■2025 セレクト探検記 初日
2025年の幕開けは、毎度おなじみ肉体派系マッチョ。上場番号1番・コントレイル×メチャコルタの参考体重は、1歳7月時点で450キロ前後(1年後は50〜80キロ増?)、2億6000万円で軽快にハンマーが落ちた。
いつもの年より4〜5000万高いのかも?――開幕前の動画ビデオで述べたように、前年の平均購買価格を上回る匂いがする。
もうひとつの予言は、1歳セッションは「キタサンブラック産駒祭り」?まずは上場番号5番・イーヴンソー(愛オークス優勝)の2024は、牝馬ながら1億1500万円で落札。次いで23番のコンヴィクションUの2024は3億円。前年のコントレイル産駒の高額取引シーンなどを思い出したりする。
31番のブルックデイル(4勝)の2024は、1億2000万円。半兄ドクタードリトルは4勝、父がデクラレーションオブウォーからキタサンにかわり、よりボリューミーかつ闊達で元気な男子が誕生。38番のマニクールの2024も同じ値がついた。
そして45番のモシーンの2024は、本日のキタサンの中でも大のつく目玉。半姉はマイルGV3勝、ヴィクトリアマイル2着のプリモシーン。臀部の造りと丸みがなんとも言えない一族ですが、巨尻度合は兄弟でも一番です。
54番のサザンスターズの2024は、スターズオンアースの半弟。馬体はパツンパツン、適度に勝ち気、動きは俊敏かつパワフル。姉同様マイルからクラシックディスタンスまで幅広く活躍が見込めるかもしれない。
69番のフォトコールの2024は、なんとオンラインビットで落札。聞けば落札者はゴリアットのオーナーとか。1億7000万円はドルにしたら、いったいいくらだろう?(笑)。
続く80番のラビットラン(ローズS優勝、JBCレディスクラシック2着など芝・ダート二刀流)の2024は、母譲りのパンチ力を持つ快速マイラーか。
そして86番のノームコアの2024は、キタサン産駒でこの日2番目に高額となる4億1000万円で落札。母はヴィクトリアマイル、香港C優勝。母の妹クロノジェネシスも含め、レースと年を重ねるたびに味の出る一族。緩さの中にも品格とスケールがあり、クラシック三冠はもちろん、古馬となり、どのディスタンスで成功するのか。海外遠征はどうか。想像するだけで夢心地です。
締めの億超えは100番のエトワールU(母は仏3勝・北米G1優勝)の2024、お値段は1億6500万円。106番のイーデンキーの2024の7000万円以外は、すべて1億円超え。キタサン祭りにみんなが悶絶。
コントレイル祭りも活気十分。前述した上場番号1番のメチャコルタの2024に続き、36番のストリートバンド(北米G1〜3各1勝)の2024は、1億2500万円、57番のパリスビキニの2024は今年の同産駒この最高価格の2億8000万円。
ちなみにアメリカで走った半姉パリスライツはCCAオークス優勝、母の日本で生まれた最初の産駒アメリカンビキニは現2勝、小倉の5Fダートを2歳レコードで駆けた快速馬。現2歳のクリソベリル産駒は夏の新潟ダートでのデビューを目指していると聞くが、本馬は四肢や背中がスラリ。芝も大丈夫なんじゃないかなぁ…。
84番のアスコルティの2024は、動画でも述べているが、独特の肌艶をした俊敏マイラー。89番のターフドンナ(独オークス優勝)の2024は1億5000万円。
115番のイスパニダの2024は2億5000万円。一番仔から注目してきた血統ですが、本年の産駒が一番バランスが良く、造りもしっかり。コントレイルはキタサンに次ぐ、計7頭の億越えを送り出した。
キズナ産駒は上場の9頭中5頭が億越え。上場番号2番のシュガーショック(半兄ラーゴムはきさらぎ賞優勝)の2024は1億2500万円。
51番のラッキーダイムの2024は、個人的にもお気に入り。母の兄弟に、後でも述べるホットロッドチャーリーの名が見える。桜花賞からオークス、ダートや古馬となっても楽しめるキビキビとした万能系。
98番のリリーズキャンドルの2024は母や兄に似た快速系、マッハの速度で2億3000万円まで釣り上がった。
101番のコンペティションオブアイデアズ(アメリカンオークス優勝)の2024は1億6000万円。母は重賞連対数も多く、タフかつ機敏。距離レンジも広く、自在な重賞ウィナー誕生の予感。
フライトライン(Flightline)産駒には小さくびっくり。前年のセレクトセールの人気度合から計り、高値をつけるだろうなと思ってはいたが。16番のセルフレスリーの2024の1億9000万円に続き、66番のベッラガンバの2024は1億500万円、99番のギフトリストの2024は1億8000万円。3頭ともに億超え、首差しや腰回りのシルエットなど、見事にみんな同じ。芝・ダート兼用で重賞が目標となりそう。
サートゥルナーリア産駒の64番ウェイヴェルアベニュー(半兄グレナディアガーズは朝日杯FS優勝)の2024は、キレッキレの牝馬。見た目はスラリ、しかし現時点で推定440キロ。馬体のラインも芯が通っている。
90番のヤンキーローズの2024は、本日のセッションでも一番気になる存在。ドゥラメンテ産駒のリバティアイランドなど、姉たちとは毛色も骨格も少し異なるが、初の男子。姉に倣い牡馬三冠ロードを歩もうよ。
本年の2歳シーンでも素早く結果を出しているインディチャンプだが、21番のベルアリュールUの2024の姉はアドマイヤリード(ヴィクトリアマイル優勝)、そしてアドマイヤベル(フローラS優勝)。今年の1歳産駒は首差しと背中はしっかり、現時点で推定450キロ。マイル重賞の色は金か銀か銅か。
クリソベリル産駒なら48番のエスメラルディーナ(芝オープン特別優勝、ダートは関東オークス優勝)の2024ですかね。半兄アリーヴォは小倉大賞典勝ち。首差し、胸の厚みがなんともいえない480キロ前後の大型ダンプカーです。
ダートシーンの種牡馬は、ほかにもう一頭ホットロッドチャーリーを指名。33番のアイスパステルの2024の兄アドマイヤデイトナは現3歳で、本年春のUAEダービーを優勝。アメリカ人と思しき外国の方たちも下見所でやけどしそうに熱い視線を送っていました。
初日の大トリ、233番のエピファネイアの後継種牡馬エフフォーリア×リリサイドは1億7000万円でしゃんしゃんしゃん。半姉は名牝リスグラシュー(有馬記念、宝塚記念、エリザベス女王杯優勝)。父に似て姉よりは肉厚、来年の今頃、無事デビューを祈る。
落札率は99.1%、総売り上げは155億4600万円、1頭平均は7000万円には届かなかったけれど約6909万円とジャンプアップ。ほとんどの分野で前年を軽々と超えた。
■2025 セレクト探検記 二日目
当歳セッションの下見は、毎年セリ開始2時間前からの突撃取材。事前に動画を出すなど、下調べが可能な牧場も今年からあるようになったけれど、実馬とはまったくの初対面です。
見た。感じた。聞いた。コレかぁ〜!?
シンプルに馬の個体にぶつかるしかありませんね(笑)
7月時のセレクトセール上場馬の1歳時馬体重の推定水準値は420キロ超、当歳は1〜3月生まれで210キロ前後が目安となるが、オープニングの301番のキタサンブラック×オンディナドバイ(亜マイルG1優勝)は、アルゼンチン産駒らしく骨格の大きな226キロの艶のある黒鹿毛。
前日の1歳セッションで、キタサンブラック産駒への安心感が増した感はありますが、いきなり2億円ですか?
同キタサン産駒は続く335番のレディランドルフの2025が1億4000万円。360番のキングズハーレクイーン(仏G3優勝)の2025は2億1000万円。385番のサンシャイン(エルフィンS優勝、半兄のアラタは福島記念優勝)の2025が1億2000万円ときて、391番のアメリカンソング(亜G1 1勝、G2 2勝。半兄はオオタニサーン)の2025は2億円。
407番のシンプリーグロリアス(愛2勝)の2025は展示会場でも人だかりができていたが、文字通り息詰まる競り合い。おお、なんと5億円に沸騰です。
これで終わりかと思ったら、423番のリリーズキャンドルの2025は1億4000万円。438番のブルーストライプ(亜・古馬牝馬チャンピオン)の2025は1億7500万円。キタサン祭りは小休止かなと思っていたのに、2日続きのワッショイ連打だ。
億超えが13頭中8頭の高打率。生産頭数さえそろえば、これからもこの流れが数年(ひょっとして10年近く?)続くかもしれないなぁ…。
そして、イクイノックスは、世界も見つめ認めるキタサンブラックの後継第一種牡馬。初登場の318番のキャンプロック(仏G3優勝、G1 2着)の2025の2億3000万円には納得。
329番のカレドニアロードの2025は、昨年の当歳にも兄が出ていたが、弟も2億円と高値安定で推移。
344番のミッドナイトビズー(北米13勝、沙1勝、G1 5勝)の2025は、見るからにイクイノックス感あふれるスポーティーな黒鹿毛。せっかくなのでお願いしてちょっとばかり歩かせてもらいましたが、後肢の送りは深く正確。性格も素直、非のうちどころがないよ。5億8000万円という価格は誰もが想像した数字だった。
やっぱり当歳の主役はイクちゃんかも?キタサン祭りをぶっとばす、1970年の大阪万博並みの、ものすごい賑わいになるのではと思っていたら、あれあれ。よく見ると億超えのパーセンテージは、キタサンほどではない。
落札価格にポツリポツリと谷間が生じ、361番の牝馬ノーワン(フィリーズレビュー優勝)の2025は1億7000万円。376番のベラソフィア(米G1 1勝、G2 2勝、G3 1勝)の2025は、牝馬ながら257キロと馬体は悠々。そこのけそこのけ、威風堂々1億7000万円で落札。
そして396番のムーチョアンユージュアル(米・芝G1 1勝、芝G2 1勝、芝G3 2勝)の2025は、2億6000万円へと再ジャンプ。小粒に映るが、歩きはしなやか。プチ・イクイノックスって感じ。
401番のグローバルビューティ(亜G1 1勝、2着2回)の2025は、プリップリの鹿毛。半姉パルクリチュードはフラワーC3着、半兄ミッキーゴールドは若駒S2着。どこかキタサンブラックの面影も残しており、3億1000万円にまで到達。
418番のグレースアドラー(米G1 1勝)の2025は1億5000万円。431番のゴーイングトゥベガス(北米G1 2勝、G2 1勝)の2025は、歩きはズシズシ、活力に満ち満ちており、同産駒2番目の4億5000万円の高値をつけたが、こちらが上という評価を唱える人もいた。
億超えのトリとなった、458番のコンヴィクションUの2025は、1億5000万円でフィニッシュ。気が付けば億超えは上場中約半分の計11頭。上場頭数もセレクト史上トップランクだったが、数はやっぱチカラですかね。
まあ、初年度ゆえ購買者の慎重姿勢も若干感じるが、2年前のコントレイルの熱はともかく、あのディープインパクトの初年度だって、みんな半信半疑。1年経ったらソッコーで、信頼度は大幅にアップする可能性が高いと思う。
エピファネイアは精鋭11頭が上場。305番のシーリングクラッシャー(北米G1、G3各1勝)の2025は、250キロを超える大型。血統はもちろん、馬っぷりを買われ、ハンマープライスは2億円。
331番のルールブリタニアの2025は、今年の小倉記念に出走予定のエピファニーの全弟。四肢も健やか、そして気合満点。ビッターの声が飛び交う人気者のお値段は2億3000万円。
377番のシャムロックヒル(マーメイドS逃げ切りX)の2025は、骨太で芦毛だった母とは異なり、キレがありボディラインも隙のない黒鹿毛。2億6000万円というお値段が適正価格なんでしょう。
384番のスウィートリーズンの2025は、ディアスティマ(札幌日経オープン優勝)の半妹。馬体のラインや仕草や歩きなど共通点多し。エピファネイア産駒は平均値を上回る仔がほとんど、安定度と安心感が高いね。
当歳はまずはキタサンブラックとイクイノックス。そしてエピファネイアも1頭は抑えておきたい。高額馬のアタックへの資金等を思えば、コントレイルの当歳はその次でもいいか?――いや、そう思う人がいるからこそ、逆にここが勝負どころ?
当歳への評価は、いろんな思惑が交錯。上下の価格の幅は過去のセレクトセールに比べ、あれッと思うくらい大きくなったけれど、それでもしっかり億超え5頭を数えた。
筆頭格の327番のシュガーハートの2025は、なんたってキタサンブラックの半弟。当歳に付き添う母は、20歳となっても馬体の張りがすこぶる良い。仔出しは多く、いろんな種牡馬を配合してきたが、エブリワンブラックやシュガークンなど他の兄たちも重賞で連対しており外れは少ない。本年のコントレイルっ仔は、父と兄キタサンとをミックスしたような、重くもなく薄くもない、バランスのとれた中距離体型に出た。2億2000万円の価格も納得か。
389番のコミッショニング(英G1、G2各1勝)の2025は、母系の近親にタワーオブロンドンの名を筆頭に欧州重賞馬がゾロゾロ連なる万能快速系。適度に幅があり腰回りも比較的大きく、シュガーハートの2025と同じ2億2000万円でハンマーが落ちた。
写真や血統表などを見て、ある程度予測はできていたが、スワーヴリチャードの想像以上の高評価にはあらためて仰天。
新種牡馬としてスタートした初年度、いきなり2歳リーディングを賑わせる大活躍を見せた。ただ初年度産駒たちは、毛色は父と同じ栗毛でも、なんか寸が詰まり気味。そして四肢も短め。「お試し」のため早めデビュー可能でコンパクトなスピードタイプが多かったように思うが、それを糧にした仕切り直しが本年、9頭が上場。
父譲りの栗毛はもちろん、首、背中、四肢の長さに至るまで、父に本当によく似た中長距離体型がゾロゾロ。310番のミステリーエンジェルの2025の1億6500万円を始め、364番はお馴染みリッスンの2025。伸びやかな馬体に惚れ惚れ、タッチングスピーチやサトノルークス、ミスタージーティーなど姉兄たちの実績を思えば、自然と1億6000万円の評価になる。
産駒最高額は381番のサンカルパUの2025。母は亜ダートG1を優勝、芝・ダートのG2を各1勝。発表体重は244キロと数字通り骨格が大きい。そのスケールに2億9000万円という、キタサンやイクイノックスと肩を並べる高値がついた。
410番のダンダラ(母は芝6Fの英G2、G3を各1勝)の2025は、すばしっこさを備え機動力が買われ1億2500万円。444番のファンスター(豪重賞で連対多数)の2025の値段は1億2000万円。毛色は鹿毛でもシルエットは父のスワーヴ似、一族には現3歳のエリキング(京都2歳S優勝)などの名が連なる。
ロードカナロアもまだ元気で、2頭が億超え。サートゥルナーリアとエフフォーリアは1頭、フライトライン(Flightline)とキングマン(Kingman)も同じく1頭ずついたが、フランケル(Frankel)の仔、342番のソーテルヌの2025の登場に会場はザワザワ。
母は仏屈指のマイルG1・ムーランドロンシャン賞など5勝。母系にはスタセリタの名前も見える。驚くほどの勢いでポンポンと金額が上り、うーん、最終価格は3億円。日本ではまだ絶対的な存在ではないけれど、フランケル産駒は現欧州の競馬シーンを席巻。いつ日本でブレイクしてもおかしくはない。
世代のダートを牽引するだろうオルフェーヴルの血統馬は4騎。409番のミルフィアタッチの2025は日本競馬史上最多賞金を稼ぎだしたウシュバテソーロの全弟。現時点ではやや小ぶりに映り、8400万円でハンマーが落ちたが、兄は古馬となって確変。キャリアと成長力を見守りたいもんです。
478番のレディマドンナの2025は、兄は羽田盃・東京ダービーなど交流重賞タイトルをブッコ抜いたナチュラルライズ。父はキズナからオルフェーヴルにかわったが、前記ウシュバの戦績通りオルフェの仔の主戦場はきっとダートです。1億7000万円は至極妥当な価格のように思う。
新種牡馬の風景はイクイノックスの存在に気圧され、他馬の存在はかすみ気味になってしまうが、タイトルホルダーの仔は父によく似て、四肢も背中も首も長い細身のスタミナ系。
シュネルマイスターも、自身のクラブ募集価格を超える落札馬がちらほら。モーリスやサリオス、インディチャンプなどとマイラーの席を競うことになるが、脚は適度に長く、意外と距離にも融通が利くのではないか。
実質本年が日本デビューとなるパレスマリスは、あれ?思ったより数が少ないかな?種付け頭数はかなり多かったはず。次のセレクションセール以降のセリで、とりえずジャンタルマンタルに似た馬を探しましょう。
個人的にはダノンキングリー産駒に清き一票。ぶりぶりとして馬格があり前進気勢に溢れ、なんだかミョーに気になる。398番のシーザシーの2025は、ザダルの弟。2歳デビューまであとを追ってみたい。
大団円は551番のアドマイヤマーズ×タイタンクイーンの7600万円。戦い終わって陽はどっぷりと暮れて。ふう。セレクト史上でもホントーに長い長い1日が、やっと終わったなぁ…。
落札率は95%、1頭平均の約7500万円は前年比でプラス約1300万円。さらに総売り上げの171億5400万円は当歳部門の過去最高を記録。それだけでなく、2日間の総売り上げが327億円(昨年比プラス約38億円)で過去最高と、セレクトセール全体でも今年は記録づくめの年だった。
注記:金額はすべて税抜きです。
ライタープロフィール
「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。
