セレクトセール 2018
セレクトセールのみどころ
混戦の見出しが躍った2018年の日本ダービーを、19回目の騎乗という長い年月の想いも込め、もぎ取ってみせたのは、福永騎手騎乗のワグネリアン。ディープインパクトの息子がダービーを制した。
皐月賞に続く二冠達成は、するりと手から離れてしまったが、半馬身差の2着はエポカドーロ。2015年のセレクトセール出身馬だ。
父は現3歳世代がファーストクロップとなるオルフェーヴル、母ダイワパッションはフィリーズレビューなど4勝。2015年の当歳セッションでは3400万円(税抜)で、(株)ユニオンオーナーズクラブにハンマーが落ちた馬だった。
セレクトセール出身馬というと、イメージしやすいのは、潤沢な資金を持つ、いわゆるお金持ちの個人馬主の人たちの顔ぶれ。あの値段、あの血統なら、重賞は想定内だろうと、結果も結び付けやすかったりする。
しかし、エポカドーロは、クラブ形式馬。過去何頭も、セレクトセールを経由して重賞に至ったクラブ馬も多くあり、エポカドーロだけが特別というワケではないのだが、セレクトを含めセリ売買馬がクラブ馬主という形式でも、強力なカードになりうることを、エポカドーロという存在を通し、改めて新鮮な感慨をもったクラシックだった。
セレクトセールという名前と存在を、再考させられたもう一頭が、2015年の1歳セール出身馬ヨシダ(ハーツクライ×母ヒルダズパッション)。
北米G1・ターフクラシックS一閃の報を聞き、あのセレクトの1歳時の、なんともいない皮膚の薄さ、滑らかさがよみがえってきたが、母は元々がG1・バレリーナSなど北米8勝。ハーツクライ産駒なら、芝の中距離なら、故郷の米国にわたっても、重賞のひとつくらいは当然か。加えてヨシダも、共同馬主として運用されているという。海外バイヤーにとっては、ヨシダは好サンプルであり大きなヒントになった。
イギリスでは英2000ギニーを、ディープインパクト産駒のサクソンウォリアーが奪取。ザ・ダービー(英ダービー)は4着に敗れたものの、愛ダービーも有力候補の一頭に挙げられている(※6/27執筆時点 結果は3着)。仏ダービーを競り勝ったのも、ディープ産駒のスタディオブマンだった。
欧州の芝で、ディープの仔が頂点のG1で、勝ち負けができた。ディープの仔をどうトレーニングし育てればいいのか。合うコースや芝も大体は読めた。
ならば今一度ディープの仔を視察、購入をはかるべく、今まで以上の本気をもってセレクトセールを意識するのは当然。さて、今年の外国勢の顔ぶれはどうなるのだろう。
新規参入の大型馬主や海外バイヤーの名をセリ会場で見聞きすると、マスコミはちょっとした黒船来航騒動を流しがちになるけれど(笑)、いや今年は噂云々だけじゃなかったりして。
今年もそうだが将来的に、セレクトセールをどうはかるか。楽しみと同時に、青天井と化す怖さみたいなものも感じているけれど、国内外を問わず、もちろん、一番に注目が集まるのは、まずはディープ産駒。
アーニングインデックスが2を超える良質な成績ゆえ、種付け料は漸次高騰。去年の例にならうならば、20前後の億越え取引馬が出たとして、その半数以上はディープ産駒だろうし、価格のマックスを想像しきれないような血統馬も数頭上場されている。
考えてみればディープは、まだ種牡馬とすれば壮年。ディープ自体の後継種牡馬は10頭程度。その父サンデーサイレンスが12年間の種牡馬生活で50頭以上の後継種牡馬を世に送り出したことを思うと、まだまだひよっこじゃないか。父とは違った形の、父を超えるディープ産駒は、これから登場するのではないか。みんなまだ、「新種のディープ産駒」を渇望中だ。
本年のセレクトセール1歳のラインアップは、そのディープ待望論の集大成のようなカタログになるのかもしれないなぁ…。
しかし、数さえそろえばキングカメハメハは負けない。現役時代と同様、ストップ・ザ・ディープはハーツクライでしょ。ルーラーシップのパワーがいいね。ロードカナロアは一世代で万全のマイラー王国を構築した。難問だからこそオルフェーヴル産駒に挑む。始まったばかりの2歳戦で、ジャスタウェイに手ごたえと確信を得た。競走成績が出ていない今だからこそ、まだ手あかのついていないキズナ、エピファネイアに先手を打っておこうという人もいるかもしれない。
もっと先を考える人は、二日目の当歳セールに全力をもって突撃。目玉となるのは、ドゥラメンテ、モーリス、リオンディーズなどの新種牡馬だろうか。
あくまで個人的にですが、特にドゥラメンテは、現競馬シーンを一発で激変させるカードになるかもしれない。
なんて、その結果のほどは、セールが終わっての感想時にまた…。
ライタープロフィール
丹下日出夫(競馬評論家)
「ホースニュース馬」を経て現在は毎日新聞本紙予想。POG大魔王の通称も定着している。