ノーザンファーム早来
日下和博牝馬調教主任インタビュー

強い馬ではなく勝てる馬を作っていきたい

今年もノーザンファーム早来・日下和博調教主任にインタビューを敢行。

「日下グループ」から輩出された馬は、日本のみならず世界でも躍進を続けている。だが、日下調教主任は、「本当に悔しい」と、昨年のクラシック戦線を振り返った。

それだけ、日本競馬のレベルが年々上がっているということ。今年の2歳馬のラインナップは、はたして!?

よろしくお願いします。

日下主任

いやー、古馬に助けられました。

日下グループで育成されたクロノジェネシスが宝塚記念を制覇、ラヴズオンリーユーはクイーンエリザベス2世C、BCフィリー&メアターフ、香港Cと海外GIを3勝するなど、大活躍でした。

日下主任

ただ、ラヴズに関しては、もっと勝たせられたと悔しさもあるんです。特に昨年の札幌記念。あのレースは、勝たなければいけませんでしたから。

それでも立派な成績を残しましたし、これからはお母さんとしての活躍が楽しみですね。

日下主任

長く牝馬に携わっているなかで、楽しい瞬間ですね。うちのグループから出た繁殖牝馬の仔がダービーに出走したりすると、牝馬をやっていてよかったな≠ニ実感しますよ。

毎年のように「日下グループ」から活躍馬が出ている印象ですが、それを続けるのも本当に大変なことですよね。

日下主任

もう大変(笑)。進化していかないといけませんからね。守っていたら守れない。勇気を持って変えていかないと。

そういった意味では、新しい厩舎ができたというグループ全体の変化もありました。

日下主任

そうですね。ただ、とにかく1回でも多く出走して1回でも多く勝ちを拾う。目の前のレースを勝つために工夫をするという目標は変わりません。一番強い馬が勝つわけじゃないのが競馬ですから、強い馬≠ニいうよりは、勝てる馬≠作っていきたいと思っています。

1着と2着では大きな差ですからね。勝てる馬を作るために、何か調教で変えた点などはありますか。

日下主任

去年(現3歳馬)は全体的に攻め込んだのですが、今年は個々に合わせて、坂路に特化したり、スピードを重視したりと違う攻め方をしました。その結果、3月に移動する馬、夏、秋に移動する馬と、しっかり組み分けできていると思います。

個々に合わせるということは、より1頭1頭のチェックを強化する必要がありますよね。

日下主任

スタッフ、厩舎長はもちろん、私や場長、それ以外にも獣医や装蹄師などいろいろな人が一体となってやっていくようにしています。

立場的に、人も育てていかないといけないわけですが、たとえば、厩舎長が間違っている方向に進んでいると気づいた場合、どう対応するんですか。

日下主任

そのときは、多分間違いだよ≠チて話をします。すでに先人が試してみたことを、やりたがる子が出てくるんです。ただ、その子は間違いだって分からないわけですから、さじ加減が難しい。3年先、5年先を考えたら、失敗を経験することもありなのかなって思ったりもしますし。

厩舎長たちも、昨年のクラシックは悔しい思いもあったのではないでしょうか。

日下主任

私も含め、みんな今年こそ、来年こそと強い意識を持っていますよ。2歳重賞から3歳クラシックを賑わすような馬を何頭も出していきたいですね。だけど、本当に日本のレベルが高いし、ライバルが多いですよ(笑)。

では、いよいよPOGの話に移りたいと思いますが、これまではディープインパクト産駒から選ぼう≠ニいうファンも多かったのですが、今年は難しい印象です。

日下主任

バゴ産駒からグランプリ3連覇する馬が出るわけですから、どの種牡馬から出てもおかしくありませんよ。たとえばモーリスの仔にしても、初年度よりいいと思っています。どこかで大物が出てきそうですよ。もちろんそれ以外の種牡馬も期待しかありませんよ。

期待の2歳馬について、具体的に名前を教えてください。

日下主任

村上厩舎ならアイムユアーズ20 (父リアルスティール)とデニムアンドルビー20(父モーリス)は私の思い入れが強いのもありますがいいですよ。あとは、厩舎で見てもらったと思いますがリミニ20(父モーリス)も楽しみです。

村上厩舎長も手応えを感じているようでした。

日下主任

山根厩舎はアズールムーン20(父サトノダイヤモンド)、スピードリッパー20(父ミッキーロケット)。佐藤厩舎だと、クロノロジスト20(父モーリス)、レーヴルシード20(父ミッキーロケット)。カシシ20(父リアルスティール)もいいですよ。

本当にいろいろな種牡馬の名前が出てきますね。

日下主任

岡厩舎ならイサベル20(父ロードカナロア)、サマーハ20(父サトノダイヤモンド)。それとポルトフィーノ20(父リアルスティール)も思い入れが強い1頭です。宮田調教師は日下厩舎で働いていたこともあり、一緒に大きいところを勝てたらまた格別でしょうね。

新しい大谷厩舎の中ではどの馬がオススメでしょうか。

日下主任

ピースエンブレム20(父サトノダイヤモンド)。お母さんは日下厩舎にいて、当時大谷が乗っていたんです。この馬で頑張ってもらいたいですね。アクシデントで出遅れましたが、リカバリーできています。あとはサンブルエミューズ20(父キタサンブラック)も素晴らしいです。

ここ最近でグッと成長している馬はいますか。

日下主任

佐藤厩舎のカリズマティックゴールド20 (父シルバーステート)は、すごくいい。血統だけ見たら地味に映るかもしれませんが、馬だけ見たら主役を張れるほどですよ。

どの厩舎からも活躍馬が出てきそうで、楽しみですね。

日下主任

看板馬が引退してしまったので、それに取って代わる馬が出てきてほしいですね。1頭で9個GIを勝ってくれるのもいいですが、GI馬が何頭も出てきてくれればと思っています。