社台ファーム 吉田哲哉副代表インタビュー

「体と精神面を鍛える環境は整ってきました。今年は勝ちを増やします!」

今年のPOG取材において、大きなポイントになるのが社台ファームの坂路コースが改修されたこと。実際に拝見してビックリしました。

吉田副代表

完成したのは昨年の12月です。今まで2%弱だった斜度を、栗東と同じである3・5%にしました。今までは、周回コースとくっつけて距離を稼いでいた部分があったのですが、これからは坂路だけでもしっかりと負荷が掛けられるようになったので楽しみです。

使用して、馬に変化はありましたか。

吉田副代表

乳酸値を測ってみると、反応は如実に出ていますね。一方で、早々と慣れてきたというか、楽に上がってくる馬も出てきたので、よりペースを上げていこうと思っています。これからですよ。本当にこれから。

コースに手を入れるという発想を持たないといけないほど、馬づくりは難しい仕事なのだなと感じました。

吉田副代表

10年前の常識が今では、通じない世界ですからね。1次産業と聞くと体力勝負と思われがちです。もちろん体力も大事だけど、それ以上にアンテナを高く持っていることが大事だと思います。もう、トラクターに人が乗っていない世になってきました。

僕は100年後かなと思っているけど、10年後にやってきても驚かないほど、この世界も早く進んでいる気がします。10年後にこのインタビューを読めば、たぶん僕自身が笑ってしまうような時代遅れのことを言っているかもしれませんね(笑)。

それでも、すぐ大胆な工事へと動けることについて、改めて驚かされます。

吉田副代表

そうしないと勝てないですから。うちよりハードな坂路がトレセンにあると、移動した後に馬が疲れること、戸惑うことが多くて、なかなか順調にデビューできなかった。他の牧場に対してもそうですが、結果が出ているものは最低限取り入れないと、競争には勝ち残っていけない。トレッドミルだって10年前は、「ランニングマシンがわざわざ必要なのかな?」と僕は思っていました。でも今はないと本当に困りますからね。それで良いんです。

他にも、いろいろ変化されていると聞きました。

吉田副代表

これは現場からの要望で、1歳の頃から横木を通過させたり、ブルーシートの上を歩かせたりすることを始めました。

それは、どういった効果があるのですか?

吉田副代表

コース改修であったり、マシンなどで以前より体を鍛える環境は整ってきました。あとは精神面を鍛えることも進化していかないといけない。そういう面で新しい試みはやったほうがいいし、ダメなら変えるかやめるか。競走に勝つという面では、坂路以上に効果を期待しているかな。

それでは、今年の3歳馬について振り返っていただきたいのですが、率直な感想を教えてください。

吉田副代表

苦労しましたね。勝ち馬の数と勝利数は、例年に比べて大きく落ちたわけではないのですが、勝ち始める時期が考えていたより遅かった。入厩のタイミングを失敗したかなと思っています。

年々、クラシックを走る馬のデビューが早まっています。

吉田副代表

競馬は4歳、5歳と続いていくので、無理させる必要はないのですが、クラシックでも活躍できる馬も作っていかないと牧場としてはダメですから。

今回の改修で、あれだけ重宝したダートコースを手放して、ウッドにしたんです。今まで実際に、ダートの数字が良かった。だけど調教師さんに言われるんです。「結果的には成績が出るから良いんだろうけど、ダートを走るフォームが後天的についちゃう」と。ダート血統をダート馬に育てるのは楽しいんですよ。でも、そればっかりになるのはよくないので。

いろいろ考えるとコース改修ひとつを取っても、悩むことが多いですね。

吉田副代表

そこで坂路の斜度を上げて、ダート血統馬にとっても有効な調教ができるコースにしようと考えました。重い負荷で何度も坂を上がれば、ダート馬に育てることもできると思っています。

活躍馬として京成杯を勝ったラストドラフトが挙げられます。昨年の取材時には、あまり手応えを感じられていないようでしたが……。

吉田副代表

この時期でも悪く言うところはなかった。だけど取り立てて良いとも思わなかったのが本音です。調教師さんのテンションもそれほど高くなかったんです。

それでも走るのが競馬の難しさですよね。

吉田副代表

特にノヴェリスト産駒はわからないですよ。見抜けたら相当のプロ(笑)。産駒が多いうちでも、いまだに掴み切れていません。イメージで長めから使ったのですが、マイルに使ったり、ダートに行ったりで結果が出始めた。そういう意味では、ラストドラフトは期待以上だけど、牧場のイメージしたノヴェリスト産駒の成績を収めてくれていると思います。

では、このまま今年のノヴェリスト産駒で気になる馬を教えてください。

吉田副代表

ノヴェリスト産駒から聞き始めるって、うちの牧場くらいじゃないですか(笑)。

申し訳ありません(笑)。

吉田副代表

去年のこともあるから見つける自信はないけど、サンテミリオン17(牝)、オメガハートロック17(牡)あたりは非常に順調ですね。ほかにも良いのが隠れているはずなので、チェックしてみてください(笑)。

では、新種牡馬について聞かせてください。

吉田副代表

良いのがいますよ。ゴールドシップ産駒のパールサイド17。お父さんのイメージで気性的な部分を心配されるけど、今はまだしっかりと蓋がしまっている。ゲートも悪くないし、馬体のバランスも良いんです。

ええっと、ゴールドシップ産駒は……。

吉田副代表

エピファネイアやキズナの名前が出ると思ったでしょ?

見破られました(笑)。

吉田副代表

先に山元トレセンに行ったマイジェン17(牡)もいいですし、ゴールドシップ産駒はいいですよ。

社台ファームには2頭しか入っていないんですよね。

吉田副代表

そうなんです。これはデータというかジンクスなんですが、新種牡馬や頭数が少ないときに、なぜかうちは大物が出るんです。

昔、シングスピールの仔が2頭いて、それがものすごく走っていたんです。これはすごい種馬になるかも、と予見したのですが、その2頭がアサクサデンエンとローエングリン。それ以外はさっぱりですからね。うちにいた2頭だけが抜けて良かったんです。

何か理由があるのでしょうか?

吉田副代表

たまたまでしょう(笑)。キングズベストだって、エイシンフラッシュがダービー勝って、その2世代下のシャドウパーティーも良い馬でうちにいたので、どれだけ日本で活躍するんだろう……と思ったら全然。

POGファンの皆さん、うちからは穴っぽい馬を選んでください(笑)。

いやいや、しっかり注目馬も活躍しているじゃないですか。たとえば、毎年名前が挙がるスタセリタの仔たち。

吉田副代表

そこは数少ない走る前からだいたいの活躍が予測できる馬ですね。これだけ頭数はいるけど、そんな馬は、毎年指折り数えるくらいしかいません。

スタセリタ17 (牝)も評価されていますか?

吉田副代表

いい馬ですよ。ソウルスターリングはキリッとしていて、シェーングランツは大人しいわけではないけど、とぼけた感じがあったのですが、この仔は中間といった印象。制御が難しくないけど、かといって走る気がないわけでもない。ちょうど良い気がします。

ちなみに去年、見させていただいたディープインパクト産駒のトーセンカンビーナ。なかなか2勝目が挙げられずヤキモキしてしまいます。

吉田副代表

あれだけ出遅れると……。ゲートのことは、この時期では判断できないんですよね。早い時期にゲート試験もクリアしたのに、歯がゆいです。

能力があるのは、アルメリア賞のラストの脚を見ても確実ですからね。

吉田副代表

そうなんです。ジョッキーが手の内に入れれば変わる可能性も高まるのですが、勝たないと良いジョッキーに続けて乗ってもらえないのが、今の競馬でもありますしね。

そこがクラシックの難しいところですね。

吉田副代表

カンビーナ17 (牡)も自信はあるんですが、「出遅れたらすまん!」とだけ、今年はつけ加えさせてください(笑)。

話が逸れてしまいましたが、キズナとエピファネイア産駒の印象を聞かせてください。

吉田副代表

そうでしたね(笑)。キズナは、体はしっかりあるけど、スピードもちゃんとある。そしてサイズ感も良いですね。1頭挙げるとしたらトレラピッド17(牡)。ここに来てグングンと良くなってきました。千葉セリに出す予定です。

エピファネイアは、社長(吉田照哉氏)が現役時代も好きだったみたいでたくさんつけています(笑)。牝馬のアイムオールレディセクシー17なんかは、馬っぷりが良くて早くから使えそうですよ。

ちなみに照哉さんが気に入っている馬で、他にいれば教えてください。

吉田副代表

たくさんいますからね。その中でも、1番褒めているのがマルセリーナ17 (牡・父キングカメハメハ)でしょうか。去年のノヴェリスト産駒も同じだったのですが、一目見てワッと惹かれるタイプじゃない。だけど、これからの伸びしろが大きい体をしています。

この時期に筋肉の張りで馬を比較すると、どうしても短距離馬には見劣ってしまう。でも実を取るなら、この馬を指名したほうがいいですよ。ちなみにキングカメハメハは、うちとはかなり相性がいいんですよ。そして今年は特に良い馬が揃った気がしますので、注目してみてください。

他の産駒についても哲哉さんにゆっくりお話を聞きたいのですが、最後に牧場全体で今年に賭ける意気込みを教えてください。

吉田副代表

最初に話は戻ってしまうのですが、大掛かりなコース改修があって坂路に入れない時期があったので、今年は特別なプログラムの中で育成された世代になると思います。工事期間中はグルグルとコースを回っていました。

だからといって、順調さを例年より欠いたというわけではなく、長めを乗ったことによって得た副次的効果も表れてきています。

「社台ファームの育成が変わりました!」
と言うのは簡単なんだけど、新施設を使いこなすことも、新種牡馬の特性をつかむことも、簡単にはマスターできることではない。

そんな試行錯誤の中で、1頭でも多くの活躍馬が誕生してほしいことが願いですし、その中の具体的な目標として、昨年よりスタートダッシュを早くして、勝ち星を増やすということを目指したいと思います。

今日は、具体的な話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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