私の競馬はちょっと新しい
特別編 中央競馬調教師 友道康夫さん
- 「人に恵まれて、ここまで来ることができました」
- 1963年生まれ、兵庫県出身。浅見国一厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て、01年に調教師免許を取得。翌02年11月に開業し、08年にアドマイヤジュピタ(天皇賞・春)でG1初制覇。16年のマカヒキ、18年のワグネリアンで日本ダービーも制している。
言葉では言い表せないダービー制覇
市丸:さて、そのヴィブロスと同期になりますが、16年にはマカヒキでついに日本ダービーを勝ちました。すごいダービーだったと今でも思うのですが、それまではずっと後ろから行って外から追い込んでいたのが、ダービーでは少し前、中団あたりからの競馬でしたね。
友道:皐月賞で負けたこともありますし(2着)、最近のダービーの傾向を見ていると、ある程度はいいポジションにつけないと勝てないですからね。また枠も3番でしたから、ジョッキー(川田将雅騎手)とも、いい位置を取りに行こうと話をしていました。
2016年ダービー。マカヒキがハナ差で戴冠
市丸:ただ、それまでやっていない競馬をダービーでするというのは、冒険といいますか、怖いものがあったりはしませんでしたか?
友道:折り合いもつきますし、それはまったく問題ないだろうとジョッキーとは話をしていました。
市丸:サトノダイヤモンドとハナ差の接戦でしたが、最後はあの勝負服が勝つのかなと、金子真人オーナーの。
友道:すごいですよね(笑)。金子さんとは、ぼくが松田国英厩舎で助手をしていたころからのおつきあいで、ワグネリアンの祖母・ブロードアピールにも乗せてもらっていました。開業してからも、毎年2〜3頭は預けていただいています。
市丸:日本ダービー制覇というのは?
友道:やっぱりダービーって違いますよね。言葉では言い表せないですが、これがダービーなんだ、と。アンライバルドで負けたときには、もう勝てないものかと思っていましたけれど、これがダービーなんだ、と。やっぱり口では言い表せませんね。
市丸:そして今年、ワグネリアンで2度目のダービーを制しました。
友道:やっぱり金子さん、すごいですよね(笑)。
市丸:ワグネリアンは2歳時からすごい勝ち方をしていましたね。
友道:そうですね。でも、マカヒキの2歳時と比べたらまだまだ子どもかな、と。マカヒキは完成されたというか、大人な雰囲気がありましたけれど、ワグネリアンはまだやんちゃな子どもという感じでした。新馬戦も、調教ではそんなに動きが目立った馬ではなく、あれほどの脚を使うとは思っていなかったので、レースを見て、すごいなと思いましたね。
市丸:先ほど名前の出たブロードアピール(00年シルクロードS、02年ガーネットSなど短距離で活躍)の血を引く馬なので、長い距離はどうかと思っていましたが……。
友道:それはありましたよね、今でもあります。ただ、マカヒキも母系は短距離でしたから、ある程度は持つのかな、と。成績を見てもらえばわかると思うのですが、ぼくは長距離が好きなので、成績というか出走もあまりしていないと思います(笑)。ですから、1600mの馬かと思っても、新馬は1800mくらいから使いたいですね。
市丸:その新馬戦のあと、野路菊S、東京スポーツ杯2歳Sと勝って、年明けは弥生賞で同じく無敗のダノンプレミアムとの対決になりました。皐月賞までは対戦しないとかいう考えはなかったのですか?
友道:野路菊Sを勝ったときに「ダービーを目指しましょう」となって、ではダービーを目指すにはどうしたらいいのかと考えると、無理はしたくないので、東京スポーツ杯から弥生賞、皐月賞、ダービーと。もう去年の9月には決めて、こちらが先に弥生賞からと言っていたので「なんで来るの?」と思いました(笑)。
市丸:そうでしたか(笑)。その弥生賞は2着、そして皐月賞では7着でしたが、これは馬場(稍重)の影響もあったのでしょうか?
友道:馬場もあります。また、弥生賞のときに装鞍所から下見所、そして馬場入りとテンションが高かったんですね。それを踏まえてでしたが、今から思えばですけれど、調教が軽かったかな、というのもあります。それに位置取りなども重なって、うまくいきませんでした。
市丸:それでダービーは5番人気……、個人的な話で恐縮ですが、ぼくは本命だったんですよ。
友道:ありがとうございます(笑)。
市丸:17番枠でしたが……。
友道:枠としては最悪の枠なんですけれど、反対に、あの枠に入ったことで乗り方の選択肢がなくなったんです。木曜に枠が決まってすぐには話せなかったのですが、土曜に福永祐一騎手と会ったとき、お互い「先行するしかないよね」という話になって、迷いなくあの位置を取りに行ったと思います。取れたとして、それで引っかかったら仕方ない、あれしか勝つ手はないと思っていましたが、完璧に乗ってくれました。
ワグネリアン
市丸:2回目のダービー制覇の喜びというのは?
友道:2回目もうれしかったのですが、ワグネリアンは弥生賞、皐月賞と2連敗していたので、そこから勝てたということもうれしかったですね。スタッフ、ジョッキーも完璧にやってくれました。
市丸:この秋はどういう予定ですか?
友道:神戸新聞杯からになります。その後は、やはり距離はちょっとどうかと思いますので、菊花賞には行かず、秋の天皇賞を予定しています。
市丸:そこからジャパンCは……。
友道:まだそこまでは。天皇賞を見てからですね。
市丸:まだ子どもというお話しでしたので、古馬になってからの上積みも期待できそうですね。
友道:この夏、牧場にいる間にもひとまわり大きくなっていますし、まだまだ伸びしろがある状態でダービーを勝てましたので、さらに良くなってくると思います。
市丸:楽しみにしております。
(取材・文:市丸博司/パソコン競馬ライター)
(写真:高橋章夫)
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