ノーザンファーム
吉田勝己代表インタビュー

無理に早く使っていない。それだけ才能豊かということ

今年も吉田勝己代表のインタビューをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

吉田代表

今年もよろしくお願いします。

競馬も無観客で行われているような状況下になっていますが、牧場では何か影響は出ていますか?

吉田代表

北海道も大変なことになっていますからね。もちろん気をつけるところは気をつけていますが、都会と比べて人と人との間隔は広いですからね。ただ、競馬場は無観客だと寂しく映りますね。

無観客ということで、競走馬にも影響があるのでは、と気にするファンも多いです。

吉田代表

案外、馬は変わっていないと思いますよ(笑)。違和感があるのは、人間だけなのかもしれませんね。

昨年のインタビューで、「世界各国を飛び回られて大変なのでは?」とお伺いしたのですが、2月末もサウジアラビアに行かれたそうですね。

吉田代表

あれだけ注目されたサウジカップですから、行かないわけにはいかないでしょう。我々は挑戦し続けないといけない立場ですから、第1回から参加できたことは誇りに思っています。

1着賞金(約11億円)の話だけでも、ものすごく話題になりました。

吉田代表

絶えず世界は動いているといった感じがしますね。ただ1回目は、我々も様子を見ましょうということになります。今後2回目、3回目と続けていってほしいなと思っています。

実際に、行かれた感想はいかがでしたか?現地0泊の弾丸ツアーだったそうですね。

吉田代表

私は飛行機で熟睡できてしまうので、そこまで負担はなかったですよ。ただ、新型コロナウイルスの影響もありましたし、運営側はバタバタしていましたね。初めてだから仕方ない面はあるのですが、横で見ていて「本当に無事に終わるのか」と冷や冷やしました(笑)。それこそ運営も馬も出走させる我々も慣れてきて、格が賞金にだんだんと追いつけば良いと思います。

サウジカップというようなレースが生まれるということは、POG本的には軽視されがちな、ダート馬の需要が、今後は高まっていく気がします。

吉田代表

世界的にはダート馬の需要はずっと高くて日本が低すぎる状況が続いています。何とかプログラムを充実させてほしいですね。ダートGI(フェブラリーS、チャンピオンズC)の1着賞金である1億円は、サウジカップの5着の賞金(約1億1千万円)よりも安いのですから。少し残念です。2歳3歳のダートのビッグレースが日本にないのも良くないと思っていて、これだと生産に力も入れられません。どうにかなるといいのですが。

「海外で勝つ馬を…」昨年の課題をクリア!

2018年は「海外で勝てなかった」という課題が残ったと昨年伺いましたが、2019年はしっかりと海外で勝ち星を挙げることができました。

吉田代表

その中ではオーストラリアで勝てたことが大きいですね。決してオーストラリアの賞金が高いから言っているわけではないですよ(笑)。

確かにオーストラリアは賞金が高いですよね。

吉田代表

日本は下級条件のレースが高いのですが、上のクラスになるとそこまでではないんですね。

また、オーストラリアの一番良いところは、国民全体の関心が高い。それに引き寄せられるように、競馬熱の高い中国人やシンガポール人、香港人なども入ってきて、高いレベルでの競走が行われている印象があります。

国籍や環境など関係なく、フラットにレースが行われているということでしょうか?

吉田代表

そうです。昔の趣を残しながら、どんどんと発展していると思いますね。ファンの知識レベルも高いですし、産業としてしっかり成立しているところも素晴らしいです。訪れるたびに元気をもらえます。

それでは目を国内に移しますが、昨年ノーザンファームはJRA・GI19勝。これでもかというくらい、勝ち星を伸ばし続けました。

吉田代表

たいしたものです。あと、何を言えば良いですか(笑)。

確かに、「秘訣は?」と伺っても毎年教えていただいていますからね。

吉田代表

特に大きく何かを変えたわけではなく、すべてにおいて積み重ねです。その19勝も1頭が集中して勝ち星を重ねたわけではなく、各馬が狙ったレースをしっかり勝ってくれた(19年GIを2勝したのはインディチャンプとリスグラシューのみ)のは嬉しいですね。これはスタッフの励みになりますし、成長につながると思います。

それでは新種牡馬についてお聞きしたいのですが、その前に昨年デビューしたキズナについて、どのような印象を持たれていますか?初年度から躍進しました。

吉田代表

思った以上に走りましたね。ダートだったり短距離だったり、ジャンルを問わずに活躍できる種牡馬はなかなかいません。1年目にこれだけインパクトを残す活躍ができるのは立派だと思いますよ。

人気以上に走っている印象があります。

吉田代表

見栄え以上に走っているということでしょうから、勝負根性があるのでしょうね。今後も、いいお母さんに付けていくことになるだろうと思います。

モーリス産駒2頭は「誰が見ても素晴らしい」

キズナ産駒のライバルと目されたエピファネイア産駒の走りはいかがでしたか?

吉田代表

まだ重賞を勝てていないので大きなことは言えないですが、条件戦でも良い勝ち方をした馬も多くいるし、これからグングン勝ち星を挙げていくんじゃないですか。キズナが少し目立っていますが、巻き返して競っていけると思いますよ。

新馬を勝って、2戦目で京成杯を2着したスカイグルーヴは相当奥がありそうです。

吉田代表

あれは誰が見ても、今後走ってきそうだと思うでしょう(笑)。

ちなみに、スカイグルーヴの半弟になるアドマイヤセプター18 (牡・父モーリス)の評価が、牧場の外まで響き渡っています。

吉田代表

これは文句なしに素晴らしい馬ですよ。馬体も惚れ惚れするし、動かせば反応も抜群。あとシンハライト18 (牡・父モーリス)も良いと思います。良い馬は?と聞かれてパッと思いつくのは、牧場全体を見渡しても、まずはこの2頭ですね。

どちらもモーリス産駒。やはり相当良い馬が育っていっているんですね。

吉田代表

モーリス産駒は、1歳のときの評価は、そこまで高くなかったのですが、実際に走らせてみたら、こちらが思っている何倍ものスケールを感じました。

モーリスは凄いですよ。サンデー系に付けられる強みもあるし、今からどんなパフォーマンスを産駒が競馬場で見せてくれるか楽しみで仕方がありません。

昨年はディープインパクト、キングカメハメハの2大巨頭が、この世を去りました。

吉田代表

それぞれの産駒がいなくなってから結果が出ても、それは世代交代にはなりません。ディープインパクト産駒、キングカメハメハ産駒と戦って結果を出した種牡馬が、次の時代を作っていくわけです。モーリス、ドゥラメンテともに、そこに間に合ったという意味でも力は持っていると感じます。

そのディープの後継者として、ミッキーアイルも種牡馬デビューしますね。

吉田代表

これも良い。競馬は長いところもあれば、先ほど話したようにダートのレースもあります。1つのカテゴリーだけに偏っていたら、どうしても限界がきてしまうので、バランス良く勝ち星を積み重ねていかなければいけません。そういう意味でも、ミッキーアイルや、昨年に種牡馬デビューしたリアルインパクトが、"短距離のディープ"ブランドを、作っていければいいなと思っています。

そうした産駒たちがモーリス産駒とマイル路線で争うことになれば、競馬ファンとしても胸が熱くなりますね。

吉田代表

また来年には、サトノアラジン、再来年にはサトノダイヤモンド、リアルスティールの産駒もデビューしてくるわけですから、今後ますますレベルが上がっていくと思います。

先ほど、ドゥラメンテの名前が挙がりましたが、産駒の印象はいかがですか?

吉田代表

モーリスの名前を先に出したけど、こちらも良いですよ。ドゥラメンテは1歳どころか生まれる前から期待値が高かったですからね(笑)。「その期待値以上か?」と問われると、「それ以下ではないと思います」としか言いようがない。

当然、早くからデビューできる馬もいますし、お父さんに似ている馬が多いので、何頭か大物が出てくるはずです。

このあと、厩舎を回られると思いますが、モーリス、ドゥラメンテ産駒はたくさん出てくるはずですので、好みの馬をぜひ見つけてください。

ちなみに、ドゥラメンテ産駒で特に注目している馬はいますか?

吉田代表

みんな注目していますよ(笑)。走ってくれないと困ってしまいますから。早めデビューということでは、目を引くのはアイムユアーズ18 (牡)でしょうか。走るフォームが美しいですね。スピードもありますしね。

もちろん今年も、ディープインパクト産駒の注目馬も多いと思います。

吉田代表

そうですね。特にバラダセール18 (牝)は、見た目のバランスも良いし文句なしですね。お兄さんのサトノフラッグも走りましたし、この馬も、どこまでも伸びていきそうですよ。総じてディープの仔は走ってくると思いますが、特に注目しています。

今年も2歳馬は順調ということですね。

吉田代表

本当に順調です。でも毎年、同じことを言っているから、読む人も信用しなくなるんじゃないですか(笑)。

いえいえ。実際6月になれば、「今年もノーザンファームは凄いな」と競馬ファンはなりますので・・・。

吉田代表

「早く使え」と人間が前のめりになっているわけではなく、実際早く仕上がる馬が多くなってきました。それだけに、態勢が整った程度では入厩させてもらえない。高いレベルで良い状態にならないと出走もままならないのが現状です。6月から使える馬というのは、それだけ才能が豊かということです。

今年もお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。

吉田代表

今年も期待して見ていただけたらと思います。