データde出〜た
第1499回 JRAで1年最初のG1となるフェブラリーSを読み解く
2021/2/18(木)
今週末は中央競馬で1年最初のG1となるフェブラリーSが行なわれる。混戦ムードも漂うなか、歴戦の砂の勇者が貫禄を見せるのか、勢いに乗る東西の前哨戦勝ち馬がスターダムへと駆け上がるのか、過去10年のデータからレース傾向を読み解いてみたい。データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 人気別成績
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1番人気 | 4- 2- 2- 2/ 10 | 40.0% | 60.0% | 80.0% | 110% | 112% |
2番人気 | 2- 2- 1- 5/ 10 | 20.0% | 40.0% | 50.0% | 101% | 93% |
3番人気 | 1- 1- 2- 6/ 10 | 10.0% | 20.0% | 40.0% | 67% | 88% |
4番人気 | 1- 1- 1- 7/ 10 | 10.0% | 20.0% | 30.0% | 107% | 116% |
5番人気 | 0- 2- 0- 8/ 10 | 0.0% | 20.0% | 20.0% | 0% | 48% |
6番人気 | 0- 0- 1- 9/ 10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 35% |
7番人気 | 1- 0- 2- 7/ 10 | 10.0% | 10.0% | 30.0% | 243% | 143% |
8番人気 | 0- 0- 1- 9/ 10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 34% |
9番人気 | 0- 1- 0- 9/ 10 | 0.0% | 10.0% | 10.0% | 0% | 60% |
10番人気〜 | 1- 1- 0- 66/ 68 | 1.5% | 2.9% | 2.9% | 400% | 80% |
表1は人気別成績。1番人気は確実に走っており、4着以下に終わったのは2頭だけ。うち1頭は初ダートだった13年のカレンブラックヒルだから、ダートの実績馬が1番人気なら信頼度は高い。2〜4番人気の成績もよく、概して上位人気は好調だ。そのぶん人気薄の好走は少なめながら、14年1着のコパノリッキー、20年2着のケイティブレイブと16頭立ての16番人気馬が2回も連対。人気薄が来るときはドカンと大きな穴が出る傾向も見て取れる。
■表2 枠番別成績
枠番 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1枠 | 1- 0- 0-18/19 | 5.3% | 5.3% | 5.3% | 35% | 13% |
2枠 | 2- 1- 2-14/19 | 10.5% | 15.8% | 26.3% | 37% | 91% |
3枠 | 0- 2- 2-16/20 | 0.0% | 10.0% | 20.0% | 0% | 64% |
4枠 | 1- 1- 0-18/20 | 5.0% | 10.0% | 10.0% | 13% | 12% |
5枠 | 0- 1- 5-14/20 | 0.0% | 5.0% | 30.0% | 0% | 65% |
6枠 | 3- 0- 1-16/20 | 15.0% | 15.0% | 20.0% | 85% | 37% |
7枠 | 2- 3- 0-15/20 | 10.0% | 25.0% | 25.0% | 1386% | 207% |
8枠 | 1- 2- 0-17/20 | 5.0% | 15.0% | 15.0% | 121% | 153% |
表2は枠番別成績。1着馬に関しては、10頭中6頭が6〜8枠から出ている。12年7番人気1着のテスタマッタのほか、表1の項で触れた16番人気の激走馬2頭もここに含まれており、穴を狙うなら外枠というのはひとつのセオリーと言えるのではないか。一方、1〜4枠から勝った4頭は1〜3番人気に収まり、上位の評価をされた馬のみとなっている。
■表3 所属・年齢別成績
条件 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
所属 | 関東 | 1- 1- 0-21/23 | 4.3% | 8.7% | 8.7% | 46% | 17% |
関西 | 9- 8- 10-100/127 | 7.1% | 13.4% | 21.3% | 255% | 95% | |
地方 | 0- 1- 0- 7/ 8 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 27% | |
年齢 | 4歳 | 3- 1- 1- 22/ 27 | 11.1% | 14.8% | 18.5% | 1045% | 148% |
5歳 | 4- 3- 4- 23/ 34 | 11.8% | 20.6% | 32.4% | 43% | 68% | |
6歳 | 3- 2- 3- 30/ 38 | 7.9% | 13.2% | 21.1% | 99% | 69% | |
7歳 | 0- 3- 1- 32/ 36 | 0.0% | 8.3% | 11.1% | 0% | 78% | |
8歳 | 0- 1- 1- 17/ 19 | 0.0% | 5.3% | 10.5% | 0% | 50% | |
9歳以上 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表3は、所属別と年齢別の成績をまとめたもの。関東のG1ながら、地元・関東馬の好走は16年2着、18年1着のノンコノユメだけで、好走の大半を占める関西馬が優位に立つ。地方馬では11年にフリオーソが2着。同馬は出走時点で交流G1を5勝しており、中央を含めてダートではトップクラスの実力馬だった。年齢別では4勝を挙げた5歳がもっとも安定。ただ、3勝の4歳も遜色のない勝率を残し、同じく3勝の6歳もチャンス十分。7歳や8歳にも好走例はあるものの、勝ち馬は出ておらず、好走率も落ちる。
■表4 東京ダート1600m実績
レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1着あり | 4- 6- 7-50/67 | 6.0% | 14.9% | 25.4% | 34% | 55% |
2、3着あり | 3- 2- 1-17/23 | 13.0% | 21.7% | 26.1% | 1317% | 316% |
4着以下のみ | 1- 1- 1-22/25 | 4.0% | 8.0% | 12.0% | 14% | 32% |
出走歴なし | 2- 0- 1-32/35 | 5.7% | 5.7% | 8.6% | 15% | 20% |
※出走時に中央所属の馬のみ
表4は、舞台となる東京ダート1600mの実績別成績。実績の分け方は「1着あり」「2、3着あり」「4着以下のみ」「出走なし」とした。複勝率ベースで見たとき、「1着あり」「2、3着あり」に比べて、「4着以下のみ」や「出走なし」では数値が半減以下になってしまう。ダートの1600mは中央10場でこのコースだけで、なおかつ芝スタートという独特の条件。それだけに経験や適性の有無が、結果にも直結しやすいのだろう。また、実績がある場合でも1着までは求められず、2、3着の経験があれば十分ということにも触れておきたい。
■表5 前走レース別実績
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
根岸S・G3 | 4- 2- 2-49/57 | 7.0% | 10.5% | 14.0% | 75% | 47% |
東海S・G2 | 3- 1- 1-13/18 | 16.7% | 22.2% | 27.8% | 63% | 68% |
チャンピオンズC・G1 | 2- 2- 2- 9/15 | 13.3% | 26.7% | 40.0% | 56% | 61% |
フェアウェルS | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 27210% | 3310% |
川崎記念・G1 | 0- 3- 1-12/16 | 0.0% | 18.8% | 25.0% | 0% | 173% |
東京大賞典・G1 | 0- 2- 3-12/17 | 0.0% | 11.8% | 29.4% | 0% | 94% |
武蔵野S・G3 | 0- 0- 1- 0/ 1 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0% | 220% |
※好走例のあるレースのみ
※チャンピオンズCには13年までのジャパンCダートを含む
表5は前走レース別成績で、好走例のあるレースのみ掲載した。最多の1〜3着馬8頭を出しているのが、東の前哨戦である根岸S。出走数が非常に多いため好走率はそれほどでもないが、近5年で3勝と存在感をさらに増している。これに続くのが西の前哨戦・東海Sで、1〜3着馬5頭を出し、好走率では根岸S組を上回る。また、前年12月のチャンピオンズCから直行してくる馬も複勝率40.0%と、さすがにG1だけあって出走馬のレベルの高さを見せている。そのほか、地方の東京大賞典および川崎記念から臨む馬が計9頭好走しているが、今年はこの臨戦となるJRA所属馬の登録はない。以上の5レースが大半を占め、あとはフェアウェルSと武蔵野Sから好走馬が1頭ずつ出ただけだ。
■表6 前走根岸S出走馬のデータ
根岸S | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
着順 | 1着 | 3- 1- 1- 3/ 8 | 37.5% | 50.0% | 62.5% | 232% | 178% |
2着 | 0- 1- 1- 6/ 8 | 0.0% | 12.5% | 25.0% | 0% | 65% | |
3着 | 1- 0- 0- 7/ 8 | 12.5% | 12.5% | 12.5% | 303% | 95% | |
4着〜 | 0- 0- 0-32/32 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
上がり順 | 1位 | 1- 1- 1- 4/ 7 | 14.3% | 28.6% | 42.9% | 152% | 155% |
2位 | 1- 0- 0- 5/ 6 | 16.7% | 16.7% | 16.7% | 405% | 126% | |
3位 | 2- 0- 0- 6/ 8 | 25.0% | 25.0% | 25.0% | 98% | 42% | |
4位 | 0- 1- 1- 3/ 5 | 0.0% | 20.0% | 40.0% | 0% | 104% | |
5位〜 | 0- 0- 0-30/30 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表6は前走根岸S出走馬について、着順別成績と上がり3Fタイムの順位別成績を示したもの。着順から確認すると、根岸Sで1着だった馬の成績はかなり優秀。以下、3着までには入っておきたいところで、4着以下から巻き返した馬は見当たらない。上がり3F順に関しても明確な傾向が出ており、好走例があるのは上がり4位まで。根岸S組は、この2条件をしっかり満たしておきたいところだ。
■表7 前走東海S出走馬のデータ
東海S | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 | |
着順 | 1着 | 3- 0- 1- 2/ 6 | 50.0% | 50.0% | 66.7% | 190% | 155% |
2着 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
3着 | 0- 1- 0- 2/ 3 | 0.0% | 33.3% | 33.3% | 0% | 100% | |
4着〜 | 0- 0- 0- 5/ 5 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% | |
上がり順 | 1位 | 0- 1- 1- 3/ 5 | 0.0% | 20.0% | 40.0% | 0% | 144% |
2位 | 3- 0- 0- 1/ 4 | 75.0% | 75.0% | 75.0% | 285% | 127% | |
3位〜 | 0- 0- 0- 9/ 9 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表7は前走東海S出走馬について、着順別成績と上がり3Fタイムの順位別成績を示したもの。前項で確認した根岸S組とよく似た傾向が出ており、1着馬の成績は非常によく、好走例があるのは3着までで、4着以下から巻き返した例はない。また、上がり3F順の条件は根岸Sより厳しく、好走したのは上がり1〜2位だった馬に限られる。
■表8 前走チャンピオンズC出走馬のデータ
前走着順 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回率 | 複回率 |
1着 | 1- 1- 1- 1/ 4 | 25.0% | 50.0% | 75.0% | 87% | 107% |
2着 | 0- 1- 0- 0/ 1 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 120% |
3着 | 0- 0- 0- 1/ 1 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
4着 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
5着 | 0- 0- 0- 0/ 0 | |||||
6〜9着 | 0- 0- 0- 4/ 4 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
前走10着〜 | 1- 0- 1- 3/ 5 | 20.0% | 20.0% | 40.0% | 100% | 74% |
※13年までのジャパンCダートを含む
表8は前走チャンピオンズC出走馬について、着順別成績を示したもので、13年までのジャパンCダートも合算している。1、2着に入っていた馬は合わせて【1.2.1.1】と確実に走っており、さすがにG1連対の実績は伊達ではない。また、10着以下から巻き返す例も見られ、該当する15年3着のベストウォーリアと17年1着のゴールドドリームには、フェブラリーSと同コースのユニコーンS1着の実績を持つという共通項がある。
【結論】
今年のフェブラリーSにはフルゲート16頭のところ23頭が登録。約3分の1は除外となるなかなかの狭き門となったが、前走レース別に有力と思われる馬をピックアップしてみたい。
根岸S組は今年も7頭がエントリーする最大勢力。表6の項で見た通り、根岸S1〜3着と上がり1〜4位を満たしておきたいところで、合致するのは1着で上がり2位のレッドルゼル、2着で上がり1位のワンダーリーデルの2頭。ただ、レッドルゼルは距離経験が1400mまでで、東京ダート1600mも当然ながら初出走となり、その克服がカギ。8歳馬のワンダーリーデルも全幅の信頼までは寄せづらいかもしれない。
東海S組は、そこで1〜3着かつ上がり1〜2位が好走条件となるが、残念ながら今年の該当馬はなし。1着オーヴェルニュは上がり順が5位で、上がり1位のデュードヴァンは3着にクビ差届かず4着どまりだった。とはいえ、デュードヴァンは東京ダート1600mで【3.1.0.1】と出走メンバーでも上位のコース実績を持っており、注意は払っておきたい。
今年のチャンピオンズS組は、そこで連対した馬の登録はないが、表8の項で確認した通り、巻き返しも可能なレース。特に東京ダート1600mで実績を残している馬は無視できず、東京ダート1600mでユニコーンS勝ちを含む2戦2勝のカフェファラオ、武蔵野S2勝を含む5勝を挙げているサンライズノヴァの名前を挙げておきたい。
そのほか、19年のユニコーンS勝ち馬ワイドファラオは、名門・角居勝彦厩舎が送り出す最後のG1出走馬という点でも注目。もう1頭、2年前の勝ち馬であるインティも、逃げ馬の宿命とも言えるムラな傾向は見られるものの、やはりコース実績から無視すべきではないだろう。
ライタープロフィール
出川塁(でがわ るい)
1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。