市丸：これまでご自身が手がけた馬で、思い出に残っている馬というのは？

犬伏：一般ウケするのは（レースで）成績の良かった馬ですよね（笑）。でも実は競走馬じゃなく、乗馬なんです。トニービンの子でトラディションという馬なのですが、（競走馬を引退してホースパークに来てから）毎日乗っていました。当時は乗馬の競技会に出ていたのですが、この馬で乗馬専用の外国産馬を負かして勝ったときはうれしかったです。馬を調教する勉強にもなりましたね。競走馬では……、いろいろな馬がいますけれど、最近ではブラックシェルですね。来たときから「この馬は違うな」というのがあって、手応えを感じていた馬なので、弥生賞からは使うレース全部見に行きましたよ。

市丸：全部、現地観戦ですか！

犬伏：自費で行ったのがほとんどですね（笑）。重賞を勝てていないですけれど、「Ｇ１で」という能力の手応えを感じていて、実際に競馬でも結果を出していましたから、ぜひ手がけた馬がＧ１を勝つところを生で、と思って。

市丸：ＮＨＫマイルＣが２着で……、ダービー（３着）は不利が痛かったですね。

犬伏：ＮＨＫマイルＣは３着のダノンゴーゴーも担当していた馬で、これは３連単がおいしかったです（笑）。

市丸：馬券、お買いになりますか。

犬伏：買いますよ！　自分の担当した馬を買っていなくて穴を開けたりすると……（笑）。２歳の初戦とかは、自分たちのやってきたことがある程度反映されますから、自信があったり思い入れが強かったりする馬は単勝で。

市丸：わたしたちは新馬戦というとデータがないので買いづらいのですが……。

犬伏：新馬戦は思い入れで買うレースです（笑）。

市丸：このあたりの話はつきませんが、そろそろJRA-VANのお話しも（笑）。パソコンではどのソフトを使われていますか？

犬伏：NEXT（JRA-VAN NEXT）ですね。家と職場と両方で使っています。

市丸：具体的にはどのようなシーンでの利用が多いですか？

犬伏：預かっていた馬が出走して勝ったときは、なるべくすぐに電話をするようにしているんです、調教師さんや馬主さんへ。そのとき、特に馬主さんとは話がふくらむことがあるんですよね。兄弟がどうとか、わたしが見ていない馬のことまで。そんなときにクリックひとつで知りたい情報をすぐ出せる……、なんてネタばらしをしてしまっていいのでしょうか（笑）。

市丸：でも、これだけ多くの生産馬や預かっていた馬を、全て頭の中に入れておくのは難しいでしょうからね（笑）。

犬伏：あと、調教師さん、馬主さんに電話をするときには、他のレースにも使っているかどうかを調べたり。

市丸：勝ったけど、すぐ次のレースに出ていて忙しそうだから、とか？

犬伏：それがひとつですね。もうひとつは、自分の管理馬以外でノーザンファームの生産馬が勝っていて「あれもありがとうございました」なんて言われたときに「勝ったんですか？」なんてことにならないように。特に土曜の午前中あたりは、全部リアルタイムで見られるわけではないですから、そういうこともあり得るんです。

市丸：ご自身に関係する馬は「My注目馬」に登録されたりとか……。

犬伏：（上限が）100頭だと少ない！（笑）　休養中の馬はいったん削除したりしていますね。あと、ケータイの「My注目馬」で、今週登録しているとかメールでわかるのが便利ですよね。両方の「My注目馬」がリンクできると良いのですが……。

市丸：ケータイとパソコンで使い分けされているのですね。

犬伏：どうしてもケータイだと（データの受信や操作に）時間がかかりますし、パソコンはクリックしていくだけで早いですから、パソコンのある場所ではパソコンで。そんな感じの使い方ですね。

市丸：では最後に、今後の目標などありましたらお教えいただけますか？

犬伏：馬が走るか走らないかというのは、馬の持っている能力が一番ですから、それをうまく引き出せるかどうか。それがわたしたちの仕事ですよね。その上で、やっぱり大きなレースを勝ちたいというのはみんな思っていて、あまり大きなことは言いたくないですけれど、ノーザンファームの生産馬でダービーを勝ちたい、というのが本音です。ダービーを獲ったら、次は凱旋門賞で（笑）。

市丸：凱旋門賞、ぜひ期待しております。本日はどうもありがとうございました。