
取材・文:市丸博司/パソコン競馬ライター
写真:野呂英成
ステイゴールドの血を引く種牡馬というと、ゴールドシップ、オルフェーヴル、ドリームジャーニー、あとフェノーメノなどもいますが……。
今年うれしかったのは、ナカヤマフェスタ産駒のバビットが活躍したことです(未勝利戦からセントライト記念まで重賞2勝を含む4連勝)。今まで重賞を勝った産駒はほかにガンコ(日経賞)だけだったのが、今年2つも勝ってくれて。もう少し、1頭2頭でも活躍する馬が出ててくれば、ナカヤマフェスタをつけたいという生産者の方も出てくるかと思っていたところでしたので。
菊花賞(10着)は、少しペースが速くなってしまいました。
お父さんの血だけなら距離はこなして不思議はないと思うのですが、本当に強い馬と走るのははじめてでしたからね。また、ステイゴールドの一族は古馬になってから強くなる馬が多いので、来年以降にすごく期待しています。
自分の形にハマったら、ものすごく強い競馬をしそうな印象はありますね。ラジオNIKKEI賞での強さには驚かされました。
今年はチャレンジャーで、力をつけて来年……、小回りが得意そうですから、宝塚記念あたりで一発やってくれないかなあと思っているんです。
宝塚記念、「いかにも」という感じですし、勝てば父子制覇ということになりますか。そのナカヤマフェスタですけれど、凱旋門賞は本当に惜しかった(2010年、ワークフォースにアタマ差の2着)。
まだそのときは競馬をはじめていなかったので、後になって映像しか見ていないのですけれど、ナカヤマフェスタのときも、オルフェーヴルの1年目(2012年)も、リアルタイムで見ている人と同じように応援してしまいました。結果はわかっているのですけれど(笑)。
オルフェーヴルの1年目はペリエ騎手(ソレミア)に負けちゃったレースですが、凱旋門賞のパブリックビューイングに解説で呼ばれていたんです。そのとき「オルフェーヴルが強すぎたので負けた。あまりにも強くて一気に抜けちゃったので、物見ををしてしまった」というようなことを言った記憶があります。
内に刺さってしまって。僅差だったら勝てていそうなレースですよね。この前、直木賞を取ったお祝いにと社台スタリオンステーションに行かせていただいて、オルフェーヴルとドリームジャーニーに会わせてくれたんです。そのとき、牧場の方が「ステイゴールドもオルフェーヴルも本当にずる賢くて、いつも鞍上のスキを狙っている、鞍上が気を抜いた瞬間になにかやるんだ」とおっしゃっていました(笑)。
いろいろありましたからね、オルフェーヴル。菊花賞、有馬記念(3歳時)を勝つまでは、ただただ化け物みたいな強い馬だと思っていたのですけれど、その後、阪神大賞典から急にいろいろやり始めた(笑)。それでも凱旋門賞2着2回、そして最後の有馬記念がまた強かったですね。
一番強かったんじゃないでしょうか、あのラストランが。
ちょっと本気出してみようかな、というような競馬で。
お父さん(ステイゴールド)もラストランの香港ヴァーズで、ちょっと本気出しちゃったんですよ(笑)。似ているのかなあ、と。
なるほど、そういうところも受け継いでいるのですね(笑)。香港競馬や凱旋門賞の話が何度か出ていますが、海外の競馬を観戦しに行かれたりは?
よく妻と「日本競馬の夢が凱旋門賞だったら、ステイゴールドの血は大切にしなければいけない」と言っているんですよね。それで、もし今後この一族から遠征する馬が出てくれば、スーツを新調して見に行こうという話をしています。
香港はどうでしょう?
香港は食べ物とか映画が好きで、年に5〜6回は妻と一緒に行っていたんですよ。それで競馬をはじめる前に一度だけ行ったことのある競馬場が、香港のハッピーバレーだったんです。その後、ウインブライトが勝ったときも行きたかったのですが行けなくて、今度は……と思っていたらコロナの感染が広がってしまって。
香港は社会情勢も気になるところですね。わたしも香港は大好きで、暮れの国際競走には7〜8回は行きました。最初のころは僕が行くと日本馬が負けるものですから「お前は行くな!」とか言われていたのですけれど、ロードカナロア(香港スプリント連覇)がそんなこと関係なく、ぶっちぎって勝ってくれました(笑)。
強かったですね(笑)。そのロードカナロアも社台スタリオンステーションで見せていただいたのですが、馬房に幕が張ってあったんです。
それはまたどうしてでしょう?
他の種馬を見ると怒り出してしまうそうなんです。現役時代はすごく人懐っこい馬だったのに、種馬としての競争も大変なんですね、きっと。
そんなこともあるものなんですね。