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馳星周さん

小説家馳星周さん

いっちぃの千客万来
Profile

馳星周さん小説家

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1965年生まれ、北海道浦河町出身。編集者・ライターを経て、1996年に小説家としてデビュー。「少年と犬」で第163回直木賞(2020年上半期)を受賞した。現在は集英社「小説すばる」にて、ステイゴールドをモデルにした馬と馬産地の人々をえがく「黄金旅程」を連載中。

取材・文:市丸博司/パソコン競馬ライター
写真:野呂英成

競馬とは無縁の家庭が突如一変

馳星周さん インタビューの様子
取材はフェイスガードを着用して行いました。

本日はよろしくお願いします。まずは直木賞(2020年上半期)の受賞、おめでとうございます。

ありがとうございます。

先生は北海道の浦河町、馬産地のご出身とのことですが、競馬との出会いというのは……。

実は競馬にはまったく興味がなかったんです。僕らが新宿で飲んだくれている時代、世の中は「オグリキャップ、オグリキャップ」と盛り上がっていましたけれど、そのころは競輪ばかりやっていました。

それが今やステイゴールドとその一族の熱烈なファンでおられるそうですが、一転して競馬に興味を持たれたきっかけというのは?

3年前(2017年)に妻が突然「ダービーがどうの」とか「レイデオロがどうの」とか言い出して、ひとりでテレビの競馬中継を見るようになったんですね。一緒に暮らしている僕もほぼ365日24時間そばにいるので、妻が競馬中継を見るということは、僕も見るということじゃないですか。そうこうしているうちに「競馬もおもしろい」と思うようになって。

そのころ、特に印象に残っているレースや、出来事などはありますか?

その年の有馬記念、キタサンブラック(1着)がラストランだったときですね。このときはキタサンブラックばかりが取り上げられていましたけれど、クイーンズリングも引退レースだったんです。妻が「この子だって今日で引退なのにかわいそう。私、この子を応援するわ!」と言っていたら、そのクイーンズリングが見事2着にきたんですよ。

ありましたねえ、クイーンズリング!

配当もそこそこついて(馬連3170円など)、それを見た瞬間に「馬券、買わなきゃ損じゃないか!」と思って(笑)。

そうでしたか(笑)。それからご自身でも馬券を?

年が明けるとすぐにPATに加入して馬券を買うようになって、そこから一気にぐっとですね。

馳星周さん インタビュー

ただ、ステイゴールドといいますと引退したのが2001年ですから、ずいぶんと前になりますよね。

今はインターネットでいろいろ検索して、現役時代を見ていない馬のことも知ることができますよね。それでまず、妻がゴールドシップにハマったんです。僕は僕で(2018年の)クラシックがはじまるときに、テレビでラッキーライラックの特集をやっていたのを見て「この子かわいいなあ。2歳の女王だし、かわいくて強いなんてすごいな」と思って、ラッキーライラックのファンになったんですよ。

ラッキーライラックというと、オルフェーヴルの産駒ですね。

競馬に興味がなかった僕でも、オルフェーヴルが三冠馬ですごい馬だということくらいは耳に入って知っていて、調べると、オルフェーヴルのお父さんはステイゴールドだと。そして、妻が好きになったゴールドシップのお父さんもステイゴールド。「なに、このステイゴールドという馬は!?」と。

競馬にあまり興味がない方ですと、オルフェーヴルは聞いたことがあったとしても、なかなかステイゴールドまではご存じないですよね。

それでネットでステイゴールドのことを検索したり、ステイゴールドが活躍していたころに出版された古本を買いあさって読みまくってみたりしているうちに、どんどん興味が増してきました。

G1で2着、3着があってもなかなか重賞を勝てなくて……。

「主な勝ち鞍:阿寒湖特別」ってなんだよこの馬って(笑)。それから目黒記念(重賞初制覇)を勝ったときにすごく盛り上がったことや、ラストランの香港ヴァーズ(G1初制覇)でそれまで見せたことのないような、ディープインパクトも真っ青という末脚で勝ったことを知り、ハマっていきましたね。

種牡馬になってからはゴールドシップやオルフェーヴルのほか、ドリームジャーニー(宝塚記念、有馬記念など)やナカヤマフェスタ(宝塚記念)などを出して大成功を収めました。

ただ、当初は種牡馬としてこれほどの成功を収めると予想していた人は少なかったと思うんですね。それがドリームジャーニーやゴールドシップなどを出し、凱旋門賞の2着馬を2頭(ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル)も出す偉大な種牡馬になるという、そういうところにも惹かれました。もともと自分の性格で、日の当たる王道を行く者よりも、日の当たらない道を行く者のほうが好きなので、そこにステイゴールドはピッタリだったのだと思います。それで2年前の夏競馬あたりからは、馬券もほぼステイゴールド一族の馬しか買わなくなりました。

ステイゴールドの血が入っているかどうかというのは、たとえば競馬ソフトで検索してみたりとか……。

それもありますし、今はツイッターにステイゴールド一族好きの仲間がいっぱいいて、「今週のステイ一族出走表」みたいなのを出してくれるんです(笑)。

それはファンとしては有り難いですね(笑)。もうステイゴールドの血が入ってさえいれば、どんなに人気がなくても少しくらいは買う感じですか?

それも最初はやっていたのですけれど、やっぱり、あまりにも来ないのはどうしようかと(笑)。競馬歴が短いので最初のころはよくわからなかったのですが、2年間毎週欠かさず見ていると、そのうち「いくらなんでも、この子はちょっとムリかな」というのがわかるようになってきたんですね。それでも、最後の未勝利戦とかになると応援で買うことはありますが、うちは1日の軍資金が決まっているので「全部」というのはなくなりました。

なるほど。ただ、最近のツイッターを拝見すると「ここぞ」というところにはドカーンといこうかというのも……。

最近ですと秋華賞や菊花賞は、許可を得て1000円以上買っています(笑)。

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