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第1435回 牝馬が活躍する重賞の条件は?

2020/7/6(月)

今年の宝塚記念は、牝馬・クロノジェネシスが2着のキセキに6馬身もの差をつけて勝利を飾った。これで昨年の安田記念・アエロリットの2着以来、3・4歳以上の平地G1競走14レース中10レースで牝馬が連対。リスグラシュー(宝塚記念、有馬記念)、アーモンドアイ(天皇賞・秋)、そしてクロノジェネシスと、特に2000m以上のレースで後続に差をつけて圧勝する例が目立つ。
ただ、牝馬が多く活躍する重賞といえば、現在開催中のサマースプリントシリーズ各競走など、短距離〜マイル戦が中心という印象もある。果たして近年の傾向はどうなっているのか、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用して分析したい。集計期間は2010年1月5日以降、本年6月28日まで。6月以前の重賞は過去11回、7月以降の重賞は過去10回が対象となり(一部除く)、牝馬限定戦と障害競走は除外している。

■表1 重賞競走における牝馬の成績(着別度数順、牝馬4勝以上)

レース名 グレード 距離 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
キーンランドC G3 芝12 7-4-6-42/59 11.9% 18.6% 28.8% 94% 90%
北九州記念 G3 芝12 6-6-6-56/74 8.1% 16.2% 24.3% 122% 85%
アイビスSD G3 芝10 5-5-5-52/67 7.5% 14.9% 22.4% 37% 51%
ジャパンC G1 芝24 5-3-0-15/23 21.7% 34.8% 34.8% 98% 72%
函館2歳S G3 芝12 4-6-4-58/72 5.6% 13.9% 19.4% 19% 77%
シルクロードS G3 芝12 4-3-2-41/50 8.0% 14.0% 18.0% 45% 73%
小倉2歳S G3 芝12 4-3-2-53/62 6.5% 11.3% 14.5% 213% 83%
函館スプリントS G3 芝12 4-2-7-40/53 7.5% 11.3% 24.5% 100% 119%
新潟2歳S G3 芝16 4-2-4-61/71 5.6% 8.5% 14.1% 52% 67%
東京新聞杯 G3 芝16 4-2-0-11/17 23.5% 35.3% 35.3% 255% 115%

2018/11/25 東京11R ジャパンカップ(G1) 1着 1番 アーモンドアイ

まずは、各重賞競走における牝馬の成績(着別度数順)を調べてみた。冒頭にも触れたサマースプリントシリーズに含まれるキーンランドC、北九州記念、そしてアイビスサマーダッシュが上位を占め、対象期間内に牝馬が4勝を挙げた10レース中9レースは芝1600m以下のG3戦だった。そんな中で4位に入ったのが芝2400mのG1・ジャパンCで、ブエナビスタ(2011年)、ジェンティルドンナ(2012〜13年)、ショウナンパンドラ(2015年)、アーモンドアイ(2018年)が優勝している。

■表2 重賞競走性別成績

グレード 性別 着別度数 勝率 連対率 複勝率 1着占有率
格付けなし 牡・セン 3-5-4-44/56 5.4% 14.3% 21.4% 50.0%
3-2-1-23/29 10.3% 17.2% 20.7% 50.0%
G3 牡・セン 501-491-506-5872/7370 6.8% 13.5% 20.3% 86.8%
76-87-73-1041/1277 6.0% 12.8% 18.5% 13.2%
G2 牡・セン 293-293-295-3171/4052 7.2% 14.5% 21.7% 92.7%
23-23-22-302/370 6.2% 12.4% 18.4% 7.3%
G1 牡・セン 157-153-160-2184/2654 5.9% 11.7% 17.7% 88.2%
21-25-18-242/306 6.9% 15.0% 20.9% 11.8%

続いて、グレード別の成績を見てみたい。牝馬の好走確率がもっとも高いのは、そのジャパンCなどのG1競走で、牡・セン馬を上回る成績だ。また、G2やG3では牡・セン馬のほうが好走確率は高いが、牝馬もさほど見劣らない結果を出している。

■表3 G1競走における牝馬の成績(牝馬が3着以内に入ったレースのみ)

レース名 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
ジャパンC 5-3-0-15/23 21.7% 34.8% 34.8% 98% 72%
宝塚記念 3-3-4-12/22 13.6% 27.3% 45.5% 157% 209%
スプリンターズS 2-5-5-36/48 4.2% 14.6% 25.0% 32% 92%
高松宮記念 2-3-3-47/55 3.6% 9.1% 14.5% 65% 47%
NHKマイルC 2-3-1-25/31 6.5% 16.1% 19.4% 26% 70%
天皇賞(秋) 2-2-1-8/13 15.4% 30.8% 38.5% 29% 60%
有馬記念 2-2-0-21/25 8.0% 16.0% 16.0% 61% 46%
安田記念 1-3-1-12/17 5.9% 23.5% 29.4% 70% 54%
大阪杯 1-1-0-1/3 33.3% 66.7% 66.7% 136% 100%
チャンピオンズC 1-0-0-3/4 25.0% 25.0% 25.0% 1660% 295%
マイルCS 0-0-2-27/29 0.0% 0.0% 6.9% 0% 20%
朝日杯FS 0-0-1-5/6 0.0% 0.0% 16.7% 0% 18%

2020/6/28 阪神11R 宝塚記念(G1) 1着 16番 クロノジェネシス

表3は、G1競走における牝馬の成績を調べたものである。3着以内の好走馬数最多はスプリンターズSの12頭。1984年のグレード制導入からしばらくの間は、牝馬(日本馬)による牡馬相手のG1制覇といえば1600m戦か1200m戦がほとんど。その印象からすると、ほかに高松宮記念(8頭)やNHKマイルC(6頭)で牝馬が多く馬券に絡んでいるのも納得できる結果だ。
しかし一方で、連対率25%、複勝率30%を超えたレースには、ジャパンC、宝塚記念、天皇賞(秋)、そして大阪杯と、3・4歳以上の芝2000〜2400m戦ばかりが並び、特にジャパンCや宝塚記念は好走馬数も多い。この4レースに、芝2500mの有馬記念も合わせると集計期間内に13勝。そのうち、2016年の宝塚記念を8番人気で制したマリアライトを除くのべ12頭は、4番人気以内で勝利を収めている。2005年の宝塚記念・スイープトウショウあたりからこの路線でも勝負になる牝馬が増え、今や牝馬であることを減点材料として捉えるファンは少なくなっているようだ。

■表4 G1以外の重賞競走における距離・性別成績(牝馬限定戦除く)

コース 距離 性別 着別度数 勝率 連対率 複勝率 1着占有率
1000m 牡・セン 5-5-5-77/92 5.4% 10.9% 16.3% 50.0%
5-5-5-52/67 7.5% 14.9% 22.4% 50.0%
1200m 牡・セン 68-68-66-865/1067 6.4% 12.7% 18.9% 63.0%
40-41-42-501/624 6.4% 13.0% 19.7% 37.0%
1400m 牡・セン 55-55-55-653/818 6.7% 13.4% 20.2% 90.2%
6-6-6-132/150 4.0% 8.0% 12.0% 9.8%
1600m 牡・セン 117-118-124-1450/1809 6.5% 13.0% 19.8% 83.0%
24-23-17-229/293 8.2% 16.0% 21.8% 17.0%
1800m 牡・セン 116-115-118-1167/1516 7.7% 15.2% 23.0% 93.5%
8-10-5-99/122 6.6% 14.8% 18.9% 6.5%
2000m 牡・セン 154-151-152-1673/2130 7.2% 14.3% 21.5% 95.7%
7-10-11-160/188 3.7% 9.0% 14.9% 4.3%
2200m 牡・セン 49-47-53-535/684 7.2% 14.0% 21.8% 92.5%
4-6-0-36/46 8.7% 21.7% 21.7% 7.5%
2400m 牡・セン 40-41-40-452/573 7.0% 14.1% 21.1% 93.0%
3-2-3-21/29 10.3% 17.2% 27.6% 7.0%
2500m 牡・セン 31-30-30-371/462 6.7% 13.2% 19.7% 100.0%
0-1-1-15/17 0.0% 5.9% 11.8% 0.0%
3000m 牡・セン 11-10-10-84/115 9.6% 18.3% 27.0% 100.0%
0-1-1-3/5 0.0% 20.0% 40.0% 0.0%
3400m 牡・セン 11-11-11-120/153 7.2% 14.4% 21.6% 100.0%
0-0-0-8/8 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%
3600m 牡・セン 10-10-10-103/133 7.5% 15.0% 22.6% 100.0%
0-0-0-6/6 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%
ダート 牡・セン 130-128-131-1537/1926 6.7% 13.4% 20.2% 96.3%
5-7-5-104/121 4.1% 9.9% 14.0% 3.7%

最後に、G1以外の重賞競走について距離別成績を調べてみた。表1からも予想できたことだが、やはり牝馬は芝1600m以下のレースで好走が多く、好走確率も高い。ただ、勝率で1位、2位を占めたのは芝2400m(勝率10.3%)と2200m(同8.7%)。また、出走わずか5頭とはいえ3000m戦(阪神大賞典)では複勝率40.0%を記録している。表3のG1でもそうだったが、牡馬相手の中〜長距離重賞を選んで出走してきた牝馬への警戒は怠れない印象だ。

以上、牡牝混合重賞における牝馬の成績について、いくつかデータを調べてみた。好走馬数という意味で活躍が「目立つ」のはやはり短距離戦だが、「目立つ舞台」=G1になると芝2000〜2400mでの好走馬も多く、好走確率が非常に高い点は見逃せない。表4で触れたように3000mの阪神大賞典で馬券に絡む馬も出ているだけに、今後は春の天皇賞を制する馬が現れるかどうかにも注目したいところだ。

ライタープロフィール

浅田知広(あさだ ともひろ)

1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。


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