私の競馬はちょっと新しい
第34回 中央競馬騎手 福永祐一さん
- 「JRA-VAN NEXTとレーシングビュアーは欠かせません」
- 1976年生まれ、滋賀県出身。96年にデビューし、53勝で最多勝利新人騎手を獲得。99年の桜花賞でG1初制覇を達成すると、10年まで中央競馬G1・14勝。また、エイシンプレストンやシーザリオで海外G1制覇も果たしている。10年は関西リーディングを獲得。本年は全国リーディングトップの104勝(10月16日現在)を挙げるなど活躍中。
JRA-VAN NEXTとレーシングビュアーで馬の特徴を確認
市丸:06年に北橋先生、07年に瀬戸口先生が引退され、そのあたりから変わったことはありますか?
福永:06年にフリーになって、瀬戸口先生が引退したあたりからリスタート、再デビューという感じで、そのときにいろいろ考えたりはしました。ただ、無条件で乗せてくれる厩舎がなくなって、逆にふっきれた面もあります。無条件に乗せてくれる分、結果を出さなければいけない、迷惑はかけられないと、結果に追われる部分がありましたから。今は自分一人のためで、扶養家族もいないですから家族のために続けなければいけないということもないですし、そういう状態でやれているので、精神的なコンディションはずっと安定して良いですね。
市丸:今年は震災後「TEAM JRA vs TEAM 岩手」の騎手対抗戦に参加されてたり、その後、盛岡で豚丼を振る舞われたり、そのあたりはすごく力を入れていらっしゃいますね。
福永:そんなことないですよ。僕よりも熱心に活動されている方もたくさんいます。
市丸:でも、震災前からもいろいろなところに遠征されていますね。
福永:地方競馬を自分がどうしよう、なんてそんなおこがましい考えはないです。ただ、なにか企画があって自分が必要だと声をかけてくだされば、都合がつけば行きますね。豚丼に関しては、賞品ですごくたくさん貰って自分一人では食べきれないので(対抗戦個人優勝で「いわて純情豚1頭分」「江刺金札米ひとめぼれ1年分」を獲得)。そんな「被災地のために」とか聖人君子ではないですよ。ただ、自分は余裕のある立場、環境にいるので、なにか支援できることがあればします、と。困ったときはお互いさまですから。もし自分が困ったときがあれば助けてもらいたいですし、被災したら先頭に並びます(笑)。
市丸:また、地方競馬、高知では昨年からお父さんの名前を冠した「福永洋一記念」が実施されていますね。
福永:これは勝手な自己満足です。やりたかっただけで。
市丸:ただ、お父さんの出身地の高知でというのは良いですね。
福永:父は中央競馬の騎手でしたし、自分もJRAのジョッキーですから、やるならJRAで、ということなのでしょうけれど……。「福永洋一記念」ではなく「武邦彦記念」でもいいと思いますが、そういうのはJRAではないですよね。売り上げが減ったといっても、これだけ社会全体が下がっている中で、賞金が大幅に下がったとか、みんなの年収が大きく減ったりはしていないのですから、JRAはすごい会社だと思っています。ただ、パソコンが普及して外出しなくても楽しめることが多くなりましたので、いろいろお膳立てをしてもっと「競馬の楽しみ方」をアピールし、多くの楽しみの中から競馬を選んでもらえるようにしなければいけない時代だと思います。
市丸:そのパソコンですが、福永さんはJRA-VANをパソコンでご利用ですか?
福永:ケータイと、パソコンはJRA-VAN NEXT、あとレーシングビュアーを利用させていただいています。
市丸:それぞれ、どのようにお使いですか?
福永:ケータイは、木曜にその週の出走馬が決まったときに何頭乗ってるかなあ、と。NEXTとレーシングビュアーは、出走予定馬の過去の走りをチェックしています。
市丸:利用されるようになって、変わったことはありますか?
福永:昔はビデオで録画して、なにに乗るか決まってからテープを探して……、とやっていましたけれど、今は「押せば」レース映像が出て来ますから、便利ですよね。初めて乗る馬でも、ある程度は特徴を把握してから乗ることができます。
市丸:どこか重点的に見るポイントはありますか?
福永:ありますよ、スタートです。まず駐立を見て、ごそごそしていたりしないか。そして出た感じや、出てからのハミの噛み方、どれくらいで出すとどれくらい掛かるとか、数字ではわからない部分も映像で見るとわかりますね。初めて乗る馬など、今は先に見ておかないと気持ち悪いくらいです。何年か前まではそういうのを見ていなかったのですが、今になってみると、昔はよくそんなんで乗ってたな、と思いますね。
市丸:ほかの騎手の皆さんもよく見られていますか?
福永:全部の乗り馬をチェックしている人は、そんなにはいないと思います。ただ、若い人はよく見ているようですね。
市丸:実際に良い結果に結びつくことも多いですか?
福永:初めて乗る馬でも「ドカ負け」はしないようになりますね。一定の理解度がある状態で、返し馬で掴んだ感触とすりあわせて乗ると、後になって「この馬こうだったんだ」とか「こうしておけば良かった」ということがあまりなくなります。
市丸:スタートも、馬を知っているのと知らないのでは、対応が違ってきますか?
福永:違いますね。わからないでいくと「こんな暴れる馬なのか」ということもありますし。なぜ出遅れているのか、なぜ引っかかっているのか、そのあたりを考えられるので、力のある馬ならそう悪い着順にはならないはずです。また、成績が上がっていない馬でも、なぜそうなのか、本当に力が足りないのか、距離や芝ダートの適性が違っているのか、乗り方がいけないのか、レースを見ていくとわかることが多いです。先週、東京で8番人気の馬で勝ったのですが(10月9日東京6レース、フラワーロック)、これまでは砂をかぶって嫌がっていたんですね。それでスタートだけ出すようにしたら、4〜5番手につけて勝つことができました。こうして見ていても勝てないこともありますが、やっていれば勝つ確率は高くなると思っています。
市丸:よく活用していただいてありがとうございます。
福永:なにも考えずに勝てるのが一番ですが、自分の場合はそれでは勝てないですし、このやり方で今は結果が出ているので、これからも続けていきたいと思っています。
市丸:本日はありがとうございました。今後の活躍も期待しております。
- JRA公式データの充実度はそのまま!なのに、携帯画面でも見やすい!
- 基本情報からお役立ち機能、お楽しみ要素までしっかりご用意しています