ノーザンファーム早来
津田朋紀場長インタビュー

「早いだけじゃ勝てない。送り出しの精度を高めます」

現3歳世代はホープフルSをロブチェンが、阪神JFをスターアニスが勝利。今年に入ってもシンザン記念のサンダーストラック、クイーンCのドリームコア、スプリングSのアウダーシアなど、クラシックが楽しみな逸材が目白押しのノーザンファーム早来。
今年も重賞ウィナーが多数、牧場内に隠れているはずだ。津田朋紀場長に、注目の2歳馬についてじっくり聞かせてもらった。

昨年は2歳GIを2勝し、明け3歳になってからも、続々と重賞を勝利していますね。

津田場長

現4歳世代と比較してアベレージは出ましたね。重賞も勝てていますが、昨年の今頃「重賞を勝つだろう」と思っていた馬が、脚を溜めている状態です。真の役者たちは、まだ控えていると信じていますよ。

その中でも、ロブチェンの激走には度肝を抜かれました。

津田場長

昨年の取材では、誰も名前を出していなかったですか?

ワールドプレミア産駒は、取材で挙がらなかったかと思います。

津田場長

名前を出すまでには至らなかったのかもしれませんね。血統の先入観はどうしても入ってしまいますから。活躍する馬を見極めるのは大変です。

日下統括主任と坂路小屋で話をしていた際に、「ノーザンファーム内のPOGで、ロブチェンを指名した人はいるのか」という話題になり、繁殖担当の方が指名していると伺いました。

津田場長

生まれ落ちた姿を見ているのが大きいのかもしれませんね。私も生まれてから2週間おきに、必ず見るようにしています。その時期の仔馬は、骨と皮ばかりで余計な筋肉をまとっていないんですよ。

「余計な筋肉がない」というのは、意外に聞いたことがないフレーズです。

津田場長

写真を撮られる方は気づきやすいと思いますが、筋肉に頼らないで立つ骨格のバランスや、しっかり踏み込めるかというのは、能力とリンクする部分です。仔馬のときはより骨格の差が目立つので、注視している中で素質の片鱗を感じたのではないでしょうか。あと、夜の間、仔馬にGPSをつけて運動量を見るのですが、そのときにスピードも最近は話題に上がることがありますよ。

自由に走り回っているときに、どれくらいの速さで走っているか分かるわけですね。

津田場長

時速何kgでダッシュしているか、ですね。人間でも、子どもの時に駆けっこして一番速い人が、大人になっても速いじゃないですか。

人間に走れという指示を与えられなくても、自然と速い脚を使えるのは、競走馬としての魅力に繋がりますね。

津田場長

才能以上に脚を速くすることはトレーニングでは困難ですが、脚の速い仔を見つけることはできるかもしれません。本来は放牧中の運動量を見て、疲れが出る前に休ませたり、運動量を調整するために使用しているGPSなので、スピードはまだ遊びレベルで見ているだけです。ただ、そういうデータも素質馬を見つけるポイントになると面白いですね。

ますますPOGが難しくなってきそうですね(笑)。現3歳世代のアベレージが上がったとのことですが、取り組みとして変えた部分はありましたか。

津田場長

一番意識したのは、送り出しの精度を上げたことです。ノーザンファームが、早期の出走を狙っていけたのですが、近年は他の牧場も、送り出しがどんどん早くなっています。

それに伴ってPOG本の発売や取材時期も早くなっていきました。

津田場長

もはやただ早いだけでは勝てません。早来では、現3歳世代の送り出しは比較的遅かったのですが、それでもこれだけの結果が出ました。それぞれの馬に合った送り出し時期の見極めが大事だなと、改めて実感しました。

近年の傾向から、早ければ早いだけ安心できるという空気が流れていましたよね。

津田場長

人と同じように、成長期の強いトレーニングには怪我のリスクが伴います。例えば血統的にも、キタサンブラックはややスタートが遅くても間に合う馬です。その馬に合った時期に、ベストのタイミングで送り出せるかというのが大事なことだと思います。

昨年、一番馬として取り上げたブラックオリンピアが年明けから強い勝ち方で2勝目を挙げ、一昨年の巻頭馬ダノンシーマも3歳夏を過ぎて連勝街道に入りました。

津田場長

これがキタサンブラック産駒なのかもしれませんが、ブラックオリンピアは真の役者の1頭です。ダノンシーマは早期デビューでしたがなかなか力を発揮させてあげる事ができず、彼に教わったことがたくさんあります。本当に能力が高い馬ですからね。

POG期間後ですが、これからの活躍が大きく期待できる戦歴になってきました。

津田場長

早来の調教場は、森があって起伏があり、放牧地もあるので、どんなこともできるわけです。雪が解けてから、もう一回膨らませたり、もう一段階精神的に成長させたり……。結果として良い馬になってくれましたが、送り出すタイミングに関しては、常に自問自答しています。

あとノーザンファーム早来の変化としては、以前は牡馬を担当していた伊藤厩舎、牝馬を担当していた村上厩舎が、今年から牡牝混合で管理することになりましたね。

津田場長

2人は長年、牡馬のみ、牝馬のみの育成をそれぞれ経験してきたので、彼らなりの調教セオリーの完成形があると思います。実際は、北海道を出たら牡馬も牝馬も一緒に調教するし、レースでも一緒に走るわけです。それなら早来でも、できないはずがありません。そうやって固定概念を変えていきたいと思っています。

両厩舎長がどう馬を作っていくのか楽しみです。

津田場長

例えば、強い牝馬には牡馬なみのタフな調教、繊細な牡馬には牝馬の気持ちや成長を妨げない調教がハマるかもしれません。優秀な2人なら、思いがけない答えを出してくれると信じています

チェッキーノ24はエフフォーリア産駒の指標になる

それでは具体的に注目の2歳馬について聞かせていただきます。まずは新種牡馬の評価からお聞かせください。

津田場長

エフフォーリアに関しては、父エピファネイアよりも少し頭が軽くて、キレのある馬が多いなと思います。気性的にも扱いやすい馬が多いですね。そうした意味では、距離に融通が利くと思います。その中でも石井厩舎の牡馬2頭が良いですね。チェッキーノ24クッカーニャ24です。

種付け初年度でチェッキーノの相手に用意されたという時点で、エフフォーリア産駒への期待の大きさを感じます。

津田場長

個人的にはチェッキーノの仔の中で一番好きです。成長過程が良いですし、エフフォーリア産駒がどれくらい走るのかという点において、1つの指標になる馬だと思っています。

続いて、同じく新種牡馬のサリオス産駒はいかがでしょうか。

津田場長

産駒が一様にサリオスの形をしているのが特徴だと思います。足腰のしっかりしたハーツクライ産駒は走るのですが、そのイメージ通りに育っています。

サリオス自体も、以前にPOG取材で担当厩舎長が絶賛していた記憶があるので、見栄えの良さをレースに出せる血統なのかなと思います。

津田場長

形をしっかり継承するのは走る種牡馬の特徴です。今のトレンドでもあるヨーロッパの種牡馬に近い雰囲気がありますね。サリオスは日本ダービーでも走っていますが、産駒はマイル前後が良さそうです。牡馬はオーロトラジェ24、牝馬ならセットスクエア24が良いですね。

その他に新種牡馬で気になる存在はいますか?

津田場長

Flightline産駒はノーザンファーム全体で3頭いて、どれも評判が良いんですよ。特にベッラガンバ24(牡)は、走ってくると思います。

続いて2世代目以降の注目馬について伺わせてください。

津田場長

コントレイル産駒だとパリスビキニ24(牡)です。昨年、「もう1つギアがあるか」と話をしたのですが、少し重いですよね。そこで軽いパリスビキニが合うのではと感じます。馬体重が450kgくらいで、キレがありそうですね。牝馬だとマジックアティテュード24。この馬も軽さを持ち合わせています。コントレイル産駒の成績は上がってくると思いますよ。

今年もメインを張るであろう、キタサンブラック産駒のラインナップも気になります。

津田場長

良い馬が多いのですが、牡馬だとマーゴットディド24ノームコア24でしょうか。牝馬だとマニーズオンシャーロット24。全体的に粒が揃っていますね。

キズナ産駒の期待馬も教えていただけますか。

津田場長

すごく良く見せているのが、牡馬のインカーヴィル24。牝馬ではファディラー24ですね。

打率が上がっている印象のモーリス産駒についてはいかがでしょうか。

津田場長

うちだけでなく、全体的に打率が上がっていますよね。相性が良い牝系しか付けなくなって、配合が進化をしているなと感じます。後継種牡馬候補のピクシーナイトも生産地でバランスの良い馬格があって評判が良いので、今後楽しみですよ。今年のモーリス産駒だと、加我厩舎の牡馬ケイティーズハート24。牝馬だとアドマイヤミヤビ24。こちらは、少し時間はかかると思いますが、絶対に走ると思います。

エフフォーリアの父でもあるエピファネイア産駒はいかがですか。

津田場長

エフフォーリア産駒に目を奪われがちですが、良い馬はたくさんいます。牡馬はラキシス24マイミスリリー24。牝馬ならダノンファンタジー24メジャーエンブレム24ですね。

サートゥルナーリア産駒の動向も気になるところです。

津田場長

以前と比べて成績が安定してきました。初年度を確認して、配合を変えた2〜3年目に成績を伸ばすのが、1つの成功パターンになっている気がします。牡馬ならレッドアヴァンセ24。牝馬はマルシアーノ24クロノジェネシス24ですね。

初年度から重賞ウィナーを輩出したインディチャンプ産駒も、楽しみが大きいです。

津田場長

見立て通りの活躍でした。やはり2歳戦はスピードが大事ですよね。今年は、牡馬だとギエナー24。牝馬はダンサール24を挙げておきます。

あとフォーエバーヤングの半弟でレイデオロ産駒のフォエヴァーダーリング24が桑田厩舎にいますが、どうしても気になる存在です。

津田場長

藤田オーナー×矢作厩舎で、フォーエバーヤングを育成した桑田厩舎ですから、当然ファンの関心は高いと思います。ただ私も同じ目線で、フォーエバーヤングがダートで活躍するとはPOGの時期では思っていませんでしたからね。矢作先生がどういうジャッジをして、どんな冒険を見せていただけるか。面白いですよね。馬の状態は良いので、桑田厩舎長に見せてもらってください。

ありがとうございます。あと取り上げられていない馬を何頭かピックアップしていただけますか。

津田場長

ダートの話が出たので、ナダル産駒からシャドウディーヴァ24(牡)、レディホークフィールド24(牝)。

ダート馬を指名するのも、POG戦略の1つになりつつありますね。

津田場長

ロードカナロア産駒だとナスティア24(牡)、エピックラヴ24(牝)に注目です。あと、忘れてはいけないのがサトノクラウン産駒。

初年度からダービー馬のタスティエーラを輩出した、一発を秘める種牡馬です。

津田場長

ファシネートダイア24(牡)は走る雰囲気を持っています。あとシスキン産駒はレネットグルーヴ24(牡)とベルカプリ24(牝)に注目です。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

津田場長

取り上げた馬が走ることを、一緒に応援してください!