伸縮が強い。背腰がしっかりしている馬ですね。あと、ジュリエットシアトル20も牧場スタッフの評判がいいですね。背中が柔軟で、産駒にしては完成度が高い。距離は長いほうが良いけど、1800mあれば十分なので夏にもデビューできると思います。
牝馬だとソーマジック20 。この名前は出さないと怒られるでしょうから(笑)。とにかく一生懸命体を使って走るから、評価が高い。難しいところがない反面、頑張り過ぎちゃうところはあるので、うまくコントロールしていきたいですね。

急成長を遂げた
エアマグダラ20

駆け足になってしまいますが、ハービンジャー産駒はいかがでしょうか。

東場長

今の時期は正直よく見せない血統なんですよ。シャキッとしていないという表現が正しいのかも。その中でエアマグダラ20 (牡)はここに来て急成長を遂げた1頭。半年前は柔らかすぎて、歩いていても見映えがよくなかった。それがここにきて、しっかりと走れるようになってきましたね。

続いてロードカナロア産駒をお願いします。

東場長

牡馬だと、セレクトセールで高かった(2億4200万)クイーンズリング20は順調ですよ。カナロア産駒って、お尻や顔が大き過ぎたりと、偏った馬が多いんですよね。結果的に走るケースもありますが。
その点、本馬はすごくバランスが取れたきれいな馬。乗り役に従順で変な癖もありません。牡馬ですと、アンナミルト20も大人しくて丈夫。無駄がない、いい馬ですよ。お母さんは芝もダートも走ったけど、本馬もいろんな適性を感じさせます。コレクターアイテム20ロマンシングジェム20も順調です。

牝馬はいかがでしょうか。

東場長

ソラリア20には注目してます。短いところから長いところまで走れそうですね。

半姉のカレンブーケドールも天皇賞(春)で3着と、距離適性は幅広いですからね。

東場長

上が活躍しているから、そのままの評価をしてもらって間違いないんだけど、性格もよくて乗りやすさは際立っています。
その他の牝馬なら、プリンセスオブシルマー20もポテンシャルが高くて背中もちゃんと使えています。ケンホープ20 は、お母さんもグレードレースを勝っているように、力は伝わっています。上のプールヴィル(フィリーズレビュー勝利)は神経がたかぶるところがあり、1400m以上に壁があったから、そこを意識して本馬は修正できるようにしたいですね。

イスラボニータの2世代目はいかがでしょうか。

東場長

ヴァンキッシュランの半妹にあたる、リリーオブザヴァレー20。距離は持つし、母系がタフだから、これから力をつけてくれそう。
ターフドンナ20(牡)は、お姉さんがチューリップ賞を勝ったエリザベスタワー。力で引っ張っていけるから競り負けない強さが本馬にもあります。

いろいろ教えていただき、ありがとうございました!