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第1524回 外国産馬の重賞成績を振り返る

2021/5/17(月)

去る5月9日に行われたNHKマイルCではシュネルマイスターが優勝。これがドイツ産・日本調教馬による初のJRA・G1制覇で、外国産馬によるNHKマイルC制覇も2001年のクロフネ以来20年ぶりのことだった。そのクロフネなどが活躍していた当時に比べると、大レースを制する外国産馬はめっきり少なくなった印象だが、数字としてはどの程度の違いが出ているのか。重賞競走における外国産馬の成績を振り返ってみたい。データの分析にはJRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用し、集計期間は1996年以降本年5月9日までとしている。

■表1 NHKマイルC優勝馬と外国産馬出走数

外国産 優勝馬 外国産 優勝馬
1996 14頭 タイキフォーチュン 2009 1頭 ジョーカプチーノ
1997 12頭 シーキングザパール 2010 1頭 ダノンシャンティ
1998 13頭 エルコンドルパサー 2011 2頭 グランプリボス
1999 10頭 シンボリインディ 2012 0頭 カレンブラックヒル
2000 11頭 イーグルカフェ 2013 2頭 マイネルホウオウ
2001 4頭 クロフネ 2014 1頭 ミッキーアイル
2002 10頭 テレグノシス 2015 1頭 クラリティスカイ
2003 4頭 ウインクリューガー 2016 0頭 メジャーエンブレム
2004 8頭 キングカメハメハ 2017 1頭 アエロリット
2005 2頭 ラインクラフト 2018 3頭 ケイアイノーテック
2006 5頭 ロジック 2019 0頭 アドマイヤマーズ
2007 3頭 ピンクカメオ 2020 0頭 ラウダシオン
2008 6頭 ディープスカイ 2021 2頭 シュネルマイスター

2021/5/9 東京11R NHKマイルカップ(G1) 1着 15番 シュネルマイスター

表1は1996年に創設されたNHKマイルCについて、その優勝馬と各年の外国産馬出走数をまとめたものである。1995年まではニュージーランドT4歳Sが今のNHKマイルCに相当するレースとして日本ダービー前後に行われており、1994年にはヒシアマゾン、95年はシェイクハンドと外国産馬が2連勝を飾っていた。そしてNHKマイルCが創設されるとタイキフォーチュンからクロフネまで6連勝。2000年までの日本ダービーには外国産馬が出走できなかったため、このNHKマイルCが「外国産馬(マル外)のダービー」などと呼ばれていた。

しかし2001年に日本ダービーが外国産馬に開放されたのを皮切りに、2002年に皐月賞、2003年にオークス、そして2004年には桜花賞にも外国産馬が出走可能となった。これにより、NHKマイルCは「外国産馬のダービー」から、「3歳マイル王決定戦」という位置づけへと変化していった。

■表2 平地重賞における外国産馬の成績(日本調教馬)

着別度数 勝率 連対率 複勝率 賞金1位(平地重賞のみ)
1996年 25-23-29-196/273 9.2% 17.6% 28.2% ヒシナタリー
1997年 43-31-27-219/320 13.4% 23.1% 31.6% タイキシャトル
1998年 29-29-23-246/327 8.9% 17.7% 24.8% エルコンドルパサー
1999年 31-23-33-255/342 9.1% 15.8% 25.4% グラスワンダー
2000年 27-34-28-291/380 7.1% 16.1% 23.4% メイショウドトウ
2001年 29-27-21-229/306 9.5% 18.3% 25.2% クロフネ
2002年 23-20-19-211/273 8.4% 15.8% 22.7% シンボリクリスエス
2003年 14-17-19-159/209 6.7% 14.8% 23.9% タップダンスシチー
2004年 9-15-9-151/184 4.9% 13.0% 17.9% タップダンスシチー
2005年 7-8-9-119/143 4.9% 10.5% 16.8% アサクサデンエン
2006年 7-17-4-138/166 4.2% 14.5% 16.9% コンゴウリキシオー
2007年 11-7-10-129/157 7.0% 11.5% 17.8% ロックドゥカンブ
2008年 4-12-14-113/143 2.8% 11.2% 21.0% キンシャサノキセキ
2009年 5-9-11-81/106 4.7% 13.2% 23.6% キンシャサノキセキ
2010年 6-9-5-81/101 5.9% 14.9% 19.8% キンシャサノキセキ
2011年 8-6-6-84/104 7.7% 13.5% 19.2% エイシンアポロン
2012年 5-3-6-60/74 6.8% 10.8% 18.9% テスタマッタ
2013年 4-4-6-68/82 4.9% 9.8% 17.1% エーシントップ
2014年 5-3-7-50/65 7.7% 12.3% 23.1% リトルゲルダ
2015年 5-2-2-56/65 7.7% 10.8% 13.8% アルビアーノ
2016年 7-4-4-52/67 10.4% 16.4% 22.4% モーニン
2017年 5-7-3-71/86 5.8% 14.0% 17.4% ラビットラン
2018年 6-10-4-70/90 6.7% 17.8% 22.2% モズアスコット
2019年 5-7-4-82/98 5.1% 12.2% 16.3% ミスターメロディ
2020年 9-3-2-64/78 11.5% 15.4% 17.9% モズスーパーフレア
2021年 4-1-1-21/27 14.8% 18.5% 22.2% (シュネルマイスター)

2001/5/6 東京11R NHKマイルカップ(G1) 1着 4番 クロフネ

こうしてNHKマイルCの成績だけをみると、春のクラシックが外国産馬に開放されたためにNHKマイルCへの外国産馬参戦が減ったようにも見える。しかし実際は、日本で活躍する外国産馬の数そのものが減っていた、というのが表2である。平地重賞競走への外国産馬出走数は2000年ののべ380頭をピークに減少に転じると、2004年に200頭を割り込み、2012年には100頭を切った。平地重賞勝利数をみても1997年にはなんと43勝を数えたのが、2008年以降はひと桁で推移している。内国産馬がレベルアップを果たし、ディープインパクトなど種牡馬としても大成功を収める馬が増えると、外国産馬どころか輸入種牡馬の産駒すら活躍しづらくなったのが現状だ。

ただ表2にあるように、平地重賞における外国産馬の好走確率は上昇傾向にある。昨年はモズスーパーフレア(高松宮記念)、モズアスコット(フェブラリーS、根岸S)など9勝を挙げ勝率は11.5%。そして今年はシヴァージ(シルクロードS)、カフェファラオ(フェブラリーS)、エリザベスタワー(チューリップ賞)、そしてシュネルマイスター(NHKマイルC)と既に4勝。勝率の14.8%は、1996年以降で最高だった1997年の13.4%を今のところ上回っている。新型コロナの影響は未知数だが、このまま活躍馬が増えれば今後輸入される馬も増えていくと考えるのが自然だろう。

■表3 平地G1競走における外国産馬の成績(日本調教馬)

着別度数 勝率 着別度数 勝率
1996年 2-7-6-49/64 3.1% 2009年 0-2-1-17/20 0.0%
1997年 6-6-6-62/80 7.5% 2010年 2-2-1-16/21 9.5%
1998年 7-5-4-56/72 9.7% 2011年 2-0-0-16/18 11.1%
1999年 5-5-6-48/64 7.8% 2012年 1-0-0-8/9 11.1%
2000年 2-7-3-56/68 2.9% 2013年 1-0-2-12/15 6.7%
2001年 7-5-5-41/58 12.1% 2014年 0-0-0-9/9 0.0%
2002年 6-4-2-44/56 10.7% 2015年 0-1-1-4/6 0.0%
2003年 4-1-4-35/44 9.1% 2016年 1-1-1-9/12 8.3%
2004年 1-1-2-36/40 2.5% 2017年 0-3-0-11/14 0.0%
2005年 1-3-2-23/29 3.4% 2018年 1-2-0-25/28 3.6%
2006年 0-3-2-23/28 0.0% 2019年 1-1-0-11/13 7.7%
2007年 2-1-1-24/28 7.1% 2020年 2-0-0-15/17 11.8%
2008年 0-2-3-18/23 0.0% 2021年 2-0-0-4/6 33.3%

最後に平地G1競走にかぎった外国産馬の成績もみておきたい。ここ2年は勝率が高くなっているが、出走数が少なすぎるためまったく参考にはならない。のべ50頭以上が出走し、6勝、7勝と挙げていた時代との違いは明らかだ。

このG1への出走数が増加してくるようなら本格的な外国産馬復権もありそうだが、果たしてどうだろうか。現役時に日本で活躍した馬の産駒が好結果を残す今の競馬がおもしろいという面も当然あるが、その一方で、多様な血統の馬が出走・好走してくれたほうがレース検討時の楽しみが広がるという面もある。そういう意味では1990年代後半〜2000年代初頭のような事態には至らない程度で、外国産馬のさらなる活躍も期待したいところだ。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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