7月8日(月)、初日は1歳セッション。前日の日曜日に1歳馬の下見など済まし、例年と同じ9時前に会場に到着です。
ありゃ、駐車場の車の数が昨年の倍近い。それも単なる賑やかしではなく、馬主関係者の数が増えた分の増加。会場に入ると、無線LANはスイッチを入れただけでOK。新たな空調設備が整えられたことで、会場のジメジメも解消され、汗っかきは喜び、身体の弱いワタクシもほっとしながら着席。
定刻10時、1歳セール上場1番馬はロードカナロア×ドリームアンドドゥ(母は仏1000ギニー優勝)で幕を開けた。
むむむ、しょっぱなから1億7000万円ですか。発表体重は454キロ、1歳のこの時期にしては大きめ。もっとも成長度合いの高い夏を越えると20〜30キロは大きくなる。一年経った2月春は、だいたい80キロ増が見込め、トレセンに入ると20キロは減るけれど、来春は推定510キロ前後で登場か。
毎年オープニングの1番馬、そして10番台半ばまで馬格のある健やかな馬たちが並び、アドマイヤマーズ×サンカルパUが8400万円、ドレフォン×アドマイヤセプターも8400万円。サートゥルナーリア×ホロロジストが早くも2億1000万円を記録。
そして9番には、本年のセリを象徴する種牡馬の「三本柱」の一頭であるコントレイル産駒のラビットランの2023が登場、落札価格は2億5000万円。姉たちもクラブ募集などで目にしたことがあるが、本馬はパパのコントレイルにソックリな丸くてコンパクトながら羽のありそうな体つき。下見の会場でもひと際存在感があり、四肢や腰回り、首の使い方も理想的です。
2023年の当歳セールでもコントレイル産駒を見たが、やはり身体のラインや目つきに至るまで父にソックリ。
脚は総じて細く、競走馬として走る際、どのくらいの体重で出てこられるかが、ワタクシとしての懸念事項の一つだったのだが、当歳から1歳にかけ産駒たちは450キロ以上に成長している馬が多かった。ラビットランの仔のみならず、コントレイル産駒はだいたい、父よりも胸や腰回りの筋肉が大きく映るくらい、ボディラインが充実している。なんだか安心。
1歳セールにコントレイル産駒は計8頭が上場。1億円超えは前述のラビットランの2023に加え、82番のタムニアの2023(母が仏G3勝ち)の1億500万円、102番のティファニーズオナーの2023の1億円など計4頭。半兄に菊花賞馬アスクビクターモアがいる133番のカルティカの2023は2億5000万円だった。
続いて17番には「三本柱」の一頭キタサンブラックの仔であるサマーハの2023が登場。落札価格は1億5000万円。半兄はシャケトラ。セレクトセールでもお馴染み。
キタサンブラック産駒は、昨年の「セレクトセール日記」でもチラリと述べたように、産駒の頭数が今年の1歳以降一気に充実(シンプルに出生頭数が多くなった)。種牡馬としての本当の始まりは現1歳からだと思う。
初日には12頭が上場、55番のマドラスチェックの2023(母はJpnVTCK女王盃などダート重賞入着多数)は1億5000万円。71番のアスコルティの2023の半姉はアスコリピチェーノ(昨年の阪神ジュベナイルフィリーズ優勝、桜花賞・NHKマイルC2着)。シルエットは母似、しかし父キタサンの頑強さも随所に兼備。ひょえ〜。競走馬として今すぐにでもパドックを周回できそうです。身体の使い方や踏み込みなど、超A級馬の在り様が現時点でダイレクトに垣間見える。
そして初日の最高落札馬でもある100番のデルフィニアUの2023は5億9000万円でハンマーが落ちた。
歩き、四肢の送り、仕草にもまったく無駄がなく、競走馬としての最重要事項の一つを早くも示しており、深みのある黒鹿毛――。馬体のラインや雰囲気はまさにイクイノックス(若干背中は短めですが、腰回りや後肢の筋肉は良好)。
キタサンブラック産駒を語る時、現時点ではイクイノックスが一番のお手本になるし、似ていれば似ているほど値段も高い(笑)。
そして、最後の「三本柱」の一頭エピファネイア産駒の最初の高額落札馬は24番のイーヴンソーの2023(母は愛オークス優勝)、落札価格は3億4000万円。51番のコーステッドの2023は3億9000万円。半兄はクラシックで奮闘したダノンベルーガ、半姉のボンドガールはニュージーランドT2着など。発表体重は468キロ、背腰や首の厚みがあり、悠々として兄姉以上に思える。
他にも77番のコスモポリタンクイーンは1億円(現2歳、キングマン産駒の半兄は2023年セレクトセールで3億円。6月の東京で新馬勝ち)。
83番のカレンブーケドールの2023(母はジャパンC・オークス・秋華賞2着)は、母の姿形を膨らました感じで馬っぷりも出色。3億1000万円も納得か。
104番のホームカミングクイーンは、半姉に愛2歳牝馬G1モイグレアスタッドSを制したシェイル、半兄に日本で産まれファルコンSを制したダノンマッキンリー。スピード感あふれるエピファネイア産駒に見えた。
123番のコンペティションオブアイデアズの2023(母はアメリカンオークス優勝)は3億3000万円。1歳セールに上場された産駒の充実度や平均価格は、「三本柱」の中ではエピファネイアが一番のように思う。
サートゥルナーリアは本年1歳がセカンドクロップ。初年度は種牡馬としてアピールする意味でも良質な繁殖牝馬が多く集まるが、繁殖のレベルが低下する2年目が難しい。
しかし、4番のホロロジストの2023は2億1000万円、39番のウィープノーモアの2023は1億8000万円。145番のカデナダムールの2023は1億5000万円など、お値段通り、初年度以上のたくましい馬体をした大器がゾロゾロ。
ディープインパクト、ハーツクライ、ドゥラメンテ亡き後、中心種牡馬となり現3歳の競馬シーンを牽引するキズナは、繁殖牝馬の奪い合いもあり今年の1歳からちょっと小休止といった感じでしょうか。ただ、父キズナのスタンプを押すかのように、産駒は総じてバランスが良く、安定感は相変わらずかなり高い。
アドマイヤマーズは、つい先日2歳馬3頭がJRAで勝ち上がったが、父に似たメリハリのあるマイラー体型の産駒を今年も出している印象。
本年1歳が初産駒となるインディチャンプは、父のシルエットをダイレクトに受け継ぐマイラー体型の馬が多数。
ダート種牡馬シーンを牽引するだろうクリソベリルも、1億円で落札された31番のパリスビキニが象徴的な産駒になるのかも。
思わず、「おぉ…」と声をあげそうになったのは、59番のオルフェーヴル×シュガーショック(2億円)。どこから見てもオルフェ――性格もね(笑)。
127番のモーリス×マーブルケーキは、ソダシに酷似。面白い競り合いが続き1億9000万円まで上昇したことには驚き。
初日1歳セッションは1頭平均約6472万、落札総額は144億9700万円。落札率は96.1%。1歳セッションの記録をたくさん更新しました。
7月9日(火)、セレクトセール2日目は当歳セッション。9時半スタートに合わせ、下見のため7時過ぎ展示会場を偵察。まぶしいくらい若い当歳、近くにいるだけで生命力を分けてもらえそう(笑)。
上場番号301番はキタサンブラック×シンプリーラヴィシング。母は北米G1勝ち、BCジュヴェナイルフィリーズ4着。今年は当歳も体重を発表するところが多くなり、1年後はだいたい現体重の2倍、前記した通り2歳になる頃は50〜80キロ増。200キロという数字が当歳の目安だろうか。
当歳馬は骨格や首・背中の角度や長さ、後肢や臀部や脚の形状、歩き方も天性のものがダイレクトに現れ、1歳馬より分かりやすかったりする。
本馬の体重は203キロ、お値段は2億4000万円。1年後、2年後の姿と、走る姿が楽しみです。
当歳の主役種牡馬は前記キタサンブラック、そして本年がセカンドクロップとなるコントレイルはキタサンを上回る数をそろえた。
エピファネイアの当歳は少数精鋭、キズナ、サートゥルナーリア、ブリックスアンドモルタルは数多の産駒が上場された。そしてダートシーンなど見越し、リアルスティール、マインドユアビスケッツ、ドレフォン産駒も多く上場。
加えてインディチャンプ、種付けが軌道に乗ってきたシスキンも、自身によく似たスピードタイプを送り出してきた。
新種牡馬はまずサリオス。骨格はガッシリ、トモと胸前は流々と発達。タフな快速馬がわんさか登場しそうだなぁ。
フライトライン(新種牡馬)やオーセンティックなど海外種牡馬の産駒も盛りだくさん。今年の当歳セールは、産駒のラインナップがバラエティに富んでいる。
購買者も、あの種牡馬、あの繁殖は血統にこだわってみたい――その分選択肢も多くなった。
キタサンブラックやコントレイルの仔たちも、当歳は社台グループ生産馬のみならず、3億円馬も送り出したグランド牧場を筆頭に、日高地方の生産者がどんどこ上場。
母親や一族は欧米などでピッカピカの重賞成績を誇り、かつ若々しい。セレクトセール当歳セッションに出場させる馬選びや意識みたいなものが、今年はガラリ一変。2024年の当歳セッションはエポックメイキングな年となるのかもしれんなぁ…。
なんて、キタサンブラック産駒の最高価格馬は364番のセリエンホルデの2024、価格は4億1000万円。父キタサンブラックや半兄シュネルマイスターとは馬体のラインは異なるものの、なんとも表現し難い好バランスを備えている(母似かも)。
牝馬はドリームアンドドゥの2024が2億円。値段、産駒の中でも突出していたが、いずれは違うシルエットの仔たちもGT実績を出すかもしれない。
コントレイル産駒のラインナップはなんと25頭。386番のカレドニアロードの2024が3億円。父親のシルエットを受け継いでいる産駒が多い印象。
当歳も馬体重200キロ超えの中型以上の仔が多く、何よりも歩きに無駄がなく素軽く上品。初年度より眼つきの明るい産駒が多いような気がする。うむむ。1億超えの頭数はなんと9頭に達した。
エピファネイアの最高価格はカリーナミアの2024で3億7000万円。ロードカナロア×ピクシーホロウは2億1000万円。ピクシーホロウの仔は、昨年の当歳も飛びぬけてよかったが、今年も勝るとも劣らず。357番コーステッドの2024は父がサートゥルナーリアに代わり1億7000万円。スワーヴリチャード×レッドオーヴァルは2億円。
ロゴタイプ×スタートアップは、オメガギネスの全弟であり、ダート戦線はきっと面白くなる。1億1500万円の値はその期待の表れかも。
ダートといえば、世界を震撼させたフライトラインの仔が3頭ラインナップされ、うち2頭が2億円超。アメリカで種牡馬リーディングを争うガンランナー産駒のアーモニーズエンジェルの2024は3億円。ともに2〜3年後は、ドバイ経由でケンタッキーダービーかドバイかブリーダーズCか。世界のダートシーンでの活躍に期待。
2日目の当歳は239頭、平均価格は約6243万、落札率は96.7%を記録、総計は144億2100万円。2日間を合わせると300億円近く(税込みだと軽々と300億円突破)。
ふう。セレクトの姿形は来年もきっと変わる。もっともっと凄いことがきっと待っています…。
注記:金額は、全て税抜金額
ライタープロフィール
「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。