データde出〜た
第1173回 躍進が目立つ中内田厩舎の傾向を探る
2017/12/11(月)
今週行われる朝日杯FSで人気になりそうなのが2戦2勝馬のダノンプレミアム。同馬を管理する栗東の中内田厩舎は今年現時点で重賞4勝をあげている勢いがある厩舎だ。開業4年目の若手ながら、着実に実績を積み上げつつある。今回のデータde出〜たでは、今後トップトレーナーに成長していくであろう中内田厩舎をピックアップして、傾向を探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した。
■表1 中内田厩舎の年度別成績(17年は12/3終了時点)
年度 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
2017年 | 42- 19- 23-119/203 | 20.7% | 30.0% | 41.4% | 104% | 76% |
2016年 | 31- 34- 16-150/231 | 13.4% | 28.1% | 35.1% | 95% | 74% |
2015年 | 23- 22- 15-160/220 | 10.5% | 20.5% | 27.3% | 58% | 59% |
2014年 | 7- 18- 14-111/150 | 4.7% | 16.7% | 26.0% | 31% | 74% |
表の前に中内田充正(みつまさ)調教師の経歴をまとめると、1978年生まれの現在38歳。中内田厩舎のホームページから氏のこれまでの歩みを見ることができるが、16歳でアイルランドに渡って以後イギリス・フランス・アメリカと世界の最前線でキャリアを積んできたことが詳細に書かれている。その後、日本へ戻り、橋田満厩舎、藤原英昭厩舎で学び、2014年3月に自身の厩舎を開業。若い頃から海外競馬を体感している国際派で、今後海外遠征で実績を残していくのは間違いないだろう。
まず表1は中内田厩舎の年度別成績。14年に開業して以来、毎年勝利数・勝率・連対率・複勝率ともに上がっている。今年は現時点で昨年の勝利数を大きく上回っているが、注目したいのは勝率の高さだ。一昨年・昨年は勝ち星と2着の数にそれほど差がなかったが、今年は勝率20%以上と大きく伸びている点に注目だ。単勝回収率でも100%を超えており、馬券でもアタマから狙えるデータが出ている。
10日終了時点では勝利数が43勝と伸び、調教師リーディングでは8位につけている。ただし、トップ10の中では最も出走数が少なく、勝率が20%を超えているのは中内田厩舎だけ。厩舎4年目でこれだけの結果を残しているのは驚異で、来年以降はさらに勝ち星が伸びていきそうだ。
■表2 2017年の中内田厩舎の年齢別成績(17年は12/3終了時点)
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
2歳 | 10- 4- 2- 7/ 23 | 43.5% | 60.9% | 69.6% | 178% | 106% |
3歳 | 16- 8- 8- 60/ 92 | 17.4% | 26.1% | 34.8% | 115% | 71% |
4歳 | 10- 5- 6- 26/ 47 | 21.3% | 31.9% | 44.7% | 69% | 76% |
5歳 | 4- 2- 6- 25/ 37 | 10.8% | 16.2% | 32.4% | 71% | 62% |
6歳 | 0- 0- 1- 1/ 2 | 0.0% | 0.0% | 50.0% | 0% | 90% |
7歳以上 | 2- 0- 0- 0/ 2 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 345% | 195% |
続いて表2は今年の中内田厩舎管理馬の年齢別成績。表の黄色で強調したように2歳戦で10勝をあげ、勝率・連対率・複勝率ともに非常に高い。今年の重賞4勝のうち、新潟2歳Sのフロンティア、サウジアラビアRCのダノンプレミアム、ファンタジーSのベルーガと2歳重賞で3勝をあげている。
2歳戦の出走数23回中上位3番人気以内が19回と大半をしめており、ブランド力と人気でも結果を残す技術力はファンの間でもかなり浸透しているようだ。それ以外の世代でもきっちり勝ち星をあげているが、7歳以上は2戦2勝。これは障害オープンでメイショウソラーレが2連勝しているためだ。
■表3 中内田厩舎の年度別成績(17年は12/3終了時点)
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1番人気 | 40- 27- 17- 45/129 | 31.0% | 51.9% | 65.1% | 71% | 83% |
2番人気 | 22- 24- 10- 57/113 | 19.5% | 40.7% | 49.6% | 78% | 80% |
3番人気 | 18- 15- 11- 54/ 98 | 18.4% | 33.7% | 44.9% | 115% | 89% |
4番人気 | 8- 15- 13- 43/ 79 | 10.1% | 29.1% | 45.6% | 90% | 115% |
5番人気 | 6- 2- 5- 54/ 67 | 9.0% | 11.9% | 19.4% | 90% | 54% |
6番人気 | 4- 3- 5- 51/ 63 | 6.3% | 11.1% | 19.0% | 113% | 60% |
7番人気 | 2- 0- 1- 45/ 48 | 4.2% | 4.2% | 6.3% | 61% | 23% |
8番人気 | 2- 4- 1- 45/ 52 | 3.8% | 11.5% | 13.5% | 67% | 63% |
9番人気 | 1- 1- 2- 29/ 33 | 3.0% | 6.1% | 12.1% | 141% | 73% |
10番人気以下 | 0- 2- 3-117/122 | 0.0% | 1.6% | 4.1% | 0% | 42% |
表3は中内田厩舎の人気別成績。1番人気馬の勝率が抜けて高いのは当然だとしても、複勝率では黄色で強調したように4番人気までがほぼ45%以上と高い率を残している。4番人気馬の複勝回収率は100%を超えている。一方で、5番人気以下となると連対率・複勝率がガグンと下がっている。
競馬新聞では◎でなくても、○や▲が多くつけられる馬の馬券に絡む率が高いわけで、「上位4番人気以内の好走確率が高い」というのは頭に入れておきたいデータだ。
■表4 中内田厩舎の騎手別成績(17年は12/3終了時点)
騎手 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
川田将雅 | 26- 19- 14- 66/125 | 20.8% | 36.0% | 47.2% | 77% | 76% |
福永祐一 | 11- 5- 5- 26/ 47 | 23.4% | 34.0% | 44.7% | 124% | 78% |
藤岡佑介 | 8- 8- 10- 62/ 88 | 9.1% | 18.2% | 29.5% | 75% | 79% |
M.デムーロ | 7- 3- 3- 20/ 33 | 21.2% | 30.3% | 39.4% | 83% | 71% |
ルメール | 6- 10- 3- 11/ 30 | 20.0% | 53.3% | 63.3% | 48% | 92% |
武豊 | 6- 5- 1- 12/ 24 | 25.0% | 45.8% | 50.0% | 101% | 80% |
岩田康誠 | 4- 4- 2- 27/ 37 | 10.8% | 21.6% | 27.0% | 46% | 58% |
アッゼニ | 3- 10- 1- 19/ 33 | 9.1% | 39.4% | 42.4% | 80% | 106% |
菱田裕二 | 3- 3- 1- 17/ 24 | 12.5% | 25.0% | 29.2% | 150% | 101% |
和田竜二 | 3- 1- 1- 12/ 17 | 17.6% | 23.5% | 29.4% | 148% | 77% |
高田潤 | 3- 1- 0- 1/ 5 | 60.0% | 80.0% | 80.0% | 194% | 162% |
C.デムーロ | 2- 1- 5- 3/ 11 | 18.2% | 27.3% | 72.7% | 93% | 127% |
表4は中内田厩舎の騎手別成績。騎乗数が最も多く、勝利数でも26勝と抜けて多いのが川田騎手。今年もこのコンビで平安Sのグレイトパール、サウジアラビアRCのダノンプレミアムと重賞を2勝している。今週の朝日杯FSでもダノンプレミアムには川田騎手が騎乗予定。勝率・連対率・複勝率いずれも高く、主戦といえる存在だ。
11勝で続くのが福永騎手。昨年ヴゼットジョリーで厩舎の重賞初勝利をあげたのが福永騎手だった。勝率が高く、単勝回収率では100%を大きく超えている。M.デムーロ、ルメール騎手が重用される最近の競馬界にあって、日本人騎手が上位にランクされているのは良い傾向なのではないだろうか。なお、表の一番下のC.デムーロ騎手は2勝ながら、騎乗機会11回すべて5着以内で複勝率が非常に高い。複勝回収率も100%を超えており、今後とも注目といえる。
■表5 16年以降の中内田厩舎の馬主別成績(17年は12/3終了時点)
馬主(最新/仮想) | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
H.H.シェイク・モハメド | 11-11- 7-58/87 | 12.6% | 25.3% | 33.3% | 144% | 74% |
大迫久美子 | 8- 6- 4-15/33 | 24.2% | 42.4% | 54.5% | 130% | 93% |
H.H.シェイク・ファハド | 8- 2- 2-15/27 | 29.6% | 37.0% | 44.4% | 145% | 90% |
ダノックス | 6- 4- 1- 8/19 | 31.6% | 52.6% | 57.9% | 90% | 85% |
吉田和美 | 5- 5- 2-14/26 | 19.2% | 38.5% | 46.2% | 159% | 91% |
G1レーシング | 5- 1- 2-12/20 | 25.0% | 30.0% | 40.0% | 236% | 113% |
金子真人HD | 4- 3- 3-21/31 | 12.9% | 22.6% | 32.3% | 33% | 64% |
松本好雄 | 3- 1- 0- 6/10 | 30.0% | 40.0% | 40.0% | 97% | 81% |
山紫水明 | 3- 0- 1- 2/ 6 | 50.0% | 50.0% | 66.7% | 183% | 108% |
寺田千代乃 | 2- 1- 1- 1/ 5 | 40.0% | 60.0% | 80.0% | 148% | 150% |
最後に表5は16年以降の中内田厩舎の馬主別成績。最多の11勝をあげているのがシェイク・モハメド氏の馬で、単勝回収率も100%を大きく超えている。シェイク・ファハド氏の馬でも8勝をあげており、世界的オーナーが認める調教師だということだ。
日本人馬主では大迫久美子氏、ダノックス、吉田和美氏、G1レーシングと勝ち星で続くが、なかでも大迫久美子氏とダノックスの連対率・複勝率が優秀だ。また、一番下の寺田千代乃氏の馬でも非常に優秀な率を残している。
これまで何度も述べているが、今週は管理馬のダノンプレミアムが朝日杯FSに出走予定。中内田厩舎初のG1制覇となるか、注目しておきたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。