社台ファーム
吉田哲哉副代表インタビュー

社台ファームは新種牡馬に強いんです!

今年もお時間いただきありがとうございます。さまざまなお話をお聞かせください。よろしくお願いします。

吉田副代表

どうぞよろしくお願いします。

昨年のこのインタビューでは、2018年12月に社台ファームの坂路コースが改修されたことをお伺いしました。

吉田副代表

コースの斜度が2%弱だったのを3・5%に上げたこと、そして坂路コース全体の距離を伸ばすことで、大きな負荷がかけられるようになったことをお話ししましたね。

その成果について、どう見られていますか。

吉田副代表

途中から新コースで調教したのが現3歳世代。ですので、「急仕上げでできたコースを、どう最大限に生かすか」というのが1つのテーマでした。今までの社台ファームの課題のすべてが改善できたか?と問われると、合格とは言わないですが、ここに来て結果が現れてきている馬がいるのは事実です。あと厩舎スタッフの意識が大きく高まった気がします。

改修によって厩舎スタッフの意識が高まるとは、どういうことでしょうか?

吉田副代表

今までは坂の傾斜が緩かったこともあって、気象条件によってタイムや動きが大きく変わっていたのです。それがコースを丸ごと改修したおかげで、常に良い馬場で調教できるので、時計や動きから正確な状態を把握できるようになりました。発汗の仕方や、テンションの上がり方、息遣いだけで状態や疲労を判断していたのですが、そこに客観的な要素が織り込まれるようになって、より精度が上がったと思います。

そうすると、最初からこの坂路を使うことができた今年の2歳世代は、楽しみが大きいですね。

吉田副代表

やり過ぎないことへの意識も広がり、良い状態で送り出せる馬が多いと思います。

3歳世代に話を戻すのですが、昨年こちらのインタビューで名前が挙がった馬が、結果を残したと言ってもいいのではないでしょうか。

吉田副代表

「あれがあんなに走るとは思わなかった」ということが多くありましたからね(笑)。

キズナ産駒のケヴィンや、ゴールドシップ産駒のサトノゴールドの活躍が目立ちました。

吉田副代表

やっぱり新種牡馬に強いんですよ、社台ファームは。昨年も言いましたよね?

ビックリしました(笑)。昨年もお伺いしたのですが、その秘訣とは・・・。

吉田副代表

答えに変わりはありません。偶然の要素が大きいです。良いジンクスが継続することは、素直に喜びますけどね(笑)。ただ、正直に言いますが、ケヴィンは走りそうだと思って取材時に名前を出しましたが、思っていた以上に走りましたね。

ダートだけでなく芝でも好成績が!

あとはディープインパクト産駒の結果が例年以上に特に良かったように感じました(※取材後もサトノインプレッサが毎日杯を勝利)。

吉田副代表

これまでも、もっと走ってほしかったのですが(笑)。いろいろなところで言われていると思うのですが、ディープインパクト産駒は爪が痛くなったり、腰が甘くなったりと育成の難しい種馬なんです。1歳馬の厩舎スタッフが扱いに慣れてきたのが、多少いい影響を及ぼしてきたのかなと思います。

それと、例年仰っていた「社台ファーム生産馬はダートに強い」というイメージが少しずつ変わってきているのではないでしょうか。実際、数字を見ても芝の勝ち鞍の比率が上がってきていました。

吉田副代表

その実感はありますね。仕入れの繁殖の関係から、ダート馬が出やすいのは仕方ない部分もあると思っていますが、日本の競馬は芝に重きを置いているので、それだけだと戦っていけないのも事実。

ただ、芝専用とかダート専用って意外と少ないんですよ。調教方法でガラッと変わることもありますし、生まれ持った適性以上に"慣れ"は重要なはずです。簡単なことではないですが、本来ダートが得意な馬でも、芝で走るトレーニングを育成時からしていれば、芝向きの走りが完成すると思います。

そういった考え方が、結果に一歩一歩つながっていっているんですね。

吉田副代表

扱っている人が、血統や馬体から決めつけるのを控えようと。もう一度、本当の競走能力に立ち返って意識していければと思います。

コースの改修というハード面と、働くスタッフ意識というソフト面のバランスが非常に難しい点であると思います。

吉田副代表

さまざまなことをアップデートしていかないと、一気に取り残されてしまう世界ですからね。

新しい飼い葉や、トレーニング器具など、牧場には絶え間なく売り込みの営業がくると聞いたことがあります。

吉田副代表

それは多いですね。馬は喋らないので、積極的に取り入れようと思うのですが・・・。私は食いつきが悪いほうだと思われていますよ(笑)。トレーニング理論ひとつを取ってみても、誰かがやって話題になっている時点で、もう遅いんですよね。独自にベストのやり方を見つけ出さないといけない。そこは常に模索中です。

人手の問題もありますよね?

吉田副代表

インドもフィリピンも、もう人が残っていないかもしれませんよ(笑)。

国内の若い人で牧場を目指す人は、どういう人が多いのですか?我々は学校を卒業するタイミングで、牧場で働こうという選択肢が思いつかなかったので、興味があります。

吉田副代表

競馬ファンが半分くらいじゃないですか。あと動物が好きな人かな。

目標を持ってこられる人もいると思います。

吉田副代表

あと簡単な理由で、近所に競馬場があったからなんとなく、というのも多いですよね。牧場の仕事は、実際に働かないと分からないことも多いので、意外と何も調べずに来たほうが続くということもあります。競馬場が増えてくれれば、自然と希望者が増えると思いますが、それは難しいでしょうしね。

哲哉副代表イチ押し大注目の2歳馬は…

では、今年の2歳馬について具体的に聞いていきたいのですが、先ほども話題に上がりましたとおり社台ファームといえば新種牡馬に注目ですね。

吉田副代表

どこかに必ず当たりはいると思いますよ!

まずミッキーアイル産駒から教えていただけますか?

吉田副代表

サンプルが少ないのですが、スターシップトラッフルズ18 (牝)は状態が良いと聞いています。

サトノゴールドの半弟になるマイジェン18(牡)はいかがですか?お父さんがゴールドシップからミッキーアイルに替わって気になる存在です。

吉田副代表

個人的にはゴールドシップより合うと思っているのですが、どうなりますかね。(サトノゴールドとは)タイプは全然違うので、札幌の洋芝コースより芝の速いところが合いそうです。ミッキーアイル産駒は、思っていたほど行きたがる素振りを見せていないので安心ですが、走ってみないと分からない部分は大きいです。そのぶん、楽しみも多いですけどね。

このままモーリス産駒の全体的な印象も教えていただけますか?

吉田副代表

当歳の姿を見ると不安があったのですが、乗り始めてからのトラブルが少ない印象です。POGで選ぶとしたら、見た目重視で選べば間違いは少ないかと思いますよ。

その中でも特に注目している馬はいますか?

吉田副代表

マスクオフ18(牡)が良いですね。お母さんが良い馬で、どちらかというとモーリスより、マスクオフが強く出ているかな。これは走ってくれると思います。

ではドゥラメンテ産駒はいかがですか?

吉田副代表

生まれた時から格好が決まっていて、筋肉があってアクションが良いですね。明らかに繋ぎが硬くて、捌きも硬く見えるんですけど、不思議と気にならずに乗り味が良いらしいです。ですので、仕上げに苦労せず、牧場としてはありがたい種牡馬ですよ。

牧場で仕上げやすいというのは良いですね。

吉田副代表

頭は小さいけどバランスが取れていて、アスリートとして総合力が高い。馬体好きのファンから人気出るでしょうね。

では、そのドゥラメンテ産駒の中からオススメの馬を教えてください。

吉田副代表

プロヴィナージュ18(牡)、レディオブヴェニス18(牡)は良いんじゃないですかね。テンションも上がらずに2頭ともしっかりと走れています。現時点の社台ファームとしては、モーリス産駒よりドゥラメンテ産駒のほうが揃っている印象です。

ディープインパクト、キングカメハメハの時代から転換期を迎えようとしています。

吉田副代表

新種牡馬がどんどんと出てきて、傾向をつかむだけでも大変です。その中でもキズナは、頭1つ出たかなという印象がありますね。

キズナ産駒のレースっぷりを見て、どのあたりが強さの秘訣だと思われますか?

吉田副代表

1歳のときは、ひょろっとして厚みがないのですが、乗ってから変わりますね。あとストームキャットの血が入ると、注意力が散漫になることが多いのですが、あんな真面目に走るとは・・・。そこは意外でした。若手ジョッキーが乗っても、しっかり結果が出ているじゃないですか。それだけ操縦がしやすいんですよ。良い母につけることが、これから増えるでしょうから、ますます活躍するんじゃないですかね。

キズナ産駒のイチ押しがあれば教えてください。

吉田副代表

東場長とかぶっちゃうかもしれないけどケンホープ18(牡)。上のプールヴィルも走っているけど、当歳の頃から目立っていて、これは走るなと思わせてくれていました。

最後に持ち込み馬、外国産馬について教えていただきたいのですが。

吉田副代表

そこは我々が得意なジャンルですので。まず持ち込み馬ならイブニングジュエル18(牝・父American Pharoah)は良いですね。上のアスワンサンセットは体ができるのに時間がかかったのですが、こっちは早いと思います。American Pharoahの仔は、かなり幅があって、いかにも"アメリカ"みたいな馬が多いんですが、それだと日本の競馬に適応するのに時間がかかってしまう。その点、この仔は幅が出すぎずお母さんの良いところも出ています。あとエマソング18(牝・父Malibu Moon)も注目しておいてください。自信あります。

外国産馬ですと、ターフドンナ18 (牝・父Kingman)。最初、見たときから体が大きくて、大きくなりすぎることを心配したのですが、ちょうど良いサイズに落ち着いてくれました。早めの調教で行けると思います。

今年も深いお話ありがとうございました。