当歳世代の注目種牡馬

ここからは、当歳世代が初年度産駒となる種牡馬たちについて、話を伺います。

サトノダイヤモンド

サトノダイヤモンド

サトノダイヤモンド

ディープインパクトの後継種牡馬としての期待がかかるサトノダイヤモンドです。セレクトセールの取引馬で、現役時には菊花賞、有馬記念とGIを2勝しました。

徳武氏 「サトノダイヤモンド自身、セレクトセールの当歳市場では2億3000万円(税抜)という高い評価を得ていたように、生まれながらに外見的評価の高い馬でした。父譲りの好馬体が受け継がれている産駒たちも、当歳市場から評価が高くなるだろうと思っていて、外見的にも次々と声がかかりそうなラインナップがそろった印象を受けます」

この当歳市場には13頭の産駒が名を連ねています。

徳武氏 「頭数的には相当なボリュームと言えますね。父であるディープインパクトに配合されてきたような良血牝馬との配合が多いですし、骨格やバランスの良さ、脚元の正確さ、そして頑強ぶりと、この時期から大物感を漂わせています。サトノダイヤモンドはディープインパクト産駒の傑作と言えますし、その産駒には父の果たせなかった凱旋門賞制覇を目指してもらいたいです」

リアルスティール

リアルスティール

リアルスティール

ディープインパクトの後継種牡馬の中でも、その血統背景の良さで評価が高いのがリアルスティールです。

徳武氏 「3代母には世界的な良血馬であるMiesqueの名前もあり、キングカメハメハの血が入った繁殖牝馬との配合では、牝馬クロスを成立させることも可能です。国内ではGI勝ちこそありませんでしたが、三冠レースでは距離を問わずに活躍してくれましたし、その競走成績やレース内容を見ると、芝のマイラーとしても高い資質を持っていたはずです」

初年度産駒をご覧になった感想を聞かせてください。

徳武氏 「リアルスティール自身が、頭から尾っぽのラインまで細長い鉄骨が入っていたかのようにしっかりとした馬で、ディープインパクトやサンデーサイレンス系の種牡馬ともまた違った、手脚の力強さを感じさせる歩きをしています。産駒にもこの体質の良さは受け継がれており、現役時のリアルスティールをよく見てきたバイヤーの方は、それだけで興味を示してしまうことにもなりそうです。血統背景、競走実績共に国際的にも水準の高いディープインパクト産駒ですし、せりの前半から後半まで、満遍なく産駒も上場されているので、ファンの皆さんもその姿を見逃さないようにしていただきたいです」

マインドユアビスケッツ

マインドユアビスケッツ

マインドユアビスケッツ

2016年のブリーダーズカップスプリントでドレフォンの2着に入り、2017・2018年にドバイゴールデンシャヒーンを連覇したマインドユアビスケッツです。今回紹介する当歳世代が初年度産駒の種牡馬の中では、唯一の輸入種牡馬となります。

徳武氏 「アメリカ競馬特有の先行、押し切りは敢えてせずにスプリントレースにもかかわらず後方待機策で挑み、3コーナーから強襲していくようなレーススタイルは独特であり、結果としてもったいない競馬になることもありました。そもそも距離を延ばしても良かったのでは、という疑問もありますが(笑)、実際に競走生活の晩年は中距離でもいいレースを見せていましたし、何よりもあの末脚のスピードは、東京、新潟といった長い直線のコース向きなのではと想像させられます」

その意味でも日本競馬向きの種牡馬と言えそうですし、産駒もスプリンターのイメージで固定しない方が良さそうですね。

徳武氏 「この春に誕生した産駒たちも、アメリカのスプリンター特有のムキムキ感はなく、むしろマインドユアビスケッツの、脚長ですらっとした馬体が遺伝しています。今シーズン種付けされている繁殖牝馬も、マイルより長い距離での活躍を見越した配合が見られますし、ディープインパクトを父に持つ牝馬との産駒では、ディープインパクトそのものといった馬体の馬もいます。血統的にはディープインパクトだけでなく、キングカメハメハが入った繁殖との相性も良さそうですし、せりの上場馬だけでなく、2年後の産駒の走りにも注目してください」

サトノクラウン

サトノクラウン

サトノクラウン

自身もセレクトセールの取引馬だったサトノクラウンです。

徳武氏 「初年度産駒が今年の当歳市場に登場します。上場頭数こそ多くはありませんが、種付けは去年、今年と多くの繁殖牝馬を集めています。本馬の競走成績は古馬になってから活躍した印象を受けますが、生産者の皆さんから評価していただいているのは、2歳戦からクラシックシーズンにかけて見せた世代トップクラスの能力の高さのようです。それに加えて、祖父のラストタイクーンに親近感が沸いてくるようです」

ラストタイクーンは日本でも繋養されていた時期がありますし、父のマルジュも世界中で産駒が大活躍しましたね。

徳武氏 「父のマルジュは2歳戦から結果が残せるノーザンダンサー系の種牡馬であり、現在の主流血統との配合がしやすいのも、本馬の種牡馬としての人気につながっています。自身の、身が詰まったまとまりのある馬体が受け継がれた産駒は、節々がしっかりとしていて、2歳戦の早い時期から競馬に使えそうな印象があります。スピード勝負のレースだけでなく、重馬場のレースでも能力を発揮してきた多様性もありますし、欧州の血統馬らしい奥深さも兼ね備えています。こうした父の特徴を受け継いだ産駒のポテンシャルを、多くのバイヤーの方に見いだしてもらいたいですね」

レッドファルクス

レッドファルクス

レッドファルクス

今年の当歳市場では、スプリンターズSを連覇したレッドファルクスも初年度産駒をせりへと送り出します。

徳武氏 「上場頭数は多くありませんが、産地では安定した人気を誇っている種牡馬であり、その中でも日高地区から多くの繁殖牝馬を集めています。スタッドインした頃は、母の父のサンデーサイレンスが出たような、すらっとした馬体をしていたのですが、最近ではトモの幅だけでなく、馬体全体にたくましさが出てきました。この辺は祖父のエンドスウィープらしさが出てきたとも言えそうです」

生産地で人気を集めているのは、この好馬体も後押ししているのかもしれませんね。

徳武氏 「当歳市場の上場馬に限らず、この春に誕生した産駒たちはしっかりとした骨格をしていて、父のレッドファルクスが芝とダートの双方のレースで活躍したのも納得がいきます。スプリンターズSを連覇したスピード能力は傑出していると思いますし、それでいながら性格は素直。その性格や能力が受け継がれた産駒もまた、芝とダートといった条件を問わない活躍馬が出てくるはずです。また、せりの上場馬にも見られますが、産駒にはサンデーサイレンスのクロスを持つ配合馬が多く、それがどのような能力の後押しとなっていくのかも楽しみにしています」

注記:当コンテンツは、2020年6月25日時点での情報を基に制作しています。

ライタープロフィール

村本浩平(競馬ライター)

北海道在住の“馬産地ライター”として、豊富な取材をもとに各種競馬雑誌で活躍中。

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