ノーザンファーム 吉田勝己代表インタビュー

優秀な人材が育てば、自ずと強い馬が生まれます

鈴木淑子

昨年1年間の勝利数の話題からお伺いします。生産者部門で、ノーザンファームが592勝を挙げ、記録を更新しました。

吉田代表

そこまで大きく上積みできたわけではないのですが、一昨年よりも下がるのは避けたいですからね。一昨年以上の数字をクリアできて良かったです。

鈴木淑子

勝ち星の数は、2013年からずっと増え続けているわけですが、"昨年以上"という目標を達成するのも簡単なことではないと思います。

吉田代表

去年はギリギリまで、"昨年以上"を達成することは無理だと思っていたんです。 11月と12月に一気に勝てたことが、記録更新の要因でしょう。

鈴木淑子

それだけ、難しいことに挑戦しているということですね。

吉田代表

正直なところ、大変です。自分たちでハードルを上げすぎました(笑)。

鈴木淑子

何年にも渡り、高いレベルを保ち続けられている秘訣を教えてください。

吉田代表

良いお父さんとお母さんだからといって、強い馬ができるわけではありません。優秀なスタッフが揃っていないと、強い馬は生まれないんです。それと同様に、私たちが意識しているのは、チーム作りですね。

鈴木淑子

スタッフの皆さんが、しっかりと連携を取って、情報を共有していらっしゃいますよね。

吉田代表

牧場内はもちろん、ノーザンファーム天栄、しがらきと、いろんな環境や場所で、1頭の馬について考えないと、レースで結果は残せません。チーム力を高めるためには、情報交換しかないので、全員が同じ知識、同じ方向を見るように意識しています。

鈴木淑子

そういう意味でも、天栄、しがらきの存在は大きいですね。

吉田代表

この2カ所が進化してきたことが、今の成績を支えているとも言えるでしょう。外厩がトレセンの近くにあることによって、牧場の考え方が、より調教師に伝わりやすくなりました。

鈴木淑子

そういった勝己さんの考え方が、これだけ多くのスタッフに行き届いているのは、凄いことですよね。

吉田代表

私は何も言わないんですよ。できる限り人に任せるというのが、ポリシーなので(笑)。優秀な人材は、優秀な責任者が育ててくれていますので、何も心配していないです。

鈴木淑子

昔と比べてスタッフの意識が変わったなと思う点はありますか?

吉田代表

最近感じるのは、海外に研修で行きたがるスタッフが以前より多くなりましたね。毎年4人くらい海外に行っていますよ。

鈴木淑子

どんな国に研修に行かれるのですか。

吉田代表

できるだけ希望に沿うようにしてあげているけど、ヨーロッパかアメリカが多いですね。向こうにしてみたら、無償で仕事をしてくれるから、助かっているんじゃないですか(笑)。

鈴木淑子

海外の牧場で研修すると、ホースマンとして、影響を受けることも多いのではないでしょうか。

吉田代表

逆も大きいんです。生まれてから、競走馬、そして種牡馬になるまで、一連の動きが定着してシステム化できているのは日本だけ。だから、普段当たり前にやっていることが、どれだけ進んでいることなのかを感じてほしいと思っています。

それに牧場がセリを開催しているなんて、世界中を見渡しても日本だけだと思いますよ。

鈴木淑子

そして、昨年はキャロットファームが初めてダービーを制するなど、クラブが話題にもなりました。

吉田代表

牧場のところでお話ししたことと重複しますが、ちゃんと情報が行き届いているということが、今の競馬には本当に大事なんです。だからクラブの需要が高まっているのだと感じます。

オーナーはお金を払うだけで、あとは人に任せるというのが、以前の競馬界では当たり前だったけど、それだと不透明な部分が多すぎて、これから馬主を始めたい人がいても、難しくて近づいてこられないですよ。そのままでは、競馬界がダメになってしまうと思います。

鈴木淑子

一口会員としてクラブでいろいろと経験されてから、個人馬主になる人も増えていますよね。

吉田代表

それは良いことだと思います。私が一番大事にしたいのは、分かりやすいということ。馬主は誰でもなれるわけではないのですが、必要以上に身構えてもらいたくはないんです。そうした点でも、多くの馬を持つことが可能で、かつ競馬を親しめるクラブの役割は大きいと思います。

オルフェ産駒は晩成型 カナロア産駒は短距離型

鈴木淑子

それでは、昨年の競馬について、具体的にお話を伺わせてください。オルフェーヴルは、初年度から ラッキーライラック という大物を出しました。

吉田代表

オルフェーヴルは評価が難しいですよね。1頭だけ、ズバ抜けて強いんだから(笑)。

鈴木淑子

それだけラッキーライラックは特別な素質や能力を持っているのでしょうか。

吉田代表

それは分かりません。オルフェーヴル産駒は、みんな良いんですよ。走りそうな雰囲気が、ちゃんと出ている。

あとは、皆さんご存じのように気性でしょうね。逃げたり、一番後ろから競馬したりと、極端なレースが合っているのかなと感じます。

鈴木淑子

たとえば、外から被せられたり、馬群に包まれると力が発揮できなくなるケースが見られますね。

吉田代表

気性的に少しでもストレスがかかっちゃうと、力が出せなくなってしまう。今思えば、ステイゴールド産駒も、そういう馬が多かったですよね。

鈴木淑子

だからこそ、優等生のような競馬を繰り返しているラッキーライラックが・・・・・・。

吉田代表

本当に分かりません(笑)。ただ1年目に1頭出てくれたことで、2年目に向けて、夢が広がりますね。

鈴木淑子

年が明けてから、産駒の成績が上がりましたよね。

吉田代表

オルフェーヴルもスプリングSを勝ってから、連勝街道に乗ったので、少し晩成型なのかもしれないですね。

鈴木淑子

そうすると、今年の秋には、もっと良くなっている可能性もありそうです。

吉田代表

そうなると嬉しいけどね。夢に入れておきましょう(笑)。

鈴木淑子

続いて、想像以上の活躍だという声も上がっているロードカナロア産駒の初年度はいかがでしょうか。

吉田代表

世界トップの馬だから。当然、これくらいは走ると思っていましたよ。以前からノーザンファームの1つの課題として短距離路線の弱さがあったので、これで大きな光が見えました。

鈴木淑子

ステルヴィオがスプリングSを勝利するなど、お父さんのイメージよりは、距離が持ちそうでは・・・・・・。

吉田代表

でも、トップレベルの競馬になればマイルまでだと思います。もちろん相手次第で、2000メートルでも2400メートルでも通用するでしょうが、一流のディープインパクト産駒と互角以上の戦いをするには、マイルの舞台がベストかな。

鈴木淑子

香港のスプリント戦での、あの強い勝ち方は、スピードだけではできないと私は感じていて、子どもたちに、「実はお父さんは2000メートルでも走れたのでは?」と、証明してほしいと思っているのですが。

吉田代表

お父さんはやはりマイルまでだったと思います。血液がC:C型で短距離型なんです。配合相手次第で、C:T型の仔が生まれるので、そうなると産駒の適性距離はもう少し長くなるかもしれませんが、それでもマイルがベストでしょうね。

鈴木淑子

他にもロードカナロア産駒には、シンザン記念を勝ち、強烈なインパクトを残したアーモンドアイもいますね。

吉田代表

強かったですね。上が走っていないから注目度は低かったけど、お母さんのフサイチパンドラは強い馬でしたから。

鈴木淑子

3歳でエリザベス女王杯を勝っていますものね。

吉田代表

ロードカナロアは、そういう繁殖の能力を、ちゃんと仔に反映させることができる種牡馬なんだろうね。

鈴木淑子

牧場の方も、ロードカナロア産駒は、大人しく扱いやすいと仰っていました。

吉田代表

能力をカットさせないのが長所でしょうね。実績の割に仔が苦戦している繁殖は、カナロアだと結果が出せるようになるのかもしれないね。

鈴木淑子

POGファンにとっても、いい情報ですね。あと、勝己さんが気になっている馬はいますでしょうか。

吉田代表

驚いたのはムーンフェイズの仔のオウケンムーン。あれは本当にビックリしましたよ。

鈴木淑子

オウケンブルースリ産駒ですね。

吉田代表

全部で3頭しか付けていないんです。それなのに重賞を勝つんだから、競馬は本当に分からない。ジャングルポケットは意外性のある種馬だからね。息子に、そこが受け継がれているのでしょう。

鈴木淑子

それから、3月17日に、ジェンティルドンナの全妹・ヴィルトゥースが、初出走で既走馬相手に完勝しました。改めて、血統の力の凄さを感じました。

吉田代表

400キロを切る小さい馬なのに、どこにあんな根性があるのだとビックリしましたね。みんなが注目している中で、ああいう派手なパフォーマンスができるのは、素晴らしい。

大注目のドナブリーニ16

鈴木淑子

さらにその全妹であるドナブリーニ16 は、6月デビュー目標と聞いています。

吉田代表

こっちは体も大きいし、クラシックに向けて本当に楽しみな逸材ですよ。

鈴木淑子

今年も全体的に始動は早くなりそうですか?

吉田代表

年明けの未勝利戦のほうが、勝てない馬が集まっているからレベルが低いと思われがちですが、逆なんです。完成度で勝負になるぶん、新馬も未勝利も早いほうが楽なんですよ。1回使って勝てば、休めるメリットも大きいし、使い出しが早くなるのは自然なことだと思います。

鈴木淑子

そして、今年2歳馬がデビューする新種牡馬といえば、ジャスタウェイがいますね。

吉田代表

素晴らしいですよ。ハーツクライより走りが軽いんです。滞空時間が長いから、スピードも出やすいでしょうしね。生まれた時は、決して体を良く見せなかったけど、動かすと"やっぱり世界一(のレーティング)になっただけのことはあるな"と感じさせてくれます。

鈴木淑子

最後に気が早いかもしれませんが、今年誕生したドゥラメンテ産駒についても、少しお聞かせください。

吉田代表

お父さんは脚元が弱いところがあったけど、幸いにも受け継いでいなくて良かったです。

鈴木淑子

お父さんは志半ばで引退というイメージがありますから、産駒にかける期待も大きいですよね。

吉田代表

種牡馬になれて本当に良かった。牧場に戻って来た時は脚が地面に付けられなくて、もうダメかなと思いましたから。

でも生命力の強さなのか、種付けを開始したら見事なまでにスムーズだし、受胎も良いんです。280頭くらいこなしますからね。種付け数はドゥラメンテが1位で、2位も去年から種付けが始まったモーリス

鈴木淑子

モーリスも、そんなに種付けをしているのですね!

吉田代表

オーストラリアでも種付けしていますから、世界一はモーリスかもしれませんね。こっちも受胎率が良いんです。受胎率が良いのは、種牡馬としての成功の条件ですから、この2頭は活躍が保証されたようなものですよ(笑)。

世界的な種牡馬になるかもしれないモーリス

鈴木淑子

今年だけでなく、来年再来年も楽しみな馬が続々デビューしますね。

吉田代表

ファンの方々も期待して待っていてください。

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