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第1699回 波乱も多い牝馬限定ハンデG3のマーメイドSを占う

2023/6/15(木)

2022/6/19 阪神 11R マーメイドステークス 1着 7番 ウインマイティー2022/6/19 阪神 11R マーメイドステークス
1着 7番 ウインマイティー
(Photo by JRA)

今週の重賞は、東京のユニコーンSと阪神のマーメイドS。今回は後者の牝馬限定ハンデG3を取り上げたい。メンバー唯一の重賞勝ち馬で、今年はトップハンデを背負うウインマイティーの連覇はなるのか。それとも、夏の新星誕生はあるのか。過去10年の結果に基づき、レースを展望していこう。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JV を利用した。

■表1 単勝オッズ別成績

単勝オッズ 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1.0〜1.9倍 0- 0- 0- 0/ 0          
2.0〜2.9倍 0- 0- 1- 0/ 1 0.0% 0.0% 100.0% 0% 150%
3.0〜3.9倍 1- 1- 0- 0/ 2 50.0% 100.0% 100.0% 165% 155%
4.0〜4.9倍 0- 1- 1- 5/ 7 0.0% 14.3% 28.6% 0% 48%
5.0〜9.9倍 1- 3- 5-32/41 2.4% 9.8% 22.0% 13% 59%
10.0〜19.9倍 7- 2- 2-26/37 18.9% 24.3% 29.7% 268% 124%
20.0〜29.9倍 1- 2- 1-14/18 5.6% 16.7% 22.2% 113% 149%
30.0倍〜 0- 1- 0-42/43 0.0% 2.3% 2.3% 0% 30%

過去10年の1〜3着馬30頭のうち、半数以上の16頭が6番人気以下だったマーメイドS。ただし、表1の単勝オッズ別成績を確認すると、単勝30倍以上の好走は3着1回だけ。つまり、穴を狙うにしても単勝10〜20倍台が主なターゲットとなり、極端な人気薄の激走は意外に少ないことも押さえておきたい。

■表2 枠番別成績

枠番 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1枠 2- 1- 3- 9/15 13.3% 20.0% 40.0% 240% 155%
2枠 2- 0- 1-13/16 12.5% 12.5% 18.8% 195% 76%
3枠 0- 1- 1-17/19 0.0% 5.3% 10.5% 0% 32%
4枠 1- 1- 0-17/19 5.3% 10.5% 10.5% 76% 29%
5枠 0- 1- 1-18/20 0.0% 5.0% 10.0% 0% 26%
6枠 0- 2- 1-17/20 0.0% 10.0% 15.0% 0% 31%
7枠 3- 2- 2-13/20 15.0% 25.0% 35.0% 156% 135%
8枠 2- 2- 1-15/20 10.0% 20.0% 25.0% 78% 162%

表2は枠番別成績。1枠と2枠が各2勝、逆に7枠が3勝、8枠が2勝と、内外の枠から勝ち馬が多く出ていることがわかる(ほかに4枠が1勝)。複勝率を見ても、1枠および7、8枠の数値が高く、内外の枠から好走馬が多く出ている様子が見て取れる。ただし、過去10年のうち、13〜20年は3回阪神4日目、21〜22年は同2日目の開催だったところ、今年は6日目に組まれた。過去10年とは条件が異なるため、当日の枠や馬場の傾向を入念に確認したほうがいいだろう。

■表3 前走クラス別成績

前走クラス 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
2勝 0- 2- 1-16/19 0.0% 10.5% 15.8% 0% 131%
3勝 7- 3- 1-49/60 11.7% 16.7% 18.3% 160% 72%
オープン特別 2- 1- 1- 9/13 15.4% 23.1% 30.8% 139% 132%
リステッド競走 1- 1- 1- 3/ 6 16.7% 33.3% 50.0% 243% 148%
G3 0- 2- 2-30/34 0.0% 5.9% 11.8% 0% 35%
G2 0- 1- 2- 4/ 7 0.0% 14.3% 42.9% 0% 125%
G1 0- 0- 2- 8/10 0.0% 0.0% 20.0% 0% 33%

表3は前走クラス別成績。過去10年のマーメイドSでは前走3勝クラスが7勝を挙げており、これは特筆に値する。また、前走2勝クラスも複勝回収率131%を記録し、このケースで好走した3頭は「前走3番人気以内かつ1着」だったのが共通点だ。

その一方で、前走重賞(G1〜G3)出走馬の勝利がなかったことには、ハンデ戦と知っていても驚いてしまう。2、3着にはしばしば入っているものの、実績馬でも勝ち切るのは容易ではないようだ。なお、前走オープン特別およびリステッド競走はどちらも好成績を収めているが、今年は該当する馬の登録がなかった。

■表4 前走3勝クラス出走馬の各種データ

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
前走着順 前走1着 1- 1- 1- 6/ 9 11.1% 22.2% 33.3% 120% 104%
前走2着 1- 0- 0- 7/ 8 12.5% 12.5% 12.5% 41% 18%
前走3着 3- 0- 0- 5/ 8 37.5% 37.5% 37.5% 575% 180%
前走4着 1- 2- 0- 7/10 10.0% 30.0% 30.0% 156% 114%
前走5着 0- 0- 0- 6/ 6 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走6〜9着 0- 0- 0-10/10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走10着〜 1- 0- 0- 8/ 9 11.1% 11.1% 11.1% 227% 72%
前走人気 前走1番人気 1- 0- 0- 5/ 6 16.7% 16.7% 16.7% 55% 25%
前走2番人気 0- 1- 0- 5/ 6 0.0% 16.7% 16.7% 0% 26%
前走3番人気 1- 0- 0- 7/ 8 12.5% 12.5% 12.5% 135% 46%
前走4番人気 0- 2- 0- 7/ 9 0.0% 22.2% 22.2% 0% 78%
前走5番人気 2- 0- 0- 3/ 5 40.0% 40.0% 40.0% 654% 188%
前走6〜9番人気 2- 0- 1-12/15 13.3% 13.3% 20.0% 234% 99%
前走10番人気〜 1- 0- 0-10/11 9.1% 9.1% 9.1% 129% 45%

表4は前走3勝クラス出走馬について、前走の着順別と人気別のデータをまとめたもの。着順から見ていくと、好走した11頭中10頭は前走の3勝クラスで1〜4着に入っており、例外は21年1着のシャムロックヒル(前走14着)だけだった。

人気に関しては、必ずしも前走で上位人気に支持されている必要はない。複勝率ベースでいえば、前走1〜3番人気より、前走4〜9番人気のほうが高い数値を残しているぐらいだ。とはいえ、さらに人気を落とすと厳しく、前走10番人気以下の好走例は19年1着のサラス(前走11番人気)が唯一。最低でも9番人気には収まっておきたいところだ。

ちなみに、前走10着以下から唯一好走したシャムロックヒルと、前走10番人気以下から唯一好走したサラスは、いずれも母ララア。つまり、この姉妹を除けば「前走の3勝クラスで1〜9番人気かつ1〜4着」が好走条件という見方もできる。

■表5 前走重賞出走馬の各種データ

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
前走着順 前走1着 0- 0- 0- 1/ 1 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走2着 0- 0- 0- 4/ 4 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走3着 0- 1- 0- 1/ 2 0.0% 50.0% 50.0% 0% 80%
前走4着 0- 0- 0- 3/ 3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走5着 0- 0- 2- 2/ 4 0.0% 0.0% 50.0% 0% 165%
前走6〜9着 0- 2- 2-14/18 0.0% 11.1% 22.2% 0% 70%
前走10着〜 0- 0- 2-17/19 0.0% 0.0% 10.5% 0% 17%
前走人気 前走1番人気 0- 1- 0- 2/ 3 0.0% 33.3% 33.3% 0% 53%
前走2番人気 0- 0- 0- 3/ 3 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走3番人気 0- 0- 0- 5/ 5 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走4番人気 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
前走5番人気 0- 1- 0- 2/ 3 0.0% 33.3% 33.3% 0% 93%
前走6〜9番人気 0- 1- 5-11/17 0.0% 5.9% 35.3% 0% 105%
前走10番人気〜 0- 0- 1-17/18 0.0% 0.0% 5.6% 0% 10%

表5は前走重賞(G1〜G3)出走馬について、前走の着順別と人気別のデータをまとめたもの。ここで注意すべきは、前走重賞で上位着順を収めた馬や、上位人気に推されていた馬が、あまり結果を出していないことだ。具体的には、前走重賞1、2着でも【0.0.0.5】、同様に1〜3番人気でも【0.1.0.10】と厳しい結果に終わっている。

その一方で前走10着以下や10番人気以下も苦戦気味だから、「前走の重賞で9番人気以内かつ9着以内」には収まっておきたい。なお、この条件を満たさずに好走した前走重賞出走馬は、13年3着のアロマティコと14年3着のフーラブライドの2頭。両馬ともに前走ではヴィクトリアマイルに出走し、前者はマーメイドSで1番人気、後者も2番人気に支持された。言い換えると、当日に本命・対抗級の評価をされるような馬に限れば、前走の重賞の人気や着順を度外視してもいいかもしれない。

■表6 芝2000m1着実績に関するデータ

競馬場 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
札幌 1- 0- 1- 2/ 4 25.0% 25.0% 50.0% 512% 235%
函館 0- 0- 0- 2/ 2 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
福島 0- 0- 0- 6/ 6 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
新潟 0- 1- 0- 6/ 7 0.0% 14.3% 14.3% 0% 184%
東京 0- 0- 1-10/11 0.0% 0.0% 9.1% 0% 31%
中山 0- 3- 0-13/16 0.0% 18.8% 18.8% 0% 100%
中京 3- 1- 2-24/30 10.0% 13.3% 20.0% 102% 58%
京都 1- 2- 2-15/20 5.0% 15.0% 25.0% 73% 104%
阪神 5- 2- 2-18/27 18.5% 25.9% 33.3% 222% 105%
小倉 1- 2- 0-20/23 4.3% 13.0% 13.0% 67% 42%
芝2000m1着なし 3- 4- 4-43/54 5.6% 13.0% 20.4% 60% 79%

マーメイドSは芝2000mの重賞。そして、この条件は中央競馬10場すべてに設定がある。そこで、どの競馬場の芝2000m1着実績が結果につながりやすいのかを調べてみた。それをまとめたものが表6。当然かもしれないが、マーメイドSと同じ阪神芝2000m1着の実績を持つ馬は安定して走っており、過去10年の勝ち馬のうち半数は同コースで勝っていた。また、出走例は少ないものの、4頭中2頭が好走した札幌芝2000m1着の実績を持つ馬にも注目の価値がありそうだ。

しかし、阪神や札幌以外の芝2000mに関しては、1着実績があっても大きなアドバンテージにはならないようだ。ある程度の好走例がある中京や京都にしても、芝2000m1着なしという馬と比較して、連対率や複勝率はさほど変わらない水準にとどまる。

■表7 前走斤量との比較

斤量 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
今回増 2- 3- 4-21/30 6.7% 16.7% 30.0% 60% 103%
増減なし 1- 2- 2-18/23 4.3% 13.0% 21.7% 63% 53%
今回減 7- 5- 4-80/96 7.3% 12.5% 16.7% 100% 78%

マーメイドSはハンデ重賞だから、ハンデに関するデータを紹介したいのはやまやまだ。ところが、中央競馬では今年から負担重量に関する変更(注:多くのレースで昨年より1キロ増の設定)があり、昨年までのデータをそのまま当てはめていいのか微妙なところがある。

そこで今回は「前走斤量との比較」についてのみ触れておきたい。表7の通り、マーメイドSでは「今回減」が過去10年で7勝。そして今回減の7勝は、すべて前走3勝クラス出走馬によるものとなっている。

【結論】

2023/4/16 中山 12R サンシャインステークス 1着 13番 ビジン2023/4/16 中山 12R サンシャインステークス
1着 13番 ビジン
(Photo by JRA)

今年のマーメイドSには15頭がエントリー。フルゲート16頭に満たないため、全馬が出走可能となっている。

まずチェックしておきたいのが、過去10年で7勝の前走3勝クラス出走馬。そして、このケースでは「前走1〜9番人気かつ1〜4着」が好走条件であることを、表4の項で確認した。今年の登録馬で合致するのは、前走のサンシャインSで7番人気1着だったビジンのみとなっている。

前走着順と人気の条件は満たさないのだが、前走3勝クラスではヒヅルジョウにも触れておきたい。というのも、登録15頭で唯一、阪神と札幌の両方で芝2000m1着の実績を持つからだ。前走7着に終わった点を差し引いても、コース適性の観点から侮れない存在ではないか。

続いて前走重賞出走馬。該当馬は5頭いるが、うち2頭は表5の項で記した苦戦データである前走10着以下もしくは10番人気以下に合致する。残ったのはウインマイティー、ビッグリボン、ストーリアの3頭で、このうち、前年の覇者であるウインマイティーはもちろん、ビッグリボンにも阪神芝2000m1着の実績があり、コース適性は十分見込める。過去10年、前走重賞出走馬の勝利がないのは前述の通りだが、手薄な印象の今年のメンバー構成ならデータを覆すチャンスかもしれない。

そのほか、前走2勝クラスの芝で1番人気1着だったゴールドエクリプス、サンカルパ、シンシアウィッシュの3頭も好走候補として挙げておきたい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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