データde出〜た
第1166回 混戦ムード漂うマイルCSを分析する
2017/11/16(木)
エリザベス女王杯に続いて、京都競馬場で今週はマイルCSが行われる。モーリスが引退してからはマイル路線において確固たるエース級の実績馬がおらず、今回も混戦ムードが漂っている。今回は2007年以降のマイルCS過去10年のデータから好走馬の特徴や馬券での狙いどころを探っていきたい。なお、データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した
■表1 マイルCSの人気別成績(過去10年)
人気 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
1番人気 | 2- 3- 2- 3/ 10 | 20.0% | 50.0% | 70.0% | 61% | 102% |
2番人気 | 1- 2- 1- 6/ 10 | 10.0% | 30.0% | 40.0% | 47% | 80% |
3番人気 | 1- 2- 0- 7/ 10 | 10.0% | 30.0% | 30.0% | 59% | 64% |
4番人気 | 3- 1- 1- 5/ 10 | 30.0% | 40.0% | 50.0% | 268% | 136% |
5番人気 | 1- 0- 2- 7/ 10 | 10.0% | 10.0% | 30.0% | 98% | 93% |
6番人気 | 0- 0- 1- 9/ 10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 38% |
7番人気 | 0- 0- 1- 9/ 10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 44% |
8番人気 | 1- 0- 0- 9/ 10 | 10.0% | 10.0% | 10.0% | 181% | 39% |
9番人気 | 0- 0- 1- 9/ 10 | 0.0% | 0.0% | 10.0% | 0% | 60% |
10番人気以下 | 1- 2- 1- 85/ 89 | 1.1% | 3.4% | 4.5% | 58% | 36% |
まず表1は人気別成績。1番人気馬は09年カンパニーら2勝で、連対率50%・複勝率70%と高い。連対率・複勝率はまずまず高いものの、近7年は勝ち切れていない。2番人気馬は13年トーセンラー、3番人気馬は昨年のミッキーアイルがそれぞれ1勝ずつ。4番人気馬が一昨年のモーリスら最多の3勝をあげている。以下、5・8・13番人気馬が各1勝。13番人気馬の勝利は10年エーシンフォワード。2・3着馬も下位人気まで幅広く分布している。
配当面では馬連での万馬券が10・11年の2回。近2年は比較的堅めの決着となっているが、3連単で10万円以上となったのは4回。人気薄の伏兵が激走するケースも多く、混戦ムードが漂う今年も波乱となるかもしれない。
■表2 マイルCSの所属別成績(過去10年)
所属 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
美浦 | 2- 3- 2- 51/ 58 | 3.4% | 8.6% | 12.1% | 16% | 46% |
栗東 | 8- 7- 6- 93/114 | 7.0% | 13.2% | 18.4% | 100% | 57% |
外国 | 0- 0- 2- 5/ 7 | 0.0% | 0.0% | 28.6% | 0% | 80% |
表2は出走馬の所属別成績。出走馬が多い栗東所属の関西馬が昨年のミッキーアイルら8勝をあげ、連対率13.2%・複勝率18.4%。毎年1頭は関西馬が馬券に絡んでいる。対する美浦所属の関東馬は一昨年のモーリスら2勝で、連対率8.6%・複勝率12.1%と関西馬を下回っている。勝利数、連対率・複勝率を見ても、関西馬がやや優勢といえそうだ。
なお、外国馬の3着2回は09年・11年のサプレザによるもので、今年は海外馬の出走はなかった。
■表3 マイルCSの年齢別成績(過去10年)
年齢 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
3歳 | 0- 0- 1- 30/ 31 | 0.0% | 0.0% | 3.2% | 0% | 12% |
4歳 | 3- 5- 3- 25/ 36 | 8.3% | 22.2% | 30.6% | 72% | 86% |
5歳 | 4- 4- 5- 44/ 57 | 7.0% | 14.0% | 22.8% | 129% | 91% |
6歳 | 2- 1- 1- 31/ 35 | 5.7% | 8.6% | 11.4% | 62% | 28% |
7歳以上 | 1- 0- 0- 19/ 20 | 5.0% | 5.0% | 5.0% | 11% | 6% |
表3は年齢別成績。勝率・連対率・複勝率いずれもトップなのが4歳馬。一昨年のモーリスら3勝をあげ、複勝率30.6%と優秀だ。出走数が最も多い5歳馬は昨年のミッキーアイルら最多の4勝をあげ、連対率・複勝率も4歳馬に次いで高い。昨年は上位3着までを独占している。また、6歳馬は14年ダノンシャークら2勝も、連対率・複勝率では4・5歳馬に離されている。
なお、3歳馬は3着1回のみで不振傾向。ただし、今秋の古馬混合重賞では先週のエリザベス女王杯のように3歳馬が好走するケースも目立っている。3歳馬不振というデータだけで軽視するのは危険かもしれない。7歳以上の高齢馬は09年カンパニー(8歳)の1勝のみと苦戦する傾向にあるようだ。
■表4 マイルCSの前走レース別成績(過去10年)
前走レース名 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
天皇賞・秋 | 3- 0- 1-14/18 | 16.7% | 16.7% | 22.2% | 92% | 43% |
富士S | 2- 3- 1-43/49 | 4.1% | 10.2% | 12.2% | 56% | 38% |
スワンS | 1- 5- 1-35/42 | 2.4% | 14.3% | 16.7% | 124% | 63% |
スプリンターズS | 1- 1- 1- 6/ 9 | 11.1% | 22.2% | 33.3% | 65% | 155% |
京都大賞典 | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 235% | 90% |
安田記念 | 1- 0- 0- 4/ 5 | 20.0% | 20.0% | 20.0% | 114% | 42% |
府中牝馬S | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 353% | 90% |
毎日王冠 | 0- 1- 1-13/15 | 0.0% | 6.7% | 13.3% | 0% | 48% |
その他のレース | 0- 0- 5-31/36 | 0.0% | 0.0% | 13.9% | 0% | 47% |
表4は前走レース別成績。天皇賞・秋組が12年サダムパテックら最多の3勝をあげている。この組の3着以内馬4頭はいずれも過去にG1で連対した経験があった。
前哨戦の富士S組は14年ダノンシャークら2勝も、連対率・複勝率は高くない。出走馬が同じく多いスワンS組は10年エーシンフォワードの1勝のみで、2着が5回と多い。スプリンターズS組は昨年のミッキーアイルが勝利。少数ながら、複勝率33.3%と優秀だ。
その他では京都大賞典組・安田記念組・府中牝馬S組から1勝ずつ。特定のレースだけでなく、多くのレースから好走馬が出ていることがわかる。今年は雨の影響で天皇賞・富士S・スワンSの上位3レースがすべて道悪の中で行われており、前走の内容と今回は分けて考えた方が良いのではないだろうか。
■表5 マイルCSの前走上がり順位別成績(過去10年)
前走上がり順位 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
3F 1位 | 3- 4- 1- 11/ 19 | 15.8% | 36.8% | 42.1% | 119% | 97% |
3F 2位 | 0- 1- 0- 6/ 7 | 0.0% | 14.3% | 14.3% | 0% | 22% |
3F 3位 | 0- 2- 1- 13/ 16 | 0.0% | 12.5% | 18.8% | 0% | 46% |
3F〜5位 | 0- 1- 3- 22/ 26 | 0.0% | 3.8% | 15.4% | 0% | 29% |
3F6位以下 | 7- 2- 3- 92/104 | 6.7% | 8.7% | 11.5% | 97% | 55% |
表5は前走上がり順位別成績。黄色で強調したように前走で上がり最速だった馬が11年エイシンアポロンら3勝をあげ、連対率36.8%・複勝率42.1%と優秀だ。特に前走上がり最速で1着だった馬は【3.2.1.2】で連対率62.5%・複勝率75.0%と非常に高い。また、前走上がり最速で馬券になった8頭はいずれも前走で3着以内に入っていた。
■表6 マイルCSの種牡馬別成績(過去10年)
種牡馬 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝回収率 | 複勝回収率 |
ディープインパクト | 3- 2- 2-25/32 | 9.4% | 15.6% | 21.9% | 89% | 50% |
フジキセキ | 1- 1- 2- 6/10 | 10.0% | 20.0% | 40.0% | 105% | 128% |
サンデーサイレンス | 1- 0- 1- 4/ 6 | 16.7% | 16.7% | 33.3% | 63% | 76% |
ミラクルアドマイヤ | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 76% | 40% |
Giant's Causeway | 1- 0- 0- 2/ 3 | 33.3% | 33.3% | 33.3% | 326% | 103% |
アドマイヤベガ | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 530% | 135% |
Forest Wildcat | 1- 0- 0- 1/ 2 | 50.0% | 50.0% | 50.0% | 2620% | 535% |
スクリーンヒーロー | 1- 0- 0- 0/ 1 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 570% | 210% |
ロドリゴデトリアーノ | 0- 2- 0- 0/ 2 | 0.0% | 100.0% | 100.0% | 0% | 180% |
ダンスインザダーク | 0- 1- 0-10/11 | 0.0% | 9.1% | 9.1% | 0% | 14% |
ダイワメジャー | 0- 1- 0- 7/ 8 | 0.0% | 12.5% | 12.5% | 0% | 26% |
キングカメハメハ | 0- 1- 0- 8/ 9 | 0.0% | 11.1% | 11.1% | 0% | 97% |
サクラバクシンオー | 0- 1- 0- 6/ 7 | 0.0% | 14.3% | 14.3% | 0% | 25% |
ムタファーウエク | 0- 1- 0- 1/ 2 | 0.0% | 50.0% | 50.0% | 0% | 345% |
Sahm | 0- 0- 2- 1/ 3 | 0.0% | 0.0% | 66.7% | 0% | 186% |
ネオユニヴァース | 0- 0- 2- 0/ 2 | 0.0% | 0.0% | 100.0% | 0% | 410% |
アグネスタキオン | 0- 0- 1- 7/ 8 | 0.0% | 0.0% | 12.5% | 0% | 75% |
その他の種牡馬 | 0- 0- 0-68/68 | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0% | 0% |
表6は種牡馬別成績。出走数最多のディープインパクト産駒が昨年のミッキーアイルら最多の3勝をあげている。12年以降5年連続で3着以内に入っているものの、連対率・複勝率はそれほど高くない。同産駒の3着以内馬7頭中6頭は前走で3着以内に入っていた。
フジキセキ産駒は12年サダムパテックが勝利。一昨年・昨年はイスラボニータが続けて好走している。08年にも10番人気ファイングレインが3着と好走しており、相性が良い。
前走レース同様に種牡馬も多岐にわたっている。キングカメハメハ産駒は【0.1.0.8】で2着1回のみだが、10番人気以下が多くて2着も11年に11番人気で激走したフィフスペトルと相性が悪いとはいえない。
■表7 マイルCSで複数回好走した馬(過去10年)
馬名 | 該当馬の好走歴 |
ダノンシャーク | 13年3着、14年1着 |
フィエロ | 14年2着、15年2着 |
スーパーホーネット | 07年2着、08年2着 |
イスラボニータ | 15年3着、16年2着 |
サプレザ | 09年3着、11年3着 |
最後に表7は過去10年で複数回好走した馬の一覧。これら5頭のうち、勝利したのは14年ダノンシャークのみだが、2年連続で好走しているリピーターが多いことがわかる。サプレザのみ1年あけての好走だが、海外馬が複数回好走できるということはそれだけリピーターが好走しやすい条件だといえるのではないか。
<結論>
■表8 今年のマイルCSの出走予定馬(11/15現在)
馬名 | 性齢 | 所属 | 種牡馬 | 前走成績 |
サトノアラジン | 牡6 | 栗東 | ディープインパクト | 天皇賞・秋 18着 |
イスラボニータ | 牡6 | 美浦 | フジキセキ | 富士S 2着 |
ペルシアンナイト | 牡3 | 栗東 | ハービンジャー | 富士S 5着 |
レッドファルクス | 牡6 | 美浦 | スウェプトオーヴァーボード | スプリンターズS 1着 |
エアスピネル | 牡4 | 栗東 | キングカメハメハ | 富士S 1着 |
サングレーザー | 牡3 | 栗東 | ディープインパクト | スワンS 1着 |
レーヌミノル | 牝3 | 栗東 | ダイワメジャー | 秋華賞 14着 |
ウインガニオン | 牡5 | 栗東 | ステイゴールド | 関屋記念 2着 |
マルターズアポジー | 牡5 | 美浦 | ゴスホークケン | 京成杯AH 4着 |
グランシルク | 牡5 | 美浦 | ステイゴールド | 富士S 9着 |
アメリカズカップ | 牡3 | 栗東 | マンハッタンカフェ | カシオペアS 1着 |
ダノンメジャー | 牡5 | 栗東 | ダイワメジャー | スワンS 5着 |
ブラックムーン | 牡5 | 栗東 | アドマイヤムーン | 富士S 8着 |
ジョーストリクトリ | 牡3 | 栗東 | ジョーカプチーノ | 富士S 14着 |
ヤングマンパワー | 牡5 | 美浦 | スニッツェル | 毎日王冠 5着 |
ガリバルディ | 牡6 | 栗東 | ディープインパクト | 富士S 7着 |
ムーンクレスト | 牡5 | 栗東 | アドマイヤムーン | スワンS 8着 |
クルーガー | 牡5 | 栗東 | キングカメハメハ | 富士S 3着 |
グァンチャーレ | 牡5 | 栗東 | スクリーンヒーロー | カシオペアS 2着 |
今年の出走予定馬は表8のとおり。
混戦ムードで読みづらい面はあるが、スプリンターズSを勝利したレッドファルクス、富士Sで1・2着だったエアスピネル・イスラボニータの3頭が人気を集めそうだ。
レッドファルクスは春の安田記念でも僅差3着に入っており、マイルでも問題ないところを証明した。初めての京都コースがカギだが、右回りも問題なく上位争いになりそうだ。 富士Sではエアスピネルよりもイスラボニータを上に取りたい。前走の富士Sは不良馬場による部分が大きく、エアスピネルに向いた部分がある。イスラボニータはいかにも前哨戦で今回に向けた叩き台の2着。リピーターの好走傾向からしてもイスラボニータの安定感は今年も注目だ。
その他の馬ではデータから前走スワンSを勝利したサングレーザーを推奨したい。4連勝で重賞初制覇も不振傾向の3歳馬、1600mへの距離延長で今回も中位人気あたりに落ち着くのではないか。ただし、表6で示したように前走上がり最速、それも1着だった馬は【3.2.1.2】と好走確率が非常に高い。今年は3歳馬不振のデータを覆すと期待してサングレーザーを中心に据えて馬券を組み立てていきたい。
ライタープロフィール
ケンタロウ(けんたろう)
1978年6月、鹿児島県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。初めて買った馬券が大当たりし、それから競馬にのめり込むように。データでは、開催日の馬場やコース適性に注目している。好きなタイプは逃げか追い込み。馬券は1着にこだわった単勝、馬単派。料理研究家ではない。