私の競馬はちょっと新しい
第55回 漫画家 甲斐谷忍さん
- 「競馬の楽しさが伝わればいいなあ、と思います」
- 1967年生まれ、鹿児島県出身。大学卒業後、一般企業に就職し、その後漫画家に転身。「ONE OUTS」(ビジネスジャンプ)、「LIAR GAME」(週刊ヤングジャンプ)などのヒット作を送り出した。11年より「ジャンプ改」において、競馬を題材に描いた「ウイナーズサークルへようこそ」を連載中。
凱旋門賞を勝てる馬を探し出す
市丸: | 作品の中でパドックの達人(ゴンゾウ)が |
出てきましたが、 | |
あの厩務員を見て馬券を買うという発想は | |
すごいなあ、と思いました。 | |
甲斐谷: | 「ONE OUTS」の担当だった方に |
パドックの見方はひと通り習ったのですが | |
あの馬が胴が長いとか、詰まっているとか | |
見ていても全然違いがわからなかったんですね。 | |
そうしたら | |
「甲斐谷さん、いい方法があります。 | |
ネクタイをしている厩務員がいるでしょう。 | |
5レースとかでネクタイをしているというのは | |
明らかに表彰式に行く準備をしていますよね」と。 | |
それで「おれ、その方がいい!」と | |
その日はネクタイをしている人の馬ばかりを買って | |
そこそこ当たったんですよね。 | |
市丸: | パドックは馬を見るところだと |
先入観を持ってしまいますが、 | |
そういう発想が出てくるのは素晴らしいですね。 | |
少し話は戻りますが、 | |
岡田さんのすごさというのは、 | |
どのあたりに感じられますか? | |
甲斐谷: | 馬を見るという面では、パドックって、 |
16頭とか並んでいる中で | |
良く見える馬を言う「横の比較」と、 | |
七雄のように、前回との比較で馬を選ぶ | |
「縦の比較」の2つのパターンがありますよね。 | |
市丸: | 一般的にはそういう考え方ですね。 |
甲斐谷: | でも、岡田さんのパドック解説を聞いていると、 |
「この馬は中山のダート1800mが向いている、 | |
その馬が芝短距離に出てくるというのは、 | |
馬は悪くないけれど無理でしょう」と | |
そういう判断をされるんですよ。 | |
ただ、競馬場の達人でもそうでしたけれど、 | |
「調子はどうですか?」と聞いても | |
「わからない」と。 | |
素質を見ることについては自信がある、 | |
でも、わからないところはわからないという、 | |
そういう潔さはかっこいいですよね。 | |
また、G1のように最後は素質勝負になる | |
格の高いレースほどよく当てられると思います。 | |
市丸: | また、吉田照哉さんも |
好きでいらっしゃるそうですね。 | |
甲斐谷: | きっかけは、デットーリ騎手がJCダートと |
ジャパンCを2日続けて勝った年でした。 | |
市丸: | イーグルカフェ(5番人気)と |
ファルブラヴ(9番人気)の02年ですね。 | |
甲斐谷: | アシスタントが2日連続で単勝を獲ったのですが、 |
吉田照哉さんが | |
「デットーリが乗ると5馬身違う」 | |
と言っていたのを信じて買ったそうなんです。 | |
それからですね。 | |
自分は実に平凡な競馬ファンなので、 | |
ぼくが見えないものを見える人には | |
すごくあこがれるんです。 | |
社台ファームの馬はG1で乗り替わると | |
激走することも多いですし、 | |
デインドリームが凱旋門賞を勝つ前に買ったり、 | |
絶対なにか見えていると思うんですよ。 | |
あと武豊騎手も、自信がありそうなときには | |
ブログやコラムの文章に | |
やんわりとそれが出ているように思えますし、 | |
この二人は馬の能力が見えていると思っています。 | |
市丸: | 馬はいかがでしょう。 |
特に思い入れのある馬などは。 | |
甲斐谷: | ぼくが馬券を買い始めたころに、 |
アシスタントと担当さんで、 | |
「最強馬はどの馬か?」という | |
議論がなされていたんです。 | |
スペシャルウィークの世代のときですね。 | |
そこでセイウンスカイやグラスワンダーの | |
名前は出ていたのですが、 | |
エルコンドルパサーのだけ残っていたんです、 | |
みんな「いいと思うけど……」というくらいで。 | |
それで「じゃあエルコンドルパサーがいい」と | |
よくわからずに応援するようになったら、 | |
あれよあれよとジャパンCまで勝ったんです。 | |
それからこの馬にはすごく思い入れがあって、 | |
翌年の凱旋門賞は最後の最後で勝てなかったので、 | |
誰かにこの借りを返して欲しいと | |
思うようになりました。 | |
それから、競馬を見る上で一番重要なことは | |
凱旋門賞を勝てる馬を探すことになりました。 | |
市丸: | ディープインパクトは応援に行かれたそうですね。 |
甲斐谷: | 最初に「これだ」と思った馬はクロフネで、 |
その次がディープインパクトの若駒Sでした。 | |
武豊騎手が新馬戦の前にブログで書かれていて | |
気になってはいたのですが、 | |
若駒Sを見たらとんでもないレースだったんですね。 | |
それから「これ、絶対三冠獲るよ」と、 | |
皐月賞以降のG1はすべて見に行きました。 | |
そして凱旋門賞は、 | |
あの馬が交わされて負けるというのは | |
ちょっとショックでしたね。 |
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