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第1314回 今年はG1馬2頭が出走予定のNHKマイルCを読む

2019/5/2(木)

今年のNHKマイルCで注目を集めるのが、桜花賞を快勝したグランアレグリア。加えて、この桜の女王を朝日杯FSで破った実績を持つアドマイヤマーズも参戦を予定する。他にも重賞勝ち馬が多数エントリーしており、例年以上に盛り上がりそうな3歳マイル王者決定戦を、過去10年のデータから展望してみたい。データの分析には、JRA-VAN DataLab.TARGET frontier JVを利用した。

■表1 人気別成績

人気 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1番人気 5-  0-  0-  5/ 10 50.0% 50.0% 50.0% 151% 76%
2番人気 1-  3-  1-  5/ 10 10.0% 40.0% 50.0% 58% 107%
3番人気 1-  1-  1-  7/ 10 10.0% 20.0% 30.0% 64% 72%
4番人気 0-  1-  1-  8/ 10 0.0% 10.0% 20.0% 0% 45%
5番人気 0-  2-  0-  8/ 10 0.0% 20.0% 20.0% 0% 72%
6番人気 1-  1-  1-  7/ 10 10.0% 20.0% 30.0% 128% 120%
7番人気 0-  0-  0- 10/ 10 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
8番人気 0-  0-  1-  9/ 10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 77%
9番人気 0-  0-  1-  9/ 10 0.0% 0.0% 10.0% 0% 52%
10番人気〜 2-  2-  4- 82/ 90 2.2% 4.4% 8.9% 82% 127%

表1は人気別成績。なかなか興味深い傾向が出ているので順に見ていきたい。1番人気は【5.0.0.5】と半分は勝ち切るが、残りの半分は3着もないという極端な成績を残している。2番人気も複勝率50.0%と2頭に1頭は3着以内に入る計算で、3〜6番人気もコンスタントに馬券になっている。ただ、それ以上に注目すべきは、10番人気以下が8頭も馬券になっていること。勝ち馬も2頭出ており、人気薄まで手広くフォローする必要がありそうだ。

■表2 過去10年の1番人気敗退馬

着順 馬名 備考
09年 10 ブレイクランアウト 中12週
13年 7 エーシントップ 芝1400mで3戦3勝
15年 5 グランシルク 重賞未勝利
17年 17 カラクレナイ 芝1400mで4戦3勝
18年 12 タワーオブロンドン 芝1400mで2戦2勝

表2では、過去10年に1番人気で敗れた馬を確認しておきたい。該当するのは5頭。そのうちの3頭、13年のエーシントップ、17年のカラクレナイ、18年のタワーオブロンドンは芝1400mで重賞を含む2勝以上を挙げていた実績が共通する。表9の項でも後述するが、芝1400mの実績がある馬は苦戦の傾向があり、それは本命馬であっても逃れられないようだ。そのほか、15年のグランシルクは過去10年の1番人気で唯一の重賞未勝利馬(出走時)で、09年のブレイクランアウトは中12週の休み明けが響いたか。ただし、前回の「データde出〜た」でも確認した通り、現在では休み明けの意味合いがだいぶ変わっており、一概にマイナスとは言えなくなっていることは指摘しておく。なお、ブレイクランアウトとグランシルクは近親(ブレイクランアウトの半姉の仔がグランシルク)にあたり、この2頭に関しては血統的な相性の悪さもあったのかもしれない。

■表3 過去10年の10番人気以下好走馬

人気 着順 馬名 前走 前々走
レース名 人気 着順 レース名 人気 着順
09年 10 1 ジョーカプチーノ ニュージーランドT・G2 3 3 ファルコンS・G3 4 1
13 3 グランプリエンゼル 橘S 11 1 500万下 10 1
12年 15 3 クラレント 弥生賞・G2 11 12 朝日杯FS・G1 2 7
13年 10 1 マイネルホウオウ ニュージーランドT・G2 4 7 スプリングS・G2 11 3
14年 17 2 タガノブルグ 橘S 1 1 ファルコンS・G3 5 5
12 3 キングズオブザサン 皐月賞・G1 11 15 弥生賞・G2 3 5
16年 12 3 レインボーライン ニュージーランドT・G2 4 5 アーリントンC・G3 4 1
17年 13 2 リエノテソーロ アネモネS 2 4 全日本2歳優駿・G1 1 1

表3は、過去10年に10番人気以下から1〜3着に入った馬をまとめたもので、前走と前々走の人気と着順も付記している。これを見ると激走パターンには大きく分けてふたつあるようだ。ひとつは、近2走のどちらかでオープンのレースを勝っていたものの、それが芝1200mやダートの交流重賞だったために10番人気以下に甘んじたパターン。09年1着のジョーカプチーノ、同2着のグランプリエンゼル、14年2着のタガノブルグ、17年2着のリエノテソーロが該当する。もちろん、16年3着のレインボーラインのように、2走前に芝1600m重賞を勝っていたのに人気薄という馬にも注意すべきだろう。

もうひとつは、近2走のうちに芝1800m以上の重賞を使っていたパターンで、12年3着のクラレント、13年1着のマイネルホウホウ、14年3着のキングズオブザサンが該当する。こちらの場合はそのレースで大敗していても巻き返しており、近2走で皐月賞、弥生賞、スプリングS、毎日杯などを使っていた馬も侮れない存在となる。

■表4 前走距離別成績

前走距離 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
今回延長 0-  2-  1- 40/ 43 0.0% 4.7% 7.0% 0% 123%
同距離 8-  2-  4- 79/ 93 8.6% 10.8% 15.1% 113% 64%
今回短縮 2-  6-  5- 31/ 44 4.5% 18.2% 29.5% 20% 144%

表4は前走距離別成績。これを見ると、好走率が高いのは前走より距離短縮で出走する馬だが、1着は前走でも同じ1600mを使っていた馬から出ることが多いことがわかる。一方、前走より距離延長となる馬はかなりの苦戦。ただし、複勝回収率は高く、来たときには穴をあけているので一応の警戒は必要か。

■表5 距離延長馬・前走着順別成績

前走着順 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
1着 0- 2- 1-20/23 0.0% 8.7% 13.0% 0% 230%
2着〜 0- 0- 0-20/20 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%

前項で距離延長馬は苦戦と述べたが、表5の通り、前走1着なら可能性はあるようだ。それでも好走率が高いとまでは言えないものの、複勝回収率230%は無視できず、2、3着に来ることは想定してもいいだろう。

■表6 前走同距離馬・前走着順別成績

前走 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
着順 1着 2- 0- 0-15/17 11.8% 11.8% 11.8% 32% 18%
2着 1- 1- 0- 9/11 9.1% 18.2% 18.2% 116% 64%
3着 2- 0- 2- 8/12 16.7% 16.7% 33.3% 370% 177%
4着 1- 1- 0- 7/ 9 11.1% 22.2% 22.2% 25% 121%
5着 1- 0- 1- 8/10 10.0% 10.0% 20.0% 58% 88%
6着〜 1- 0- 1-32/34 2.9% 2.9% 5.9% 100% 27%
人気 1番人気 5- 0- 0- 7/12 41.7% 41.7% 41.7% 210% 82%
2番人気 0- 2- 0- 8/10 0.0% 20.0% 20.0% 0% 129%
3番人気 1- 0- 0- 8/ 9 11.1% 11.1% 11.1% 442% 124%
4番人気 1- 0- 3- 9/13 7.7% 7.7% 30.8% 263% 161%
5番人気 0- 0- 1- 5/ 6 0.0% 0.0% 16.7% 0% 53%
6番人気〜 1- 0- 0-42/43 2.3% 2.3% 2.3% 13% 5%

表6は、前走で同距離の1600mに出走していた馬について、前走人気と着順別の成績を示したもの。意外に不振なのが前走1着馬で、勝った2頭を除く15頭はすべて4着以下に終わっている。ちなみに、勝った2頭は12年のカレンブラックヒルと14年のミッキーアイルで、いずれも本番は逃げ切りという共通点がある。前走2着の成績もいまひとつで、前走3、4着ぐらいのほうが好走率は高いぐらいだ。むしろ前走人気のほうが直結する印象もあり、前走1番人気は勝率41.7%と前走1着馬を上回っている。なお、好走例はあるものの、前走6着以下や6番人気以下の好走率はかなり低くなっている。

■表7 距離短縮馬・前走騎手別成績

前走騎手 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
継続騎乗 2- 3- 4-14/23 8.7% 21.7% 39.1% 39% 166%
乗り替わり 0- 3- 1-17/21 0.0% 14.3% 19.0% 0% 119%

表7は、前走より距離短縮で出走する馬の騎手について「継続騎乗」と「乗り替わり」の成績を比べたもの。ご覧の通り、距離短縮の場合は「継続騎乗」のほうが明らかに高い好走率を記録している。このケースでは前走がクラシック路線の重賞ということも多いが、ジョッキーをしっかり確保したうえでの路線変更のほうが、やはり結果は出しやすいのだろう。

■表8 芝1600m戦の複勝率別成績

複勝率 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
2戦以上 50.0%以上 8- 5- 7-65/85 9.4% 15.3% 23.5% 84% 92%
50.0%未満 0- 0- 0-40/40 0.0% 0.0% 0.0% 0% 0%
1戦 100.0% 1- 2- 0-16/19 5.3% 15.8% 15.8% 209% 99%
0.0% 0- 2- 0-17/19 0.0% 10.5% 10.5% 0% 152%
未出走 1- 1- 3-12/17 5.9% 11.8% 29.4% 15% 295%

表8は、「NHKマイルCまでに出走した芝1600mでの複勝率」に関する成績を示したもの。まず、芝1600mで2戦以上した馬は明確な傾向を示しており、複勝率50.0%未満だった40頭はすべて4着以下という厳しい結果が出ている。また、出走歴が1戦のみでも、そのレースで好走できなかった馬の好走率は決して高いとは言えない。未出走でも問題はないが、芝1600mの出走歴がある馬に関しては、その成績が重要な意味を持つと考えたい。

■表9 芝1400m戦の勝利数別成績

レース名 着別度数 勝率 連対率 複勝率 単回率 複回率
2勝以上 0- 2- 0-19/21 0.0% 9.5% 9.5% 0% 40%
1勝 2- 2- 4-51/59 3.4% 6.8% 13.6% 17% 93%
0勝 2- 0- 1-33/36 5.6% 5.6% 8.3% 128% 116%
未出走 6- 6- 5-47/64 9.4% 18.8% 26.6% 90% 111%

表9は、「芝1400mの勝利数別」の成績を示したもの。表2の項でも関連することに触れたが、過去10年、NHKマイルCまでに芝1400mで2勝以上していた馬が勝った例はない。また、1勝や0勝の成績も芳しいとは言えず、芝1400m未出走だった馬のほうが好走率は明らかに高い。NHKマイルCにおいて、芝1400mの実績はむしろ重荷になってしまうようだ。

【結論】

2019/4/7 阪神11R 桜花賞(G1) 1着 8番グランアレグリア 2018/12/16 阪神11R 朝日杯FS(G1) 1着 6番アドマイヤマーズ

表1、2の項で見た通り、過去10年の1番人気は【5.0.0.5】という極端な成績。そして、芝1400mで2勝以上挙げている馬や重賞未勝利馬だと4着以下に終わることも多かった。

その点、今年のNHKマイルCで1番人気が予想される桜花賞馬のグランアレグリアは芝1400mに出走したことがなく、過去4戦すべて芝1600mで複勝率100.0%。もちろん重賞も勝っている。前走が同距離となるため、桜花賞で1番人気なら文句なしだったが、その点を除けば大きな瑕疵は見られない。さらにいえば、前走1600m1着から制した2頭がいずれも逃げ切りだったことを考慮すると、思い切ってハナを奪ったほうが持ち前のスピードを活かしやすいかもしれない。

2番人気はアドマイヤマーズになりそうで、同馬は皐月賞4着から距離短縮で臨むことになる。そして、距離短縮の場合は騎手が継続騎乗するほうが望ましく、引き続きミルコ・デムーロ騎手が騎乗予定というのは好材料だ。芝1400mには出走したことがなく、芝1600mでは4戦4勝とパーフェクト。データ的には、この馬のほうが隙はないぐらいだ。

そのほか、ダノンチェイサー、クリノガウディー、ファンタジストといった馬も距離短縮かつ騎手の継続騎乗が予定されている。ただし、このうちファンタジストは芝1400mの京王杯SCを制しているのがかえってマイナスで、芝1400m未出走のダノンチェイサークリノガウディーのほうが狙いやすい面はある。

前述したグランアレグリアを除く前走同距離の馬では、前走6着以下や前走6番人気以下だと好走率が大幅に下がる。アーリントンC組の5頭はすべてこの点に引っ掛かっており、狙うとすればニュージーランドT組のワイドファラオ(前走4番人気1着)とヴィッテルスバッハ(前走2番人気3着)か。

芝1400mで2勝以上しているプールヴィル、ハッピーアワー、トオヤリトセイトは今回のデータからは推奨しづらいところ。なかでも芝1600mにも2回以上出走して複勝率が50.0%に満たないプールヴィルは苦戦も予想される。

こうして見ると堅い決着になりそうな今年のNHKマイルCだが、10番人気以下が3着以内に入ることが多いレースでもある。表3で見た通り、過去2走以内に芝1200mで勝った馬や芝1800m以上の重賞を使っていた馬は要注意で、該当する馬として前走が毎日杯のケイデンスコールマイネルフラップの名前を挙げておきたい。

ライタープロフィール

出川塁(でがわ るい)

1977年熊本県生まれ。上智大学文学部卒業後、出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。「競馬最強の法則」「サラブレ」「優駿」などへ寄稿するほか、出版社勤務時代を含めて制作に関わった競馬書籍は多数。馬券は単勝派だが、焼肉はタン塩派というわけではない。メインの競馬のほか、サッカーでも密かに活動中。


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