社台ファーム
東礼治郎場長インタビュー

ハードな調教でしっかり鍛えられました

昨年、「社台ファームは革新中」と書いたが、今年も「新たな試みが、どのような結果になるか楽しみで仕方ない」と話す東礼治郎場長。
イスラボニータ、ロゴタイプと2010年代の社台ファームを代表する2頭の産駒が、満を持してデビュー。ここでしか聞けない2歳馬の話もいろいろと聞かせていただいた。

今年も東場長にインタビューさせていただきます。場長のオススメ馬を知りたくて、このページを楽しみにしているPOGファンも多いかと思いますので、よろしくお願いします。

東場長

僕のオススメは走らないから(笑)。今年は牧場スタッフの意見を多く取り入れて紹介しようと思います。

まず2歳世代のお話を聞かせていただく前に、現3歳世代について振り返っていただきたいのですが、率直な感想としてはいかがでしょうか。

東場長

数字だけでいうと目立って上昇しているとは言えないんだけど、実は手応えを感じています。負けたレースでも、見応えのある馬が多くなってきた。以前は、「何だ、走らないな……」と、レース中盤でガッカリすることがあったけど、それがなくなってきたんですよね。僕と(吉田照哉)代表の意見としては、実際の勝ち星のイメージよりも、底上げされてきたなという印象を持っています。

内容があるレースが増えてきたということですか。

東場長

そうそう。いい競馬をする馬が増えたよね。

大きな要因として、一昨年にお聞きした、社台ファームの坂路コース改修があるのでしょうか。

東場長

現3歳世代は最初からこの坂路を使えた最初の世代です。新しいコースは使い方が難しいけど、頭を掻きむしりながら苦労したというよりは、楽しみながらさまざまな挑戦ができたと思います。

その結果、先ほど話されていたように、手応えあるものを得たということですね。

東場長

今までの社台ファームの馬と、筋肉のつき方が明らかに違うんですよね。腰回りとか、目に見えて違いがある。走る馬のデータが年を重ねると取れていって、社台ファームの坂路コースを走ることでつく筋肉が、どういったものか、少しずつ見えてきていると思います。

そして今年は、さらに山元トレセンの坂路コースも改修されたと聞きました。

東場長

これも大きな変革ですね。もともと山元は坂路が長く取れるんだけど、750mから900mに延長されて、さらに高低差も10mになりました。間違いなく今までよりハードなトレーニングを積める環境になりましたよ。

現2歳世代は、そんな山元でトレーニングを積めるわけですね。

東場長

すでに山元に何頭も送っています。
未勝利戦や3歳新馬戦の終わりが早まったりして、育成としては大変な部分はあるのですが、そのぶん馬房が空いて2歳馬が入りやすくなったという面もあります。それなら1頭でも多く、準備しておかないと。

その山元トレセンの坂路コースを使ってみての印象と、現状はいかがでしょうか。

東場長

去年の春にできたのですが、慣らすのに時間がかかるので、稼働したのは夏過ぎかな。栗東の坂路に近づけて設計したので、より成績に結びつきやすいと思います。実際、秋から結果は出始めているし、現2歳馬の成績にもきっと反映されるはずです。

社台ファームを出てからも、厳しいトレーニングが待っているということですね。

東場長

社台ファームの坂路より距離も長く勾配も急だから、当然疲れは出るはずです。しかも以前はポリトラックだったけど、ウッドチップになり、パワーも要求される。負荷は今までの比じゃないですよ。山元からすでに戦いは始まっているといえるかもしれません。

では、具体的に2歳馬の話を進めようと思うのですが、まずは新種牡馬について教えてください。

東場長

イスラボニータとロゴタイプの話からですね。成績とか印象だけだと、似たような馬に感じるかもしれませんね。早い時期から走って、2000mまでこなすあたりが。

皐月賞を勝ち、古馬になってマイル路線で活躍と共通点が多いですね。

東場長

それはそうなんですが、扱っていた自分からするとタイプはまったく違う。イスラボニータはひと言でいうと"意外性の塊"。遅生まれ(5月21日)なのに、社台ファームで一番早く勝っちゃいましたから。

イスラボニータの最大の長所はどこだと東場長は感じていますか。

東場長

イスラボニータは、若駒にありがちな骨瘤もあったし、ソエが出た時期もあったのですが、ケアをしたらすぐ治ったんです。そこが長所でしょうね。だから、成績が落ちずにずっと連対していたでしょ。不調という言葉とは無縁の馬でしたね。

一方、ロゴタイプはいかがでしょうか。

東場長

ロゴタイプは、ここにいるうちはそこまで目立っていなかったけど、順調ではありました。それで送ったあとに、調教師に任せていたらあの成績を収めました。ロゴタイプは走らせてみたら「こんなに走るの!?」と驚きましたね。

そんな2頭が同じタイミングで種牡馬デビューとは、何か縁を感じます。

東場長

どちらの産駒も、前向きさがありますね。
イスラボニータのほうは重心が低くて、腰回りの筋肉の発達が素晴らしい。ロゴタイプはそれと比べたら軽い造りをしています。個人的には、イスラボニータ産駒のほうが、先に勝ち出すと思っています。

ただ、ロゴタイプは意外性があるタイプなんですよね。

東場長

そうなんですよ。ここで目立っていなくても、山元トレセンに移動してトレーニングを積んでいく中で、覚醒する馬が出そうです。お父さんに似て丈夫な馬が多いし、未勝利のお母さんでも雰囲気ある馬を出していますよ。

では具体的に名前を挙げていただくとしたら、どの馬になりますか。まずはロゴタイプ産駒からお願いします。

東場長

フルオブグレース19(牡)は性格が前向きで、しっかりと調教が出来ている。仕上がりが抜群に早いので、競馬にすぐ使えるのがいいよね。あと田中剛さんがいっぱいいるから、チェックしてみてよ。ロゴタイプを、あそこまで走らせた実績は、私が一番すごいと思っているんだから(笑)。

それではイスラボニータ産駒で具体的な名前を挙げてもらえますか?

東場長

書ききれなくなりますよ(笑)。その中でも注目しているのがフリアアステカ19(牝)。初仔でお母さんが、サトノダイヤモンドやダノンファンタジーと同じアルゼンチンの馬。うちのカレンブーケドールのお母さんであるソラリアもチリだし。南米の血は日本の馬場に合いますからね。

サンデー系とダート血統というのはトレンドですね。

東場長

ペルーサのお母さんがアルゼンチンスター。自分の中でも良いイメージがあるんですよね。

実際に同馬の特徴はいかがですか。

東場長

言わずもがなスピードは抜群ですね。気の強い馬だから、自由に走らせると走り過ぎちゃう。そこには気を使っているけど、だからといって短距離馬ではなさそう。もちろんクラシックを狙っていくつもりです。
あとサンダーカップ19 (牝)。半姉のラブリーマリアは15年のケンタッキーオークスを勝っている血統馬です。上のペルクナスも新馬勝ちしているし、相当期待していますよ。
あとコッパ19(牡)ですね。今は山元にいて、本が発売する頃にはトレセンに入っていると思います。あとサマーナイトシティ19(牡)は、厩舎の人間がみんな褒めていますよ。

続いてキタサンブラック産駒についても教えてください。

東場長

ジュエラー19 (牡)ですね。

ジュエラーは一瞬のスピードに長けた馬で、キタサンブラックとは真逆のイメージがあります。

東場長

キタサンはタフなタイプということもあって、うちではスピードのあるお母さんに今年は付けていますね。キタサンの仔も気は良くて、真面目で走り過ぎちゃうから、ガス抜きはちゃんとできるように気は遣っています。あと、面白い組み合わせなのがエリンコート19(牝)ですね。

もう1頭の新種牡馬、ドレフォン産駒はいかがでしょうか。

東場長

これは成功しそうですね。うちの主任が間違いなく走ると言っています(笑)。

どういう点から、そう思われているのでしょうか。

東場長

扱いやすいのが大きいのだと思います。血統的には短距離のイメージが強いけど、力まずに走っているので、案外距離はもつかもしれませんね。

その中で注目されている馬はいますか。

東場長

ハラペーニョペパー19(牝)ですね。普段は頭が高い走りをしているのですが、加速するとグッと沈むような走りに変わる。手前を変えるのがスムーズですし、首の使い方をスピードによって変えられています。そういう意味でメリハリが利いていて楽しみが大きいですね。
あとエクスプレスレーン19(牝)は、ディープインパクトの肌ということもあって、綺麗なフォームでスピード感があります。ディープの繁殖は、最初から力を発揮することが多いので、新馬戦から楽しめるんじゃないかな。

スタセリタ19の動きが抜群!

その他に東場長がオススメする注目馬を教えてもらえますか。

東場長

名前を出さないといけないのが、スタセリタ19(牝・父Frankel)。

ソウルスターリングの全妹になりますね。POGには大注目の一頭です。

東場長

これはPOGで獲ったほうが良いと思いますよ(笑)。この血統であれば、動きが良いのはすでに分かっています。課題は平常心で競馬ができるかどうかの1点だけ。今のところ、お姉ちゃんのような"スイッチ"は見えないし、もしあったとしてもオフになっています。本質的な能力は友道調教師も良いと言っていたし、とにかくテンションだけだと思いますね。

ディープインパクト産駒はいかがですか。

東場長

良い馬が多いけど、特に注目しているのはコンテスティッド19 (牡)ですね。

先日、金鯱賞で大金星を挙げたギベオンの全弟ですね。

東場長

これも動き過ぎなくらいに動いていますね。ギベオンに比べると小さいんだけど、よりディープインパクト産駒らしいのはこっちかもしれませんね。
あと、サボールアトリウンフォ19(牡)は、跳びが大きくてスケールが大きい。これもお母さんが南米の馬で、チリの年度代表馬にもなったことがある良血。これは走ってほしいですね!

まだまだ、走る馬はいそうですね。

東場長

エピファネイア産駒のエアマグダラ19(牡)は競走馬として理想的。動きも良いし性格も従順ですから。この馬も走ってくれなきゃおかしい(笑)。
あとジョイフルビクトリー19(牡・父Kitten's Joy)はダノックスさんに買っていただいたんだけど、軽い造りで非常に良い馬。無駄な肉がつかないのに、ひ弱さもない絶妙のバランスで、速めの調教を何度やってもバテません。母父Tapitだからダートも走ると思うけど、芝が合っていると思います。
あと、早い時期にデビューしそうなディープインパクト産駒2頭も。ソーマジック19 (牡)とプラスヴァンドーム19(牡)はPOG向きだと思うので、オススメですよ。

今年もたくさんのお話、ありがとうございました。東場長のお話を聞いていると、どの馬も走ってきそうですね。
来年のクラシックが楽しみです!