ノーザンファーム空港
川崎洋史場長インタビュー

ドレフォン産駒の白毛牝馬はかなりの逸材

ダノンザキッド、ソダシと、昨年(現3歳世代)も2頭のGIホースを誕生させたノーザンファーム空港。

ノーザンファーム早来と同じく、昨年の夏よりノーザンファームYearlingの場長と兼任という形で、川崎洋史新場長が就任した。

ここでは新場長に今年の注目馬について教えていただいたのが、その中でマスコミやPOGファンがこぞって飛びつきたくなる1頭の牝馬の名が……。乞うご期待!

ノーザンファーム早来の津田場長と同じく、川崎場長も大阪出身とお聞きしました。

川崎場長

大阪が獣医のメッカというわけではないので、本当に偶然ですね(笑)。

川崎場長も初めてのインタビューになりますので、これまでの経歴から聞かせてください。まずは、どういった経緯で獣医を目指されたのですか。

川崎場長

高校時代に競馬に夢中になりました。競馬場ではなくテレビでレースを楽しんでいましたね。競馬に携わる仕事がしたいなと漠然と考えていたのですが、今も一緒に働いている大学時代の友人から「競馬業界で働くなら獣医になるのが一番良い」と聞いて、そのまま信じて獣医になりました。最初の就職先がノーザンファームになり、17年ほどになります。

昨年から空港牧場の場長になられたわけですが、それまではイヤリングの場長をされていたそうですね。

川崎場長

5年前からイヤリングをメインで見ていましたが、それまでは空港牧場で働いていたので、違和感はないです。送り出した馬も気になり、見に来ることもありましたので。

イヤリングのお仕事となると、ここ最近の競馬界隈のトレンド“早期デビュー志向”を如実に感じる場所だったと思います。

川崎場長

早期デビューには、調教が始まる前段階のイヤリングでの状態も大きなカギになります。イヤリング時代から体力がある馬に対して、無理することなく、馬に合わせて、調教を進めた結果として、早期デビューが見えてきます。自然の流れではないでしょうか。
今年も、もちろん仕上がりの早い馬がある程度います。ノーザンファーム空港ではおそらく5月末までに45%くらいは送り出せる予定でいます。

場長になられて2歳馬が最初のデビュー世代となるわけですが、個人的な目標は何かありますか。

川崎場長

まずは新馬戦ですね。そして2戦目を勝つことにこだわっていきたいです。もちろんクラシックや古馬GIを勝つことは大目標ですが、牧場の仕事が直結するのが2歳戦ですので、個人的な目標として1つでも多くの2〜3歳重賞を勝つということでしょうか。

昨年、阪神JFではソダシが、そしてホープフルSではダノンザキッドが勝利しています。これ以上の結果を追い求めるというのは、相当なプレッシャーがかかるかと思います。

川崎場長

周りからそういう評価をいただくのはありがたいのですが、牧場内で改善すべき点はたくさんありますし、それによってさらに高みを目指さないといけないと感じています。ポテンシャルが高くて優秀な若いスタッフが多いですし、新しいチャレンジを積極的にしていきたいですね。

組織が大きくなると守りに入りたくなると思うのですが、その攻めの姿勢がノーザンファームのすごいところだと思います。

川崎場長

競馬業界に関わらず、今は変化のスピードが速いですし、それに食らいついていくためには、若い人の想像力、行動力に期待するしかないと思っています。
自分たちがノーザンファームに入った時と、今の新しく入ったスタッフとでは、価値観が違って当然ですし、牧場が前に進むためには、その新たな価値観は必要不可欠な要素になりますので。

POGファンも、ここ数年で新しい価値観が生まれたような気がします。最近始めたファンからすると、ディープインパクト、キングカメハメハが1つの基準になっています。

川崎場長

あれだけ圧倒的に力を見せる種牡馬は、そう簡単には出ないですからね。

昨年C-1厩舎で高見厩舎長にダノンザキッドも能力が高いと名前を出していただいたのですが、ジャスタウェイ産駒ということもあり、大きく扱えませんでした。

川崎場長

それは我々もマスコミの方と同じです。イヤリング時代から良い馬だと思っても、産駒から大物が出ていないと、なかなか大きくは言えない部分はあります。
ただ、種牡馬入りする馬の能力は、総じてレベルが高いので、血統だけでふるいにかけることは難しい時代に入っていくと思いますよ。

それでは、具体的に川崎場長が注目している2歳馬について聞かせていただけますでしょうか。

川崎場長

さきほど名前も出ましたが、今年はディープインパクト産駒の紹介から始めさせてください。
血統も良くて動きも抜群文句のつけどころがないのが、タイタンクイーン19 (牡)。お母さんはスピードに長けた繁殖馬で、それがしっかりと遺伝しているという印象です。

イヤリングの頃から、才能の片鱗を見せていたのでしょうか。

川崎場長

5年やってきて、5本の指に入るのではないでしょうか。成長が凄く早い、完成度が高いというわけではなく、むしろトップグループから一歩引いた位置にいました。

それでも、川崎場長の目についたということですか。

川崎場長

ディープインパクト産駒で晩成型ということは、まず考えにくく、大半の馬が3歳でピークに近いところまで成長するのです。
同馬は成長したら間違いなく高い能力を発揮すると思っていますので、今から数か月でどのように成長するか楽しみで仕方がありません。それを“予測”と言われたらそれまでなのですが、馬体の良さ、ここまでの成長の仕方、これからの余地を考えると、期待して良い馬だと確信しています。

言葉を聞くだけで、惹きつけられてしまいますね。ちなみに5本の指と仰っていましたが、イヤリングの場長としてこれまで別格だったと感じた馬はいましたか。

川崎場長

サートゥルナーリアですね。1歳の夏の時点で、とんでもない馬だという手応えがありました。間違いなく走ると思いましたよ。

確かに、あの年の取材はサートゥルナーリア一色というか、デビューしてからも牧場から強気な言葉しか聞こえてこなかったですし、実際に無敗で皐月賞まで突っ走りました。

川崎場長

才能豊かな馬でしたね。3歳馬では、京成杯を勝ったグラティアス(母マラコスタムブラダ)も強く印象に残っていますね。

取材時点では2連勝。クラシックにも期待ですね。


2年連続で白毛馬が阪神JF制覇!?

それでは2歳馬に話を戻して、期待馬を教えていただけますか。

川崎場長

サートゥルナーリアの名前が出たからではないのですが、次に紹介したいのはエピファネイア産駒。ボージェスト19 (牝)は動きも良いですし完成度も高いです。

エピファネイア産駒から大物牝馬が出たからではないのですが、走る同産駒の見分けが難しい気がします。どういった印象を持っていますか。

川崎場長

フレームがしっかりしていて筋肉量が多いですね。重心が低くて、しっかりした走りをするので、調教はしやすいイメージがあります。ですので、そこは父の産駒らしいというか、パッと見た迫力は重要な気がします。
ロードカナロアよりも種付け頭数が今年は多い傾向にありますからね。人気はさらに高まっていくと思います。そのロードカナロア産駒なら、ジンジャーパンチ19 (牝)も相当走ると思います。

ボージェスト19もジンジャーパンチ19も牝馬。今年は牝馬の層が厚そうですね。

川崎場長

そうなんです。その牝馬の中で、私が最も注目しているのが、ユキチャン19 (牝、父ドレフォン)なんです。

お父さんのドレフォンは新種牡馬になります。

川崎場長

これがとにかくすごいんですよ。イヤリングでも走りがあまりに素晴らしくてビックリしました。

白毛馬は少し前なら評価を下げてしまっていたかもしれませんが、昨年の2歳女王は白毛馬のソダシ。周囲の目も一変しました。

川崎場長

2年連続、白毛馬が阪神JFを勝つってことも十分に考えられますよ。

なんて本のキャッチにしやすい言葉でしょう(笑)。大きく使わせていただきます!

川崎場長

この前も坂路で上がってきたのですが、持ったままバタバタすることなく39秒で上がってきたんです。調教でこのような時計を出す予定ではなく、本来であれば42秒くらい。まさに“スピード違反”なので想定外ではあったのですが、乗り手の感覚をおかしくさせるほどのスピード感があるのは事実なので、かなりの逸材だと思いますよ。

まさかドレフォン産駒が推奨馬として出てくるとは思いませんでした。

川崎場長

ドレフォン産駒は、筋肉量が豊富でスピードがあります。だけど、全部が短距離向きというわけではなくて、芝の中距離を走っても何ら不思議ではありません。気性も前向きで扱いやすいですしね。
あと、ノーザンファームの馬は、スピード馬が多く、道悪になると成績が下がってしまう。去年の夏も、重い馬場に苦しめられました。今年は(京都競馬場改修で)変則開催ということもあり、馬場の傷みは気になるところ。その点でも、父母ともにパワーのある血統のユキチャン19はオススメです。

白毛ブームが巻き起こるかもしれません。

川崎場長

6月東京を予定しています。あと、これも牝馬になってしまうけど、リアアントニア19 (父キングカメハメハ)は誰が見ても良い馬。このあたりに2歳重賞をしっかり獲ってもらうことを、今年の目標に掲げたいと思います。

今日は色々と教えていただきありがとうございました。