ノーザンファーム
吉田勝己代表インタビュー

全部とは言わないけどクラシックのどこかは勝ちたい

今年も吉田勝己代表にインタビューをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

吉田代表

よろしくお願いします。それにしても、ものすごい大雪ですね(※取材当日は北海道で今季一番の大雪)。飛行機もまったく飛んでいないみたいですよ。

2年前のインタビューでは、この坂路コースの上空を飛ぶ渡り鳥を勝己代表と一緒に見たのを記憶していますが、今年の空とはまったく違います(笑)。

吉田代表

ちょうどPOG取材の季節に、ウトナイ湖(苫小牧市)に多くの渡り鳥が羽を休めに来るんです。

しかし今年は混とんとした社会を反映するかのような猛吹雪の中での取材になってしまい、坂路コースでの調教撮影が大変です。まだまだ春は遠いといった感想を持ちました。

吉田代表

これも北海道の春ですよ。雪が降る春でも、猛暑の秋でも、春は春、秋は秋ですから(笑)。

今年のフェブラリーS当日の東京は、20℃近くまで気温が上昇しました。レース名と季節が一致しないこともありますね。

吉田代表

そうかもしれませんね。

ところで、去年はほぼ1年間コロナの影響で競馬界も混乱していましたが、代表の生活にも変化はありましたか。

吉田代表

もちろん。こんなに東京に行かなかった1年は、人生で経験したことがありませんでした。

昨年は“巣籠もり需要”ということで競馬の売り上げが、中央地方を問わずに一気に上がりました。

吉田代表

すごいですよね。地方競馬にも関心を持つ人が増えて、平日にも競馬を楽しむ人が増えたのは良いことだと思います。どうしても「競馬=土日」のものと考えがちですが、レースは世界中で365日24時間行われているわけですから。

本当に競馬がより身近になった印象です。

吉田代表

私も自宅にいる時間は多かったので、生中継でレースを見た数は今年が一番多かったのではないでしょうか(笑)。

昨年は、勝己代表も競馬場にも全然行けなかったということなんですね。

吉田代表

夏場は少し顔を出せましたが、ほとんどテレビでレースを見る生活を送っていました。クラシックは、牡馬も牝馬も3冠を獲られてしまったから、行けなくて良かったのかもしれませんけどね。それは冗談だけど(笑)。

勝己代表の目から見ても、コントレイル、デアリングタクトの強さは強烈に感じられたのでしょうか。

吉田代表

桜花賞、皐月賞を勝たれた時点で「この馬たちを倒すのは大変だな」と感じましたね。

同世代でこの2頭を倒すことはできませんでしたが、アーモンドアイがジャパンカップで完封勝利を収めました。

吉田代表

引退まで、ここまで見事な戦績で終えた馬はいませんからね。エピファネイアとの仔の受胎を確認しましたし、楽しみは尽きません。

そして、驚いたのがコロナ渦で行われたセレクトセールが、一昨年には届かなかったものの、歴代2位の187億6100万円(1歳馬、当歳馬合わせて)の売り上げを記録。セリ参加者の入場制限があったにも関わらず、相変わらずの大盛況ぶりでした。

吉田代表

コロナにより大きな影響を受けている馬主さんもいます。むしろこれからもっと出てくるかもしれません。
ただ、去年のセレクトセールに関しては、一度目の緊急事態宣言が終わった後だったこともあり、自然と皆様の中に開放感があったような気がします。
もちろん入場者も制限されていたし、例年のような賑やかさにはほど遠かったかもしれませんが、一瞬でも日常を取り戻すことができたなら、開催した意義はあったのではないかと思っています。

課題はダート中距離
隠れた砂の怪物がいる

例年海外で日本馬が活躍することを大きな目標に掲げている代表としては、遠征しにくい状況だった昨年はストレスが溜まったのではないでしょうか。

吉田代表

私がどうこう思っても仕方のないことですからね。日本で開催できているということだけでも、ありがたいと感謝しないといけません。

本当ですね。去年のインタビューをさせていただいた時は、サウジアラビア弾丸ツアーの直後でした。

吉田代表

あれは辛かったですね(笑)。

ただ、それから1年経ち、日本馬がサウジダービーやリヤドスプリントで大活躍。創設2年目にして、日本馬のレベルの高さを感じました。

吉田代表

そうですね。ただサウジカップのチュウワウィザードは、残念な結果に終わってしまいました(9着)。課題が残りましたね。

ダートの中距離路線は、まだ海外馬と差があると感じていますか。

吉田代表

それも、この2年で傾向は分かりました。血統を見ると、日本では芝の中距離を走っている馬に適性があるコースだと思います。大阪杯に出走するメンバーが、みんな11億円(サウジカップの1着賞金)を獲りにいったら、サウジカップを勝つことも可能だと思いますよ(笑)。

それは思いきった作戦ですね!

吉田代表

アドマイヤドン(2003年、2004年のJRA賞最優秀ダート馬)だっていきなりJBCを使って勝ったように、芝が良いかダートが良いかは走ってみないと分かりません。だけど今までの日本は、賞金が高いという理由だけで、ダートを試さず芝だけを使っていた馬がたくさんいるのです。

今以上に、以前は芝とダートの線引きがハッキリしていた気がします。

吉田代表

本当はダートの怪物だったかもしれないけど、芝しか走らずに引退していった馬もいるはずです。そのような馬が11億円を持っていくのではないかと思って見ています。

隠れダートの怪物が、現役馬の中にもいるかもしれませんね。

吉田代表

そうですね。ただ、日本のダート戦で実績を作らないと、サウジカップには選んでもらえないという歯がゆい面もあります。

昨年もお聞きしたように、2歳、3歳限定での賞金が高額なダートGIが必要かもしれませんね。

吉田代表

ダートGI(フェブラリーS、チャンピオンズC)の1着賞金が、サウジCの5着賞金とさほど変わらないわけですからね(笑)。プログラムの充実を願っています。

続いて現3歳世代、昨年の2歳世代に話を移していきますが、2歳GIの朝日杯FS、ホープフルSでは1〜3着までノーザンファームが独占。阪神JFもワンツーです。

吉田代表

それは満足のいく結果ですね(笑)。

朝日杯1着のグレナディアガーズは、昨年取材させていただいた時から、厩舎長も良い馬だと仰っていました。

吉田代表

生まれてからここを出ていくまで、ずっと良い馬でしたね。

フランケル産というのも魅力ですよね。POGの取材をしていても、さまざまな種牡馬から活躍馬が出る時代に変わりつつあるのを感じます。

吉田代表

ディープインパクト産駒ばかりでは面白くないですからね。でもこれから厩舎を回って、ディープ産駒もたくさん出てくるだろうから、こんなこと言ったらダメかな(笑)。

ディープ産駒の大物は、読者の方々も大注目だと思います。

吉田代表

仮に、これから先ずっとディープ産駒がいたとしても、それを負かす他の種牡馬の仔たちが次々と現れていたはずです。そういう意味では、ディープ産駒がいるうちに、さまざまな種牡馬の産駒が活躍し始めていることは、大変意義があることだと思っています。

朝日杯FS2着は、バゴ産駒のステラヴェローチェでした。

吉田代表

1頭しか付けていないのにGI2着。クロノジェネシスといい、こうした馬たちのことを、お宝と言うのでしょうね。
私が今さら「バゴ産駒は走る」と言っても、遅いと叩かれるだけですから。バゴ産駒の目利きは中島(文彦)GMに聞いたほうが確実です(笑)。

2年前のPOG取材で、中島GMにクロノジェネシスの名前を挙げていただきました。

吉田代表

あの時点で名前を出せるのは凄いですよ。


思い入れが強い特別な1頭とは

それでは、勝己代表の注目馬を教えていただけますか。

吉田代表

場長や調教主任や厩舎長のジャッジのほうが正確だから、私は遠慮しておきますと言いたいのですが……。

単に注目している馬、お気に入りの馬でもいいですので。POGファンはぜひ知りたいはずです。

吉田代表

わかりました(笑)。血統が凄いのがティファニーズオナー19(父Medaglia d'Oro)ですね。思い入れが強い馬なんです。

これだけ多くの馬がいる中でも、思い入れが強い馬もいるものなんですね。

吉田代表

もちろん走る馬は良いのですが、そんな機械的にできる仕事ではありません。

今までで一番、思い入れがある馬といえばどの馬ですか。

吉田代表

やっぱりシーザリオかな。

残念ながら先日、19歳で亡くなりました。

吉田代表

突然死だから、こちらも心の準備ができていませんでした。お腹には子どもがいたんですよ。

それは痛ましいですね。

吉田代表

現役時代も素晴らしかったけど、お母さんになってエピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアを輩出してくれました。

3頭も種牡馬入りさせていますから、本当に名牝ですね。

吉田代表

エピファネイアの仔も走っていますからね。サートゥルナーリアの仔も将来、活躍してくれるはずです。

では、最後に今年の目標をお聞かせください。

吉田代表

全部とは言わないけど、クラシックのどこかは勝ちたいですね。

現時点でリードしているのはホープフルSを勝ったダノンザキッドでしょうか。

吉田代表

エフフォーリアも相当な能力を感じますから、こちらも注目したいですね。

他にもオーソクレース、グラティアス、ラーゴム、ワンダフルタウン……。このラインナップを見たら全部獲れそうな気もします。

吉田代表

そんな簡単にはいきませんよ(笑)。だけどそうなってほしいと期待は持っています。

今年もお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。

吉田代表

早く世の中が落ち着いて、ファンの方々が競馬場で競馬を楽しめる日が来るのを願っています。