トレセンは「トレーニング・センター」の略で、文字通り、競走馬がトレーニング(調教)する場所です。JRAの施設としては、東西に一箇所ずつあり「美浦トレーニング・センター」は茨城県土浦市、「栗東トレーニング・センター」は滋賀県栗東市にあります。
JRA所属の競走馬は、美浦もしくは栗東どちらかにある「厩舎」に所属しており、厩舎の長である「調教師」の預託管理のもと、トレセン内の調教施設を使って、レースに出走するための調教を進めていきます。
調教施設には様々な施設があり、調教欄に記載されている「追い切り」で使用されるようなトラック馬場や坂路馬場といった調教コースの他に、追馬場や調馬馬場といったウォーミングアップするための場所もあります。また、美浦の北馬場にある「森林調教施設」や栗東の「逍遥馬道」など、木々に囲まれた馬場を歩く(常歩)ことで調教の効果が得られます。
走る、歩く、以外の調教施設としては「スイミングプール」があります。栗東の場合は3種類あり、円形プール、直線プール、馴致プール。形や大きさが違っており、泳ぐことにどのくらい慣れているかによって、それらが使い分けられています。
昭和53年4月に開設された美浦トレーニング・センターは、約224万平方メートル(東京ドーム約48個分)の広大な敷地を有し、その中に「南馬場」「北馬場」と呼ばれる2つのトラック型調教コースと1,200メートルの坂路調教馬場があります。
(馬場回り)水〜金曜日が右回り。火、土、日曜日が左回り。
一周1370m、幅員25m。南馬場の最も内側にあるトラック馬場ということで、コーナーが非常にきつくなっています。近年、調教欄に掲載される追い切りで使用されることはほとんどありません。
(馬場回り)[中山、福島開催]水、木、金→右回り 火、土、日→左回り [東京、新潟開催]水、木、金→左回り 火、土、日→右回り
一周1600m、幅員20m。以前はウッドチップ馬場でしたが、2019年1月の南馬場大規模改修工事により、現在のダート馬場になりました。追い切りを行う頭数はウッドチップ時から激減しています。
(馬場回り)[中山、福島開催]右回り [東京、新潟開催]左回り
Cコースには2種類の馬場があり、その内側に位置しています。一周1800m、幅員8〜10m。水、木、金曜日のみ使用可能となっています。新馬が芝馬場に対する適性を見極めるために追い切りで利用することが多くなります。幅員が狭いため、併せ馬は2頭以下と決められています。
(馬場回り)[中山、福島開催]水、木、金→右回り 火、土、日→左回り [東京、新潟開催]水、木、金→左回り 火、土、日→右回り
Cコースには2種類の馬場があり、その外側に位置しています。一周1858m、幅員15m。天候に左右されにくい敷材なので、雨の影響でウッドチップ馬場が重くなっている場合に負荷の軽い馬場という選択肢のひとつとなっています。併せ馬については、馬場開場30分後から3頭併せが可能になっています。
(馬場回り)[中山、福島開催]水、木、金→右回り 火、土、日→左回り [東京、新潟開催]水、木、金→左回り 火、土、日→右回り
一周2000m、幅員20m。南馬場の最も外側に位置し、周回距離が最も長いコースです。以前はダート馬場でしたが、2019年1月の南馬場大規模改修工事により、現在のウッドチップ馬場になりました。追い切り頭数は以前よりも激増しています。
今後、調教で予想する際に重要なコースとなることは間違いありませんが、調教タイムがICタグによる自動計測になりました。これに伴い、2021年8月からJRA-VANでもタイム提供が開始。今後の調教予想における、タイム分析が大幅に進歩するものと思われます。
走路の全長は1200m、幅員12m。以前からICタグによる自動計測が行われており、調教タイムが提供されています。スタートして270mは平坦ですが、ここは助走区間ということでタイムの計測はされていません。その後、計測区間となりますが、最初の400mが0.625%の勾配、その後は350mが3%、50mが4.688%と、ゴールが近づくにつれて傾斜がきつくなっていきます。
※馬場の回りは火〜金曜日は右回り。土、日曜日は左回りで全コース共通。
一周1370m、幅員25m。障害専用のコースとなります。
一周1600m、幅員20m。近年では調教欄に掲載される追い切りで使用されることがほとんどなくなりました。
一周1800m、幅員20m。美浦のダート馬場では最も大きなコースになるので、追い切り頭数は決して少なくありません。また、障害コースで飛越の練習をした後、当コースで追い切るというパターンで利用されることも多く見られます。
昭和44年11月に開設された栗東トレーニング・センターは、約150万平方メートル(甲子園球場約40個分)の広大な敷地の中に、6つのトラック型調教コース、全長約1キロメートルの坂路調教コースがあります。
※馬場の回りは水〜土曜日が右回り。火、日曜日は左回りで全コース共通。
一周1450m、幅員20m。障害専用のコースとなります。
一周1600m、幅員20m。栗東に2つあるダート馬場のうちのひとつ。京都競馬場のダートコースの一周距離とほぼ同じということもあってか、ダートのレースに出走を予定している馬の追い切りが行われることが多い印象です。
一周1800m、幅員20m。トラック馬場での追い切り頭数が圧倒的に多くなっています。朝一番の馬場開場直後やハロー(整地)掛けが終了した直後など、ウッドチップが踏み荒らされていない時を狙って、追い切りが密集する傾向があります。なお、2021年12月からはICタグによる自動計測が予定されています。
Dコースには2種類の馬場があり、その内側に位置しています。一周1950m、幅員14m。新馬が芝馬場に対する適性を見極めるために追い切りで利用することが多くなります。また、ウッドチップが雨の影響を受けた時は芝馬場に追い切り場所を変更するといったケースで利用されることもあります。
Dコースには2種類の馬場があり、その外側に位置しています。一周2038m、幅員14m。天候に左右されにくい敷材ではあるものの、油分が抜けてしまうことでクッション性が低下することもあり、掘り返し作業など、適宜メンテナンスが行われています。
一周2200m、幅員30m。近年では調教欄に掲載される追い切りが行われることは稀で、2コーナーに設置されたゲートで発走練習や発走審査(ゲート試験)に利用されることがほとんどです。なお、現在(2021年8月)は改修工事が行われており、ゲートは4コーナーに設置され、走路の半分が閉鎖となっています。
走路の全長は1085m、幅員7m。以前からICタグによる自動計測が行われており、調教タイムが提供されています。スタートから70mは非計測区間ですが、すでに2%の勾配があります。300mを過ぎたところで3.5%の勾配となり、それがゴールまで続きます。Cコース同様、馬場開場直後などに追い切りが集中する傾向があり、幅員が狭いこともあって、競馬のような間合いで追い切られることも珍しくありません。