私の競馬はちょっと新しい
第13回 競馬ライター 須田鷹雄さん
- 「データが競馬のメジャーな馬券の買い方になるお手伝いをしたいです」
- 1970年生まれ。学生時代に「お笑い競馬ライター」としてデビュー。卒業後はJR東日本に就職したが、その後退職しフリーのライターとして新聞、雑誌やイベントなどで幅広く活躍。現在はグリーンチャンネル「日曜レース展望 KEIBAコンシェルジュ」などでデータを活用した予想を展開している。
「ハズレ馬券を買うのが正しい」という発想は本当に理解されない
市丸:予想でのデータの扱い方について、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?
須田:回収率に注目した、というのは先にお話しした通りですけれど、これは相当重要なことだと思うんですよ。
市丸:当たるか当たらないか、ではなく、儲かるか儲からないか、ということですからね。
須田:たとえば大川先生がその昔、「展開」という概念を発見したとか、それくらいの話なのですが、わたくしの不徳の致すところで、回収率にはなかなか注目してもらえないですね。
市丸:わたしは(「競馬予想TV!」の)裏なのでなかなか見られないのですが「コンシェルジュ」(グリーンチャンネル「日曜レース展望 KEIBAコンシェルジュ」)でもそういった視点から?
須田:そうですね。ただ、好きな人と嫌いな人がいるので……。馬券を買われる人の中には、厩舎情報しか信じない、という方も大勢いらっしゃる。データなんて誰でも調べられるし書けるけれど、トレセンに出入りできるのは限られた人だけだから、情報価値があるのはそちらだ、と。ただ、データでもアナログ的な部分はなくならなくて、同じレースでなにを調べるのか、どう調べるのか、そしてそこからどういう結論を導くのか。それぞれの人間次第、特徴の出るところなので……。
市丸:ひとくちにデータ分析、といっても、筆者やコラムによってはまったく結論が違ったりもしますし。
須田:そのあたりの処理をどうすれば良いかわからない方には、逆にものすごく信じてきてくれる人もいるんです。わからないから信じる、わからないから自分の理解できる範囲のことしか信じない、両極端です。
市丸:回収率といいますと、最終的に「ならして」勝てれば良い、という考え方ですよね?
須田:これも劇的に支持してくれる人と、劇的に支持してくれない人がいます(笑)。競馬って「究極的な予想は100%当たる予想」なんだという世界観が未だに根強いんですね。実際に競馬をやっているわけですから、終わってみれば必然の組み合わせでも、それを時系列的にさかのぼれるという幻想を持っている人は非常に多いと思います。
市丸:どうしても「平均すれば儲かる」のではなく、「たくさん当たる」ことを求めてしまうという。
須田:たとえば京成杯でエイシンフラッシュ(単勝2.2倍、1着)の単勝を買うことだけが正しくて、ほかは間違っているという世界観ですよね。でもひょっとしたら、エイシンフラッシュとブルーグラスの単勝を半々で買うのが正しいとか、あるいはエイシンフラッシュを買うのが間違っていて、ほかの馬の単勝を買うのが正しいのかもしれない。ただ、そういう「ハズレ馬券を買うのが正しい」という発想は本当に理解されないですね。
市丸:また、そういうことを力説しても、「でもこれが勝ったんだろ」と言われてしまいますし。
須田:それが、わたしがこの仕事をしていて金持ちにならなかった理由です(笑)。それを突き詰めると「競馬ってやっちゃダメ」ということになりかねないので、そこは考えないといけないですけれど(笑)。でも、思想として少しでも理解してくれる人がいるのはうれしいですね。
市丸:須田さんは競馬以外の公営競技も楽しまれているそうですが……。
須田:どんな競技にいっても、そして海外でも一緒だと思います。競馬に比べれば、競輪、競艇、オートにしても習熟度は低いですけれど、オッズに対する考え方とか、お客さんがなにを考えてこのオッズを構成しているのか、というのは、長年「Love ターゲット」で鍛えられた感覚が通用しますね。ただ、その発想を持っている人は株をやってはダメです。
市丸:乗っていかなければいけないという。
須田:ボトムが400円で、そこに落ちていく過程の500円で買うのなら納得いくのですけれど、400円から反転してきた500円で買うのは心理的にすごい嫌だという。そういう「逆張り」の発想の人は、株はダメですね。
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