データde出〜た
第1585回 無敗馬が激突! 朝日杯フューチュリティSを制する馬は?
2021/12/16(木)
今週は日曜日に阪神競馬場で朝日杯フューチュリティS(以下、朝日杯FS)が行われる。先週の阪神ジュベナイルフィリーズに続いて、2歳馬によるG1競走が組まれている。牡馬だけでなく牝馬も出走できるレースだが、実際には2歳牡馬のマイル王を決める一戦と言っていい。朝日杯FSが阪神芝1600mで行われるようになった2014年以降のデータを分析し、今年のレースを占っていきたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 朝日杯フューチュリティSの前走クラス別成績(2014年以降)
前走クラス | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
新馬 | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 295 | 90 |
未勝利 | 1- 0- 1- 9/ 11 | 9.1% | 9.1% | 18.2% | 159 | 243 |
1勝 | 2- 0- 0- 21/ 23 | 8.7% | 8.7% | 8.7% | 81 | 25 |
※OPEN非L | 0- 0- 1- 15/ 16 | 0.0% | 0.0% | 6.3% | 0 | 11 |
OPEN(L) | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
G3 | 2- 3- 1- 14/ 20 | 10.0% | 25.0% | 30.0% | 21 | 57 |
G2 | 1- 4- 4- 31/ 40 | 2.5% | 12.5% | 22.5% | 11 | 96 |
G1 | 0- 0- 0- 0/ 0 |
※グレードなしの重賞を含む。
まずは2014年以降(以下、同様)の朝日杯FSの前走クラス別成績を調べた。前走G2組の【1.4.4.31】に対し、G3組が【2.3.1.14】という成績で、グレードが高いG2よりもG3の方が好走率は高かった。ただ、これは前走サウジアラビアロイヤルC組の成績が良すぎるのが要因なので、グレードの問題ではないかもしれない。
■表2 前走G2・G3組の前走着順別成績
前入線順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
前走1着 | 3- 4- 4-10/21 | 15.0% | 35.0% | 50.0% | 44 | 80 |
前走2着 | 0- 1- 1-10/12 | 0.0% | 8.3% | 16.7% | 0 | 87 |
前走3着 | 0- 0- 1- 7/ 8 | 0.0% | 0.0% | 12.5% | 0 | 97 |
前走4着 | 0- 1- 0- 2/ 3 | 0.0% | 33.3% | 33.3% | 0 | 353 |
前走5着 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
前走6〜9着 | 0- 1- 0-10/11 | 0.0% | 9.1% | 9.1% | 0 | 44 |
前走10着〜 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
さらに前走G2・G3組の前走着順別成績を調べると(表2参照)、前走1着が【3.4.4.10】という好成績だった。17年ダノンプレミアムは前走サウジアラビアロイヤルC、18年アドマイヤマーズは前走デイリー杯2歳S、19年サリオスは前走サウジアラビアロイヤルCをそれぞれ勝ち、連勝で朝日杯FSを制した。そして、前走2着の成績は【0.1.1.10】となっていて、前走1着とは大きな差があることがわかる。前走2〜4着あたりはあまり差がないと考えるべきかもしれない。ただ、前走6着以下に敗れていると、巻き返すのはかなり厳しそうだ。
■表3 前走オープン特別組(グレードなしの重賞含む)の前走距離別成績
前走距離 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
1200m | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
1400m | 0- 0- 0- 7/ 7 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
1600m | 0- 0- 1- 2/ 3 | 0.0% | 0.0% | 33.3% | 0 | 60 |
1800m | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
2000m | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
表1に戻り前走オープン特別組(グレードがつかない重賞を含む。以下同様)の成績を見ると、【0.0.1.15】で連対馬が出ていない。表3は前走オープン特別組の前走距離別成績だが、前走1600m組から3着馬が1頭出ている。この該当馬は14年のクラリティスカイで、前走は東京芝1600mのいちょうSを勝っていた。この年の同レースは、グレードがつかない重賞(15年にサウジアラビアロイヤルCと名称変更、16年にG3に格付け)だった。つまり厳密には、前走オープン特別に出走していた馬は、1頭も朝日杯FSで3着以内に入っていないということになる。表3の前走1400mのもみじSやききょうS、前走1800mのアイビーSや野路菊Sを走っていた馬はかなり苦戦している。
■表4 前走1勝(500万)クラス組の前走コース別成績
前走コース | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
東京・芝1600 | 2- 0- 0- 2/ 4 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 470 | 145 |
東京・ダ1600 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
阪神・芝1400 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
京都・芝1400外 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
京都・ダ1800 | 0- 0- 0- 3/ 3 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
東京・芝1400 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
福島・芝1800 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
中山・芝1600 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
中山・ダ1200 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
京都・芝2000 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
京都・芝1600 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
京都・芝1200 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
前走1勝(500万)クラス組の成績は【2.0.0.21】(表1参照)。複勝率は8.7%とかなり低いが、2頭の勝ち馬(14年ダノンプラチナ、16年サトノアレス)が出ている。表4は前走1勝(500万)クラス組の前走コース別成績だが、前走東京芝1600mの成績が【2.0.0.2】で、勝ち馬はともにベゴニア賞を勝っていた。前述したクラリティスカイにもあてはまるが、東京芝1600mの特別戦を勝利しているというのは、評価できるポイントと言えそうだ。
■表5 前走未勝利組の前走タイム差別成績
前走タイム差 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収率 | 複回収率 |
勝2.0〜 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
勝1.0〜1.9 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
勝0.6〜0.9 | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0 | 1180 |
勝0.3〜0.5 | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 1750 | 320 |
勝0.1〜0.2 | 0- 0- 0- 6/ 6 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
勝0.0 | 0- 0- 0- 2/ 2 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0 | 0 |
前走未勝利組の成績は【1.0.1.9】(表1参照)。2頭の好走馬が出ていて、勝率・連対率・複勝率はいずれも前走1勝(500万)クラス組よりも高い。好走馬は19年3着(14番人気)グランレイ、20年1着(7番人気)グレナディアガーズと近年連続で出ている点も要注意だ。前走未勝利組に関しては、前走2着馬とのタイム差に注目したい(表5参照)。グランレイは0.7秒差、グレナディアガーズは0.5秒差をつけて勝っていたのだ。一方、タイム差が0.2秒以下だった馬の成績は【0.0.0.8】となっている。前走未勝利組は、ある程度タイム差をつけて勝ってきた馬が有力だ。
また、前走新馬組の成績は【1.0.0.1】(表1参照)と数は少ないが、勝ち馬が出ている。15年にリオンディーズが1戦1勝ながら2番人気という高い支持を受けて勝利した。前評判が高い超良血馬がいた場合は、注目するべきだろう。
【結論】
それでは今年の朝日杯FSを分析する。出走予定馬は表6の通りだ。
■表6 今年の朝日杯フューチュリティS出走予定馬
馬名 | 前走レース | 競馬場 | 馬場 | 距離 | 前着 | 差 |
アネゴハダ | 阪神ジュG1 | 阪神 | 芝 | 1600 | 9 | 0.7 |
アルナシーム | 東京スポG2 | 東京 | 芝 | 1800 | 6 | 1.1 |
エーティーマクフィ | 札幌2歳G3 | 札幌 | 芝 | 1800 | 7 | 1.4 |
オタルエバー | 秋明菊賞・1勝 | 阪神 | 芝 | 1400 | 1 | -0.3 |
カジュフェイス | もみじS | 阪神 | 芝 | 1400 | 1 | -0.6 |
シンリミテス | 未勝利* | 中京 | ダ | 1400 | 1 | 0.0 |
ジオグリフ | 札幌2歳G3 | 札幌 | 芝 | 1800 | 1 | -0.7 |
スプリットザシー | 新馬・牝 | 阪神 | 芝 | 1600 | 1 | -0.2 |
セッカチケーン | カトレア | 東京 | ダ | 1600 | 10 | 2.1 |
セリフォス | デイリーG2 | 阪神 | 芝 | 1600 | 1 | 0.0 |
ダノンスコーピオン | 萩S(L) | 阪神 | 芝 | 1800 | 1 | 0.0 |
デュガ | 1勝クラス* | 東京 | 芝 | 1400 | 1 | -0.1 |
トゥードジボン | 未勝利* | 阪神 | 芝 | 1600 | 1 | 0.0 |
トウシンマカオ | 京王杯2G2 | 東京 | 芝 | 1400 | 2 | 0.2 |
ドーブネ | ききょう | 中京 | 芝 | 1400 | 1 | -0.3 |
ドウデュース | アイビー(L) | 東京 | 芝 | 1800 | 1 | 0.0 |
プルパレイ | デイリーG2 | 阪神 | 芝 | 1600 | 4 | 0.3 |
ベルウッドブラボー | 京王杯2G2 | 東京 | 芝 | 1400 | 9 | 0.9 |
ヴィアドロローサ | 京王杯2G2 | 東京 | 芝 | 1400 | 8 | 0.8 |
キャリア2戦以上で無敗の馬がジオグリフ、セリフォス、ダノンスコーピオン、ドーブネ、ドウデュースの5頭というメンバー構成になりそうだ。そしておそらくレース当日はこれらの馬が上位人気に支持されるだろう。この中では前走でG2のデイリー杯2歳Sを勝っているセリフォスと、前走G3の札幌2歳Sを勝利したジオグリフがデータでは最有力。さらに言えば、今回の舞台と同じ阪神芝1600mの重賞を制しているセリフォスが有利に見えるが、果たして結果はどうなるか。
ダノンスコーピオンは萩S、ドーブネはききょうS、ドウデュースはアイビーSを勝っているが、前走オープン特別組の成績があまりにも悪いため、かなり狙いづらい。それならば前走デイリー杯2歳Sで4着と敗れたが、勝ち馬とは0.3秒差だったプルパレイの方がチャンスはあるかもしれない。また、前走京王杯2歳S2着だったトウシンマカオにも注目か。京王杯2歳Sで3着だったラブリイユアイズが、先週の阪神ジュベナイルフィリーズで2着と好走している。
前走1勝クラス組のなかで、前走東京芝1600mを勝っている馬はいなかった。また、前走未勝利組のなかで、目立ったタイム差をつけて勝っている馬もいなかった。今年は前走重賞組を除くと、魅力的な成績を持つ馬がいない印象だ。
ライタープロフィール
小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。