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馳星周さん

小説家馳星周さん

いっちぃの千客万来

取材・文:市丸博司/パソコン競馬ライター
写真:野呂英成

狙いは直木賞よりも馬事文化賞!?

ステイゴールド好きのファンのみなさんからすれば、そんな「どっぷり」の先生が入られて勇気づけられたとか……。

すごく盛り上がってくれました。特に僕が直木賞をいただいてからは、メディアに呼ばれてステイゴールドの話をすると、その名がたくさんの人たちに広まるということで、すごく喜んでくれています。競馬ファン以外の方や、G1があるときだけたまに買うくらいの方には、ディープインパクトは知っていても「ステイゴールドってどんな馬?」という人もけっこういると思うんですよ。そういう人たちに「ゴールドシップのお父さんか」くらいにでも思ってもらえたらうれしいですね。

オルフェーヴルにしても三冠馬なのに、なんというか、王道ではないという感じもしますよね。

オルフェーヴルは昨年の種付けが五十何頭かしかいなくて(52頭)、「えーっ」てみんなで憤っていたんです。確かに気性が難しいとかいろいろあるけれど、ちょっとおかしいでしょう、三冠馬だよ、と。今年はダートで走る馬が出たりして回復しましたけれど。

コントレイルのときもオルフェーヴル以来の三冠馬なのに、そのオルフェーヴルの名前はあまり聞かなかったような印象がありますね。

父のディープインパクトばかり出てくるから「ばかやろー」みたいな。ただ「父以来の無敗」ですから……、あの路線は王道で日の当たる道を行く馬ですから、いいんです、うちは(笑)。裏街道の一族で、そこからときどき化け物じみた馬が出てきて、王道を行く馬を蹴散らしてくれる。みんなわかっているんですよ、オルフェーヴルやゴールドシップみたいな馬がそうそう出てくるわけがないと。でも、いつかまた出てくることを夢見て応援しています。

さきほど少しお話しがありましたけれど、競馬の小説というのは……。

既に連載がはじまっていまして、集英社の「小説すばる」という文芸誌なのですけれど、そこで「黄金旅程」というベタなタイトルの小説を書いております(「黄金旅程」はステイゴールドが香港で出走した際の馬名漢字表記)。浦河で馬産に携わる人たちと、ステイゴールドをモデルにした馬のお話しです。

月刊誌ですね。

丸1年くらいは経ったかな(2020年1月号より)。来年後半か、再来年くらいには本になると思います。直木賞をいただく前から連載をはじめていたので、実はこれで直木賞ではなく馬事文化賞を取ろうと思っていたんですよ(笑)。

そうだったんですか! いや、馬事文化賞のほうはもうすぐにでも(笑)。

その直木賞をもらった「少年と犬」というのは、犬と少年のお話しなのですけれど、僕は犬も馬も人間にとって特別な動物だと思ってるんですね、人間とともに生きる動物として。サラブレッドや農耕馬は人間がそのように作り替えたという側面もありますけれど、たぶんこれからも折に触れて、「特別な生き物」である馬の小説も書いていくと思います。

「少年と犬」では、犬の描写に飼っている人でしかわからないようなしぐさが出てきたりして、素晴らしいと思いながら拝読しています。ぜひ馬についても……。

最近目にした記事で、デムーロ騎手が走っている馬の耳の動きについて解説したものがあって、これはおもしろかったですね。馬についてはそういうことも勉強して、書いていきたいなと思っています。今ちょっと頭にあるのは、ギンザグリングラス(2005年生、父メジロマックイーン)のことですね。サラブレッド3大始祖のうち、(衰退してしまった)バイアリータークの血を繋いでいこうという試みの中で種牡馬入りした馬についてです。

競馬の小説はあまり数が多くないので、先生にどんどん書いていただけると……。

去年の馬事文化賞を取った早見(和真)くんとか、競馬好きの作家もけっこうたくさんいると思いますので、少しずつでも増えていくといいですね。

さて、このインタビューは「JRA-VAN」のサイトに掲載されるのですが、これまでお使いになったことは……。

はい、利用させていただいています。出走馬の力関係を知りたいときに「対戦型」のデータマイニングで「この馬が強いのか」などとノートパソコンで見たり、もちろんステイゴールドの一族について調べたりもしています。

ありがとうございます。パソコンですと「JRA-VAN NEXT」ですね。

うちの夫婦はずぼらなので、一日の競馬が終わったら「今日の競馬はどうだった」とか言いながら、もうお酒を飲んでしまうんですよ(笑)。ですから、その日に出た馬が間隔を開けて出走してくると「前走どうだったっけ?」と、NEXTを使って振り返ったりしています。

さて、競馬に関して語り足りないことや、夢などはありますか?

近いところでは特にないですね。今は犬がいるのでそう簡単にはできないことですけれど、いずれ年を取ったら犬を飼えなくなるので、そのときはキャンピングカーで日本全国の競馬場めぐりをしながら旅をしようと、妻とは話をしています。それが老後の夢です。

ふだん、競馬場に行かれることは?

ほとんど行ったことがないんです。競馬をはじめた年は新聞連載があり忙しく、少し時間ができたと思ったらコロナで。今年の2月に小倉競馬場に行ったのですが、今のところ日本ではその1回だけですね。あとは去年かな、もう開催が終わっていた(冬季休催)門別競馬場に取材で。ですから今年はいろいろな競馬場へ行こうと言っていたのですけれど、小倉に行った翌々週くらいから無観客競馬になってしまいました。また、小倉に行ったときも花粉がすごくて……。はじめての競馬場ですから「パドック見るぞ!」とか言っていたのですけれど、建物の外に出るともう鼻水と涙が止まらないほどで。

せっかくの機会だったというのに……。

今年は牡馬のクラシックにうちの一族ががんばって何頭も出てくれたので、競馬場へ応援に行きたかったのですけれどね。

少しずつですが観客を入れての競馬も始まっていますし、またコロナが収まったからぜひ。本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

馳星周さん
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たくさんのご応募ありがとうございました。

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